交通事故で保険会社が嫌がることは本当にしてもいい?弁護士が解説

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交通事故被害者になり、痛い思いをして通院している方へ。
加害者側の保険会社とのやりとりが、さらなるストレスになってはいないでしょうか。

被害者の方もある程度、相手の保険会社が嫌がることを知っておくことで、保険会社とのやりとりをスムーズに進められるかもしれません。

一般的に、保険会社が嫌がることとして「した方がいい・してもいいこと」は以下の通りですが、反対に「しない方がいいこと」もあります。

した方がいい・してもいいこと

  1. 弁護士へ依頼する
  2. 適切な後遺障害等級の認定を受ける
  3. 示談書にすぐサインしない
  4. 判例を用いて反論をする
  5. 医師の意見を用いて反論する
  6. そんぽADRセンターに苦情を申し立てる
  7. 交通事故紛争処理センターに和解あっ旋を申し立てる

しない方がいいこと

  1. 保険会社から送られた書類を放置する
  2. 保険会社からの連絡に返信しない
  3. 保険会社に秘密で通院する
  4. 事故加害者に直接連絡する
  5. 高額すぎる請求を行う

事故被害者の方が交通事故に関する正しい知識を持っていれば、保険会社の言いなりにならず、対等に示談交渉できるようになります。

本記事では、保険会社が嫌がり、適正な慰謝料を獲得できる交渉術について徹底解説をしていきます。また、反対に保険会社から嫌なことをされた場合の対処法も紹介するので、最後までご確認ください。

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【した方がいい】保険会社が嫌がること7選

(1)弁護士へ依頼する

保険会社が最も嫌がることは、交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼してしまうことです。

保険会社が嫌がるのには、以下のような理由があります。

  • いざとなると訴訟されるというリスクにさらされる
  • (訴訟のリスクがあるため)慰謝料などの損害賠償金額を高い基準で計算せざるをえなくなる

基本的に任意保険会社は、自社の利益のため、被害者への支払いがなるべく少なくなるように行動しています。

しかし被害者が弁護士に依頼すると、いざとなれば訴訟されるというおそれから、被害者へ適切な金額の支払いをするように方針を転換してきます。

具体的に弁護士が介入することで慰謝料がいくらくらい増額されるかや交通事故を得意とする弁護士の選び方などの詳細については、以下の記事をご参照ください。

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弁護士費用特約の利用を保険会社は嫌がる?

弁護士費用特約を利用できる場合は、金銭的な負担なく安心して弁護士に依頼でき、交通事故直後から弁護士のサポートを受けられるケースが通常であり、利用するデメリットはありません。なお、弁護士費用特約は契約者本人だけでなく、その家族も利用できる場合があります。

もっとも、注意点として、被害者側が加入する保険会社が、弁護士費用特約が利用できるケースであるにもかかわらず、利用を嫌がる場合があることがあげられます。

保険会社としては、弁護士費用特約を契約者が利用しない方が、保険金の支出を抑えられるため、自社にとっては利益となるからです。

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保険会社が弁護士特約を嫌がる3ケース!対処法と特約を使うべき事故

(2)適切な後遺障害等級の認定を受ける

交通事故では、一定の治療期間が経過すると、医師から症状固定(これ以上通院を続けても症状が回復しないこと)の診断を受けることがあります。

その際に残存する後遺症について、適切な後遺障害等級の認定を受けることを保険会社は嫌がります。

後遺障害等級は、相手方の自賠責保険に申請をし、何級に該当するか(もしくは非該当)が認定されるという流れになります。

被害者が後遺障害等級の認定を受けると、保険会社は後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益(後遺障害の仕事への影響による将来の収入減に対する補償)といった損害賠償項目の支払いも必要となります。

さらに、該当する後遺障害等級によって、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の支払額にも大きな違いが出てくるので、保険会社としては被害者が適切な後遺障害等級の認定を受けることを嫌がるのです。

(3)保険会社が用意した示談書にすぐサインしない

被害者の方の治療が終了し、損害の範囲が確定してしばらく経つと、保険会社が「示談書(免責証書・損害に関する合意書)」と書かれた書類を送ってくることがあります。

この書類には「保険会社は被害者に〇万円支払う」ということが記載されているため、サインして返送したくなってしまいますが、示談書にすぐにサインしてはいけません。

なぜならその書類は、保険会社が被害者への支払いをなるべく抑えようという方針のもと作成されています。

つまり、被害者への支払い金額が低くなる計算方法で算定されているおそれがあることになります。

うっかりサインして返送をし、示談成立させると、「安く解決できた」と自社に有利な条件で早期に示談をまとめたいと考えている保険会社を喜ばせてしまうかもしれません。

示談書が送られてきたら慰謝料を増額するチャンス?

