保険会社が弁護士特約を嫌がる3ケース!対処法と特約を使うべき事故

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なぜ保険会社は弁護士特約を嫌がる

弁護士特約(弁護士費用特約)とは、弁護士に支払う法律相談料と弁護士費用を、被害者が加入する任意保険会社が一定額まで負担してくれる特約です。

非常に心強い特約ですが、ケースによっては稀に、保険会社が弁護士特約の利用を嫌がることがあります。

保険料を払っているため、保険会社に遠慮して弁護士特約の利用を控える必要はありませんが、事前に利用を嫌がるケースや対処法を知っておくことで、円滑に利用手続きが進められるでしょう。

この記事では、保険会社が弁護士特約を嫌がるケースや嫌がられたときの対処法、積極的に弁護士特約を使って弁護士に依頼すべきケースを解説します。

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保険会社が弁護士特約を嫌がるケース

なぜ保険会社は弁護士特約を嫌がる?

保険会社が弁護士特約の利用を嫌がるのは、被害者のために弁護士費用を支払うことは、会社にとって出費になるからです。

弁護士特約で保険会社が負担してくれる金額は、法律相談料が10万円、弁護士費用が300万円を上限としていることが多いです。

任意保険会社も営利団体なので、なるべく金銭的負担を抑えようと考えます。

嫌がるケース(1)物損事故・軽微な事故・示談交渉で争いがない

物損事故や軽微な人身事故の場合、以下の理由からあまり揉めることなく示談が成立することがあります。

  • 物損事故の損害賠償金は基本的に領収書などで金額を証明できるので、争う余地がないことが多い
  • 軽微な人身事故はもともと損害賠償額が低いため、相手方もあまり示談交渉で争う姿勢を見せないことがある

保険会社は「とくに争いなく交渉できるのだから、わざわざ保険会社のお金で弁護士を雇わないでほしい」という思いから、弁護士特約の利用を嫌がる傾向にあるとされます。

嫌がるケース(2)被害者自身に過失がある

被害者側に過失がある場合、弁護士を立てなくても保険の「示談代行サービス」によって、自身の保険担当者に示談交渉をしてもらうことができます。

保険会社からすれば、示談交渉で弁護士を立てる費用を出すよりも、自社の担当者が示談交渉をした方が出費が少なくて済みます。

こうしたことから、交通事故の被害者側に過失がある場合も、保険会社は弁護士特約の利用を勧めないことがあるのです。

示談代行サービスによって結果的に示談金が増額される可能性も十分にありますが、以下の理由から、最大限の増額は期待できないことが多いです。

増額が期待できない理由

  • 保険会社間の今後の付き合いを見据え、突き詰めた交渉をしてもらえないことがある
  • 任意保険会社が用いる示談金の算定基準より、弁護士が用いる示談金の算定基準のほうが、示談金相場は高額
慰謝料金額相場の3基準比較

弁護士なら、依頼者の利益最大化を目指した活動が可能です。よって、可能な限り多くの示談金を得たい場合には、弁護士特約を利用して弁護士を立てることをおすすめします。

弁護士に依頼して慰謝料がどれだけ増額されるか知りたい方は、『交通事故の慰謝料は弁護士基準(裁判基準)で請求!相場と増額成功のカギ』の記事をご確認ください。

嫌がるケース(3)弁護士への支払額を気にしている

保険会社が弁護士を嫌がる理由としては、被害者が依頼したい法律事務所の費用体系と、自社の弁護士特約の支払基準の差額を気にしている可能性があります。

弁護士の報酬は、法律事務所ごとの設定額がある一方で、弁護士特約にも支払基準が設定されているため、保険会社は差額が心配なのです。

つまり、保険会社は「自分たちの約款の支払基準を大きく上回る報酬を請求されるのではないか」と心配している可能性があります

多くの保険会社の約款は、日本リーガル・アクセス・センターによる「LAC基準」に沿った支払基準を設定していることが多いです。しかし、すべての弁護士がこのLAC基準に従っているわけではなく、独自の基準で費用を請求する弁護士事務所も多くあります。

