交通事故被害者向け|示談交渉の注意点とお悩み解決法5選
交通事故の示談交渉は、一般的に加害者側の保険会社が交渉相手になります。
示談交渉には、被害者の方に「これだけは注意して欲しい」という点が5つあり、この注意点を見落として示談を結んでしまうと、十分な示談金が得られなくなる恐れがあります。
「しっかり準備して示談交渉を始めたい」
「保険会社が話を聞いてくれないので示談が進まずに困っている」
「念のため示談内容に問題ないか確認してから示談を結びたい」
この記事では、示談交渉の注意点とお悩み解決策を、示談のプロである弁護士がわかりやすく解説しています。
納得いく示談を結び、適切な示談金を受けとりたいという方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
交通事故の示談とは
示談とは被害者と加害者の交渉による解決
示談とは、交通事故の被害者と加害者の間に発生する問題を、当事者間の話し合いによって裁判外で解決することです。
示談金に含まれるお金
治療費、休業損害、入通院慰謝料、逸失利益、後遺障害慰謝料、修理費など
交通事故の示談交渉で話し合われる内容は以下のような点です。
- 被害・損害の内容は?
- 被害額・賠償額の金額は?
- いつまでにどうやって支払う?
これらの内容を被害者側と加害者側の間で話し合い、合意した内容をお互いに守るのが示談です。
交通事故の当事者同士がお互いに話し合い(または弁護士を代理人に立てて話し合い)、双方の主張を調整しながら、損害賠償の内容を決定していきます。
交通事故の示談においては、専門的な知識をもとに判断すべき項目が多く、簡単には合意に至らないケースも珍しくありません。
怪我を負ったことへの不安や、加害者への怒りなど、被害者の立場からするとすんなりと示談には応じられない事情は多々あります。
さらに言えば、保険会社の言い分を鵜呑みにして安易に示談を結んでしまうと、その後の人生に大きな影響を残してしまうかもしれません。
保険会社は、なるべく被害者に支払う示談金を安く低く抑えようとします。
保険会社は営利企業なので、ある意味当然と言えるでしょう。
適正な額の示談金を受け取れるように交渉を進めるためには、示談・裁判の専門家である弁護士に相談するのが最適です。
私たちアトム法律事務所にご依頼いただいた方が、示談金の大幅増額に成功した実例を紹介します。
示談金が5倍以上増額した実例
交通事故により右足首を骨折した30代の男性に、後遺障害等級は10級11号が認定されたケースです。
保険会社は当初、示談金として総額414万円を提示してきました。
アトムの無料相談を利用し示談金を計算したところ、大幅に増額を見込めることが判明。
アトムに依頼した結果、弁護士の交渉開始から2か月後に2153万円で示談が成立しました。
総額1739万円の金額アップ、増額幅にして約5.2倍増になります。
なぜ被害者の方が弁護士に交渉を依頼すると、示談金額が5倍以上も増額したのでしょうか?
それにはちゃんとした理由があるのですが、その説明の前に、示談交渉の流れや注意すべき点をひとつひとつ確認していきましょう。
示談交渉の流れ
示談開始前から解決までの流れ
交通事故の示談交渉の流れについて、順番に説明していきます。
示談交渉を始める前に、示談の流れの全体像を把握して、自分はいまどの段階にいるのかを理解することで、示談交渉を上手く進めていけるようになります。
示談交渉が始まるのは、事故発生後に警察や保険会社への連絡も済み、治療を終えてからになります。
- 交通事故が発生
- 事故状況や相手(加害者)の身元の確認
- 警察への通報、実況見分調書の作成
- 加害者、被害者双方の保険会社への通知
- 怪我の治療
- 治療完了により症状固定
- 後遺障害等級の認定により賠償損害額確定
- 加害者側の保険会社と示談交渉
- 示談成立、法的手続き
- 決裂した時は紛争処理機関、法的機関へ
怪我の治療や症状固定について保険会社から色々と言われ疑問を抱えている方は、弁護士無料相談をお気軽にご利用ください。
示談交渉に入る前にやるべきこと
警察への連絡と怪我の治療
前の段落「示談開始前から解決までの流れ」をご覧いただければ、示談交渉前に被害者がやっておくべきことが分かります。
- 警察への通報
- 加害者の身元の確認
