バックしてきた車にぶつけられたときの過失割合|示談金額への影響も解説
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バックしてきた車にぶつけられた場合、基本的にはぶつけた側の過失のほうが大きくなります。
ただし、具体的にどれくらいの過失割合になるかはバック事故(逆追突事故)が起きた状況により異なります。
また、場合によってはぶつけられた側の過失割合が加算されるケースもあるでしょう。
この記事では、バックしてきた車にぶつけられた場合の過失割合、過失割合の交渉で予想される加害者側の主張とそれに対する反論のポイントを解説します。
目次

バックしてきた車にぶつけられた時の過失割合
基本的には後方確認不足でぶつけた側の過失が大きい
バックしてきた車にぶつけられた事故は、「バック事故」「逆追突事故」とも言われます。
追突事故で追突した側の過失割合が大きくなるのと同じように、逆追突事故でも基本的には追突してきた側、つまりバックしてきた側の過失が大きくなります。
バックしてきた車の後方確認不足が主な事故原因とされるためです。
ただし、具体的な過失割合はどのような状況でバックしてきた車にぶつけられたのかによって異なります。
以下のケースに分けて過失割合を見ていきましょう。
- 停車していてバックしてきた車にぶつけられた場合
- 徐行していてバックしてきた車にぶつけられた場合
- 脇からバックしてきた車にぶつけられた場合
停車中にバックしてきた車にぶつけられた場合の過失割合
信号待ちなどで停車しているときにバックしてきた車にぶつけられた場合、過失割合は基本的に「ぶつけられた側:ぶつけた側=0:100」です。
この場合、ぶつけられた側は停車しており特に事故原因となる行動を取っていません。よって、後方確認不足でバックしたぶつけた側に100%の過失があると考えられます。
徐行中にバックしてきた車にぶつけられた場合の過失割合
徐行していたところバックしてきた車にぶつけられた場合の過失割合は、「ぶつけられた側:ぶつけた側=0~30:70~100」です。
この場合、ぶつけられた方も前の車がバックしてきていることに気づき、徐行をやめて停止していれば事故を防げた可能性があります。
よって、ぶつけられた側にも一定の過失割合がつくと考えられるのです。
脇からバックしてきた車にぶつけられた場合の過失割合
公道を直進しているところ、脇道からバックしてきた車にぶつけられた場合の過失割合は「ぶつけられた側:ぶつけた側=20:80」です。
一方、駐車場の通路を走行中に駐車区画からバックで出てきた車にぶつけられた場合、過失割合は「ぶつけられた側:ぶつけた側=30:70」です。
バック事故でぶつけられた側の過失割合が増えるケース
クラクションを鳴らさなかった
前方車がバックしてきていることに気づき、クラクションを鳴らして警告する余裕があったにも関わらずそうしなかった場合は、ぶつけられた側に10~20%の過失割合が加算される可能性があります。
ただし、クラクションを鳴らす暇もなくぶつけられた場合は、クラクションを鳴らしていなくても過失割合は加算されません。
過失割合の交渉で加害者側が「被害者側はクラクションを鳴らしていなかった」と主張してきた場合、「クラクションを鳴らす余裕はあったか」が争点となるでしょう。
反論する場合はドライブレコーダー映像や目撃者の証言などを用意することが重要です。
不適切な位置に駐車していた
被害者側が駐車禁止場所に駐車していたり、脇道から出てくる車の邪魔になるような場所で停止していたりした場合は、ぶつけられた側に10~20%の過失割合が加算されることがあります。
バック事故の過失割合でもめる原因と対策
バック事故においては、加害者が以下のような主張を行うことで過失割合についてもめることがあります。
- 「そちらが追突してきた」
- 「こちらが後方確認不足ではなかった」
- 「そちらの前方不注意も悪かった」
このような加害者の主張がなされた場合の対処法について紹介します。
「そちらが追突してきた」と言われる
加害者側が「追突してきたのはそちらだ」と主張してきた場合、加害者自身が不利にならないよう嘘をついているか、バックしたときには被害者車両が見えておらず本当に被害者側が追突してきたと思っていると考えられます。
いずれにしても、被害者側は事故時に停車していた、あるいは徐行していたのであり追突はしていないことを主張する必要があるでしょう。
ドライブレコーダーの映像や目撃者の証言があれば、被害者側が追突したのではないことを証明できます。
また、警察や保険会社のアジャスターが調べたブレーキ痕や車の傷の位置・程度などから逆追突事故なのか追突事故なのか判断できることもあります。
ドライブレコーダーの証拠能力は?:ドラレコは警察に提出すべき?証拠能力や過失割合への影響も解説
関連裁判例
「こちらが後方確認不足だったわけではない」と言われる
