仮免で事故!路上教習中に起きた交通事故の責任は誰が負う?補償は?
仮免(仮運転免許)とは、運転練習や運転免許試験などのために路上で自動車を運転する際に必要な運転免許です。仮免は、自動車教習所に通って仮免学科試験に合格するか、自動車教習所に通わずいわゆる一発試験に合格することで取得できます。
自身が仮免の状態で事故を起こしたり、事故の相手が仮免だったりしたら、事故の責任は誰が負うことになるのでしょうか。
本記事では、仮免で事故を起こした場合の責任の所在や補償に加え、違反点数や事故後の対応などについて解説していきます。
目次
仮免で路上教習中に事故を起こしたら誰が責任を負う?
仮免でも事故の責任は本人にあるが教習所の保険あり
教習所に通って路上教習中に事故にあった場合、たとえ仮免の段階でも事故の責任は基本的に運転を行った本人にあります。事故を起こせば、仮免であろうと刑事責任・行政責任・民事責任の3つが課せられる可能性があるでしょう。
仮免だからといって、事故の責任が免責されることはありません。
もっとも、教習所は専用の自動車保険に加入しています。したがって、民事責任に関しては路上教習中に事故が発生して損害を与えたり被ったりしても、基本的には教習所が加入する保険で補償してもらえるでしょう。
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路上教習中の教官に責任はない?
路上教習の際は、教官が助手席に乗車して運転の指導をします。基本的に事故の責任を負うのは運転者本人ですが、事故の状況によっては教官にも責任が発生する可能性もあるでしょう。
教官にも責任が発生する可能性がある状況とは、教官が教習者の安全運転に配慮する義務を怠っていたようなケースです。具体的には、以下のような状況になります。
- 教官が居眠りしていた
- 教官がよそ見しており、補助ブレーキを踏むのが遅れた
教官に明確な落ち度がある場合に限って、教官本人や教官を雇用する教習所側にも責任が及ぶことになりますが、基本は運転者本人の責任であると認識しておきましょう。
仮免が教習所以外で事故を起こしたら補償はどうなる?
無保険状態と変わらないリスクがある
「教習所の路上教習以外でも、もっと運転練習したい」という方も多いです。たとえば、ご家族が所有する車を借りて、運転歴が長い家族に同乗してもらって運転練習することもあるでしょう。
仮免は教習所以外でも、指導する資格をもつ人を乗せて「仮免許練習中」という規定に則したプレートを設置するなどすれば、一定範囲の路上で運転練習できます。(仮免で路上の運転が認められているのは、あくまで運転練習です。単なるドライブを楽しむための目的で運転はできません。)
もっとも、教習所以外の練習時に事故を起こすと、無保険状態と変わらないリスクに直面してしまう可能性もあることを認識しておかねばなりません。
家族が任意保険に入っているから大丈夫だと過信していると、実は保険の適用範囲外で無保険状態と変わらない可能性も十分にあります。
仮免の段階で本人が任意保険に加入しているケースは少ないでしょうし、仮に保険が使えても補償額が低かったりする可能性もあるでしょう。
事故相手が仮免かつ無保険状態で困っている方は、こちらの関連記事『交通事故相手が無保険でお金がない!賠償請求の方法とリスク対策』が参考になります。
教習所以外で運転するなら保険の適用範囲を確認しておく
ご家族が所有する車を借りて運転練習する場合は、ご家族が加入する任意保険の契約内容をよく読み、仮免で運転する方が保険の適用範囲に入っているか事前に確認してください。
というのも、保険料は契約内容によって変わるので、保険料が安くなるよう適用範囲を絞って契約していることが多いです。家族のどこまでを適用範囲とするかは普段の運転状況から決めていることが考えられます。「本人限定」「配偶者限定」「30歳以上限定」など限定していることも多いので、仮免で運転する方が適用範囲外になっていないか確認しておきましょう。
保険の適用範囲外にもかかわらず運転練習して事故を起こしてしまえば、保険が使えません。保険の適用範囲を必ず確認してから運転練習を行うようにしてください。
ご家族以外にも、知り合いや友人の自動車を借りて運転する場合もあるでしょう。このような場合も、保険の契約内容が「運転者限定なし」になっていると、もしもの時も安心です。
また、保険会社によっては1日限定の保険を提供していることもあるので、利用状況に応じた保険を探して加入しておきましょう。
「自賠責保険があるから大丈夫!」の考えは危険
任意保険が使えなくても車検を取得している車で事故を起こした場合、自賠責保険があるから大丈夫だと考える方も多いです。
しかし、自賠責保険は事故の被害者を最低限度の補償で救済するための保険でしかありません。事故で相手に怪我をさせたような場合、自賠責保険だけだと十分な補償が支払われるとは限らず、自賠責保険の補償上限を超える分の賠償があればご自身が責任をもって賠償せねばならないのです。
さらに、仮免で自損事故を起こしたような場合、「対人賠償保険」である自賠責保険から補償は受けられません。事故を起こせば、誰かを傷つけてしまう可能性だけでなく、自分自身が怪我する可能性もあります。
教習所以外で運転練習したいなら、あらゆる可能性を考慮して対応可能な保険に加入しておきましょう。
仮免で事故を起こしたら取消し?点数はどうなる?
