交通事故の責任は4つ!民事・刑事・行政・社会的責任をわかりやすく解説

交通事故の加害者が負う責任は「民事責任」「刑事責任」「行政責任」の3つの法的責任と、法律で定められていない「道義的・社会的責任」をあわせた4つです。
これらの責任は、それぞれ別の手続きで進み、結果も独立して生じます。
そのため、人身事故を起こすと、被害者への損害賠償(民事)、刑罰(刑事)、運転免許の取消し・停止(行政)が同時並行で進行する可能性があります。加えて、被害者への謝罪やお見舞いといった道義的・社会的責任への対応も求められます。
この記事では、4つの責任の中身と手続きの流れについて弁護士がわかりやすく解説します。
交通事故で負う責任とは
交通事故の加害者が負う4つの責任の内容を、まずは一覧で確認しましょう。
交通事故の加害者が負う4つの責任
| 責任の種類 | 内容 |
|---|---|
| (1)民事責任 | 事故の被害者への損害賠償責任 |
| (2)刑事責任 | 事故が犯罪になる場合に、刑罰を受ける責任 |
| (3)行政責任 | 事故で運転ができなくなる処分を受ける責任 |
| (4)道義的・社会的責任 | 事故の被害者に謝罪等をする責任 |

以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
法律上の責任(1)民事責任
民事責任とは事故の損害を賠償する責任のこと
交通事故の民事上の責任とは、事故により被害者に発生した損害を賠償する責任のことです。
交通事故事案における民事上の責任原因は、民法や自動車損害賠償保障法(自賠法)などが根拠規定になります。
民法にもとづく賠償責任
交通事故の加害者が負う民事責任の基本となるのが、民法709条で定められた不法行為責任です。故意または過失によって他人の生命・身体・財産に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負うと定められています。
たとえば、わき見運転で前方の車に追突した、信号を見落として歩行者をはねたなど、運転者の不注意(過失)によって事故が起き、被害者にケガや物損を負わせた場合、加害者本人は民法709条に基づいて被害者に対する損害賠償責任を負います。

なお、業務中に従業員が事故を起こした場合は、運転していた本人の不法行為責任に加えて、雇用していた企業・事業主も民法715条の使用者責任を負います。
企業は従業員を利用することで利益を得ている以上、それに伴う損失も負担すべきと考えられているためです。詳しくは『社用車で事故。営業中の事故の責任は従業員?会社?慰謝料請求も解説』をご覧ください。
自賠法にもとづく賠償責任
自動車損害賠償保障法(自賠法)3条では、以下の者が損害賠償責任を負うと定められています。
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
自動車損害賠償保障法第3条
この責任のことを運行供用者責任といいます。
具体的には、自動車を管理している者(主に所有者)や自動車の運行によって利益を得ている者が「運行供用者」に該当します。
【補足】民法の使用者責任・自賠法の運行供用者責任の違い

会社の車で事故をおこしてしまったようなケースなど、使用者責任と運行供用者責任が重複するケースはあります。
しかし、両者は、明確に違います。
損害賠償責任の根拠となる法律・違い
| 法律 | 民法715条 | 自賠法3条 |
|---|---|---|
| 責任 | 使用者責任 | 運行供用者責任 |
| 範囲 | ・対人 ・対物 | ・対人 |
| 挙証責任 | 被害者 | 加害者 |
使用者責任は、対人・対物賠償が責任範囲に含まれます。これに対し、運行供用者責任は、対人賠償のみに責任範囲が限られる点に違いがあります。
また、使用者責任は、損害が発生したことを証明する責任(挙証責任)が、被害者にあるのに対し、運行供用者責任は、挙証責任を加害者に負わせ、被害者の負担を軽減している点にも違いがあります。
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損害賠償責任の内容・損害の種類

交通事故の損害賠償は、大きく対物賠償と対人賠償の2種類に分けられます。
対物賠償
対物賠償の代表的なものは、事故により壊れた車の修理代です。
修理や買い替え中の代車代についても、必要かつ相当な範囲内で請求ができます。
対人賠償
対人賠償は、財産的損害と精神的損害の2種類に分けられ、精神的損害に対する金銭的な補償を慰謝料といいます。
さらに、財産的損害は、事故により支出を余儀なくされた金銭に対する補償である積極損害と、事故により得られなくなった利益の補償である消極損害の2種類に分けられます。
積極損害の代表的なものとしては、怪我の治療費や通院の交通費が、消極損害の代表的なものとしては休業損害や逸失利益が挙げられます。
損害賠償責任を果たすまでの流れ
民事上の責任(損害賠償責任)は、一般的に示談交渉(当事者間の話し合い)で解決されることが多くなっています。