サインさえしなければ、示談書が送られてくること自体は、慰謝料を増額するチャンスです。

なぜならその段階で弁護士に相談することで、「この事前提示があったのなら、慰謝料は〇円程度増額する可能性があります」という具体的なアドバイスを受けることができるからです。

弁護士としても、すでに被害者の方の治療と損害額の計算を終わっているということで、よりスピーディーに解決しやすい事案になります。

もしも保険会社から示談書が送られてきたら、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

(4)判例や客観的証拠を用いて反論をする

保険会社は、事故被害者の対応のプロです。

そのため、被害者の方が主観的な痛みや苦しみを訴えても、それだけで意見を動かすということは基本的にありません。

一方で、過去の判例やドライブレコーダー、医療記録などの客観的証拠を提出し、根拠のある内容での主張であれば、保険会社といえど簡単には退けられません。

そのため、症状固定の時期や過失割合が争いになった場合には、過去の判例や客観的証拠を用いて反論されることを保険会社は嫌がります。

もっとも、そのように強力な証拠は、一般人にはなかなか集めにくいものです。

弁護士であれば、各保険会社やデータベース、検察庁にアクセスして、被害者の方に有利な証拠を収集することができます。

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(5)医師の意見を用いて反論する

通院していると、保険会社から「〇月で治療を終了していただけますか」という打診が来ることがあります。

そのようなとき、被害者から「まだ痛い」「もう少し通院したい」という主観的な反論をしても、あまり聞いてもらえません。

しかし、被害者の担当医から「まだ痛みが残っていると思われる」「〇月まで通院させた方がいい」という医師の専門的な見解や指示があれば、保険会社としてもそれを考慮せざるをえなくなり、治療期間を延長できるケースもあります。

そのような意見を保険会社に伝えてほしい、とご担当の先生に依頼してみるのも有効です。

もっとも病院や医師の先生によっては、そのような対応をしてもらえなかったり、意見書の作成に費用が発生したりしますので、注意が必要です。

(6)そんぽADRセンターに苦情を申し立てる

あまりに保険会社の担当者の対応がひどい場合、そんぽADRセンターに苦情を申し立てることで、担当者を変更してもらうことができます。

かなり強力で、保険会社にも嫌がられる方法ですが、以下のようなリスクもあります。

  • 変更された担当者が前任より良い担当者とは限らない
  • 保険会社から警戒されるおそれがある
  • 保険会社が担当者ではなく弁護士をたててくるおそれがある
  • そんぽADRの会員会社となっていない共済、一部保険会社には効果が薄い
    (JA共済、タクシー共済、チューリッヒ損害保険株式会社、Chubb損害保険株式会社など)

思い切ってお電話される前に、一度弁護士などにご相談されるのがよいでしょう。

(7)交通事故紛争処理センターに和解あっ旋を申し立てる

示談交渉がもめた際に、交通事故紛争処理センターに和解あっ旋の申立てを行うことは、嫌がる保険会社は多いかもしれません。

なぜなら申立てがなされると、保険会社も反論書を作成したり、遠方の紛争処理センターまで出向かなければならないなど、手間が増えるためです。

また、紛争処理センターでの和解あっ旋は、センターが選任した担当弁護士の仲介による当事者双方の話し合いが基本であり、保険会社側は、担当弁護士のあっせん案は拒否できるものの、申立人(被害者)が同意した審査会の裁定結果は、妥当でないと思っても拒否できないからという理由もあります。

もっとも、申立てを行ったり和解案を検討する手続きを被害者本人が十分に行うのは困難を伴います。

さらに和解案を拒否した場合の審査手続は、元裁判官や弁護士、学者などの権威のあるメンバーで構成される審査会で行われるため、弁護士であってもかなりの準備が必要なほどです。

紛争処理センターへの申立てを検討している場合でも、まずは弁護士にご相談されるのがいいでしょう。

なお、自転車と歩行者の事故や自転車同士の事故については、交通事故紛争処理センターを解決方法として利用できないので、その点には注意が必要です。

【しない方がいい】保険会社が嫌がること5選

(1)保険会社から送られた書類を放置する

保険会社から一方的に書類が送られてくるような場合、署名してもいいかご不安になってしまい、つい放っておいてしまうかもしれません。

しかし、基本的には保険会社から届く書類は放置せず対応した方がいいです。

書類を放置することで、手続きが進められなくなるという意味で保険会社が嫌がるかもしれませんが、逆に治療費の支払いが遅れたりなど不利な状況になる場合があります。

書類の名前(一例)目的
同意書
個人情報の取り扱いに関する同意書
主に治療費の支払い手続きのため
振込先口座指定書示談金、先払い金の振り込みのため
休業損害証明書休業損害の支払い手続きのため
通院交通費明細書交通費の支払い手続きのため
第三者行為災害届(健康保険で通院している場合)
治療費の支払い手続きのため

保険会社に【すぐ返送してはいけない】書類とは?