仮免許は取消し?
事故を起こしたら必ず仮免が取り消されるとは限りません。
もっとも、取り消しの対象になる違反行為によって、人を死傷させる人身事故や建造物を損壊する物損事故を起こせば、仮免許が取り消される可能性があるでしょう。
- 飲酒運転
- 過度なスピード違反
- 無理な幅寄せや車間を詰めるといった妨害運転
- 指導する資格をもつ人を乗せず単独で運転した
- 指導する資格がない人を乗せて運転した
仮免許で違反点数はつく?
仮免であっても、違反があれば本免許と同じように事故の内容に応じて違反点数が累積され、反則金を納付せねばなりません。
違反点数が累積6~14点に達すると、免許停止処分となります。違反点数について詳しくは、関連記事『追突事故の違反点数一覧|通知はいつ来る?罰金や処分の流れも解説』をあわせてご確認ください。
教習所に通われている場合、仮免許が取り消されたら補充教習を受けた後にもう一度修了検定を受け、合格すれば仮免許を取得できます。
仮免でも事故後の対応は同じ
(1)事故の発生は警察に連絡
仮免で事故を起こしたとしても、通常の免許を持っている場合と同じく事故後の対応を適切に取らねばなりません。
事故が起きたら、怪我人を救護して周囲の安全を確保しましょう。安全が確保できたら、事故について警察に連絡してください。
路上教習の場合、教官がその場にいるでしょうが、頼りっぱなしにせず交通社会人としての自覚を持ち、自ら事故処理の対応にあたりましょう。
事故直後の対応について詳しくは、こちらの関連記事『交通事故にあったら初期対応の手順は?』が参考になります。
(2)病院で怪我の治療を受ける
ご自身も怪我をされた場合は、早急に病院を受診して治療を受けましょう。大したことのない怪我だと思っていても、あとから痛みが増してくることもあります。
完治または症状固定の診断が出るまで治療を続けましょう。症状固定の診断が出たら、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。認定を受けると障害に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能になります。
後遺障害等級の認定に関しては、『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』の記事をご確認ください。
(3)相手方に損害賠償請求する
怪我が完治または後遺障害等級に認定されたら、相手方に損害賠償請求しましょう。
通常、事故の相手方は任意保険に入っていることが多いので、保険会社の担当者との示談交渉を通して損害賠償請求していくことになります。保険会社が提示する示談金は不当な金額である可能性が高いので、妥当な金額については弁護士に相談して聞いてみましょう。
今すぐ妥当な金額を知りたいという場合は、以下の計算機を使って計算してみてください。
計算機をお使いいただき、増額の可能性を感じられたら弁護士に相談してみましょう。
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まとめ
公道を運転する場合は仮免であろうと本免許であろうと、事故が発生すれば運転者自ら責任を負わねばならないことを理解して運転してください。交通社会人として交通ルールは厳格に守り、安全運転に努めましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了