LAC基準を超える弁護士費用が請求された場合、保険会社はその超過分を支払わないため、通常は被害者が追加の費用を負担します。

弁護士費用を負担しなければいけなくなった被害者とのトラブルを避けるため、保険会社は弁護士特約利用を渋ることがあるのです。

保険会社に弁護士特約を嫌がられたときの対処法

保険会社から弁護士特約の利用を嫌がられたとしても、約款上認められている以上、利用を諦める必要はありません。ここでは、嫌がられたときの対処法を解説します。

弁護士特約の使用は保険会社に遠慮しなくて良い

たとえ保険会社に弁護士特約の利用を嫌がられても、本記事内「弁護士特約が使えないケース」にさえ該当しなければ特約を使うことは可能です。

弁護士特約分が含まれた保険料を納めている以上、保険会社に遠慮する必要はありません。「弁護士特約を使うと決めた」とはっきり伝え、利用の手続きを進めましょう。

なお、弁護士特約を使用することで保険の等級が下がったり、翌年の保険料が上がったりすることはありません。

弁護士特約を確認する

保険会社から「このケースでは弁護士特約は使えない」と言われた場合、まずは本当に使えないのかを確認しましょう。特約を利用させないために、あたかも使えないように話しているだけの可能性もあります。

確認する際は、保険会社のパンフレットやホームページだけでなく、保険証券や約款の内容を確認することが重要です。

保険会社に弁護士特約が使えない理由を聞く

保険会社から利用を渋られた場合は、その理由をはっきりと確認しましょう。「使えない」と言われたら、「約款のどの部分に基づいて使えないのか」を具体的に説明してもらいます。

特に、以下のような回答があった場合は要注意です。

  • 損害が小さいから必要ない
  • 示談交渉が順調だから不要
  • 当社ではこういうケースでは認めていない

これらの理由は、約款上の制限とは異なる保険会社側の判断に過ぎません。

担当者と話しても、らちが明かないと感じた場合には、カスタマーセンターに相談することも検討しましょう。

交通事故に強い弁護士に相談する

最も確実な対処法は、交通事故に精通している弁護士に相談することです。このとき注意していただきたいのが、保険会社から紹介される弁護士にこだわる必要は全くないという点です。

確かに保険会社指定の弁護士であれば手続きがスムーズに進むかもしれません。しかし、より重要なのは、被害者の利益を最大限守ってくれる弁護士を選ぶことです。

交通事故の解決実績が豊富で、弁護士特約の利用に慣れている弁護士であれば、保険会社との交渉も適切に進めてくれます。交通事故事案について、多くの弁護士は初回相談を無料で受け付けていますので、まずは相談してみることをおすすめします。

弁護士特約は積極的に活用すべき|3つのメリット

交通事故に関して、弁護士特約を利用することで得られるメリットは以下の3つです。

弁護士特約のメリット

  1. 弁護士費用を気にせず依頼できる
  2. 増額された示談金を全額受け取れる
  3. 加害者や保険会社とのやり取りの負担を軽減できる

(1)弁護士費用を気にせず依頼できる

軽微な事故や物損事故の場合、弁護士に依頼すると、示談金額よりも弁護士費用の方が高額になり、赤字が出てしまうことがあります。これを「費用倒れ」といいます。

費用倒れのリスクが大きい場合、弁護士から受任を断られてしまうこともありますが、弁護士特約を使えば、費用倒れや弁護士から断られることを気にせず相談・依頼できます。

(2)増額された示談金を全額受け取れる

交通事故の示談交渉において、弁護士が介入することで示談金が大幅に増額されるケースが多くあります。特に慰謝料については、保険会社の提示額から2~3倍程度増額されることもあります。

