交通事故で膝が痛い。膝蓋骨骨折・半月板損傷・前十字靭帯損傷の後遺症と慰謝料
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交通事故で膝に強い外力が加わることで、膝の皿が割れて膝蓋骨骨折になったり、膝の運動機能を果たす半月板の損傷、あるいは前十字靭帯損傷・断裂を負ってしまうことがあります。
こうした交通事故によるケガは、治療を続けても、痛みが残るという神経症状、関節が動かしづらくなるという機能障害などの後遺症が残る可能性があります。
そのため、後遺症が後遺障害に該当するかどうかの認定申請を行うなど、適切な対応を行い、相場の損害賠償金を得るべきです。
本記事では、交通事故により膝蓋骨骨折となった場合において生じる後遺症の内容や、後遺症が生じた場合に知っておくべき知識について解説を行っています。
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交通事故による膝の痛みの原因と症状
交通事故で膝に強い衝撃が加わると、膝の皿が割れる膝蓋骨骨折、半月板損傷、前十字靭帯損傷、変形性膝関節症といった様々なケガを負ってしまいます。
それぞれのケガの症状や後遺症の内容について、解説を行います。
膝蓋骨骨折の症状と後遺症
膝蓋骨は膝関節の中心にある三角形の骨で、いわゆる「膝のお皿」にあたる部分です。膝関節の中心にあり関節の動きを助ける役割をしています。
つまり、膝の曲げ伸ばしを効率良く行う運動の中心を担っているのです。
また、膝蓋骨は、膝の腱が切れるのを防ぐ役割もしています。
膝蓋骨骨折の症状
膝蓋骨骨折により膝のお皿が割れてしまうと、膝が強く痛む、膝が腫れ上がる、自分の意志で動かせなくなるといった症状があらわれます。
また、膝蓋骨骨折が重度の場合、膝蓋骨がずれてしまい、歩行が困難になるおそれがあるのです。
膝蓋骨骨折の治療は、骨折の程度によって異なります。
軽度の骨折では、ギプスや装具による固定で治療を行います。重度の骨折では、手術が必要になることもあるでしょう。
治療や手術後には、膝の可動域を広げたり、歩行のためのリハビリが必要です。
膝蓋骨骨折の後遺症
膝蓋骨骨折の後遺症は、後遺症としては、膝関節の可動域の制限、膝の痛み、膝の腫れ、膝の不安定感などがあげられるでしょう。
軽度の骨折では、膝の痛みや腫れなどの症状は数週間で改善する見込みです。一方重度の骨折では、膝の可動域制限や膝の痛みが後遺症として残ることがあります。
半月板損傷の症状と後遺症
半月板は、膝関節の中にある軟骨の組織であり、関節の動きを滑らかにし、クッションの役目を果たしています。
交通事故では横から衝撃が加わったとき、膝をひねったときなどに骨と骨の間に挟まれて半月板が損傷・断裂することがあるのです。
また、交通事故においては半月板損傷のみを負うのではなく、前十字靭帯など他の部位の損傷を伴うことが一般的です。半月板損傷時の症状と後遺症について説明します。
半月板損傷の症状
半月板損傷による主な症状は、膝の痛み、腫れ、可動域の制限です。
断裂の程度がひどい場合には、激痛と可動域制限により歩くことが出来なくなります。
症状が軽度の場合は、リハビリや薬物療法による治療が行われますが、痛みがひどく足を動かすことが困難であるなら手術が必要となるでしょう。
半月板損傷の後遺症
半月板損傷は膝関節の痛みや、可動域制限による機能障害といった後遺症が残る可能性が考えられます。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂の症状と後遺症
前十字靭帯は、膝関節の内側にあり、太ももの骨と脛の骨をつなぐ靭帯です。関節を保護したり、安定性を維持する役割を担っています。
交通事故では強く膝をひねったり、強い力が加わることで断裂音と共に損傷、断裂してしまうことがあるのです。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯を損傷すると、関節に腫れや痛みが生じます。
膝が不安定となり、激しい痛みで膝が動かせなくなることもあるでしょう。
また、関節で内出血が起こり、腫れや変色として表れることもあるのです。
治療としては自身の腱を移植するという手術を行い、リハビリにより歩行能力の回復を図ります。保存療法では十分な回復が見込めない恐れが高いため、手術による治療を行うことが多いでしょう。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂の後遺症
前十字靭帯の損傷や前十字靭帯の断裂は、膝が不安定で歩きづらい、痛みが残る、膝の曲げ伸ばしが十分にできないといった後遺症が残る可能性があります。
変形性膝関節症の症状と後遺症
変形性膝関節症とは、膝の関節にある軟骨がすり減ることで生じ、歩くたびに痛みが出るようになります。
交通事故により膝蓋骨骨折となると、膝の機能が衰えて事故前よりも膝に負担が掛かりやすくなり、変形性膝関節症が発症するおそれが増加することがあるのです。
変形性膝関節症の症状
変形性膝関節症の主な症状は膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、歩行時に膝にかかる負担が増加し、関節炎を発症することで痛みが生じます。
