後部座席のシートベルトは一般道も着用義務あり|違反点数と事故のリスク

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後部座席のシートベルト着用

後部座席のシートベルト着用は、高速道路・一般道路関係なく法律で定められた義務です。

後部座席でシートベルトを着用していないと、行政処分として違反点数がつく(高速道路上の非着用)事故が起こったときの致死率が数倍から数十倍に跳ね上がる事故の損害賠償金が減額されるといったデメリットが生じます。

この記事では、後部座席のシートベルト着用義務の内容や罰則が科されるケース、非着用の危険性などについて解説します。搭乗者全員の命を守るためにも、ぜひご一読ください。

後部座席のシートベルトは一般道路でも着用義務あり

自動車の運転者は、すべての搭乗者にシートベルトを着用させる義務があります。

以前は、後部座席についてはシートベルト着用は努力義務となっていました。
ですが、2008年6月の道路交通法の改正によって、やむを得ない場合を除き、全席のシートベルト着用が義務化されたのです。

第七十一条の三 自動車(大型自動二輪車及び普通自動二輪車を除く。以下この条において同じ。)の運転者は、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定により当該自動車に備えなければならないこととされている座席ベルト(以下「座席ベルト」という。)を装着しないで自動車を運転してはならない。(後略)

2 自動車の運転者は、座席ベルトを装着しない者を運転者席以外の乗車装置(当該乗車装置につき座席ベルトを備えなければならないこととされているものに限る。以下この項において同じ。)に乗車させて自動車を運転してはならない。(後略)

道路交通法

「後部座席のシートベルト着用が義務化されているのは高速道路だけ」といった誤解も散見されますが、高速道路か一般道路かに関わらず、シートベルトの着用は必須です。

また、2017年6月には道路運送車両の保安基準が改正され、2020年9月1日以降に発売された新型車に対し、後部座席にもシートベルトリマインダーを供えることが義務付けられました。対象となる車両は、乗車定員10人未満の乗用車や車両総重量3.5トン以下の貨物車です。

しかしながら、後部座席のシートベルト着用率は、非常に低い値で推移しています。

警察庁とJAFが合同で実施した「シートベルト着用状況調査結果」によると、2023年の高速道路における後部座席のシートベルト着用率は78.7%、一般道路においては43.7%と半分にも満たないのです。

後部座席のシートベルト着用義務違反の罰則

高速道路を走行中における後部座席のシートベルト着用義務違反に対しては、行政処分として違反点数1点が科されます。

一方、一般道路を走行中のシートベルト着用は義務ですが、違反の罰則規定はないのです。

後部座席のシートベルト着用

走行場所着用義務罰則
高速道路あり違反点数1点
一般道ありなし

もちろんシートベルト着用義務は後部座席だけに科されるわけではありません。運転手や助手席のシートベルト着用義務違反したときも、1点の違反点数が科されるのです。

高速道路と一般道における後部座席のシートベルト着用義務についてくわしくみていきましょう。

高速道路のシートベルト着用義務違反の罰則

高速道路で後部座席の搭乗者がシートベルトを着用していなかった場合、運転手に違反点数1点が科せられます。シートベルト着用義務違反による罰金・反則金はありません。

なお、過去2年以上にわたって無事故・無違反・無処分だった場合、着用義務違反のあと3か月間にわたって交通違反をしなければ、違反点数がリセットされます。

ただし、その場合も違反した前歴は残るので、ゴールド免許をはく奪されることには注意が必要です。ゴールド免許でなくなると、自動車保険の料金が上がる可能性があります。

一般道路のシートベルト着用義務違反の罰則

一般道路で後部座席の搭乗者がシートベルトを着用していなかった場合、罰則はとくにありません。基本的には口頭注意のみになります。

なお、運転席・助手席の搭乗者がシートベルトを着用していなかった場合は違反点数1点が加算されます。

ただし、罰則がないからと言ってシートベルトを着用しなくてもよいと考えるのは禁物です。

本記事内「シートベルト非着用時の危険性」でも説明しているとおり、後部座席でシートベルト非着用だと、一般道路において事故が起きた場合、致死率が約3.2倍になり非常に危険といえます。