- 実況見分調書作成への協力
- 加害者、被害者双方の保険会社への通知
- 怪我の治療
交通事故被害に遭った後に冷静な判断をするのは難しく、中にはうっかり忘れてしまいそうになることもあるかもしれません。
ですが、警察への通報から怪我の治療まで、どれも大事な手続きですので抜かしてはいけません。
実況見分調書の作成
実況見分調書の作成においては、自分の記憶を元に説明し、警察からの誘導に引っ張られないように気を付けてください。
一度作成された実況見分調書は、基本的に後から訂正してもらえない上に、裁判で重要な証拠となりますので、最初にしっかりした調書を作ってもらうことが肝心です。
治療から保険会社との交渉まで
通常、交通事故の被害者が怪我を負っている場合は、加害者側の保険会社が被害者の治療費を支払います。
保険会社の担当者の中には、特に親身に優しく接してくれる人もいます。
しかし、いくら人柄が良く親切に思える人物でも、保険会社の担当者の言うことを鵜呑みにするのは絶対にNGです。
示談交渉で事故被害者が注意すべき5つのポイント
(1)加害者側の保険会社の言い分を鵜呑みにしない
主治医から症状固定と言われた
怪我の治療を続けても症状が完治しない場合、これ以上の回復が見込めない場合は、症状固定の判断をし、後遺障害等級の認定申請に進みます。
治療継続の必要性の判断は医師が行い、医師が治療を継続しても回復の見込みが低いと判断したら、症状固定の指示を受けることになります。
症状固定をしたら、後遺障害等級の認定を申請し、その結果がでてから示談交渉に進みます。
保険会社から治療打ち切りと言われた
ところで、医師の判断すべき怪我の治療について、保険会社が口をはさんでくることがあります。
交通事故被害者の怪我がまだ治っていないのに、早めに治療を切り上げさせようと、こんなことを言ってきます。
『治療費の支払いは今月で打ち切りになりますので、そろそろ症状固定に進みましょう』
これは多くの被害者が陥りやすい罠です!
このような保険会社からの話を、絶対に鵜呑みにしてはいけません。
被害者の治療が長引けば、その治療費を負担している保険会社の支払いは増えます。
保険会社としては、被害者になるべく早く怪我の治療を打ち切ってもらい自分たちの支出を少なくしたい、なるべく早く示談交渉に入って速やかに終了させたい、という思惑があるのです。
被害者側は、症状固定には慎重になる必要があります。
症状固定後に発生した治療費や休業損害は相手方保険会社に請求することができないので、症状固定のタイミングは主治医と相談し、医学的見地から適切に判断しなければなりません。
アトム法律事務所では、治療打ち切りや症状固定に関する無料相談を受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。
(2)後遺障害等級の認定前に示談交渉を始めない
等級認定の後に慰謝料などが決まる
※この段落の内容は「怪我が完治せず後遺症がのこってしまった方」に向けた内容になります。
医師が症状固定の判断をしたら、被害者の次のステップは、後遺障害等級の認定を受けることです。
後遺障害とは、(略)、身体に残された精神的又は肉体的な毀損状態のことで、 (略) 、具体的には自動車損害賠償保障法施行令別表第一又は第二に該当するものが対象となります。
国土交通省
示談交渉を始めるには前提として後遺障害等級の認定結果が出ている必要があります。
何故なら、示談金の慰謝料などを決める際に、後遺障害等級の何級が認定されているか、ということが金額に大きく関わってくるからです。
- 保険会社の言うとおり示談交渉はさっさと終わらせてしまおう
- 面倒な示談交渉の精神的負担から一刻も早く逃れたい
このような理由で被害者の方が示談を急ぐのは、保険会社の思うつぼです。
まずは落ち着き、後遺障害等級の認定結果を得られるまでは示談交渉を始めてしまわないようにご注意ください。
後遺障害申請の相談先は弁護士
- 後遺障害等級の認定を申請したいけどやり方が分からない
- 思うような認定結果を得られなかった
このようなお悩みを抱えた被害者の方が相談する先は、保険会社でも病院でも無く、交通事故に強い弁護士です。
一例として、アトムの弁護士が後遺障害等級の申請結果に対する異議申し立てを行い、適正な後遺障害等級が認定された事例を紹介します。
