交通事故で泌尿器障害や人工肛門装着となった場合の後遺障害等級と慰謝料相場

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泌尿器障害

交通事故で泌尿器になんらかの障害が残ったり、人工肛門を装着することになった場合には、後遺障害等級の認定申請を行いましょう。

後遺障害であると認定されれば、認定された等級に応じて慰謝料や逸失利益を請求することが可能です。

本記事では、交通事故によって泌尿器障害や人工肛門となった場合に行うべきことについて解説しています。

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泌尿器障害を負ったときの後遺障害等級と慰謝料相場

交通事故における泌尿器障害には、神経の障害、腎臓の機能障害、尿管・膀胱・尿道の機能障害に分けることができます。

泌尿器障害の後遺障害等級と認定基準

膀胱直腸障害(神経の障害)

膀胱直腸障害とは、膀胱と直腸の機能が低下し、排尿や排便に障害をきたしてしまうものです。交通事故では主に脊髄損傷により、膀胱直腸障害を負うことが多いとされています。

膀胱直腸障害の症状は、麻痺の程度によって様々です。

主に、尿意や便意を感じない、尿が全く出ない、排尿や排便が困難、尿失禁などがあげられます。

膀胱直腸障害では、別表第1の1級1号、別表第1の2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号、14級9号認定となります。

詳しい後遺障害等級認定は下表の通りです。

等級内容
別表第1
1級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表第1
2級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

腎臓の機能障害

腎臓が機能障害を起こしている場合、腎臓の働きが低下してしまいます。その低下の程度によって、後遺障害等級が決まってきます。

腎臓は人体に二つありますが、事故により一部腎臓を失ってしまった場合の後遺障害等級をみていきましょう。腎臓の働きは糸球体ろ過値(GFR)によって判断されます。

一部腎臓を失い腎機能が低下した場合、後遺障害7級、9級、11級認定となる可能性があります。

一部腎臓を失った

等級糸球体ろ過値(GFR)による腎機能の低下の程度
7級GFRが30ml/分を超え50ml/分以下のもの
9級GFRが50ml/分を超え70ml/分以下のもの
11級GFRが70ml/分を超え90ml/分以下のもの
13級上記に該当しないもの

腎臓は失っていないものの腎機能の低下があった場合、後遺障害9級、11級、13級認定の可能性があります。

腎臓を失っていないもの

等級糸球体ろ過値(GFR)による腎機能の低下の程度
9級GFRが30ml/分を超え50ml/分以下のもの
11級GFRが50ml/分を超え70ml/分以下のもの
13級GFRが70ml/分を超え90ml/分以下のもの

尿管・膀胱・尿道の機能障害

尿管・膀胱・尿道の機能障害は、尿路変更術をしたか、排尿障害はあるか、畜尿障害はあるかなどの点で後遺障害認定の審査が行われます。

尿路変更術をおこなった場合

尿路変更術をおこなった場合は、非尿禁制型尿路変更術尿禁制型尿路変更術でまず等級が変わります。下表に後遺障害等級をまとめています。

非尿禁制型尿路変更術

等級内容
5級尿が漏れ出すことでストマ周辺に著しい皮膚のびらんが生じ、パッドの装着ができないもの
7級上記に該当しないもの

非尿禁制型尿路変更術をおこなった時点で、後遺障害7級認定の可能性があります。そして、尿の漏出により皮膚状況が極めて悪く、パッドが付けられない場合には5級認定となるでしょう。

尿禁制型尿路変更術

等級内容
7級禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
9級禁制型尿路変更術を行ったもの
11級外尿道口形成術を行ったもの
11級尿道カテーテルを留置したもの

排尿障害がある場合

排尿障害は、どれだけの残尿があるか、排尿障害の原因が膀胱か尿道狭窄によるもので後遺障害等級が分かれます。

等級内容
9級残尿が100ml以上であるもの
11級残尿が50~100mlであるもの
11級糸状プジーが必要
14級「シェリエ式」尿道ブジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術の必要があるもの

畜尿障害があるもの

畜尿障害は、膀胱に尿を貯めることが出来ないという障害です。

持続性尿失禁がある場合は後遺障害7級、尿失禁がなく頻尿の場合は11級認定となります。

尿失禁の中でも、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁がある場合パッド着用の必要性や1日の交換頻度によって後遺障害等級が下表のとおり分かれます。

等級終日のパッド着用交換
7級必要必要
9級必要不要
11級不要だが下着が濡れてしまう不要

泌尿器障害が後遺障害認定された場合の慰謝料

交通事故により泌尿器障害が残ってしまった場合、後遺障害等級認定を受けることで後遺障害慰謝料の請求が可能です。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級ごとに一定の相場が定められています。

