死亡事故の直後に被害者家族が最初に知っておきたいこと
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突然の交通事故で大切な家族を失ったとき、遺族は深い悲しみと混乱の中で、多くの決断を迫られます。警察や病院での対応、加害者との関係、保険や補償の手続きなど、何から手をつければいいのかわからない方も多いでしょう。
この記事では、死亡事故の直後に被害者のご家族が「今、まず何をすればよいのか」を、時系列にそってわかりやすく整理しています。気持ちが追いつかない中でも、少しずつ前に進むための手がかりとなれば幸いです。
目次

死亡事故直後にまずやるべきこと|警察・病院での初動対応
死亡事故の連絡を受けた直後に確認すべきこと
警察や病院から「ご家族が事故に遭われた」と連絡が入ったとき、まずは以下の情報を落ち着いて確認してください。
- 事故が起きた日時・場所
- 搬送先の病院名、警察署名
- 現在のご遺体の安置場所
- 担当者(警察官や医師)の氏名・連絡先
電話を受けたときは動揺してしまうかもしれませんが、重要な情報はメモをとっておくと、後から冷静に行動できます。
警察署・病院へ向かう際に必要な準備
警察署や病院に向かう際には、次のような準備をしておくと安心です。
- 身分証明書(免許証・保険証など)
- 印鑑(事情によって必要になる)
- 携帯電話・充電器
- メモ帳・筆記具
また、できるだけ一人で行動しないことも大切です。信頼できる家族や知人に同伴してもらうことで、精神的な支えにもなります。
死亡事故直後に現場や病院で遺族が求められること
病院や警察では、次のようなことを求められる場合があります。
- ご遺体の本人確認
- 死亡の医師による確認と説明
- 警察からの簡単な聞き取り調査
気が動転している中でも、できるだけ冷静に対応することが求められますが、わからないことは「わからない」と伝えて問題ありません。
死亡事故直後の混乱と向き合う|心の整理がつかない時に
突然の死に直面して動けないときの心構え
人は大きなショックを受けると、体が硬直したり、何も考えられなくなったりすることがありますが、それは自然な反応です。
「しっかりしなきゃ」と思わなくても大丈夫ですし、「何もできない自分」を責める必要もありません。今は、ただその場にいるだけでも十分です。
家族で共有しておきたい気持ちと情報
事故直後は家族間でも混乱してしまい、情報の食い違いや感情のぶつかりが起きることもあります。以下のようなことを共有しておくと、少しずつ落ち着いて行動がとれるようになるでしょう。
- 事故に関する情報(警察・病院の連絡先など)
- 今後の対応の役割分担
- それぞれの気持ちや不安
一人で抱え込まず、「どうしたらいい?」と声をかけ合うことが大切です。
支援を頼ってもいい|周囲に助けを求める方法
親戚、友人、ご近所、会社など、信頼できる人に助けを求めてください。すべてを一人で背負う必要はありません。
また、行政や民間の支援団体、弁護士やカウンセラーなどの専門家に相談することも、非常に有効です。
死亡事故直後の遺体確認と搬送の流れ
警察からの遺体確認要請と対応方法
事故で亡くなった方の身元確認は、ご家族による遺体確認が求められることがあります。つらい作業になりますが、法的な手続き上必要なプロセスです。
警察署や病院に案内される場合が多く、以下の点に注意しておくと安心です。
- ご遺体の確認は1名のみに限定されることもある
- 身元確認には身分証明書が必要なことがある
- 無理に確認を迫られることはありません。(精神的に厳しい場合は断ることも可能)
感情が追いつかない中での確認となるため、付き添いの方を同行させることをおすすめします。
搬送先の病院・葬儀社との連携について
ご遺体の搬送は通常、警察または病院と連携して行います。その際、以下のような選択肢があります。
- 警察指定の搬送業者を利用する
- 自ら手配した葬儀社を利用する
葬儀社が未定の場合でも、警察から葬儀社を紹介されるケースがあります。ただし、後で別の葬儀社に依頼することも可能ですので、焦って決める必要はありません。
また、搬送費用は自己負担となることが多いため、事前に概算を確認しておくと安心です。
遺体確認に立ち会えない場合の対応方法
遠方に住んでいるなどの理由で遺体確認に立ち会えない場合には、次のような対応が可能です。
- 近親者や代理人に確認を依頼する
- 身元確認を写真や所持品で行うケースもある
どうしても立ち会えない場合は、警察や病院に事情を説明し、代替方法について相談してください。無理をして現地に向かう必要はありません。
死亡事故直後に警察から説明を受けたときの注意点
遺族が受ける事情聴取の内容と心構え
警察では事故の状況把握のために、ご遺族に事情を聞く場合があります。これは被害者側の立場であっても例外ではありません。
主な質問内容は次のようなものです。
- 被害者の普段の行動や生活状況
- 事故当日の予定や移動手段
- 加害者との面識の有無
事情聴取の場では、特に難しいことを言う必要はありません。「わかる範囲で答えれば良い」というスタンスで臨んでください。