傷病名 | 右手首TFCC損傷 |
後遺障害の内容 | 右手首の可動域制限 |
後遺障害等級 | 無等級 → 12級6号 |
当初の被害者請求では後遺障害等級が認められなかったが、アトム法律事務所の顧問医による意見書と主治医への医療照会結果等を添えて異議申立てした結果12級6号が認定された。※2017年アトム名古屋支部の解決事例
後遺障害等級の認定申請を依頼したい、申請結果に不満があるので異議申し立てを行いたい、といったお困りごとは、交通事故に強いアトム法律事務所の弁護士にご相談下さい。
(3)適正な等級認定を受ける
等級認定結果は正しいとは限らない
※この段落の内容は「怪我が完治せず後遺症がのこってしまった方」に向けた内容になります。
後遺障害等級は1級から14級まであり、14級が一番軽く、1級が一番重くなります。
治療を行ったが怪我が完治せず症状が残ってしまった場合、慰謝料などの損害賠償金額は後遺障害等級の重さに大きく左右されます。
ここで注意すべき点は、後遺障害等級の認定結果が必ずしも最適であるとは限らないということです。
後遺障害等級は、損害保険料率算出機構(損保料率機構)という専門機関が認定していますが、申請書や資料の不備により、適正な等級認定が行えないことは実際にあります。
等級認定が正しく行われないと、受け取れる損害賠償額に大きな開きが出てしまうので、適正な等級認定を受けることは極めて重要です。
等級 | 慰謝料 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
前の段落で紹介したアトムの増額事例は、いったん後遺障害非該当と結果がでていた事案ですが、アトムの弁護士が医師と協力し証拠を揃えなおすことで、最終的に後遺障害12級が認められました。
そのまま示談していたら、後遺障害慰謝料だけで290万円分の損をしたことになります。
こちらのケースは青信号で横断歩道を渡っていた自転車が左折車にはねられた事故で、自転車を運転していた被害者の方のご家族からLINEで相談が寄せられました。
事故に遭われたのは10代の女性で、手首の関節を痛め日常のドアノブをひねる動作程度でも痛みを感じるご様子でした。
アトム顧問医の意見書や主治医への医療照会結果を添えて後遺障害等級の申請を行った結果、後遺障害等級12級6号が認められました。
当初の申請では「所見なし」として却下されていたところ、適切な医学的証拠を添えることで、調査機関の決定を覆すことに成功し、保険会社との交渉を優位に進めた結果、1300万円以上の損害賠償金を獲得することができました。
等級認定を弁護士に依頼するメリット
後遺障害等級の認定には、医学的な証拠資料が不可欠ですが、医師も申請手続きの専門家ではありませんので、患者の側から「こんな資料が欲しい」と依頼することが必要です。
ここで弁護士の出番があります。
交通事故に強い弁護士であれば、後遺障害等級の認定申請の専門家ですので、どんな資料が必要か熟知しており、手際よくそろえることが可能です。
弁護士に依頼せず、保険会社任せにしたりすると、書類に不備があってもそのまま申請手続きを進められてしまい、本来認められるべき後遺障害等級よりも低い認定結果になってしまうおそれがあります。
また、後遺障害等級の認定結果がおかしいときは、異議申し立てをして認定のやり直しを請求することも可能です。
異議申し立てについても、前回の申請の不備を分析し、医学的な証拠を取りそろえる作業を綿密に行うという、非常に専門性の高い作業ですので、必ず交通事故に強い弁護士に相談するようにしてください。
後遺障害認定の流れを詳しく知りたい方は『交通事故の後遺障害とは?認定されたらどうなる?認定の仕組みと認定率の上げ方』を合わせてごらんください。
後遺障害等級の認定結果に疑問がある場合は、弁護士無料相談をご利用ください。
無料で弁護士からのアドバイスを受けられます。
(4)提示された示談金がどの基準で計算されたか確認する
示談金の慰謝料相場には3つの基準がある
後遺障害等級の認定結果が出ると、いよいよ被害者と保険会社の示談交渉が本格的に始まります。
示談交渉が始まると、まずは加害者側の保険会社から示談金が提示されます。
提示された示談金は被害者の方にとって妥当と思える金額でしょうか?
