路肩発進や路外出入り時の事故における過失割合はどうなる?

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路肩からの発進や道路外からの出入り時は、事故が発生しやすい状況の一つです。

発進・出入りする車両には高い注意義務が求められ、適切な対応を怠ると過失割合が大きくなる傾向があります。

本記事では、路肩発進や路外出入り時の事故における過失割合や示談交渉のポイントを詳しく解説し、安全運転のための対策についても紹介します。万が一、事故に遭った場合の適切な対応を知り、適正な補償を受けるための知識を身につけましょう。

この記事で紹介する過失割合は、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

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路肩からの発進時における事故の過失割合(目安)

路肩停車中の車と後方から走行してきた車が衝突した場合、過失割合は基本的に路肩に停車中の車:後方から走行してきた車=100:0になりますが、路肩から車を発進させると過失割合は変わってきます。

なお、路肩からの発進時は、発進時の状況(周囲の確認や追越禁止の有無など)によって過失割合が変わるため、一概には決められません。

もっとも、路肩からの発進で、双方が同一方向に走行したと捉えるならば、目安としての過失割合は確認できます。状況に応じて一つずつ見ていきましょう。

追越禁止場所の路肩から発進した場合の過失割合(目安)

追越禁止場所の路肩に停車中だった車が発進をはじめたタイミングで後続車が追い越しを試みた場合、路肩から発進をはじめた「追い越される車(A)」と、「追い越す車(B)」の事故では、基本の過失割合はA:B=10:90が目安です。

この場合、追い越し禁止場所であるため基本的には追い越す車のほうが、より安全に気を配るべきとされています。しかし、避譲義務違反や道路交通法違反、著しい過失や重過失といった追い越される車にも問題があった場合、過失割合は修正されることになります。

追越禁止場所における事故の過失割合(目安)

AB
基本1090
Aに避譲義務違反+10-10
Aに道路交通法27条1項違反+20-20
Aの著しい過失+10-10
Aの重過失+20-20
Bの著しい過失-10+10
Bの重過失-20+20

追越禁止場所でない路肩から発進した場合の過失割合(目安)

追越禁止場所でない路肩に停車中だった車が発進をはじめたタイミングで後続車が追い越しを試みた場合、路肩から発進をはじめた「追い越される車(A)」と、「追い越す車(B)」の事故では、基本の過失割合はA:B=20:80が目安です。

この場合、追い越し禁止場所でないものの、基本的には追い越す車のほうが、より安全に気を配るべきとされています。しかし、避譲義務違反や道路交通法違反、著しい過失や重過失といった追い越される車にも問題があった場合、過失割合は修正されることになります。

追越禁止場所でない場所における事故の過失割合(目安)

AB
基本2080
Aに避譲義務違反+10-10
Aに道路交通法27条1項違反+20-20
Aの著しい過失+10-10
Aの重過失+20-20
追越危険場所-5+5
Bの著しい過失-10+10
Bの重過失-20+20

進路変更した車と衝突した場合の過失割合(目安)

同方向に進行する後続の直進車と進路変更を行った先行車の事故

路肩に停車中だった後続の車が発進をはじめたタイミングで前方を走る車が進路変更を試みた場合、路肩から発進をはじめた「後続を直進する車(A)」と、「進路変更した車(B)」の事故では、基本の過失割合はA:B=30:70が目安です。

この場合、基本的には進路変更した車のほうが、より安全に気を配るべきとされています。しかし、速度違反やその他の著しい過失や重過失など後続を直進する車にも問題があった場合、過失割合は修正されることになります。

進路変更車と後続直進車との事故の過失割合(目安)

AB
基本3070
Aがゼブラゾーン進行+10~20-10~20
Aが15km以上の速度違反+10-10
Aが30km以上の速度違反+20-20
Aのその他の著しい過失+10-10
Aのその他の重過失+20-20
進路変更禁止場所-20+20
Bの合図なし-20+20
A初心者マーク等-10+10
Bのその他の著しい過失-10+10
Bの重過失-20+20

道路外への出入り時における事故の過失割合

道路外から道路へ進入する際や、道路から駐車場・施設などの道路外へ出る際には、進行する車両や歩行者との接触リスクが高まります。

ここでは、道路外への出入りに関する具体的な過失割合をケース別に解説します。

道路外から道路へ右折した場合の過失割合

道路を「直進する車(A)」と、道路外から道路に進入するため「右折する車(B)」の事故では、基本の過失割合はA:B=20:80です。

この場合、基本的には道路外から道路に進入するため右折する車のほうが、より安全に気を配るべきとされています。しかし、右折する車が頭出し待機をしていたり、右折しきっていたなどの事情があれば、過失割合は修正されることになります。