等級 相場額
1級・要介護2,800万円
2級・要介護2,370万円
1級2,800万円
2級2,370万円
3級1,990万円
4級1,670万円
5級1,400万円
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

弁護士が後遺障害に対する損害算定をおこなうとき、後遺障害慰謝料は上表の金額が相場といえます。

しかし、相手の任意保険会社はこうした相場ではなく、あくまで自社基準で金額を提示してくると予想されるので、その金額を受け入れるべきではありません。

泌尿器障害が残って後遺障害申請をする場合や、すでに後遺障害申請によって等級認定を受けている場合には、弁護士に相談して適正な賠償金相場を確認しておきましょう。

なお、後遺障害慰謝料のほかにも、入通院慰謝料や逸失利益といった賠償金を請求できる場合があります。

そうした金額の概算を算出するには以下の慰謝料計算機が便利です。個別の事情を反映するものではなく相場観を掴むものとして、ぜひご利用ください。

人工肛門による後遺症の後遺障害等級と慰謝料相場

交通事故により人工肛門を装着せざるを得なくなった場合、人工肛門を装着することで生じる後遺症の症状が後遺障害に該当するなら、慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求することができます。

後遺障害と認められるには「後遺障害等級認定基準」で定められている要件を満たすことが必要です。

人工肛門の後遺障害等級と認定基準

人工肛門の装着が後遺障害として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 交通事故が原因で人工肛門を装着する必要がある。
  2. 人工肛門の装着により、特に軽易な労務以外の労務に服することがきない、または、軽易な労務以外の労務に服することができない。

これらの要件を満たす場合、人工肛門は後遺障害として認められ、後遺障害等級が認定されます。後遺障害等級が認定されると、慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求が可能となるのです。

人工肛門の後遺障害等級

交通事故により人工肛門を装着することとなった場合には、後遺障害等級として5級または7級が認定される可能性があります。認定の判断は以下のようになされるでしょう。

  • 人工肛門の装着により小腸内容が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、パウチ等が装着できないなら、特に軽易な労務以外の労務に服することがきない状態に該当するため5級とされる
  • 人工肛門の装着により5級に該当しない場合には、軽易な労務以外の労務に服することができないに該当するので7級と認定される

人工肛門が後遺障害認定された場合の慰謝料

人工肛門の装着が後遺障害と認められた場合には、後遺障害7級ならば1,000万円、5級ならば1,400万円を請求できます。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて算定され、具体的な金額は以下の通りです。

後遺障害等級慰謝料額
5級1,400万円
7級1,000万円

後遺障害慰謝料以外にも、治療のために入通院を行った期間に応じて、入通院慰謝料を請求することも可能です。入通院慰謝料の計算については、下記の慰謝料計算機によっておおよその金額がすぐにわかります。もっとも、個別の事情までは反映できないため、目安程度に考えておいてください。

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定を受けるためには、申請手続きをおこなう必要があります。後遺障害等級認定の申請をしたい場合は、相手の任意保険会社にその旨を申告してください。

後遺障害等級認定の申請方法は2つある

後遺障害等級認定の申請には、相手の任意保険会社に一任する方法と、被害者自身で直接行う方法の2つがあり、どちらも選べます。

後遺障害等級認定を受けられる見込みが高いときや、後遺障害等級について「この等級で認定されるだろう」と推定される場合には、相手の任意保険会社に任せても良いでしょう。

しかし、そもそも後遺障害等級認定を受けられるのかが微妙だったり、何級で認定を受けられるのかがポイントとなるような場合には、被害者自身でおこなう方法をおすすめします。

被害者自身でおこなう申請方法を「被害者請求」といいます。

後遺障害等級認定の流れと主な必要書類

後遺障害等級認定の申請は、必要書類を損害保険料算出機構に提出することで行います。必要書類には以下のようなものがあげられます。

  • 医師の診断書
  • 後遺障害診断書
  • 診療報酬明細書
  • 事故発生状況報告書
  • 検査結果を示す書類

必要書類を損害保険料算出機構に提出すると、後遺障害等級の認定審査が開始されます。

後遺障害等級の認定には、1か月から3か月程度かかることが多く、認定結果は、郵送で通知される見込みです。

相手の任意保険会社に任せる場合には、被害者自身の手間は少なく済みます。

しかし、被害者自身で後遺障害等級認定の申請手続きをする場合、様々な書類が必要です。効率よく準備をしないと時間もかかりますし、必要な書類の抜け漏れも起こってしまう可能性があります。

