家に車が突っ込む事故!保険金を請求する流れや注意点は?慰謝料はもらえる?

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家に車が突っ込む

家に車が突っ込む事故にあった方は、強いショックを受けておられることと存じます。

この先どのような対応をすればよいのかわからず、不安に思われる方も多いのではないでしょうか。

家に車が突っ込んだとき、被害者の方がよく悩まれるのは、以下のようなポイントです。

  • 修理までどんな流れで進んでいくの?
  • どんな保険を使えばいい?
  • どこまで保険で修理してもらえる?
  • 精神的なストレスに対して慰謝料を支払ってもらえる?
  • その他、保険金の請求で注意しておくべきポイントはある?

この記事では、家に車が突っ込んだとき知っておきたいことを網羅的に解説しています。
家に車が突っ込む事故の被害にあわれた方に参考にしていただければ幸いです。

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家に車が突っ込む事故で使える保険

(1)相手方の自動車保険

家に車が突っ込む事故にあった場合、相手方の自動車保険から保険金を受け取れます

自動車保険には、すべての車に加入が義務付けられている「自賠責保険」と任意で加入する「任意保険」の2種類があります。

事故で受けた被害が物損のみの場合は、任意保険の「対物賠償保険」から保険金を受け取ることになるでしょう。自賠責保険は物的損害を補償対象外としているためです。

(2)自身の火災保険|上乗せ分の保険金を受け取れる可能性有り

家に車が突っ込む事故にあったときは、被害者自身が加入している火災保険からも保険金を受け取れる場合があります

火災保険は、建物の外部からの物体の衝突による損害も補償の対象にしている場合があるのです。実際に火災保険による補償を受けられるかどうかは、ご自身が加入している保険会社に確認してみるとよいでしょう。

相手方が無保険の場合や、当て逃げにあってしまった場合は、火災保険を利用して補償を受けることをとくにおすすめします。

また、火災保険からは、修理費のような実費分の保険金に上乗せして、使い道が限定されていない「臨時費用保険金」を受け取れる場合もあります

臨時費用保険金とは、災害に伴って臨時に必要な費用にあてるための保険金のことです。契約内容にもよりますが、一定額を限度に損害額の10%~30%程度を受け取れることが多いでしょう。

相手方の自動車保険から修理費分の保険金を受け取り、自身の火災保険から臨時費用保険金のみを受け取るといった運用も可能な場合があります。また、自身の火災保険から一括して保険金を受け取り、あとで保険会社から相手方に求償してもらうことも可能です。

家に車が突っ込む事故にあったら、一度自身の保険会社にも確認をとってみましょう。

家に車が突っ込んでから保険金を受け取るまでの流れ

(1)必ず警察に連絡する

家に車が突っ込む事故の被害にあったら、まずは周囲の安全確保と、ケガ人がいる場合は救護を行います。

その後、損害の軽重にかかわらず、必ず警察に通報します。ケガ人がいる場合は、必ず人身事故ととして届け出ましょう。

警察に通報しなかった場合、事故が起きた事実を証明する「交通事故証明書」が発行されません。交通事故証明書は、保険金を請求する際に必要になる書類です。

(2)相手方と情報を交換する

警察への対応が終われば、事故の相手方と今後必要となる情報を交換します。以下の内容については、必ず確認しておくようにしましょう。

確認しておくべき情報

  • 氏名、住所、電話番号・メールアドレスなどの連絡先
  • 勤務先の名称、連絡先
  • 車両の所有者、ナンバー
  • 自動車保険の会社、契約番号

情報を確認するときは、口頭で聞くだけではなく、運転免許証や保険証券を見せてもらって写真に残したり、名刺をもらったりすることが望ましいです。

なお、このとき相手方と当事者間で示談してしまうと、のちにトラブルとなる可能性が高いので、絶対に避けましょう。

(3)写真を撮って損害を記録する

次に、事故現場や車の写真を撮り、事故の状況やどのような損害を受けたかを記録します。

スマートフォンのカメラを使って撮影しても問題ありません。相手方の車の写真を撮るときは、あらかじめ許可を得るようにしましょう。

このとき、家や塀だけではなく、植木鉢やビニールシートといった細かな物品についても、損害を記録しておくとよいでしょう。

細かな物品であっても、損害が発生しているのであれば保険金を受け取れる可能性があります。小さな傷であっても、念のため撮影しておき、あとで損害として報告することをおすすめします。