自動車事故による賠償責任に備える保険には、「自賠責保険」と「任意保険」があります。
自賠責保険
自賠法5条では、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)への加入が義務付けられています。
自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。
自動車損害賠償保障法第5条
任意保険
自賠責保険には対物賠償が含まれておらず、対人賠償にも一定の限度額があるため、民事上の責任を負うリスクに備えた保険としては不十分となる可能性があります。
そのため、自動車の運転者は、自賠責保険に加えて任意の自動車保険(任意保険)に加入しているケースがほとんどです。

自賠責保険の超過分は、任意保険でまかないます。任意保険の補償の内容として、対人・対物無制限のケースも多いです。
任意保険会社による示談代行
任意保険に加入している場合、保険会社が加害者の示談交渉を代行し、示談がまとまると任意保険から被害者へ示談金(損害賠償金)が支払われる流れになります。
任意保険に加入していない場合、当事者同士で示談交渉を行い、示談がまとまると加害者から被害者へ示談金(損害賠償金)が支払われる流れになります。
実際に交通事故の加害者が支払う損害賠償額は、事故の責任を加害者と被害者で公平に分けるために、被害者の責任(過失)割合に応じて減額される仕組みになっており、このことを過失相殺といいます。
示談がまとまらない場合、裁判によって損害賠償額が決定されることもあるでしょう。裁判では、証拠に基づいて損害の程度や賠償金額、過失割合などが争われます。
裁判で結論を出した場合も、加害者は自動車保険に加入していれば、その保険金から賠償金を支払い、民事責任を果たすことが可能です。
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法律上の責任(2)刑事責任
刑事責任とは刑罰のこと
交通事故の刑事上の責任とは、国からの罰則を受ける責任のことです。刑罰は、社会の法秩序を維持するために定められています。
刑事裁判で有罪が確定したら刑罰を受ける
交通事故の加害者が刑事上の責任(刑罰)を負うかどうかは、裁判で決まります。
交通事故の加害者は、刑事裁判で有罪判決が確定すれば、刑罰を受けることになります。
刑事上の責任(刑罰)の内容・重さは、交通違反の態様、事故の結果(軽傷、重症、死亡等)、事故後の状況などに応じて裁判官が決めます。
交通事故の刑罰には、拘禁刑、罰金刑、科料などがあります。
主な刑罰の種類
- 拘禁刑
刑事施設に収容され、作業したり指導を受けたりする刑罰。有期の場合、原則1か月以上20年以下 - 罰金刑
国に1万円以上のお金を納める刑罰 - 科料
国に1,000円以上1万円未満を納める刑罰
刑事責任を問われる行為・刑罰の内容
交通事故で問われる主な罪は、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪・道路交通法違反の3つです。事故の態様や悪質性によって適用される罪が変わり、刑罰の重さも変わります。具体的な刑罰は以下のとおりです。
交通事故で問われる主な罪と刑罰
| 刑罰 | |
|---|---|
| 過失運転致死傷罪 | 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 危険運転致死傷罪 | 負傷:15年以下の拘禁刑 死亡:1年以上の有期拘禁刑 |
| 無免許運転 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 報告義務違反 | 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金 |
| 救護義務違反 | 10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 過失傷害罪(自転車など自動車以外の車両) | 30万円以下の罰金または科料 |
| 過失致死罪(自転車など自動車以外の車両) | 50万円以下の罰金 |
酒酔い運転や信号無視といった悪質な運転で人を死傷させた場合は、過失運転致死傷罪よりも重い危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。
また、事故後に警察への連絡や負傷者の救護を怠った場合は、道路交通法72条違反に問われます。
なお、飲酒運転については、運転者本人だけでなく、車両を提供した人・酒類を提供した人・同乗者にもそれぞれ刑罰が定められています。詳しくは『飲酒運転の法律知識|同乗者・自転車・二日酔いでも罰則の対象になる』の記事をご覧ください。
刑事処分の流れ