あるいは、低すぎると感じる金額でしょうか?
じつは、保険会社が提示してくる損害賠償金は、ほぼ間違いなく被害者の方が本来受け取れるよりも低い金額にされています。
保険会社の提示する金額を見て「低すぎる」と感じた被害者の方は、今すぐ弁護士に無料相談してください。
何百万円という金額を提示されて「結構もらえたな」と満足されている方もいるかもしれませんが、本当の適正な賠償金額は提示額の5倍以上だった、というケースも珍しくありません。
しかしながら、通常は一生に一度あるかどうかの交通事故で、正確な損害賠償金の額を判断できる方はまずいません。
保険会社の担当者に『あなたの損害賠償金は〇〇円になります。』と言われたら、そういうものかと納得してしまうことが多いでしょう。
ですが、そこですんなり示談書に合意してしまうのは絶対に避けてください。
示談を慎重にする理由
一度合意した示談は、基本的に後からやり直すことはできません。
後から「もっと示談金を増額できた」ということに気付いても、示談が済んでしまっていたら全て手遅れなのです。
たとえ被害者の方が一生ものの怪我を負ってしまい生活に困っていても、あるいは死亡事故で家族を失ったご遺族が深い悲しみを背負っていても、保険会社は一度合意した示談の内容をやり直してはくれません。
では、なぜ保険会社が提示してくる損害賠償金は、適正な金額よりも低いのでしょうか?(そのようなことが許されるのでしょうか?)
その理由について、損害賠償金の3基準を軸に解説していきます。
3つの基準と言うと難しく感じてしまう方もいるかもしれませんが、簡単に言えば「自賠責基準が最も低い相場、弁護士基準(裁判基準)が最も高い相場」ということだけ確認いただければ大丈夫ですので、ご安心ください。
自賠責基準
交通事故で被害に遭われた方に必ず最低限の補償ができるように、という趣旨で運営されているのが自賠責保険です。
ご自分で車やバイクを運転される方はご存じかと思いますが、自賠責保険は運転する人が必ず加入を義務付けられている保険です。
最低限の補償という趣旨からも分かるように、自賠責保険の計算に用いる自賠責基準は、被害者が受け取れる金額の全体から見るとかなり低い水準になります。
自賠責基準の後遺障害慰謝料相場を例に挙げてみましょう。
等級 | 慰謝料 |
---|---|
第1級 | 1650万円(1850万円) |
第2級 | 1203万円(1373万円) |
等級 | 慰謝料 |
---|---|
第1級 | 1150万円(1350万円) |
第2級 | 998万円(1168万円) |
第3級 | 861万円(1005万円) |
第4級 | 737万円 |
第5級 | 618万円 |
第6級 | 512万円 |
第7級 | 419万円 |
第8級 | 331万円 |
第9級 | 249万円 |
第10級 | 190万円 |
第11級 | 136万円 |
第12級 | 94万円 |
第13級 | 57万円 |
第14級 | 32万円 |
※()内は被扶養者がいる場合
※2020年4月1日以降に発生した事故の場合
自賠責基準の後遺障害慰謝料をご覧になっていかがでしょうか?弁護士基準の後遺障害慰謝料の方が2倍以上も高く、受け取れる金額の相場に大きな開きがあることがお分かりいただけると思います。
さらに、自賠責保険では、受け取れる補償額の総額に上限が決められています。
例えば、後遺障害等級1級(別表2)が認定され、後遺障害慰謝料が1150万円、逸失利益が3000万円という場合でも、合計の4150万円を受け取れるわけではなく、後遺障害等級1級(別表2)の上限である3000万円しか受け取れません。
※逸失利益とは、後遺障害によって将来減ってしまうであろう収入のこと。
損害に応じて支払われる保険金(共済金)には、傷害・死亡・後遺障害・死亡に至るまでの傷害について、それぞれ支払限度額があります。
国土交通省
自賠責基準の相場が低いのも、合計額に上限があるのも、自賠責保険はあくまで最低限の補償である、という趣旨からすれば仕方のないことかもしれません。
自賠責保険の相場を詳しく知りたい方は『自賠責保険から慰謝料はいくらもらえる?計算方法や支払い限度額を解説』を合わせてごらんください。
では、自賠責保険ではカバーできない分の補償を、被害者はどこから受け取れば良いのでしょうか?