(4)修理費用などの見積もりを取る

事故直後の一連の対応が終われば、事故で受けた損害の修理に入ります。

なお、保険金として補償されるのは、事故前の状態に回復させる範囲までです。その範囲を超えた過大請求は認められないことに留意しておきましょう。

修理の流れとしては、まずは修理費などの見積もりを取って保険会社に提出し、問題ないようであれば修理を行うといった形になります。

保険会社の確認を得ないまま修理をはじめると、「この部分の破損は事故とは関係ない」「必要以上の修理をしている」などと主張され、修理費を全額支払ってもらえない可能性があるため、注意してください。

修理費の見積もりは、被害者が選んだ業者で取ることもできますし、保険会社の調査員が行うこともあります。

(5)相手方と示談交渉をする

修理費などの見積もりがすべて取れたら、相手方との示談交渉を行います。なお、示談とは「当事者間の話し合いで賠償問題を解決すること」を言います。

基本的には、被害者自身と保険会社の担当者が交渉を行い、保険金の金額を決定していくことになるでしょう。交渉は対面ではなく、電話・メール・FAXなどで行われることがほとんどです。

双方が合意すれば、示談書を交わし、示談成立となります。示談成立から数日後~2週間後を目途に、保険金が振り込まれるでしょう。

もし、保険会社が主張する示談内容に納得できない場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。弁護士であれば法的に適正な賠償の範囲がわかるため、保険金の増額が可能かを判断してもらえます。

また、保険会社が不当に低い保険金を提示している場合は、弁護士を立てて交渉してもらってもよいでしょう。

示談交渉が決裂した場合は、調停や裁判で解決を目指すことになります。

家に車が突っ込んだときの補償に関する注意点

(1)物損事故は基本的に慰謝料の請求不可|請求できた判例も有り

事故によって受けた被害が物損のみの場合、基本的に慰謝料は受け取れません。

そもそも、慰謝料とは「事故によって生じた精神的苦痛を補償する金銭」のことです。交通事故で身体的な被害を受けた場合、その精神的苦痛に応じた慰謝料を請求できます。

一方、物品に関する損害は、修理代といった金銭的な補償を受ければ精神的苦痛が慰められると考えられています。よって、物損事故では慰謝料を請求できないのです。

ただし、物損事故であっても、特段の事情があれば例外的に慰謝料の請求が認められます。過去の判例を見てみましょう。

判例(1)

大型トラックが民家に衝突した事故。高齢の被害者が約半年間のアパート暮らしを余儀なくされ、心労や生活上の不便が相当なものであったと想定されること、借財をして修復工事をするといった事故の事後処理に追われたことなどの諸般の事情を考慮し、被害者2名に各30万円の慰謝料が認められた。

(神戸地方裁判所 平成12年(ワ)第268号 損害賠償請求事件 平成13年6月22日)

判例(2)

乗用車が民家の玄関に衝突した事故。被害者は、損害賠償に関する交渉が難航したこともあり、年末年始を含む1か月以上にわたり玄関にベニヤ板を打ち付けただけの状態で過ごすことを余儀なくされた。生活上および家業上の不便を被ったことから、20万円の慰謝料が認められた。

(大阪地方裁判所 平成13年(ワ)第13927号 損害賠償請求事件 平成15年7月30日)

一般的に、物損事故で慰謝料が認められ得る「特段の理由」は、以下のいずれかに当てはまるものとされています。

  • 被害物件が社会通念上認められる特別な主観的・精神的価値観を有し、財産的損害の賠償を認めただけでは足りない
  • 加害行為が著しく反社会的であり、財産に対する金銭賠償では償えないほどの精神的苦痛を受けた

実際に物損事故で慰謝料が認められるかどうかは、相手方との示談交渉で決まります。物損事故で慰謝料が認められる可能性は非常に低いですが、慰謝料が認められ得る精神的苦痛を負ったと思う場合は、まずは交通事故案件を取り扱っている弁護士に相談してみるとよいでしょう。

(2)相手方の保険会社が出した見積もりを信用しすぎない

先述のとおり、事故による修理費の見積もりは、被害者が選んだ業者で取ることもできますし、保険会社の調査員ないし保険会社に委託された調査会社が行うこともあります。

ただし、保険会社はできるかぎり支払う金額を抑えたい立場にあります。よって、保険会社側が出した見積もりは、目に見える範囲のみであったり、本来なら補償の対象となるものが含まれていなかったりする可能性があります。

相手方の保険会社が出した見積もりに疑問がある場合は、被害者自身でも見積もりを取ってみることをおすすめします。

とくに、事故によって家の構造に問題が生じていないか不安な場合は、示談成立前に専門家に依頼し、全体的な点検をしてもらうとよいでしょう。もし評価損が生じていたら、相手方から支払いを受けられる可能性があります。