刑事処分は、まず警察による捜査が行われたあと、検察官へ事件が送致され、検察官が刑事裁判で審理すべきだと判断すれば起訴され、裁判所での審理を経て判決が言い渡される流れとなります。
検察官が刑事裁判で審理するものではないと判断すれば、不起訴となり基本的に事件はそこで終了です。刑事裁判で有罪判決が言い渡されれば、拘禁刑や罰金刑などの刑罰を受けることになり、前科がつくことになります。
交通事故の加害者は警察に逮捕される?
交通事故後、加害者が逮捕されるかは事故の状況や加害者自身の状態などによります。
逮捕される要件は、以下の2つを満たすことです。
逮捕の要件
- その人物が犯罪を犯したという可能性が高いこと(嫌疑の相当性)
- 逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれが認められること
これら2つの要件を満たさなかった場合には、逮捕はされません。逮捕されなかった場合、事故は在宅事件として扱われます。加害者はいつも通りの日常を送りながら、時折警察から呼び出しを受けて取り調べを受けることになります。
逮捕の可能性や、逮捕された場合の手続きについて詳しく知りたい方は『交通事故で逮捕されるケースを紹介|逮捕後の流れとすべきことも解説』の記事を確認してください。
交通事故で不起訴になるのはどのようなケース?
起訴・不起訴の判断は、検察により行われます。
判断の際には事故のさまざまな状況が考慮され、以下のような事情が認められる場合は、不起訴となる可能性が高いでしょう。
- 加害者が被害者に賠償を尽くした
- 謝罪などの誠意を示した
- 初犯である
- 被害者のケガの程度が軽い
起訴された場合でも、上記のような事情が認められれば、量刑の審理において加害者の刑が軽くなったり、執行猶予がついたりする可能性もあります。
法律上の責任(3)行政責任
行政責任とは運転免許停止などの行政処分のこと
交通事故の行政上の責任とは、行政機関からの処分を受けることです。行政処分は、道路交通の安全を確保するため実施されます。
運転免許の取消し・停止や反則金の支払い等
行政上の責任(行政処分)の具体的な内容としては、事故の内容によって違反点数がつき、運転免許の取消し・停止や反則金などが課せられるといったものです。
行政処分の内容は、過去3年間の交通違反や交通事故に対して一定の違反点数がつき、合計点数が基準に達すると運転免許の停止や取消しといった処分が決まります。
違反点数については、交通違反の内容に応じて決められる「基礎点数」と、事故の相手方の負傷の程度に応じて決められる「付加点数」があります。
基礎点数に対象となる行為と違反点数
基礎点数の対象となる行為と、行為ごとの違反点数は以下の通りです。
| 違反行為 | 違反点数 |
|---|---|
| 安全運転義務違反 (わき見運転、よそ見運転など) | 2点 |
| 無車検運行 | 6点 |
| 無保険運行 | 6点 |
| 大型自動車等無資格運転 | 12点 |
| 仮免許運転違反 | 12点 |
| 速度超過 一般道:30km以上の超過 高速道路:40km以上の超過 | 12点 |
| 0.25未満の酒気帯び運転 | 13点 |
| 0.25以上の酒気帯び運転 | 25点 |
| 過労運転など | 25点 |
| 無免許運転 | 25点 |
| 共同危険行為等禁止違反 | 25点 |
| 酒酔い運転 | 35点 |
| 麻薬等運転 | 35点 |
| 救護義務違反(ひき逃げ) | 35点 |
付加点数の対象となる負傷の程度とその違反点数
付加点数の対象となる負傷の程度と、負傷に応じた違反点数は以下の通りです。
| 相手の負傷具合 | 違反点数 |
|---|---|
| 死亡事故 | 20点 (13点) |
| 重傷事故 (治療期間3か月以上、後遺障害あり) | 13点 (9点) |
| 重傷事故 (治療期間30日以上、3か月未満) | 9点 (6点) |
| 軽傷事故 (治療期間15日以上、30日未満) | 6点 (4点) |
| 軽傷事故 (治療期間15日未満) 建造物損壊事故 | 3点 (2点) |
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・道路交通法違反の一覧!人身事故の違反点数や反則金・罰則・免停を解説