自賠責保険の不足分をカバーしてくれる任意保険について、次で解説していきます。
任意保険基準
最低限の補償である自賠責保険だけではカバーしきれない被害者への損害賠償金の残り分は、加害者側の任意保険会社へ請求することになります。
任意保険は加入が強制されていませんが、2021年3月末の時点で普及率75.1%、自動車共済も合わせれば88.4%の車が加入している、という統計結果が出ています。
参考:損害保険料率算出機構「2021年度 自動車保険の概況」
交通事故では多くの場合、任意保険会社との示談交渉で被害者の方が受け取れる金額を決定することになります。
任意保険会社は、各社独自の基準で損害賠償額を計算しており、被害者との示談交渉でも独自の基準(いわゆる任意保険基準)の計算結果を主張してきます。
ただし、この金額は3つの基準の2番目の水準で、自賠責よりも多少は多いが弁護士基準(裁判基準)よりも大幅に少ない額になります。
弁護士基準
損害賠償金計算の3基準で最も高く、適正と言えるのが弁護士基準と呼ばれる基準です。
その名の通り、被害者側の弁護士が計算をする時に使う基準です。
また、弁護士基準は過去の裁判例を元にした基準であり、別名で裁判基準とも呼ばれます。
裁判で正式に「これだけの損害賠償が必要である」と認められた金額であり、しっかり法的根拠に基づいた計算基準なので、任意保険基準よりも弁護士基準の方が適正と言えるのです。
被害者の立場からすれば、しっかりした法的根拠に基づきしかも高額な賠償を受けられるとなればベストです。
一方で保険会社からすれば、自分たちの支払う賠償金が増えてしまう前に、早めに示談を結んでしまおうと躍起になることでしょう。
保険会社の担当者は、交通事故の示談を日常的にこなしているプロですから、被害者との交渉で任意保険基準を主張し示談まで持っていくことは得意です。
そもそも「弁護士基準」という相場があることを被害者に教える保険会社はまずありませんし、被害者自身が弁護士をつけずに弁護士基準の相場を主張しても、保険会社は取り合ってくれません。
「弁護士基準はあくまで裁判になった時の金額であり、被害者と加害者双方が納得して示談するなら金額は低くても法的に問題ない」という考えのもと、保険会社は独自の基準を主張してくるのです。
この仕組みさえ知っていれば、保険会社と安易に示談をしてしまうことが間違いであることがご理解いただけると思います。
弁護士基準の示談金を受け取るための方法
ではどうすれば弁護士基準の適正な示談金を受け取ることができるのでしょうか?
一言で言えば、被害者が弁護士をつけて保険会社との交渉を進めてもらう、ということにつきます。
弁護士は裁判の専門家ですので、示談交渉が決裂し裁判になったとしても、必要な証拠をスムーズに集めて適切な主張をし、被害者の方がしっかりと弁護士基準の損害賠償金を受け取るように手続きを進められます。
また保険会社からすると、弁護士が入ることで裁判が現実的になり、実際に裁判になる前に弁護士基準の金額(あるいはほぼ同等の金額)まで増額して示談で終わらせたい、と考えるようになります。
この『本当に裁判になるかもしれない』というプレッシャーが、弁護士をつけることの大きなメリットであり、弁護士基準を保険会社に認めさせるための必須条件になります。
ここで、アトム法律事務所が実際に解決した事例をご紹介します。
傷病名 | 右寛骨臼骨折、左ひざの痛み |
後遺障害の内容 | 股関節の可動域制限、膝の神経症状 |
後遺障害等級 | 併合11級 |
後遺障害11級が認定済、共済からの465万円という提示額に疑問を感じたご本人がアトムに相談。示談交渉段階では約1100万円の増額提示があったが、適正相場からは遠く、交通事故紛争処理センターの和解あっ旋を利用。結果、ご依頼から4か月で5.1倍増の2458万円まで増額に成功。
傷病名 | 脳挫傷、頭蓋骨骨折 |
後遺障害の内容 | 高次脳機能障害 |
後遺障害等級 | 7級4号 |
後遺障害7級が認定済、相手方任意保険会社から既払い除き3537万円の提示あり。過失割合や金額の妥当性が気になりアトムに相談。逸失利益の年数等で増額交渉を重ねた結果、2倍増の7350万円まで増額に成功。
いかがでしょうか?