また、膝が腫れて動かしづらさが残ることもあるのです。
治療方法としては、薬物療法や運動療法となりますが、痛みが改善されない場合には手術が必要となることもあるでしょう。
変形性膝関節症の後遺症
初期は自覚症状があまりなく、進行期になると日常生活に障るほどの症状に襲われるもので、完治は難しいともいわれています。
そのため、痛みや膝の曲げづらさが残る可能性があるでしょう。
変形性膝関節症の治療として人口膝関節置換術を受けた場合にも後遺障害として認定されます。
膝の骨折や靭帯損傷などの後遺障害等級
膝蓋骨骨折を原因とする後遺障害の症状と、症状に応じた後遺障害等級について解説します。
膝蓋骨骨折・半月板損傷・前十字靭帯損傷や断裂・変形性膝関節症などによって生じる可能性のある後遺障害は、膝関節の可動域の制限、神経症状、偽関節、動揺関節です。
膝の可動域制限(膝の曲げ伸ばしがしづらい)
骨折や半月板損傷、靭帯損傷などにより膝関節の可動域が制限されるという運動障害が生じることがあります。
膝の可動域制限により生じる可能性がある後遺障害等級は、8級7号、10級11号、12級7号です。
等級 | 症状 |
---|---|
8級7号 | 足関節が全く動かない、または、ケガをしていない足と比べて10%以下しか動かない |
10級11号 | ケガをしていない足と比べて可動域が2分の1以下に制限されている |
12級7号 | ケガをしていない足と比べて可動域が4分の3以下に制限されている |
神経症状(痛みが残っている)
骨折や半月板損傷、靭帯損傷などにより膝に痛みが残るといった神経症状が生じることがあります。
神経症状により認定されうる後遺障害等級は12級13号または14級9号です。
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 痛みが残っていることが医学的に証明できる |
14級9号 | 痛みが残っていることが医学的に説明できる |
12級13号に該当すると認定を受けるには、レントゲンやMRIなどの画像検査結果から、痛みの残存を明らかにする必要があります。
14級9号については、画像検査の結果がない場合でも、事故や症状の内容、治療経過などから痛みの残存を医学的に説明できるのであれば、認定を受けられる可能性があるでしょう。
偽関節(関節ではないところで動いてしまう)
偽関節とは、骨がくっつく過程で変形してしまい、本来は関節ではないところが関節のように動いてしまうことをいいます。
たとえば、膝蓋骨骨折で隣接している骨である脛骨と腓骨の骨幹部が骨折し、うまく骨が癒合しないと、偽関節ができてしまうのです。
このような偽関節が生じた場合には、後遺障害7級10号、8級9号認定の可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
7級10号 | 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具が必要 |
8級9号 | 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としない |
動揺関節(膝がぐらつく、不安定である)
骨折や半月板損傷、靭帯損傷などにより隣接している膝の靱帯も損傷し、膝関節の安定性を失うことがあります。
このような動揺関節となった場合には、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号認定の可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
8級7号 | 常に硬性補装具を必要とする |
10級11号 | 時々硬性補装具を必要とする |
12級7号 | 強度の労務の際に硬性補装具を必要とする |
後遺障害等級の決定方法
後遺症の症状が後遺障害に該当すると判断されると、障害の程度に応じた後遺障害等級の認定がなされます。
この認定された等級に応じて、慰謝料や後遺障害逸失利益の請求をすることが可能となるのです。
後遺障害等級の認定を受けるには、後遺障害診断書を医師に作成してもらい、その他の必要な資料ととともに調査機関である自賠責保険会社へ書類を提出することとなります。
後遺障害等級の申請手続きについては関連記事『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』も参考にしてください。
交通事故の膝蓋骨骨折で後遺症が生じた場合の損害賠償
膝を負傷した場合の損害賠償金の内訳
交通事故の損害賠償金としては、入通院慰謝料、治療関係費、休業損害、物的損害などについても賠償請求ができます。
費目 | 内容 |
---|---|
入通院慰謝料 | 治療期間に応じて請求できる慰謝料 |
治療関係費 | 治療のために必要なった費用 |
休業損害 | 治療で仕事を休んだことで生じる減収 |
物的損害 | 自動車の修理代や代車費用など |
入通院慰謝料については、下記バナーの「慰謝料計算機」で簡単に相場額がつかめます。ただし過失割合などの個別の事情までは反映できないので参考程度にご活用ください。
損害賠償金の計算方法や内訳については、関連記事をお読みください。
後遺障害が認められた場合の慰謝料相場額