供述が記録に残る仕組みと注意点
警察での供述は、書類として記録に残る場合があります。そのため、以下の点に注意してください。
- 不確かな情報は「覚えていない」「わからない」と伝える
- 強く感情的になりすぎず、落ち着いて話すよう心がける
- 内容に不安があるときは、記録の読み上げを求めることも可能
供述内容が後の加害者の責任追及や保険の交渉に影響を与えることもあるため、慎重な姿勢が大切です。
わからないことは正直に伝えても問題ない
警察の事情聴取では、無理に情報を提供する必要はありません。「わかりません」「覚えていません」と答えても問題はありません。
むしろ、曖昧なまま答えることの方が誤解を生む可能性もあります。遠慮せず、正直に対応してください。
死亡事故直後に知っておきたい加害者側の対応と接し方
加害者が謝罪に来るケースと対応方法
事故の加害者が、直接謝罪に来ることがあります。多くの場合、加害者本人・その家族・保険会社担当者が訪れるケースが想定されます。
謝罪を受け入れるかどうかは、遺族の自由です。無理に会う必要はありません。
謝罪を受ける際の注意点
- 会話の内容はメモしておくと後の参考になる
- 謝罪を受けたからといって、示談成立を意味するわけではない
- 感情的に受け入れがたいときは、第三者を同席させることも有効
会いたくないときにどう断るべきか
精神的にまだ加害者と向き合えない、ということは当然のことです。以下のように対応しましょう。
- 警察を通じて断ってもらう
- 弁護士を介して連絡を遮断する
- 保険会社や加害者家族に「会えない」と明確に伝える
「会わない選択」は遺族の権利です。遠慮せず、心の平穏を最優先にしてください。
第三者(弁護士・警察)を通じた連絡方法
連絡を直接受けたくない場合は、第三者を通じて対応する方法があります。
- 弁護士に依頼して窓口になってもらう
- 警察に「直接の連絡は避けたい」と伝える
- 支援団体に相談し、対応方法を検討する
直接の連絡を避けることで、精神的なダメージを軽減できるでしょう。
加害者側の主な対応(供述、任意保険の連絡など)
加害者側が行う主な対応は以下のとおりです。
- 警察への供述・取り調べ
- 任意保険会社による連絡・調査
- 遺族への謝罪・示談交渉の申し出
今後、加害者側の保険会社と示談交渉を行うことになりますが、この段階で無理に話を進める必要はありません。不安な場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
死亡事故直後に知っておきたい保険と補償の基本
加害者側の任意保険・自賠責保険の仕組み
加害者が自動車を運転していた場合、多くは強制加入の「自賠責保険」や、任意加入の「任意保険」に加入しています。これらの保険は、被害者や遺族への損害賠償に利用されます。
任意保険・自賠責保険の仕組み
概要 | |
---|---|
自賠責保険 | 死亡事故の場合、最大で3,000万円まで支払われる、国が定める最低限の補償。 |
任意保険 | 自賠責でカバーしきれない分を補填する補償。 |

加害者が任意保険に加入しているかどうかは、警察や加害者側の保険会社を通じて確認が可能です。
遺族が請求できる慰謝料・損害賠償の内容
遺族が請求できる損害賠償項目には、主に以下のようなものがあります。
遺族が損害賠償できる主な項目
概要 | |
---|---|
死亡慰謝料 | 精神的苦痛に対する補償。 |
死亡逸失利益 | 本来得られたはずの収入の補償。被害者が働いていた場合に重要な項目。 |
葬儀費用 | 通夜・葬儀・火葬・法要などの実費。 |
これらはすぐに計算できるものではないため、弁護士に相談して適切な金額の算定と請求を行うことが重要です。
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示談交渉の進め方と気をつけたいポイント
保険会社や加害者から示談の申し出があることがありますが、焦って応じる必要はありません。
示談交渉で注意すべきポイント
- 提示された金額ですぐに納得しない
- いったん示談書にサインすると、原則としてそれ以上の請求ができなくなる
- 示談書にサインする前に、提示された金額が妥当かどうか弁護士にチェックしてもらう
感情的につらい中でも、示談交渉は慎重に対応しましょう。
死亡事故直後に必要な手続き一覧|届出・保険金・相続など
死亡届と火葬許可の取得手続き
ご家族が亡くなった場合、法律に基づいて死亡届の提出と火葬許可証の取得が必要です。
- 医師から死亡診断書を受け取る
- 市区町村の役所へ死亡届を提出(通常7日以内)
- 同時に火葬許可証の交付申請も行う
通常は葬儀社がこれらの手続きを代行してくれるため、不安があれば相談しましょう。
生命保険や損害保険の請求方法
被害者が生命保険や傷害保険に加入していた場合、通常ご遺族が保険金を請求できます。
- 保険会社に連絡し、必要書類(死亡診断書・戸籍謄本・保険証券など)を確認
- 書類を提出
- 審査ののち、保険金が支払われる
早めに請求手続きを行うことで、今後の生活への不安が軽減されるでしょう。