弁護士に依頼していなければ当初の提示額400万円/3000万円のままで示談するしかなく、被害者の方からすると2000万円/4000万円近くの損をしていたかもしれない、という事案です。
被害者自身ではいくら交渉してもほとんど増額してくれなかったのに、弁護士がついた途端に保険会社がすんなり増額に応じた、というケースはこの他にも多々あります。
弁護士に相談することの重要性とその理由がお分かりいただけたかと思います。
弁護士は、交通事故の示談と裁判に精通したプロですので、弁護士基準への増額交渉はお任せください。
(5)示談金の内訳・種類を確認する
損害賠償金の種類と金額を示談前に確認
示談交渉が始まると、加害者側の保険会社から”損害賠償金額の計算書”が送られてきます。
”損害賠償金額の計算書”の内容は、交通事故で発生した損害賠償金の種類と、それぞれの金額内訳です。
ここで注意するべきなのは、「本当は請求できるはずの損害賠償金が計算に含まれていなかったり、金額が低く見積もられている」という点をしっかりチェックすることです。
とは言え、損害賠償金には種類が多く、金額の計算方法もそれぞれ変わってくるので、一般の方が正確に内容をチェックするのは困難です。
損害賠償金の種類
- 治療費、入院雑費、通院交通費、付添費、入通院慰謝料、休業損害
- 後遺障害慰謝料、逸失利益、将来介護費、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費
- 葬儀関係費
- 車の修理費、買替差額、代車使用料
一口に損害賠償金と言っても、内訳を見るとこれだけ多くの種類があります。
これらをまとめて示談金と呼んだり、保険金と呼んだり、損害賠償金と呼んだりしています。
※示談で決まった金額か、裁判で決まった金額か、など使い分けをする場面もありますが、内容としては同じ意味と考えていただいて大丈夫です。
慰謝料
慰謝料とは、被害者が受けた「精神的苦痛」に対して支払われるもので、”示談金”や”賠償金”の中の一項目
一般的に、”慰謝料”というと賠償金全体をイメージされる方も多いと思いますが、慰謝料以外にも受け取れる賠償金の種類は様々あります。
保険会社から送られてきた”損害賠償金額の計算書”を見て、「慰謝料があるからOK」と早まらないよう注意してください。
示談金の内訳や金額が正しいか知りたい
保険会社は、保険金の支払額を抑えるために、削れそうな項目を削ったり、金額をなるべく低く見積もるよう、知恵を絞ってきます。
一度合意した示談は取り消せないので、後から「この休業損害が抜けてたから支払って」といった請求をしても手遅れです。
被害者の方が身を守る手段はただ一つ、専門家である弁護士に、計算書の内容に不備が無いかの確認を依頼することです。
アトム法律事務所のLINE相談であれば、計算書の写真を添付するだけでお手軽に無料相談できますので、いますぐご利用ください。
損害賠償請求の時効
交通事故の賠償請求の時効は3年/5年
交通事故が起きてから示談が成立するまでには、一定の期間が必要です。
保険会社の提示する内容が合意できるものでなければ、粘り強く示談交渉を続けるか、裁判を起こすなどの手段を考えなくてはいけません。
そこで忘れてはいけないのが、損害賠償請求権の消滅時効の問題です。
交通事故の保険金を受け取るにも時効があり、人身事故の場合は、自賠責への請求なら3年、加害者側への請求なら5年が基本です。
種類 | 自賠責 | 加害者側 |
---|---|---|
傷害(後遺障害以外) | 事故発生から3年 | 事故発生から5年(3年) |
後遺障害 | 症状固定から3年 | 症状固定から5年(3年) |
死亡事故 | 亡くなってから3年 | 亡くなってから5年(3年) |
※()内は2020年4月1日 改正民法施行前の時効
なお、ひき逃げなどで加害者が特定できない場合は、事故の発生から20年、または加害者が特定できてから3年/5年で時効となります。
時効が近い時はどうすればいい?
