チャイルドシート不使用の事故で後悔する前に。正しい使い方で子どもを守る
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交通事故は、いつ、どこで、誰にでも起こりうる予測不可能なものです。特に、小さな子どもを乗せる場合は、万が一の事故に備えてチャイルドシートの着用が必要不可欠です。
チャイルドシートは、交通事故の際に子どもを守るための重要な安全装置です。チャイルドシートを正しく使用していれば、子どもが衝撃を受けても体への負担を軽減できる可能性が高まります。
一方、チャイルドシート未使用で事故に遭った場合、子どもは重傷を負ったり、最悪の場合は命を落とす可能性も高くなるでしょう。
子どもを交通事故から守るためには、チャイルドシートの正しい使用が欠かせません。
「きちんとチャイルドシートを付けてあげていればよかった…」と後悔の念に苛まれる前に、本記事を通してチャイルドシートの正しい使い方を確認しておきましょう。
目次
チャイルドシートなしの危険性
チャイルドシート不使用は致死率アップ
警察庁によると、6歳未満の子どもの自動車同乗中の死亡事故において、チャイルドシートの不使用による致死率は、適正使用者の約4.6倍に上っているとのことです。(参考:警視庁「子供を守るチャイルドシート」)
チャイルドシートの不使用で事故に遭った場合、子どもは重傷を負ったり、命を落とす可能性が高くなります。
一方、チャイルドシートを正しく使用していれば、子どもが衝撃を受けても、体に負担がかかることを防ぐことができます。チャイルドシートは、交通事故の際に子どもを守るための重要な安全装置といえるでしょう。
チャイルドシートの不使用は、子どもの命を危険にさらす行為です。子どもを交通事故から守るためには、チャイルドシートの正しい使用が欠かせません。
痛ましいチャイルドシートの事故事例
チャイルドシート不使用による交通事故は、子どもの命を奪う痛ましい結果をもたらします。チャイルドシート不使用の事故事例には、以下のような例があげられます。
- チャイルドシート不使用で助手席に乗車していたところ、前方車と衝突し、子どもが死亡した
- チャイルドシート不使用で後部座席に乗車していたところ、後ろから追突され、子どもが車外に投げ出されて死亡した
- チャイルドシート不使用で後部座席に乗車していたところ、カーブで横転し、幼児が死亡した
チャイルドシートは、子どもの命を守るために必ず使用しましょう。
チャイルドシートの正しい使い方
チャイルドシート着用は親の義務!
子どもの命を守るため、チャイルドシートの着用は親の義務です。0歳~5歳の子どもを車に乗せる場合は、チャイルドシートの着用が必須となります。
日本では6歳未満の子どもを乗せる場合のルールは、道路交通法にて定められています。以下の条文を確認しておきましょう。
自動車の運転者は、幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。以下この項において同じ。)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
道路交通法第71条の3第3項
6歳以上であっても身長が約150㎝に満たない場合、自動車のシートベルト使用は推奨されていません。子どもの体格にあわせたジュニアシートなどもあるので、年齢だけで判断せず、子どもの成長にあわせてシートを選び変えましょう。
抱っこでの乗車もNG
チャイルドシートの代わりに大人が抱っこした状態で自動車に乗車することは、基本的にしてはいけません。
抱っこや抱っこひもでの乗車は、衝撃時に子どもが大きく揺さぶられ、頭部や首に重傷を負う可能性があります。
「チャイルドシートがない知人や友人の車に乗せてもらうことになったから」、「ちょっとそこまでだから」などといってチャイルドシートを使用せず、抱っこで済ませてしまわないようにしてください。
もっとも、日常的な世話をする一時的なタイミングでの抱っこなど、やむを得ない理由があるときは、一部着用の義務が免除される状況もあります。
例外的にチャイルドシートの着用が義務でないケースについて詳しくは、本記事内の「Q.チャイルドシート不使用でも問題ない例外もある?」をご覧ください。
チャイルドシート不使用の罰則
チャイルドシートの着用義務に違反した場合、運転手の違反点数に1点が加算されます。罰金刑や懲役刑といった刑事罰が科されることはありません。
もっとも、刑事罰が科されないからといってチャイルドシートの着用を疎かにしないでください。子どもの安全を守れるのは大人だけです。
チャイルドシートの装着方法
チャイルドシートは、子どもの年齢や体格に合わせて正しく装着する必要があります。
チャイルドシートを使用していたとしても、正しく装着できていないとチャイルドシートが持つ本来の機能を発揮できません。
たとえば、座席への固定が甘かったり子どもを正しく座らせられていなかったりした状態で事故にあうと、衝撃でシートごと外れてしまったり、子どもがシートから飛び出してしまう可能性があるのです。
子どもの命を守るために、チャイルドシートを必ず正しく使用しましょう。
それではここから、チャイルドシートの一般的な装着方法について説明します。
もっとも、チャイルドシートの詳しい装着方法は取扱説明書に記載されていますので、お持ちの取扱説明書をよく読み、内容に従って正しく装着してください。
乳児用
幼児用のチャイルドシートは、「後ろ向きに設置するタイプ」と「横向きに設置するタイプ」に大きく分かれます。
乳児用チャイルドシートを使用する目安は、新生児から体重10kg程度の子どもです。新生児の退院時にも使いましょう。
幼児用
幼児用チャイルドシートは、「前向きに設置するタイプ」です。
幼児用チャイルドシートを使用する目安は、体重10kgから18kg程度の子どもです。首が座り、自分でお座りできるようになった頃から使えるようになるでしょう。
学童用
学童用チャイルドシートはジュニアシートとも呼ばれ、座面をあげて身長の低さを補ったり、腰ベルト位置を子どもの体格にあわせたりすることで、自動車のシートベルトが使えるようになります。
学童用チャイルドシートを使用する目安は、体重15kgから36kg程度の子どもです。
チャイルドシート不使用事故の示談金
子どもの示談金はいくら?