後遺障害等級認定の申請手続きは弁護士に相談を

被害者自身で後遺障害等級認定の申請をする場合は、その具体的な流れや要点を弁護士に相談してみましょう。

弁護士は後遺障害に関する知識と経験を活かして、適切なアドバイスが可能です。

弁護士に依頼すると、後遺障害等級認定の申請手続きについてサポートを受けることができるため、被害者自身の負担を減らしつつ、適切な後遺障害等級の認定を受けやすくなるでしょう。

特に、膀胱直腸障害は交通事故から時間が経過した後に症状が出ることがあり、症状の発生と交通事故の因果関係が問題となることがあります。

このような問題が生じた場合には、専門家である弁護士に相談し、因果関係の証明方法も含めてサポートを受けるべきといえるでしょう。

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交通事故で泌尿器障害や人工肛門装着となった人の疑問3選!

交通事故で泌尿器障害や人工肛門装着となった人が抱きやすい3つの疑問を弁護士が回答します。

(1)おむつの費用は請求できる?

交通事故後の泌尿器障害がのこり、おむつが必要になった場合、その費用の請求ができます。

また、重い障害によって寝たきりなってしまった場合、将来介護費の請求が可能です。

将来介護費としてはおむつ代を含め、介護サービス代、居宅のリフォーム代などが必要に応じて認められます。

将来の介護費について詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故で介護費用が請求できる2ケース|計算方法と裁判例から金額もわかる』も参考になります。

(2)どんな損害について請求できる?

交通事故により泌尿器障害や人工肛門装着となった場合には、後遺障害慰謝料や将来介護費以外にも、以下のような慰謝料や損害について損害賠償請求が可能です。

特に、逸失利益は計算方法が複雑であり高額になりやすいことから、相手方の任意保険会社と金額に関して争点となりやすいでしょう。

ご自身が請求できる損害賠償金の相場額を知りたい場合には、弁護士に相談して計算してもらうのがもっとも確実です。

(3)他にも後遺症が残っているときは?

泌尿器障害や人工肛門装着以外にも後遺症がある場合、後遺障害等級が併合されて認定を受けられる可能性があります。併合は系列の異なる後遺障害が複数あるときに最も重い等級を繰り上げることです。

たとえば、併合ルールのひとつに、系列の異なる後遺障害8級以上の障害が2つ以上認定されたなら、重い方の後遺障害等級を2級繰り上げるものがあります。後遺障害5級と7級ならば、重い方の5級を2級繰り上げて、併合3級となるのです。

後遺障害等級の認定基準や併合ルールについては、関連記事でより詳しく解説しています。

交通事故による泌尿器障害や人工肛門装着については弁護士に相談

弁護士に相談するメリット

交通事故により泌尿器障害が生じたり、人工肛門装着が必要となった場合には、後遺障害等級認定の申請が必要となり、請求できる損害賠償額も高額になりやすいでしょう。

そのため、相場の金額を請求するためには専門知識を有する弁護士へに相談する必要性が高いといえます。

弁護士に相談・依頼するメリットは以下の通りです。

  • 適切な後遺障害等級の認定を受けられる
  • 保険会社との交渉を一任できる
  • 交渉に必要な証拠の収集を手伝ってもらえる
  • 示談金を相場に近い金額まで増額できる可能性が高まる

弁護士に相談・依頼することで、自身の負担を減らしつつ、相場に近い損害賠償金を得られる可能性が高まるでしょう。

正式な依頼時の弁護士費用について

弁護士に相談の上、依頼するとなると、弁護士に支払う費用の負担が気になる方は多いでしょう。

弁護士費用が気になる方は「弁護士費用特約」の有無をご確認ください。

弁護士費用特約とは、ご自身で加入している任意保険に付帯されている特約のことです。

具体的な補償額は約款しだいですが、よくある内容としては、弁護士費用を300万円まで、法律相談料を10万円まで補償してくれるため、弁護士費用の負担を大きく軽減できるでしょう。

また、ケガをした本人名義でなくても、一定の範囲の親族名義であれば補償の対象になれる可能性もあります。

以下のように、弁護士費用特約の補償対象者は、同居している配偶者や子ども、両親、別居している未婚の子までが対象となる可能性があるため、約款を確認してみてください。

弁護士費用特約の補償対象者

弁護士費用特約について詳しく知りたい場合は『交通事故の弁護士費用特約を解説|使い方は?メリットや使ってみた感想も紹介』の記事をご覧ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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