損害賠償請求の時効が近い場合に、被害者ができることは”時効の更新”です。
保険会社に権利を承認してもらい、時効の更新をすれば、3年/5年という時効はストップされます。
その間に示談交渉を進めるか、裁判を起こすかといった対応を取り、適正な損害賠償金を受け取れるように手続きを進めていきます。
保険会社は被害者の味方ではない
保険会社と被害者は利益が対立する関係
「保険会社は慰謝料など多額のお金を払って被害者を助けてくれるいい人たち」とお考えの方もいるかもしれませんが、これは大きな間違いです。
保険会社は、あくまで営利企業であり、被害者への補償を第一の目的にしているわけではありません。
被害者へ支払う保険金を減らすほど、保険会社自身の利益が増えるという、利益が真っ向から対立している関係なのです。
もちろん保険会社の側は『これが最大限に支払える額です、他の方にもこの水準でご納得いただいてます』といった話をしてくるでしょう。
しかし、今まで見てきたように、保険会社が示談交渉で提示する額は、被害者の方が本来受け取れる適正額よりもはるかに低い水準の金額です。
「保険会社の言うことだから信用できるはず」と考え、保険会社の主張を真に受けてしまう被害者の方もいると思います。
繰り返しになりますが、保険会社は被害者の味方ではありません。
交通事故被害者と保険会社は、一方が得をすれば一方が損をするという、お互いの利益が相反する関係にあるのです。
保険会社は営利企業である
保険会社が被害者に対して、満足な保険金を支払おうとしない理由は、保険会社が営利企業であるからです。
さらに言えば、被害者に支払う金額を減らせれば減らせるほど、自分たちの利益が増えるからです。
逆に言えば、被害者に高額な保険金を支払うことは、保険会社にとって損失であり、営利という目的から外れてしまいます。
なので、保険会社は示談交渉の際に、なるべく低い金額で示談をまとめようとしてきます。
ただし、被害者の代理人として弁護士がついた場合は事情が変わり、すんなりと保険金の増額に応じてくることが多いです。
弁護士であれば実際に裁判になるかもというプレッシャーをかけられます。
保険会社としても、実際に裁判になれば訴訟準備が大変であり、どちらにせよ判決に従って高い示談金を払わなければいけない、それならば示談金を増額して早めに示談交渉をまとめてしまった方が余計な手間がかからなくてよい、と判断してきます。
被害者との関係 | 保険会社 | 弁護士 |
---|---|---|
示談交渉 | 被害者の味方ではない | 被害者の味方 |
示談金額 | 利益が対立 | 利益が一致 |
交通事故の示談で困った時は弁護士に相談
示談を弁護士に依頼する5つのメリット
「保険会社との示談交渉で納得いかないところがある」「初めての示談交渉で不安」このようなお悩みは、交通事故に強い弁護士に相談してください。
弁護士に依頼することで5つの大きなメリットが得られます。
1.示談金が増額する
ここまで解説してきたとおり、保険会社は低い相場の損害賠償額で示談交渉を進めてきます。
増額を狙うためには、裁判になるというプレッシャーが必要ですが、そのためには弁護士の存在が不可欠です。
「増額しても弁護士費用で沢山お金もっていかれるんでしょ?」とお考えの方もご安心ください。
多くの弁護士事務所は、交通事故の弁護士費用について”着手金無料+成功報酬制”をとっており、弁護士に依頼をしても損をしないシステムになっています。
また、弁護士費用特約に入っていれば、弁護士費用は全て自分の保険会社の負担となりますので、被害者の方の自己負担はほとんどの場合0円となります。
弁護士費用特約に入っている方は、必ず弁護士に相談してください。
中には、増額の見込みが低く弁護士に依頼しても得にならない場合もありますが、その場合は事前の無料相談でしっかりお伝えしますのでご安心ください。
2.専門的アドバイスを受けられる
適正な示談金を受け取るためには、しっかりとした証拠の準備が必要です。
これには、専門家である弁護士だからこそ分かるコツがあります。
例えば、通院慰謝料を適切に受け取るためにはどれくらいの頻度で通院すれば良いか、など知らないと損をしてしまう知識が多々あります。