子どもが交通事故にあった場合、事故の相手方に対して示談金を請求できます。示談金がいくらになるかは、事故の状況や怪我の程度によって異なります。
もっとも、目安ではありますが、慰謝料や逸失利益といった示談金がいくらになるかは、以下の計算機を使えば簡単にわかります。
通院を開始した日や、治療が終了した日、年齢などの項目を入力するだけで目安の金額が計算できます。
こちらの計算機は、子どもだけでなく大人も使用可能です。利用に際してアカウントの作成や登録などは一切不要なので、気軽にお使いください。
また、子どもが交通事故にあった場合の慰謝料相場については、関連記事『子供が車にひかれた時の慰謝料相場は?子供が事故にあったら親の対応は?』が参考になります。
事故で請求できる示談金一覧
事故による被害を子どもが負った場合、請求できる示談金は主に以下の通りです。
- 治療関係費
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料※
- 逸失利益※
※ 後遺障害等級の認定により請求可能になる
こちらで紹介した主な示談金の項目は、子どもだけでなく大人も共通して請求可能です。
被害の内容や個人の状況に応じて請求できる項目は異なってくるので、関連記事『交通事故の慰謝料は示談金内訳のひとつ!示談金の内訳と慰謝料の増額方法』をご確認いただき、交通事故で請求できる示談金の内訳についての理解を深めておきましょう。
赤ちゃんが事故の被害者になったときのポイント
赤ちゃんが交通事故の被害者になってしまった場合に知っておきたいポイントは以下の通りです。
- 死亡慰謝料は大人より低額になる可能性がある
- 赤ちゃんのケガも小児科ではなく整形外科へ行く
- 親が法定代理人となって慰謝料の請求を行う
- おなかの赤ちゃんへの慰謝料や賠償金は認められない
一つずつ説明します。
死亡慰謝料は大人より低額になる可能性がある
弁護士が死亡慰謝料を算定すると、家庭内での役割に応じた相場に基づいた金額になります。大人は家計を支えたり、家事をして家族の生活を守ったりといった役割を持っているものです。
そういった観点からすると、赤ちゃんを含む子どもは死亡慰謝料が低額になります。
たとえば、家庭を経済的に支える方の死亡慰謝料は2,800万円程度とされますが、赤ちゃんの死亡慰謝料は2,000万円~2,500万円程度が相場となるのです。
赤ちゃんのケガも小児科ではなく整形外科へ行く
交通事故の慰謝料は治療期間に応じて請求できます。いいかえればケガの可能性があっても、通院して診察・治療を受けていなければ、慰謝料は請求できません。
交通事故にあったときに赤ちゃんも同乗していたなら、ひとまず整形外科で診断を受けましょう。小児科は一般的に内科なので、事故による外傷は対象外である可能性が高いのです。
ただし、整形外科以外の科が適していることもあるので、ここで一般的な受診先を紹介しておきます。
どの科にかかるべきか判断が難しい場合や複数のけががある場合は、ひとまず整形外科へ、あるいは総合病院へ行ってみましょう。
部位 | 受診先 |
---|---|
頭部 | 整形外科、脳神経外科 |
顔 | 整形外科 |
目 | 眼科 |
耳や鼻 | 耳鼻咽喉科 |
口の中や歯 | 口腔外科、歯科 |
骨折 | 整形外科 |
むちうちや打撲 | 整形外科 |
親が法定代理人となって慰謝料の請求を行う
車に同乗していた赤ちゃんが事故にあったなら、親が法定代理人となって赤ちゃんの慰謝料請求を行います。法定代理人になるために特別な手続きは不要です。
たとえば、お父さん、お母さん、小学生の子供、生後数か月の赤ちゃんでドライブをしていて、追突事故にあったとします。幸い軽傷であっても、まずは病院で診察を受けることが原則です。
病院で診察・治療を受けたのならば、赤ちゃんを含む4人全員がそれぞれ慰謝料を請求できます。
赤ちゃんであっても、治療期間に応じて慰謝料を請求できることは意外と見落とされがちなので覚えておきましょう。
おなかの赤ちゃんへの慰謝料や賠償金は認められない