また、事故の被害にあったときにシートベルト非着用だと加害者側から支払われる損害賠償金が減額される可能性が高くなってしまうのです。

よって、一般道路でもしっかりとシートベルトを着用するようにしましょう。

シートベルトを着用しなくても罰則のないケース

やむを得ない状況においては、シートベルト着用義務が免除されます。

道路交通法施行令第26条の3の2第2項において、以下のケースで後部座席のシートベルトの着用義務が免除されることが定められています。

シートベルト着用が免除される状況

  • 座席数を超えて子供を搭乗させるためシートベルトが不足している
  • ケガ、障害、妊娠など健康上の理由でシートベルトを着用できない
  • 座高の高さ、極度の肥満など身体的な理由でシートベルトを着用できない
  • 救急隊員や消防隊員が緊急車両に搭乗している
  • 警察官などの公務員が職務のため搭乗している
  • 郵便物の集配業務やゴミ収集業務などで頻繁に乗降する必要がある
  • 要人警護の警護車、パレードの誘導車に搭乗している
  • 選挙の候補者や関係者が選挙活動のため選挙カーに搭乗している

シートベルト非着用の交通事故は危険!自分のためにならない

シートベルト非着用時の危険性

後部座席でシートベルトを着用していない場合、交通事故の被害が大きくなる危険性があります。

交通事故が起こったとき、後部座席の搭乗者がシートベルトを着用していないと、高速道路なら着用時の約25.9倍の致死率一般道路なら着用時の約3.3倍の致死率となります(参考:警察庁「全ての座席でシートベルトを着用しましょう」)。

後部座席の搭乗者がシートベルト非着用だと、すさまじい力で車内にたたきつけられたり、車外に放り出されて道路や後続車に激突したりと重大なケガのリスクが高まります。

また、後部座席の搭乗者が運転席や助手席にぶつかり、前に座っていた人を死傷させるケースもあります。前の席に座っていた人は、エアバッグと座席に挟まれた結果、頭などに大きなケガを負うことになるのです。

後部座席の搭乗者だけでなく、すべての搭乗者を守るためにも、シートベルトを必ず着用しましょう。

シートベルト非着用は損害賠償金額に影響する

交通事故の被害にあったとき、搭乗者がシートベルトを着用していないと、加害者側から支払われる損害賠償金が減額される可能性が高いです。

交通事故後の話し合いでは、被害者側と加害者側にそれぞれどのくらいの責任(過失)があったのかを表す「過失割合」を決めていきます。

被害者側にも過失割合が認められると、その分だけ、受け取れる損害賠償金が減額されます。これを「過失相殺」といい、わずかでも過失がつけば賠償金の減額を受けてしまうのです。

シートベルトを着用していないと、着用していた場合よりも被害が大きくなると想定されます。よって、シートベルト非着用は被害者側の過失として認められることが多いのです。

これまでの裁判例の傾向から、後部座席でシートベルト非着用の場合、被害者側の過失割合が5%~10%程度増えると想定されます。

被害者側の過失割合が5%~10%程度増えるということは、過失相殺により、受け取れる損害賠償金が5%~10%程度減ってしまうということです。

シートベルト非着用の場合、死亡事故や後遺障害が残る事故になりやすいです。損害賠償金が高額になることも多く、過失割合が少し変わるだけで受け取れる金額に大きな影響が出ることになるでしょう。

シートベルト非着用で損害賠償金が減額した裁判例

被害者側のシートベルト非着用により、過失割合が認められた判例を紹介します。

判例

加害者側の車が赤信号を無視して交差点に進入し、被害者側の車に衝突した事故。被害者側の車に乗っていた子供2人はチャイルドシートやシートベルトを着用しておらず、事故の衝撃で車外に放り出され、1人は重傷を負い、1人は亡くなった。

運転手である母親はシートベルトを着用していて軽傷だったこと、子供2人もシートベルトを着用していれば車外に放り出された可能性は低かったことから、シートベルトの非着用により損害が拡大したことが認められた。

そのため、加害者側の一方的な信号無視に基づく事故ではあるものの、被害者側に5%の過失割合が認められた。

(名古屋地方裁判所 平成23年(ワ)第3753号 損害賠償請求事件 平成24年11月27日)

上記の事例は、後部座席のシートベルト着用が義務化された2008年6月1日以降に発生した事故です。裁判官は、シートベルトの着用が義務付けられたにも関わらず母親が子供にシートベルトをさせていなかったことからも、被害者に過失相殺を適用せざるを得ないと判断しました。