道路外から右折して道路に進入した車との事故の過失割合

AB
基本2080
Bが頭を出して待機+10-10
Bが既右折+10-10
Aがゼブラゾーン進行+10~20-10~20
Aが15km以上の速度違反+10-10
Aが30km以上の速度違反+20-20
Aのその他の著しい過失+10-10
Aのその他の重過失+20-20
幹線道路-5+5
Bの徐行なし-10+10
Bのその他の著しい過失-10+10
Bの重過失-20+20

直進車の過失なしとされた裁判例

名古屋地判平22・2・19(平成20年(ワ)6066号)

原付運転者が歩道を走行した後、駐車場出入口付近から一時停止も安全確認もせずに道路へ進入し、南進中の高級外車(アウディ)と衝突した事例。被害者は左前方4.2メートルで原付を発見しブレーキをかけたが間に合わなかった。


裁判所の判断

「…路外から被告車が進入してくることを想定して衝突を回避するために一旦停止するなどの措置をとる義務までは認められない」

名古屋地判平22・2・19(平成20年(ワ)6066号)
  • 過失割合: 原付10割、直進車0割
  • 直進車には、路外進入車の違法行為まで予見する義務はない

この判例では、原付運転者が歩道走行という交通違反を犯した上で安全確認を怠ったという悪質性が影響し、路外進入車(原付)に10割の過失が認定され、直進車には一切の過失なしとされました。

なお、高級外車の評価損についても実務上参考になる判断で、修理により完全に回復したことや被害者が買い替えずに使用継続していることを理由に、査定額より大幅に低い金額(修理費の1割強)に抑制されています。

道路外から道路へ左折した場合の過失割合

道路を「直進する車(A)」と、道路外から道路に進入するため「左折する車(B)」の事故では、基本の過失割合はA:B=20:80です。

この場合、基本的には道路外から道路に進入するため左折する車のほうが、より安全に気を配るべきとされています。しかし、左折する車が頭出し待機をしていたり、直進する車のほうに速度違反があったなどの事情があれば、過失割合は修正されることになります。

道路外から左折して道路に進入した車との事故の過失割合

AB
基本2080
Bが頭を出して待機+10-10
Aが15km以上の速度違反+10-10
Aが30km以上の速度違反+20-20
Aのその他の著しい過失+10-10
Aのその他の重過失+20-20
幹線道路-5+5
Bの徐行なし-10+10
Bのその他の著しい過失-10+10
Bの重過失-20+20

道路外に出るため右折した場合の過失割合

道路を「直進する車(A)」と、道路から道路外に出るため「右折する車(B)」の事故では、基本の過失割合はA:B=10:90です。

この場合、基本的には道路から道路外へ出るため右折する車のほうが、より安全に気を配るべきとされています。しかし、右折する車が右折しきっていたり、直進する車のほうに速度違反があったなどの事情があれば、過失割合は修正されることになります。

道路外に出るため道路から右折した車との事故の過失割合

AB
基本1090
Bの既右折+10-10
Aがゼブラゾーン進行+10~20-10~20
Aが15km以上の速度違反+10-10
Aが30km以上の速度違反+20-20
Aのその他の著しい過失+10-10
Aのその他の重過失+20-20
幹線道路-5+5
Bの徐行なし-10+10
Bの合図なし-10+10
Bのその他の著しい過失-10+10
Bの重過失-20+20

路外への右折車と直進車の事故の裁判例

大阪地判平13・7・3(平成13年(ワ)39号)

路外施設に右折進入しようとした車が、右折合図を出して一時停止した直後、対向車線から直進してくる車両を前方わずか10.7メートルの地点で発見。衝突を回避できずに正面衝突した。さらに衝突の反動で右折車が後方に押し戻され、後続の第三者車両とも衝突する二重事故となった。


裁判所の判断

「…(対向車)の過失割合を二割、被告(右折車)の過失割合を八割と解するのが相当である」

大阪地判平13・7・3(平成13年(ワ)39号)
  • 過失割合: 右折車8割、対向車2割(後続車は過失なし)
  • 右折車の安全確認義務違反と、対向車の前方中止義務違反を認めた

この判例では、右折車は対向車の動静を十分確認せずに車線にはみ出したため主たる責任を負いましたが、対向車についても前方を十分注視していれば右折車の動きを認識して事故を回避することは可能であったとして、一定の過失が認められました。