交通事故にあった車両に妊婦が乗っていた場合、病院で治療を受けることで慰謝料請求できるのは、妊婦の分だけです。生まれる前の胎児も含めて慰謝料が2人分になるということはありません。
もっとも、そのぶん母親の慰謝料が増額される可能性はあります。
なお、赤ちゃんがまだおなかの中にいる状態で事故にあった場合、交通事故が赤ちゃんに与えた被害は赤ちゃんが生まれてからでないと判断が難しいでしょう。
そのため、事故後すぐに示談交渉に応じるのではなく、赤ちゃんが生まれてから健康状態を観察・検査したうえで交渉を進めることをおすすめします。詳しくは以下の関連記事をごらんください。
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チャイルドシート不使用に関する疑問
Q.チャイルドシート不使用でも問題ない例外もある?
「道路交通法施行令第26条の3の2第3項」では、やむを得ない理由がある場合、例外的にチャイルドシート着用の義務が免除されるケースを定めています。
- 座席の構造上、チャイルドシートを固定できない場合
- 乗車人数の都合上、チャイルドシートを設置できない場合
- 怪我や障害など療養上・健康上の理由でチャイルドシートが装着できない場合
- 肥満やその他の身体的な理由によりチャイルドシートが装着できない場合
- 運転者以外の者が授乳やおむつ替えなど日常的な世話を一時的に行う場合
- タクシーやバスなどに乗車する場合
- 応急救護のため、病院に緊急で搬送する場合
以上の通り義務が免除されるされるとはいえ、安易な気持ちで「着用しなくても大丈夫」とは思わないでください。子どもの安全を守り、万が一の事故での被害を軽減するためにも大人が責任をもって対応すべきです。
Q.チャイルドシート不使用は過失割合に影響する?
チャイルドシート不使用時に事故にあった場合、通常は過失割合に影響することになるでしょう。チャイルドシート不使用の場合、5~10%程度の過失割合が付くことになります。
実際の判例を紹介します。
判例
事故当時4歳の娘とその母親が、義母の運転する自動車に同乗中に、赤信号で交差点に進入してきた自動車と衝突した事故。被害者側に座席ベルトやチャイルドシートの不着用・不使用があったとして10%の過失が認められ、被害者側:加害者側=10:90が相当であると判断された。(横浜地方裁判所 平成30年(ワ)第1433号 損害賠償請求事件 令和2年2月10日判決)
Q.チャイルドシート不使用は保険に影響する?
チャイルドシート不使用時に事故にあって保険に影響するかどうかは、相手のいる事故と相手のいない事故で考え方が異なります。
相手のいる事故の場合、相手方が加入する任意保険から治療費や慰謝料などの賠償金が支払われます。しかし、チャイルドシート不使用時の事故の場合、過失割合を差し引いた賠償金となる点に注意してください。
一方、相手のいない事故の場合は、ご自身が加入する人身傷害補償保険など任意保険の内容によって異なるでしょう。チャイルドシート不使用時の事故でも補償がもらえるかは、保険約款をご覧ください。
まとめ
「チャイルドシートにきちんと乗せてあげていれば」と後悔しない前に、チャイルドシートの重要性を認識しておきましょう。
もっとも、チャイルドシートを正しく使っていても、交通事故にあって損害を被る可能性は十分あります。もし、事故にあい、相手方の任意保険会社が示談金を提示してきたという状況なのであれば、安易に合意せず、一度弁護士に相談するのがおすすめです。
保険会社は被害者が本来受け取るべき示談金よりも、低い金額しか提示してきません。妥当な補償として示談金を受け取るためには、弁護士の存在が頼りになります。
弁護士に保険会社とのやり取りを任せてしまえば、親は子どものケアに専念できるでしょう。
交通事故の示談金請求に関してお困りの場合は、アトム法律事務所の無料相談をご利用ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了