しかし弁護士特約を使わずに依頼した場合、この増額分から弁護士費用を支払う必要があります。示談金が大幅に増額できても、全額受け取れるわけではないのです。

一方、弁護士特約を利用すれば、弁護士費用は基本的に0円なので、増額された示談金を全額受け取ることができます。

関連記事『交通事故慰謝料って増額できる?弁護士への依頼で増額した実例5選』では、弁護士特約を使って慰謝料が増額した実例を解説しています。あわせてお読みください。

(3)加害者や保険会社とのやり取りの負担を軽減できる

交通事故後の対応は、以下のように多岐に渡ります。

  • 加害者側の保険会社とのやりとり・示談交渉
  • 休業損害の申請
  • 給付金請求
  • 後遺障害等級認定の申請
  • 治療費打ち切りへの対応 など

これらの手続きは専門的な知識が必要になるため、被害者本人が行うには大きな負担となってしまうでしょう。

また、事故の加害者が不誠実な態度を取ったり、保険会社の対応が高圧的だったりすることで、精神的なストレスを感じることも少なくありません。

弁護士特約を利用することで、これらの手続きや交渉を全て専門家に任せることができます。その結果、被害者は精神的・時間的な負担から解放され、治療に専念することができます。

【補足】弁護士特約にはデメリットがない

弁護士特約の利用を躊躇する方の中には「何かデメリットがあるのでは」と心配される方もいらっしゃいますが、実際にはデメリットと呼べるものはほとんどありません。

弁護士特約に関してよくある心配

  • 利用したら保険料が上がるのでは?
    →等級には影響せず、翌年の保険料は変わらない
  • 保険会社との関係が悪くなるのでは?
    →正当な権利の行使なので問題ない
  • 利用手続きが面倒なのでは?
    →弁護士が手続きを代行できる
  • 解決までに時間がかかるのでは?
    →むしろ適切な解決が早まることもある

弁護士特約に加入する際の保険料負担を気にされる方もいますが、これは弁護士に特約なしで依頼した場合の費用と比べると、非常に少額です。

このように、弁護士特約の利用にはデメリットと呼べるものはほとんどありません。むしろ、せっかく加入している特約を使わないことで、本来受けられるはずの補償を受けられなくなってしまう可能性があります。

まだ交通事故で弁護士に依頼するデメリットが気になる方は、『交通事故で弁護士依頼するデメリット4つ!依頼すべきか判断する基準』をお読みください。さらに詳しく解説しています。

