高次脳機能障害で障害者手帳は取得できる?取得条件と申請方法は?

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遷延性意識障害は障害者手帳の対象?

脳挫傷などが原因で高次脳機能障害と診断された方やご家族の方向へ。本記事では、高次機能障害で障害者手帳を取得できる条件や申請方法について簡単に解説します。

高次脳機能障害が残ると、認知能力や記憶力、判断力、言語理解など高次の脳機能に影響が生じるでしょう。

高次脳機能障害を抱えることになった方に対しては、障害者手帳の交付を受けることで様々な公的サービスを利用することができるようになります。

ただし、高次機能障害を持つ方でも、一定の条件をクリアしていなければ障害者手帳の交付は受けられません。

交通事故で脳挫傷や外傷性脳損傷などを負ったことが原因で高次機能障害になった場合のポイントについても解説していますので、最後までご覧ください。

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高次脳機能障害で障害者手帳は取得できる?

高次脳機能障害では障害の状況に応じた手帳がもらえる

障害者手帳には種類があり、「身体障害者手帳」、「精神障害者保健福祉手帳」、「療育手帳」の3つに分けられます。

高次脳機能障害の場合、障害の状況や受傷時期に応じてもらえる手帳の種類が変わります。

障害者手帳の種類*¹

身体障害者手帳手足の麻痺や言語、視野の障害がある場合
精神保健福祉手帳記憶や注意機能、社会的行動上の障害がある場合
療育手帳*²発達期(18歳未満)で受賞し、知的障害を発症した場合

*¹ 参考:厚生労働省「障害者手帳」、東京都福祉局「対象者(愛の手帳Q&A)」など
*² 自治体によっては「愛の手帳」「愛護手帳」「みどりの手帳」と呼ばれることもある

高次脳機能障害による障害者手帳の取得の条件

障害者手帳取得の条件は、手帳の種類によって異なります。手帳の種類ごとに、それぞれ条件をみていきましょう。

身体障害者手帳の場合

身体障害者手帳の場合、高次脳機能障害が一定以上の身体障害者等級に該当すると認められる必要があります。

身体障害者等級とは、身体障害者福祉法施行規則別表第五号の「身体障害者障害程度等級表」のことで、障害の種類と程度に応じて1級から7級に分けられています。

高次脳機能障害の場合、身体障害者障害程度等級表の「平衡機能障害」「音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害」「肢体不自由」に該当する可能性があるでしょう。

そして、障害の程度が等級の3級または4級に認定される場合には、身体障害者手帳の交付が受けられるようになるのです。

精神保健福祉手帳の場合

精神保健福祉手帳の場合、高次脳機能障害が一定の精神障害の状態と認められることが必要です。

一定の精神障害の状態であるかどうかは、「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」で定められる精神疾患を持つ方で、精神疾患(機能障害)の状態と能力障害(活動制限)の状態に応じて1級から3級に分けられています。

高次脳機能障害の場合、精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準では「器質性精神障害」として認定の対象となっています。

初診日から症状が6か月以上継続していることが必要なため、初診日から6か月以上が経過してから診断書を作成してもらいましょう。
また、診断書については作成日から3か月以内のものを提出する必要があります。

療育手帳の場合

療育手帳の場合、18歳になるまでに知的障害を発症した方が対象になります。具体的な判断基準は各自治体によって異なりますが、厚生労働省は以下の通りガイドラインを定めていますので確認しておきましょう。

  • 重度の基準
    • 知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者
      • 食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。
      • 異食、興奮などの問題行動を有する。
    • 知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者
  • それ以外の基準
    • 重度のもの以外

高次脳機能障害により生じる具体的な症状を知りたい方は『高次脳機能障害で後遺障害等級認定される後遺症とは?記憶障害や性格の変化は?』の記事をご覧ください。

高次脳機能障害による障害者手帳の所持の割合

高次脳機能障害のうち、障害者手帳を所持する割合

厚生労働省の統計では、令和4年度、医師から高次脳機能障害と診断された者のうち、障害者手帳所持者の割合は81.6%でした。一方で、障害者手帳を所持していない、もしくは、所持の有無が不明とされた割合は18.4%となっています(令和4年生活のしづらさなどに関する調査 別添1)。

障害者手帳の種類別の所持者数

高次脳機能障害のみの統計はありませんが、令和4年度の推計では、障害者手帳の所持者は6,100,000人とされています(複数回答あり)。

障害者手帳の種類ごとの所持者数は、以下のとおりです。

障害者手帳所持者数等(推計値・複数回答あり)

人数
身体障害者手帳4,159,000人
療育手帳1,140,000人
精神障害者保健福祉手帳1,203,000人
総数(重複あり)6,100,000人

厚生労働省 令和4年生活のしづらさなどに関する調査 「別添1」p2を参考に、障害者手帳の所持人数・割合を表にまとめました。

高次脳機能障害の障害者手帳によるサービスと申請方法

障害者手帳があると受けられるサービス

高次脳機能障害の方が障害者手帳を取得することで、以下のような様々なサービスが受けられます。

  • 医療費等の助成(医療費、車椅子や補聴器等の補装具、リフォーム費用など)
  • 税金の軽減(所得税、住民税、自動車税など)
  • 公共料金の割引(公共交通機関の運賃、高速道路の利用料金、NHKの放送受信料、携帯電話会社の料金、公共施設の入場料など)