相続の初期対応と法的な注意点
死亡後には、被害者の財産や債務を相続する手続きも始まります。早い段階で確認すべき点は以下の通りです。
- 遺言書の有無
- 財産や借金の内容
- 相続人の範囲
状況によっては、相続放棄や限定承認を選ぶこともできます。これらは相続の開始を知ってから3ヶ月以内に選ばなければなりません。期限があるので、早めに専門家に相談するのがおすすめです。
死亡事故直後に相談すべき専門家|弁護士・葬儀社・カウンセラーなど
交通事故に強い弁護士の選び方と費用
死亡事故が絡む法律問題は複雑で、加害者との示談や保険会社との交渉にも専門知識が求められます。交通事故や損害賠償に強い弁護士に相談することで、適切な補償を受けられる可能性が高まります。
弁護士選びのポイント
- 交通事故(被害者側)の実績が豊富か
- 実際にやり取りして印象が良いか
- 費用体系(着手金・成功報酬)を明確に提示し、費用倒れのリスクを説明してくれるか
- 無料相談を実施しているかどうか
弁護士に依頼することで、加害者側の保険会社とのやりとりをすべて任せることができ、精神的負担も軽減されます。
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葬儀に関する準備と段取りの基本
葬儀は心の整理をつける大切な儀式であると同時に、多くの手続きや調整が必要な場でもあります。
一般的な流れ
- 葬儀社の選定(病院や警察から紹介されることもある)
- 火葬・通夜・告別式の日時と場所の決定
- 遺影や祭壇、会葬者への連絡などの準備
- 葬儀後の挨拶状・香典返し・法要の案内
費用面で不安があるかもしれませんが、基本的に葬儀費用150万円程度を上限として加害者側へ実費請求可能です。
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心のケアを支える専門家とアクセス方法
事故によって愛する人を失った悲しみは、時が経っても消えるものではありません。カウンセラーや臨床心理士など、専門家の力を借りることは、回復への一歩となります。
専門家の探し方
- 病院の医療相談室や精神科で紹介してもらう
- 自治体の被害者支援窓口に問い合わせる
- グリーフケアに特化した民間サービスを利用する
「こんなことで相談してもいいのか」と迷わず、気持ちが辛いときは、遠慮なく誰かに話してみてください。一歩踏み出すことが、心の再生に繋がります。
死亡事故直後によくある質問(FAQ)と不安への答え
加害者に会いたくないときの対処法は?
無理に会う必要はありません。
精神的にきついときは、「今は会うことができません」とはっきり伝えて大丈夫です。警察や弁護士に仲介を依頼することで、直接の接触を避けることができます。
慰謝料や損害賠償の金額相場は?
ケースによって異なりますが、交通事故による死亡慰謝料は近親者固有の金額も含めて2,000万円~2,800万円が妥当な目安です。
ただし、以下の要素で金額が変動します。
- 被害者の年齢・職業・扶養家族の有無
- 加害者の違反(無免許運転・ひき逃げ・酒酔い等)、加害者の不誠実な態度等
- 過失割合
など
また、死亡慰謝料に加えて、「死亡逸失利益」や「葬儀費用」なども損害賠償金として請求できます。
概算にはなりますが、死亡慰謝料と死亡逸失利益がどのくらい受け取れるのかは、下記の慰謝料計算機から確認可能です。
なお、示談金額の提示を受けたときは、弁護士にチェックしてもらうことを強くおすすめします。
仕事はいつまで休める?会社への伝え方は?
三親等の範囲の親族を対象に忌引き休暇が取得できることが多いでしょう。休暇期間は親等に応じて異なり、父母・配偶者・子の場合は1週間~10日間ほど、祖父母・兄弟姉妹の場合は3日間~5日間ほど、おじおば・甥姪・孫の場合は1日ほどが一般的です。
職場の上司に状況を説明し、忌引き休暇の希望を伝えましょう。休暇期間がわからない場合は、あわせて上司に聞いたり、就業規則を確認したりしてください。
通夜や葬儀の対応で時間が必要になるのはもちろん、事故直後は心身ともに大きなダメージを受けるため、休職も検討する必要があるかもしれません。「今はとても働けない」と感じたら、自分を守るためにしっかり休むことも大切な選択です。
死亡事故直後の対応まとめ
突然、大切な人を失うという現実に、言葉では言い表せない悲しみと混乱を感じておられることでしょう。そんな中でも、初動対応、警察対応、葬儀、補償や保険の請求など、やるべきことは山ほどあります。
本記事を通じて、「今、何をすればいいのか」「どこに相談すればいいのか」を確認し、今後の道筋を確認しましょう。
一人で悩まずに、各専門家に相談してください。特に、示談交渉や賠償問題に関する悩みは弁護士に相談することをおすすめします。
アトム法律事務所では、事故でご家族を亡くされた方を対象に弁護士による無料の法律相談を実施しています。法律相談を希望される場合はまず、下記バナーよりお問い合わせください。24時間いつでも対応中です。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了