加害者側が「被害者側の車が死角に入っていて物理的に見えなかったため、後方確認不足とは言えない」などと主張してくることもあります。
ただし、たとえそれが事実だとしても、「加害車両から被害車両が見えなかった」ことが被害者側の過失になるわけではありません。
「後方に死角があるなら死角から車が出てくることも考えて、加害者側がバック時にもっと後方確認すべきだった」とも言えます。
基本的には以下2点を証明できれば、被害者側の過失割合が増えることにはならないでしょう。
- 被害者側からも加害者側が見えず、バックしてきていることに気づけなかったこと
- 不適切な停車などにより死角に入っていたわけではないこと
なお、加害者側から被害車両は確認できたはずだと感じる場合は、警察が作成した実況見分調書を確認するのも良いでしょう。
実況見分調書とは、人身事故の現場を警察が当事者立ち会いのもと捜査し、その内容をまとめた書類です。
実況見分調書の作成の流れや入手方法などは『実況見分とは?交通事故での流れや注意点!呼び出し対応や過失割合への影響』の記事で詳しく知ることができます。
「そちらの前方不注意も悪い」と言われる
加害者側が被害者側の前方不注意を主張してきた場合は、以下のいずれかの点から反論することになるでしょう。
- 前方車のバックもありうる状況だと理解し、徐行して事故防止に努めていた
- 前方車のバックに気づき、ブレーキやクラクションなど事故回避のための行動を取っていた
- 前方車が死角に入っており、前方に注意していてもバックに気づけない状況だった
- バックしてくる前方車を避けられない状況だった
いずれにしても、ドライブレコーダーの映像や目撃者の証言、実況見分調書などが反論の根拠となるでしょう。
バック事故で請求できる示談金
バック事故の示談金の内訳
バックしてきた車にぶつけられた場合に請求できる示談金の内訳は、次のとおりです。
- ケガに対する費目
- 治療費:治療のために必要であった投薬代、手術費用、入院費用など
- 入通院慰謝料:治療のために入通院を行ったことで生じる精神的苦痛に対する補償
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- 後遺障害に対する費目
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことで生じる精神的苦痛にに対する補償
- 後遺障害逸失利益:後遺障害による将来の減収に対する補償
- 物損に関する費目
- 車の修理費、弁償代、代車費用など
- 死亡事故の場合の費目
- 死亡慰謝料:被害者が死亡したことで生じる精神的苦痛に対する補償
- 死亡逸失利益:被害者の死亡により得られなくなった将来の収入に対する補償
慰謝料・逸失利益の相場は以下の計算機からご確認いただけます。
ただし、実際の示談金額は加害者側との示談交渉で決まります。加害者側は相場以下の金額を提示してくることがほとんどなので、適切な金額を得るためには増額交渉が欠かせません。
費目ごとの相場額や計算方法を知りたい方は、『交通事故の損害賠償とは?請求できる賠償金の費目範囲や相場・計算方法を解説』の記事をご覧ください。
過失割合は示談金にどう影響する?
被害者側に過失割合がつくと、その割合分、受け取れる示談金額が減額されます。これを過失相殺といいます。
たとえば示談金が300万円でも、過失割合が1割なら270万円、2割なら240万円しか受け取れないのです。
また、加害者側からも損害賠償請求されている場合は、そのうち自身の過失割合分を支払わなければなりません。
たとえば30万円請求されている場合、被害者側の過失割合が1割なら3万円、2割なら6万円支払うのです。
過失割合が正当なものにならなければ、受け取れる示談金が必要以上に減ってしまうのです。
過失相殺による減額の流れや計算方法については『過失相殺とは?計算方法や交通事故の判例でわかりやすく解説』の記事で知ることができます。
バックしてきた車にぶつけられたら弁護士に相談を
バックしてきた車にぶつけられた場合は、弁護士への相談をご検討ください。
先述の通り、過失割合が正しいものにならなければ被害者が受け取れる示談金は必要以上に減額されてしまいます。
バック事故(逆追突事故)の場合、加害者側はさまざまな主張をすることで被害者側の過失割合を多くしようとすることが考えられます。
ドライブレコーダー映像や目撃者の証言、実況見分調書などは正しい過失割合にするための証拠として有効です。
しかし、加害者側の交渉人は多くの場合、示談交渉に慣れた保険担当者であり、交渉力の差によって被害者側に不利な内容で示談させざるを得なくなるケースもあります。
まずは適正な過失割合を把握するためにも、1度弁護士までご相談ください。アトム法律事務所では、電話・LINEにて無料相談を実施しています。


高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