交通事故による後遺症が生じた場合の補償は、後遺障害等級の認定を受けることができます。後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの補償を受けるこが可能となるのです。
後遺障害慰謝料は、後遺障害の症状によって生じる精神的苦痛を補償するための金銭です。後遺障害慰謝料の金額は、認定を受けた後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料相場額は以下の通りです。
等級 | 慰謝料額 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
もっともこうした金額は弁護士基準という基準から算出された金額です。
裁判所や弁護士などの法律の専門家が損害算定時に用いる基準になりますが、相手の保険会社はもっと低水準での示談をせまってくるでしょう。
相手の保険会社が提示した金額のまま示談を受け入れず、まずは弁護士に相談して妥当性を確かめておく必要があります。
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膝蓋骨骨折の慰謝料相場
膝蓋骨骨折により膝関節の可動域の制限が残った場合、後遺障害等級は8級7号、10級11号、12級7号のいずれかの認定を受ける可能性があります。
つまり、膝蓋骨骨折による可動域制限での後遺障害慰謝料の相場は、290万円から830万円です。
半月板損傷の慰謝料相場
半月板損傷の慰謝料は、後遺障害等級に応じて110万円もしくは290万円が相場です。これは半月板損傷個所の画像検査で異常が確認できるのかによります。
画像検査でも異常が認められて神経症状の存在が医学的に証明できれば後遺障害12級として290万円、画像検査で異常はなくても治療経緯や受傷状況から医学的に神経症状について説明できるケースなら後遺障害14級として110万円の請求が可能です。
神経症状の後遺障害等級認定は難しいため、関連記事も参考にして後遺障害等級認定の準備を入念に行ってください。
後遺障害が認められると慰謝料以外に請求できる損害
交通事故により生じた後遺症が後遺障害に該当すると認定された場合は、後遺障害慰謝料だけでなく、後遺障害逸失利益を請求することも可能となります。
後遺障害逸失利益は、ケガによって失われた将来の収入を補償するための金銭です。後遺障害逸失利益の金額は、後遺障害等級、年齢、職業、年収などによって異なります。
後遺障害逸失利益を計算するには様々な要素が必要となってくるので、相場額を知りたいのであれば、専門家である弁護士に相談するべきでしょう。
関連記事『【逸失利益の計算】職業別の計算例や早見表・計算機つき|もらえない原因と対処法』では逸失利益の計算方法について解説しています。
交通事故による膝蓋骨骨折・半月板損傷など膝のケガは弁護士に相談
弁護士に相談するメリット
交通事故で何らかの後遺症が残った場合、弁護士に相談すると以下のメリットがあります。
- 後遺障害等級の認定を有利に進めることができる。
- 適切な金額の損害賠償金を請求することができる。
- 保険会社との示談交渉を代わりに行ってもらえる。
- 示談金の増額を図ることができる。
相場の金額を加害者側から得るには、弁護士に相談・依頼を行い、専門家である弁護士による適切な計算や請求が欠かせません。
そのため、まずは弁護士相談を行い、依頼の必要性や、依頼すべき弁護士であるかどうかの確認を行うべきでしょう。
どんな弁護士に相談すればいいのか、実際に弁護士に依頼して後悔したという人の意見も知りたいという方は関連記事を参考にしてください。
デメリットである弁護士費用については負担を減らすことができる
弁護士に相談・依頼する場合には、弁護士に支払う費用を気にする方が多いでしょう。
弁護士に相談・依頼することで生じる費用については、自身の保険に付帯している可能性がある、弁護士費用特約を利用することで負担を抑えることが可能です。
弁護士費用特約を利用すると、上限額まで弁護士に相談・依頼することで生じる費用を保険会社が負担してくれます。
実際に生じる負担額が上限額を超えることは多くないので、金銭的な負担を気にすることなく弁護士に相談・依頼ことが可能となるでしょう。
弁護士費用特約について詳しく知りたい方は『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事をご覧ください。
弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談するタイミングは、交通事故の発生後できるだけ早いタイミングが望ましいです。
交通事故の発生後、すぐに弁護士に相談することで、後遺障害の程度を調査し、後遺障害等級の認定を有利に進めることができます。
また、保険会社との交渉窓口を弁護士に一本化することで精神的負担も軽減されます。
弁護士への相談を希望する場合は、交通事故の案件に精通した弁護士に相談しましょう。
無料法律相談のご予約を年中無休で受付中
アトム法律事務所では、交通事故被害者を対象とした無料相談を電話やLINEで行っています。
交通事故案件の経験が豊富な弁護士に無料で相談することが可能です。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了