弁護士に相談することで、被害者の方が示談交渉を優位に進め、適正な示談金や後遺障害等級認定を受けるためのアドバイスを受けられます。
3.適切な後遺障害等級が認定される
医師は治療の専門家ですが、後遺障害等級認定の専門家ではありません。
交通事故に強い弁護士であれば、後遺障害等級の認定申請を知り尽くしていますので、どれだけの治療期間が必要か、どのような検査を受けどのような書類を準備すれば良いか、適切かつスピーディーに行えます。
被害者の方が適切な後遺障害等級を認定してもらうためには、弁護士に相談するのが最適です。
4.示談交渉の煩わしさから解放される
加害者や保険会社とのやり取りは、被害者の方にとって最も精神的な負担が大きいところでしょう。
ただでさえ治療や休職の手続き等が大変な中で、示談交渉に神経をすり減らすのは得策ではありません。
そんな時に最も頼れるのが弁護士です。
弁護士であれば示談交渉を丸ごと任せられるので、被害者の方が交渉に煩わされることは無くなります。
5.治療に専念できる
煩わしい示談交渉から解放された結果、被害者の方はご自分の怪我の治療に専念できるようになります。
交通事故被害者の方にとって、一番大事なのは事故前の日常を取り戻すことです。
そのためには、やはり怪我の治療に専念し、回復を目指してください。
治療に専念しても、どうしても元通りとはいかない部分については、示談金や損害賠償金で補償をすることになりますので、その際は弁護士の力を遠慮なく頼ってください。
保険会社側の弁護士は中立ではない
被害者の方が弁護士に依頼することで「慰謝料増額」「交渉お任せ」といったメリットが受けられます。
ここで注意して欲しいのが、保険会社がつけた弁護士はあくまで保険会社の味方であり、中立の存在でもなければ被害者の味方でもない、ということです。
弁護士が主張することなら間違いないだろう、公平な判断をしてくれるはずだ、という考えは全くの誤解です。
弁護士はあくまで自身の依頼者の味方であり、依頼者の利益を第一に活動します。
弁護士は公平な判断をする仕事ではなく、公正中立な判断をするのは裁判官の役目です。
つまり、保険会社が弁護士をつけても適正な示談金になるわけではない、むしろ逆に保険会社側の言い分を強固に主張してくる、ということになります。
保険会社が弁護士をつけてきたら、ただでさえ困難な示談交渉がより困難になりますし、裁判まで進む可能性も高まります。
被害者の方が、保険会社側の弁護士に対抗するためにするべきことは、被害者の味方になってくれる弁護士に依頼し、適正な示談金を得るための手続きを専門家に一任することです。
保険会社側の弁護士には、被害者も弁護士を立てて対抗するのがベストです。
交通事故に強い弁護士に無料相談
弁護士に相談といっても多くの法律事務所があり、どの弁護士に相談すれば良いか分からない、という被害者の方も多いと思います。
弁護士にも得意分野があり、日常的に取り扱っている分野の弁護活動と、経験のない分野の弁護活動では、スピードや正確性に差がでてきます。
弁護士に依頼する場合には、交通事故の経験豊富な弁護士を選ばないと、解決が遅れたり適正な示談金を受け取れないおそれがでてきてしまいます。
交通事故に強い弁護士を探すのであれば、まずは交通事故の取り扱い実績とお客様からの感想・口コミを参考にしてください。
その上で、実際にいくつかの法律事務所に連絡をして弁護士と相談をし、相性が良さそうな弁護士に依頼する、というのが安心です。
アトム法律事務所は、交通事故の無料相談実績21,121件・解決実績2,097件という実績を誇ります(2020年5月31日時点)。
法律相談は電話・LINEで実施しており、気軽にご利用いただけます。
もちろん相談者の方が契約を強制されるような心配はありませんので安心してご連絡ください。
まずは電話・LINEでお気軽にご連絡いただき、私たちに状況とお困りごとを教えてください。
被害者の方が思われている以上に、弁護士がお力になれることは沢山あります。交通事故の示談を考えている方は、私たちアトム法律事務所にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了