なお、衝突の反動で巻き込まれた後続車については、「通常予想できない事態」として、全く過失がないと判断されています。

渋滞時の路外進入事故の裁判例

大阪地判平26・4・18(平成24年(ワ)7456号)

渋滞車列の間を縫って路外駐車場に右折進入しようとした普通車が原付と衝突。被害者は右脛骨開放性粉砕骨折により併合11級の後遺障害認定を受けた。RSD(複合性局所疼痛症候群)発症も主張したが、診療録に激烈な疼痛の記載がなく骨萎縮も認められないとして否定された。


裁判所の判断

「…過失割合は、25対75と解するのが相当である。」

大阪地判平26・4・18(平成24年(ワ)7456号)
  • 過失割合: 右折車7.5割、対向車2.5割
  • 路外施設への右折は、交差点での右折よりも予見が困難

この事例は、「渋滞時の事故」であるところにポイントがあります。

渋滞車両の間隙をすり抜けて右折した四輪車が、直進する二輪車と衝突した場合、直進二輪車30%:右折四輪車70%が基本の過失割合です。

この判例では、道路への右折(交差点)に比べ、路外への右折の場合は予見が困難であるとして原付の過失を25%に軽減し、一般的な渋滞時の右折事故より直進車に有利な判断をしました。

共通する注意点と事故防止策

路肩からの発進や道路外への出入り時に発生する事故を防ぐためには、事前の確認と慎重な運転が重要です。

路肩からの発進・道路外出入り時に十分な安全確認を行う​

路肩からの発進や道路外からの出入り時は、周囲の状況を十分に確認することが事故防止の基本です。

特に、ミラーの死角になりやすい場所では、目視での確認を徹底するようにしてください。

ウインカーを適切に使用し合図を送る

路肩からの発進や道路外からの出入り時には、周囲の車両や歩行者に自身の行動を伝えるために、ウインカー(方向指示器)を適切に使用して合図を送りましょう。

ウインカーを出さずに発進すると、周囲に回避のチャンスを与えられず、自身の過失割合が重くなる可能性があります。

周囲の交通状況を把握する

路肩発進や道路外からの出入り時には、特に後方や側方の交通状況をしっかり確認しましょう。

特に、歩行者や自転車・バイクなどの小さな車両は見落としやすいため、細心の注意が必要です。

路肩発進や路外出入り時の事故で示談交渉を有利に進める方法

交通事故における示談交渉では、事故の状況や過失割合が争点になりやすく、適切な対応を取る必要があります。特に示談金の妥当性を確認し、適切な補償を受けるための知識を持っておくことが大切です。

保険会社との交渉で過失割合はもめやすい?

路肩発進や道路外出入りの事故では、過失割合について双方の主張が食い違いやすいです。主張が食い違うと、示談交渉が長引くことが予想されます。

特に、ドライブレコーダーの映像や目撃証言がない場合、相手方と意見が対立する可能性が高くなるでしょう。

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示談金の相場と妥当な金額を知っておこう

過失割合によって示談金の額が大きく変わりますが、そもそも適正な示談金相場を知っておくことが重要です。また、どの範囲まで請求できるのか損害の項目や内訳もおさえておく必要があります。

交通事故示談金の内訳

治療費、慰謝料、休業損害、逸失利益、修理費などを含めた損害の項目と総額を算出し、適切な補償を受けられるようにしましょう。

特に、慰謝料については、保険会社が提示してくる金額をそのまま受け入れてはいけません。事故の被害者として受け取るべき妥当な慰謝料よりも、不当に低い金額である可能性が高いです。

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弁護士に依頼すれば示談交渉がスムーズに進む

交通事故の示談交渉で不利な条件を避けるためには、交通事故に詳しい弁護士のサポートを受けるのが有効です。

弁護士が被害者に代わって示談を行うことで、適正な過失割合の主張ができるだけでなく、適切な示談金を確保しやすくなります。

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過失割合で争いになったら弁護士に相談しよう

過失割合が争点となる場合、個人での交渉は難しくなることが多いです。必要に応じて、弁護士への相談を検討しましょう。初回の相談を無料で受け付けている弁護士も多いため、まずは法律の専門家である弁護士にアドバイスを求めるのがおすすめです。

なお、事故でケガを負われている場合、アトム法律事務所の弁護士と無料の法律相談が受けられます。

保険会社が提示するままの過失割合や示談金は受け入れないでください。過失割合の変更や慰謝料増額の余地があるか弁護士に聞いてみましょう。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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