自身の適切な過失割合が知りたい場合は弁護士に相談がおすすめ

交通事故の被害にあったときにシートベルトをしていなかったため、加害者側の任意保険会社から、被害者側の過失割合を高く見積もられている方もいらっしゃると思います。

シートベルト非着用により過失割合が増えることは免れませんが、被害者側の過失割合が不当に高い場合は、修正を求めてもよいでしょう。

もし、提示された過失割合が適切かお悩みなら、弁護士に相談することをおすすめします。

加害者側の任意保険会社は、支払う損害賠償金を抑えるため、加害者側にとって有利な過失割合を提示していることがあるからです。

先ほど紹介した判例でも、最終的に被害者側の過失割合は5%と認められましたが、加害者側は被害者側の過失割合は40%であると主張していました。

交通事故に精通した弁護士であれば、過去の判例にのっとった適切な過失割合を算定し、加害者側に主張することが可能です。

また、弁護士に相談・依頼を行うことで、過失割合の算定以外にも様々なメリットを受けることができます。
詳しく知りたい方は『交通事故を弁護士に依頼するメリットと必要な理由|弁護士は何をしてくれる?』の記事をご覧ください。

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シートベルト着用に関するよくある質問

Q1.子供もシートベルトを着用しなければいけない?

子供が6歳未満の幼児の場合、シートベルトではなくチャイルドシート・ジュニアシートの装着が法律上の義務となります。

もし搭乗している6歳未満の幼児がチャイルドシート・ジュニアシートを装着していなかった場合、運転手の違反点数が1点加算されます。

「大人が子供を抱っこして乗ればチャイルドシートは必要ない」といった誤解も見受けられますが、病気などやむを得ない事情がある場合以外は、必ずチャイルドシート・ジュニアシートを装着するようにしましょう。

なお、6歳以上の子供であっても、体格によっては、シートベルトではなくジュニアシートの装着が望ましい場合もあります。

体格が十分大きくなかった場合、首や腹部にベルトがかかることになり、事故の衝撃で受傷してしまうことにつながります。

目安として、子供の身長が140cmに達するまでは、シートベルトではなくジュニアシートを使用するとよいでしょう。

チャイルドシートの正しい使い方や、チャイルドシート不使用時に気になる疑問に答えた関連記事『チャイルドシート不使用の事故で後悔する前に。正しい使い方で子どもを守る』もおすすめです。あわせてご確認ください。

Q2.元からシートベルトがついていない車の場合は?

一部の貨物用車両や、道路運送車両の保安基準においてシートベルトの設置が義務付けられていなかった時代に生産された車両には、元からシートベルトが設置されていないことがあります。

上記のような車の場合は、シートベルトを着用せずに搭乗しても違反にはなりません。

ただし、シートベルトを着用していないと、事故が起こったときに被害が拡大する傾向にあります。運転者は、より一層の安全運転を心がけることが必要になります。

また、後付けでシートベルトを設置できる場合もあるので、設置を検討してみることをおすすめします。

Q3.シートベルトの効果を高める正しい着用方法は?

シートベルトを正しい方法で着用していないと、十分な効果は得られません。

シートベルトの着用方法は以下のとおりです。正しい着用方法を徹底し、万が一事故が起きたときの被害を抑えるようにしましょう。

シートベルトの着用方法

  1. 上体を起こし、シートに深く腰掛ける。
  2. ねじれがないか確認しながらベルトを装着する。
    バックルの金具は音が鳴るまで確実に差し込む。
  3. 肩ベルトと腰ベルトの位置を調整する。
    肩ベルトは首ではなく、鎖骨の中心付近を通るように締める。
    腰ベルトは腹部ではなく、骨盤を巻くように締める。
  4. ベルトにたるみがないか確認する。
    たるみがあれば、肩ベルトを上に引いて調整する。

ただし、妊娠中の方は腹部に負担がかからないような着用方法が必要になります。どのような着用方法が望ましいかについては、医師に確認するとよいでしょう。

まとめ

  • 後部座席のシートベルト着用は2008年に義務化された
  • 高速道路では全搭乗者がシートベルトを着用しないと運転手に罰則がある
  • 後部座席でシートベルト非着用だと事故にあったときの致死率が大幅に上がる
  • 後部座席でシートベルト非着用だと事故にあったときの損害賠償で不利益が生じる

後部座席でシートベルトを着用しなかったことによる悲惨な死亡事故は多数発生しています。

「面倒だからいいや」「一般道路なら取り締まりを受けても罰則がないからいいや」と思わず、シートベルトの着用を徹底しましょう。

また、運転手がシートベルトを着用するよう声掛けを行うことも大切ですし、後部座席に座る人もシートベルト着用の義務を理解し、自らきちんと着用せねばなりません。

すべての搭乗者がシートベルトを着用することが、搭乗者全員の命を守ることにつながります。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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