具体的なサービスの内容については、自治体ごとに異なる場合があるので、自治体のホームページや窓口で確認すると良いでしょう。

障害者手帳の申請方法

障害者手帳の申請方法は、申請に必要な書類を申請先に提出して申請します。

申請先
身体障害者手帳福祉事務所か市役所
精神保健福祉手帳市区町村の担当窓口
療育手帳各自治体

申請のための書類としては、「診断書」「申請書」「本人確認ができる書類」などが基本となりますが、具体的な書類は申請先に問い合わせる必要があるでしょう。

審査期間は約2ヶ月程度となることが多いようです。

高次脳機能障害となった場合には、障害者手帳の申請以外もすべきことがあります。
詳しく知りたい方は『事故後の記憶障害・性格が変わる・言語障害…高次脳機能障害の症状とは?』の記事をご覧ください。

高次脳機能障害(障害者手帳以外)の支援・賠償

高次脳機能障害の相談窓口

国立障害者リハビリテーションセンターのホームページでは、各都道府県の高次脳機能障害相談窓口を紹介しています。

国立障害者リハビリテーションセンターは、1979年(昭和54年)に設置された国(厚生労働省)の施設等機関です。

高次脳機能障害の障害者年金

障害者年金とは、病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった場合に、受け取ることができる年金です。

障害者年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。

種類対象者
障害基礎年金国民年金に加入していた人など
障害厚生年金厚生年金(会社員や公務員など)の加入者

障害が重い場合は1級や2級に認定され、「障害基礎年金」が支給されます。厚生年金に入っていた人は「障害厚生年金」も上乗せでもらえます。

軽い障害でも、3級が認定されれば「障害厚生年金」や「一時金」が支給される可能性があります。

障害年金の制度、等級認定の基準について詳しくは、日本年金機構のホームページなどでご確認ください。

障害年金の対象となる高次脳機能障害には、以下のようなものがあります。

  • 器質性健忘症候群、アルコールその他の精神作用物質によらないもの
    原因疾患が外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などであり、記憶障害が主となる症状を示すもの
  • 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害
    原因疾患が外傷性脳損傷、脳血管障害、低酸素脳症、脳炎、脳腫瘍などであり、健忘が主体でない症状を示すもの
  • 脳の疾患、損傷及び機能不全による人格及び行動の障害

高次脳機能障害で精神保健福祉手帳の所持者が約1億円の賠償を受けた事例

交通事故で脳挫傷を負い、高次脳機能障害が残った被害者(トラック運転手の男性)が、精神保健福祉手帳(障害者手帳)1級を取得。裁判では、労働能力を100%失ったと認められ、およそ1億円の損害賠償が認められました(東京地判平成20年1月24日・平成17年(ワ)第26759号)。

この裁判では、「後遺障害の程度」が争点になりました。

被害者の後遺障害は、自賠責では「併合4級」と評価されましたが、労災では「常に介護が必要」とされる1級と認定されており、精神保健福祉手帳の1級が交付されていたことも踏まえ、裁判所は「労働能力を100%喪失した」とし、将来の収入減(後遺障害逸失利益)として、6735万2,346円の損害を認定しました。

さらに、将来の介護費用、慰謝料なども考慮され、非常に高額な賠償額が認められた注目の判例です。

交通事故が原因の高次脳機能障害なら弁護士にご相談ください

交通事故で脳挫傷や外傷性脳損傷などを負ったことが原因で高次脳機能障害になった場合、障害者手帳の申請と同時に弁護士への相談も検討すべきです。

弁護士に相談することで生じるメリットや、弁護士費用の負担を軽減する方法などを解説します。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談・依頼することで、適切な損害賠償金を得ることが可能となります。

交通事故による高次脳機能障害の場合、加害者側に対して損害賠償請求をすることができますが、加害者側は低額な損害賠償金しか提示してこないことが多いでしょう。

しかし、弁護士から損害賠償請求を行うと、法的根拠のある主張であることや、裁判に発展する恐れがあるとして、加害者側が相場の金額まで増額する可能性が高くなるのです。

増額交渉(弁護士あり)

高次脳機能障害による事故後の生活は大きく変わり、不安も抱えることでしょう。そんな時、適切な損害賠償金を受け取ることは不安を軽減する一助となります。

弁護士に相談することで得られるメリットは、これ以外にも複数存在します。
詳しく知りたい方は『交通事故を弁護士に依頼するメリット9選と必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。

弁護士費用を安くする方法があります

弁護士への相談や依頼による生じる費用については、弁護士費用特約を利用することで安く済ませることが可能です。

弁護士費用特約とは、弁護士に支払う必要のある相談料や依頼の費用を保険会社に負担してもらうことができる特約になります。

多くの場合、相談料は10万円、弁護士費用は300万円が上限となっており、相談料や弁護士費用が上限額を上回ることは少ないので、金銭的な負担なく相談や依頼が可能となるでしょう。

弁護士費用特約とは

仮に、上限額を上回るケースであっても、そのようなケースでは依頼により得られる損害賠償金が大幅に増額する可能性の高い場合であるため、やはり依頼を行うべきです。

詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約とは?メリット・使い方・使ってみた感想を紹介』の記事をご覧ください。

まずは無料の法律相談を受けてみよう

高次脳機能障害となった場合には、弁護士のサポートを受けることで、妥当な損害賠償金の獲得に近づくことができます。
まずは、弁護士に相談してみることをお勧めします。

アトム法律事務所では、無料の法律相談を行っているので、金銭的な負担なく弁護士に相談することが可能です。

また、依頼となった場合にも、基本的に依頼を受けた時点では費用をいただいておりません。加害者から損害賠償金を回収後に、回収した賠償金から費用をいただいております。

そのため、弁護士費用特約を利用することができない場合でも、金銭面を気にせず依頼が可能です。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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