特に弁護士特約を使うべきケース

では交通事故に遭った場合、どのようなケースで弁護士特約を使うべきなのでしょうか。

ここでは、特に弁護士特約の活用が効果的な4つのケースについてご説明します。

事故が軽微なケース

「軽い事故だから弁護士は不要では?」と考える方も多いかもしれません。しかし、実は軽微な事故こそ、弁護士特約の活用が効果的なケースといえます。

その理由は、軽微な事故を自己負担で弁護士に依頼すると「費用倒れ」になるリスクが高いためです。

軽微な事故は獲得できる示談金額や、弁護士が介入することで増額する金額が低い傾向にあるため、自己負担で弁護士依頼するとかえって損をしてしまうおそれがあるのです。

軽微な事故の場合は弁護士特約を使って、費用倒れを心配することなく弁護士依頼しましょう。

被害者に過失がないケース

被害者に過失がない「もらい事故」の場合、被害者が加入する保険会社の示談代行サービスを利用できません。

示談代行サービス

自身の保険会社に事故の示談交渉を任せられるサービス。自力での交渉よりは良い結果が期待できるが、示談金額の増額に限界があるといったデメリットもある。

つまり、被害者に過失がない事故では、被害者自身が加害者側の保険会社と直接交渉しなければならなくなります。

そのため、弁護士特約を利用して弁護士に示談交渉を任せて、負担を軽減しつつ高額な示談金獲得することをおすすめします。

加害者が無保険のケース

加害者が任意保険に未加入だった場合は、加害者本人と示談交渉することになります。

こういった場合は、加害者に理屈が通じないこともあり、交渉が難航するケースがよく見られます。さらに、示談金を支払える資産を持っていないことも少なくありません。

示談金を確保するためには、財産の差し押さえや分割払いの検討など、法的な専門知識に基づいた対応も見据える必要があります。

そのため、加害者が任意保険に未加入の場合は早期の段階から弁護士特約を利用して、弁護士に交渉を任せましょう。

高級車が損傷したケース

交通事故で高級車が損傷した場合、修理費用だけでなく「評価損」という賠償金も請求できます。

評価損とは、事故歴や修理歴により、将来の売却時に車の価値が低下することへの補償です。

高級車の場合はこの評価損が高額になりやすいのですが、被害者が自分で示談交渉を行った場合、保険会社が評価損の支払いに応じることは少ないです。

そのため、弁護士特約を利用して費用の心配なく弁護士に依頼することで、評価損を含めた適正な賠償金を請求できるようになります。

弁護士特約を使えるか迷ったらここを確認!

実は弁護士特約が使えるケース

以下のようなケースでは、「弁護士特約は使えない」と勘違いされがちですが、実は問題なく利用できます。

実は弁護士特約が利用できるケース

  • 被害者の過失がない「もらい事故」
  • 被害者と加害者の保険会社が同一の事故

被害者に過失がない場合、一部の任意保険や示談代行サービスは使えませんが、弁護士特約は問題なく利用できます。

示談代行サービスが使えないと被害者自身で示談交渉するしかないため、むしろ積極的に弁護士特約を使って、弁護士に依頼することをおすすめします。

また、被害者と加害者の加入する任意保険会社が同じ場合でも、弁護士特約は利用できます。

加害者と同じ保険会社でも、被害者が示談交渉で不利になることは基本的にないのでご安心ください。

保険会社の紹介してくる弁護士が、被害者にとって不利な示談を結ぶようなこともありませんが、不安な場合は自分で弁護士を探すと良いでしょう。

関連記事

交通事故の弁護士の選び方は?ランキングや評判・口コミの過信に注意

弁護士特約が使えないケース

以下のようなケースでは、弁護士特約が利用できません。

弁護士特約が利用できないケース

  • 被害者に故意・重大な過失がある
  • 自動車やバイクが関わっていない
  • 損害賠償請求の相手が親族
  • 事故発生後に弁護士特約に加入した
  • 弁護士特約が使えない車両での事故
  • 自然災害や戦争・暴動が原因
  • 自損事故

弁護士特約が使えない交通事故に関しては、『弁護士特約が使えない交通事故とは?特約なしの対処法・あとから加入は可能?』で詳しく解説しています。

もし弁護士特約が利用できなくても、弁護士が介入することで大幅な増額が期待できる場合は、弁護士依頼を検討すべきです。まずは弁護士への無料相談で、費用倒れの心配がないか確認してみましょう。

必要だと感じたら弁護士特約を積極的に活用しよう

特に、以下のようなケースでは弁護士特約の利用を保険会社に嫌がられやすいです。

  • 物損事故・軽微な事故・示談交渉で争いがない
  • 被害者自身に過失がある
  • 弁護士への支払額を気にしている

しかし、弁護士特約の利用は正当な権利なので、約款上認められている限り、必要だと感じた際には遠慮せずに利用するべきです。

弁護士特約を利用することで、弁護士費用の心配なく弁護士に依頼でき、示談金の増額も期待できます。また、煩雑な手続きから解放され、治療に専念することもできます。

弁護士特約の利用を迷っている方や、弁護士依頼にメリットがあるかわからない方は、まずは弁護士の無料相談を利用してみましょう。

アトム法律事務所では、電話・LINE・メールで無料相談を実施しています。

無料相談のみの利用でも問題ありません。相談中に無理に契約を勧めることもありませんので、お気軽にご利用ください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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