(3)損害が事故で生じたものか判断できないことも多い

家に車が突っ込む事故で悩ましいのは、傷や欠損などが事故によって生じたのか、事故前からあったのか、判断できないケースが多いことです。

とくに、車が衝突した部分以外に割れや欠損が生じている場合は、事故との因果関係を認められづらく、保険金が下りない可能性もあることを念頭に置いておきましょう。

そのうえで、事故による衝撃が強かった、欠損が比較的新しいものであるといった、事故との関連性が疑われる症状については、相手方に補償を求めて交渉してみるとよいでしょう。

(4)示談成立したら基本的に撤回・再交渉不可

相手方との示談が一度成立すると、原則として撤回や再交渉をすることはできません。

示談は民法に規定された和解契約の一種であり、示談が成立すると法的な効力が生じます。示談したときに予測できなかった損害が発覚した場合など、一部のケースを除いて、基本的にあとから覆すことはできません。

後日になって「この部分についても保険金を受け取れたかもしれない」「大丈夫だろうと調査しなかったが、建物に歪みが生じていたかもしれない」と悔やむことを避けるためにも、示談の内容はよく確認するようにしましょう。

示談の内容に不安があるならば、法律の専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。

家に車が突っ込む事故のよくある質問

Q1.修理で壁の色が一部だけ変わる場合、全面塗り替え費用を請求できる?

車に家が突っ込む事故で外壁を破損したとき、破損した箇所のみ修理すると、周囲の外壁と色が変わってしまうことがあります。

このような場合、外壁全面の塗り替え費用を請求したいと思われる方は多いですが、残念ながら全面の塗り替え費用は認められない可能性が非常に高いです。

相手方が賠償の責任を負うのは、「事故前の状態まで回復させる」、つまり「マイナスをゼロに戻す」ところまでです。

事故とは関係ない部分まで外壁を塗り替えると、被害者にとって事故前よりもプラスの状態になっていると考えられます。相手方に事故前よりもよい状態にする責任まで負わせることは、法律上できないのです。

Q2.工事の立会いで仕事を休んだら休業損害を請求できる?

休業損害とは「事故の影響で仕事を休んだため発生した減収の補償」のことです。

家の補修工事の立会いで、被害者が仕事を休まなければならない場合もあるでしょう。このようなケースでの休業損害の請求は、残念ながら認められないことがほとんどです。

工事の立会いは、基本的に工事中・工事後のトラブルを避けるために行われます。立会いがなくとも工事自体は可能であり、被害者が必ず仕事を休まなければならないとまでは言い切れないケースも多いです。

もし、被害者の立会いが不可欠と言えるのであれば、休業損害を請求できる可能性もありますが、認められるかどうかは保険会社との交渉次第でしょう。

なお、事故でケガをして入通院治療をする場合や、自宅兼店舗に車が突っ込んだため休業せざるを得ない場合は、休業損害を請求できる可能性が高いです。

Q3.自分の運転する車が自宅に突っ込んだら保険金を受け取れる?

自分の運転する車が自宅に突っ込んでしまった場合、自動車保険の「対物賠償保険」から保険金を受け取ることはできません

対物賠償保険では、記名被保険者およびその配偶者・両親・子供の財産への損害は、基本的に補償の対象外となっています。

ただし、保険の契約内容によっては、火災保険から保険金を受け取れる場合があります。実際に保険金を受け取れるかどうかは、保険会社に確認してみてください。

なお、車の修理費については、自動車保険の「車両保険」から補償を受けられるでしょう。ただし、エコノミー型の車両保険の場合は補償の対象外となることがほとんどです。

また、家に突っ込んだことにより自身や同乗者が死傷してしまった場合は、自動車保険の「人身傷害補償保険」や「搭乗者傷害保険」から保険金を受け取れます。

Q4.家に車が突っ込むことを防ぐためにはどうすればいい?

家に車が突っ込むことを防ぐためには、以下のような対処法が有効です。

家に車が突っ込む事故の対策

  • フェンスやポールを設置する
  • 反射材を設置する
  • 警察や市区町村役場に相談する

ただし、フェンスやポール、反射材を設置するときは、安全運転の妨げにならないようにする、公道や他人の土地にはみ出さないようにすることに留意しましょう。

まとめ

家に車が突っ込む事故の被害にあったら、相手方の自動車保険や自身の火災保険から保険金を受け取れます

ただし、保険金として請求できるのは、あくまで「マイナスをゼロに戻す」金額までであることに気を付けておきましょう。

また、事故によって精神的なストレスが生じた場合も、特段の理由がなければ慰謝料が認められる可能性は低いです。

相手方の保険会社と示談すると、原則的にあとから撤回することはできません。後悔することのないよう、示談内容をよく確認する、不安があれば専門家に家全体の点検をしてもらうといった対応をとることをおすすめします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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