「示談書」「免責証書」「損害に関する承諾書」などと書かれた書類だけは例外的に、すぐに署名して返送してはいけません。

そういった書類には、「この書面に書かれてある以上の請求をしない」という文言が含まれており、署名して返送してしまうと、書面にある以上の損害賠償ができなくなってしまいます。

「示談書」「免責証書」「損害に関する合意書」がお手元に届いたら、まずは弁護士にご相談ください。

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(2)保険会社からの連絡に返信しない

保険会社の担当者とのやりとりが嫌になってしまっても、長期間返信や返事を怠ると被害者にとり不利な結果となることがあります。

「ご返信いただけなかったので、ご同意いただけたものと判断します」
「治療対応の打ち切りを決定させていただきました」
「ご連絡がございませんでしたので、こちらも迷惑を被っています」

実際にこのように言われ、担当者の対応が強硬化したり、被害者が知らないうちに不利な決定がくだされたりします。

納得がいかなくても、連絡を無視することはせずに「少し待ってください」「弁護士に依頼しますので、あとはそちらとやりとりしてください」など、せめて返事を保留にすることを伝えておきましょう。

(3)保険会社に秘密で通院する

保険会社から治療費を渋られたり、早く治療を終わらせるような圧があると、通院するのもしんどいと思われるかもしれません。

しかし、保険会社に申告していない病院や整骨院にこっそり通院したり「通院は終了しました」と嘘をついて通院を続けたりしてはいけません。

なぜなら、勝手に通院すると「必要がないのに勝手に通院した」というようにみなされ、適正な慰謝料や治療費の補償が受け取れなくなってしまうためです。

通院先を変えるとき・治療を続けたいと思っているときは、その旨を保険会社に伝えるようにしましょう。

(4)事故加害者に直接連絡する

保険会社の担当者が高圧的だったり連絡が遅かったりして、いっそ加害者に連絡を取った方が早く解決するのではないか、と思っても、事故加害者に直接連絡してはいけません。

多くの場合、加害者は「保険会社に示談交渉を代行してもらっている」立場です。

被害者が加害者に直接連絡するというのは、例えるなら、被害者に弁護士がついているにもかかわらず、保険会社が弁護士を無視して被害者に直接連絡してくる、というような事態です。

直接の連絡に驚いた加害者が「やはりあの被害者へは1円も支払いたくない」「過失割合を妥協したくない」という風に態度を硬くしてしまうかもしれません。

すると、仮に保険会社が穏便に示談交渉を進めようとしていても、「加害者本人の了承が得られない」という理由で、示談がまとまらなくなる恐れがあります。

また、加害者に直接連絡してしまうと、保険会社は今後のトラブルを避けるため、顧問弁護士に対応を任せてしまい、その後の示談交渉がより困難になる恐れもあります。

(5)高額すぎる請求を行う

「後遺障害には認定されなかったけど痛みは確かにあるから、慰謝料に100万円上乗せしてほしい」
「確かによそ見していたけど、認めるのは嫌だから過失は0で請求してほしい」
「修理費ではなく新車に交換してほしい」

このような、過剰に高額になる法的に不当な請求を行うのは避けるべきです。

保険会社は、基本的には訴訟を避けようとします。

しかし、あくまで「訴訟するより示談した方がコストがかからない」と思える範囲までの話です。

訴訟になったら認められないような主張をもとに高額すぎる請求に固執すると、保険会社に「この請求のとおりに示談するくらいなら、訴訟をした方がいい」と思われてしまうおそれがあります。

訴訟になると、解決までに時間・費用・手間がかかってしまいます。

また、治療期間や通院日数を水増しするなどして不正に慰謝料請求したり、事故で高級品が壊れたと嘘をついて物損請求したりすると詐欺罪に問われるおそれもあります。

請求を行うときは弁護士と打ち合わせのうえ、適正な金額を請求するようにしましょう。

反対に保険会社が嫌がることをしてきたらどうする?

前提として、事故加害者の保険会社は被害者の味方ではありません。

もちろん、保険会社の担当者は被害者の方の治療や示談がスムーズに進められるよう対応してはくれます。

しかし、その目的は被害者への支払いをなるべく抑え、被保険者(加害者)を守ることです。

その目的は保険会社の性質上、仕方のないものです。

「相手の保険会社は自分の味方ではない」「自分が満足するまで治療させてくれるわけではない」ということをまず割り切るようにしましょう。

保険会社への対応は弁護士にお任せください

「書類はすぐ返送した方がいい」「連絡は無視しない方がいい」とわかってはいても、実際のところ保険会社とのやりとりは億劫なものです。

自分に怪我をさせてきたくせに、大切な車を傷つけたくせに偉そうに、と保険会社に腹を立ててしまい、ついついご自身に不利になる行動をしてしまう方も多くいらっしゃいます。

そのようなときは、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士に依頼することのメリットとしては、よく慰謝料の増額が挙げられます。

しかし、それと同じかそれ以上に、保険会社とのわずらわしいやりとりを一任できる、というのも依頼者の方にとってメリットとなるかもしれません。

アトム法律事務所では、下記対応窓口からお電話やLINE、メールにて365日・24時間いつでも無料相談の予約受付をしています。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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