行政処分の流れ
行政処分は、まず警察による捜査が行われたあと、公安委員会が聴聞を行い処分を決める流れとなります。
行政処分は行政機関が行うものなので、司法機関が行う刑事処分とは異なります。ただし、反則金を決められた期間内に納めれば、刑事裁判の審理を受けずに事件が処理される制度があります。この制度で事件が処理されれば、前科がつくことはありません。
なお、行政処分の内容に不服がある場合、行政不服審査法に基づき公安委員会に対する審査請求が可能です。
(4)道義的・社会的責任
社会的責任は被害者に誠意を尽くす責任(例:謝罪やお見舞い)
交通事故の加害者は、法律上の責任に加えて道義的・社会的責任も負います。
交通事故を起こして加害者となってしまったとしても、良識をもった社会人として然るべき行動をとることは社会の中で生きる人間として期待されるでしょう。
被害者に対して誠意をもって謝罪し、お見舞いをすることは、社会的責任を果たすうえで重要です。
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社会的責任を果たさないとどうなる?
社会的責任は法律で決められたものではないので、被害者への謝罪やお見舞いがなかったからといって、刑罰や処分を受けることはありません。
もっとも、社会的責任を果たさない場合、周囲の人々からの非難や、社会的な信用失墜の可能性があるでしょう。
また、被害者との関係修復が困難になり、のちの示談交渉で民事責任が十分に果たされなかったりすれば、起訴されている場合、判決内容に影響を与える可能性はあります。
さらに、被害者に悪態をつくなど不誠実な態度をとっていた場合、示談交渉が決裂して訴訟に発展し、結果として支払う賠償額が増えたり、慰謝料の増額が認められたりする可能性もあるでしょう。
交通事故の責任に関するよくある質問
Q.物損事故でも刑事責任は問われますか?
物損事故のみで人にケガがなければ、原則として刑事責任は問われません。過失運転致死傷罪は「人」を死傷させた場合に成立する罪のためです。
ただし、酒酔い運転や信号無視といった道路交通法違反があれば、その違反について刑事責任を問われる可能性はあります。
また、故意に物を壊した場合(過失ではなく意図的な場合)は器物損壊罪に問われる可能性もあります。交通事故の過失による物損は器物損壊罪には該当しません。
Q.任意保険に入っていれば自分で示談交渉しなくてもよいですか?
対人・対物事故で過失がある場合、任意保険会社が示談交渉を代行してくれます。
ただし、保険会社が代行するのは「金銭的な賠償交渉」のみであり、被害者への謝罪やお見舞いといった道義的責任までは代行されません。
社会的責任を果たすためには、保険会社任せにせず、加害者本人が誠意ある対応をとることが大切です。
Q.不起訴になれば前科はつきませんか?
不起訴処分となった場合、前科はつきません。前科は刑事裁判で有罪判決が確定した場合につくものであり、起訴されずに事件が終了すれば刑罰を受けることもありません。
ただし、不起訴であっても警察や検察に捜査された記録(前歴)は残ります。前歴は直接的に資格や雇用に影響するものではありませんが、捜査機関の内部記録として保管されます。
まとめ|交通事故の加害者が負う責任
法律上の責任(民事・刑事・行政)+社会的責任の4つがある
交通事故の加害者が負うべき責任は、「民事責任」「刑事責任」「行政責任」「道義的・社会的責任」の4つです。このうち民事・刑事・行政の3つは法律で定められた責任で、それぞれ別々の手続きで進み、処分も独立して下されます。
さらに、法律で定められていないものの、被害者への謝罪やお見舞いといった道義的・社会的責任を果たすことも重要となります。通常、事故後の示談交渉は加入する任意保険が行いますが、保険会社に任せきりにせず、真摯に謝罪やお見舞いを行いましょう。適切に社会的責任を果たすことで、示談交渉を円滑に進めやすくなる場合もあります。
交通事故の加害者になってしまった場合は『交通事故加害者がすべき対応や責任は?裁判所の呼び出しはどうしたらいい?』の記事も参考になりますので、あわせてご覧ください。事故直後や被害者の治療中にすべきこと、反対に避けるべきNG行動などがわかります。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
