親の車で事故した時、親や自分の保険は使える?
更新日:

親の車で事故すると、事故相手への損害賠償金や自身が受けた損害に対するお金が必要になります。
自分の車で事故した場合なら自分の保険を使えば良いですが、親の車で事故した場合は保険の補償を受けられるのか、不安になるでしょう。
この記事では、親の車で事故した時に親の保険を使えるケース、親の車で事故した時に使える自分の保険を解説します。
目次


親の車で事故した!親の保険は使える?
交通事故にあった場合に使える保険としては、基本的に自賠責保険と任意保険があります。
- 自賠責保険
加入者が交通事故にあった場合、その相手方に対して最低限の補償をする保険 - 任意保険
自賠責保険だけでは足りない相手方への補償や、加入者自身の損害を補填する保険- 相手方への補償:対物・対人賠償保険
- 自身に対する補償:人身傷害保険、車両保険、搭乗者傷害保険など
つまり、事故相手への補償では自賠責保険と任意保険を使い、自身の損害に対しては任意保険を利用するという仕組みです。
では、親の車で事故になった場合、親の自賠責保険と任意保険は使えるのでしょうか。この点について解説していきます。
自賠責保険は人身事故なら原則使える
親の車を借りて事故になった場合、親が加入する自賠責保険は基本的に使えます。
自賠責保険は被保険者が交通事故を起こした際、相手方に最低限の補償をすることを目的とした保険です。
つまり、事故相手から損害賠償請求された際に使える保険となります。
ただし、以下の点には注意しましょう。
- 自賠責保険の補償対象となるのは人身事故のみ
- 自賠責保険の補償には上限があるため、上限超過分は別途用意する必要がある
任意保険は「運転者の範囲」「年齢条件」が合えば使える
親の任意保険は、自身が「運転者の範囲」と「年齢条件」の2つの条件を満たしていれば、利用可能です。
- 運転者の範囲
任意保険の適用範囲となる人を定めた条件 - 年齢条件
任意保険の適用となる人を年齢で絞った条件
上記条件について親の任意保険が使えるケースをまとめると、以下の通りです。
運転者の範囲 | 年齢条件* | |
---|---|---|
親と別居で未婚 | 「限定なし」 「家族限定」 | – |
親と別居で既婚 | 「限定なし」 | – |
親と同居で未婚 | 「限定なし」 「家族限定」 | 設定次第 |
親と同居で既婚 | 「限定なし」 「家族限定」 | 設定次第 |
*別居の場合は、既婚・未婚問わず年齢条件の制限を受けない
例えば親と別居している未婚の子なら、「年齢条件」の制限は基本的に受けません。したがって、「運転者の範囲」が「制限なし」または「家族限定」になっていれば親の任意保険を使えます。
それぞれの条件について、詳しく解説します。
実際に親の任意保険を使えるかどうかは、保険の規約などから実際に確認してみてください。
また、親の保険を使うと保険の等級が下がり、翌年からの保険料が上がってしまうことがあります。条件面で親の保険が使えたとしても、保険の等級のことも考慮して親の保険を使うかどうか検討してみましょう。
運転者の範囲
運転者の範囲とは、「被保険者としてその任意保険を使えるのは誰か」を示したものです。
以下のように設定されていれば、親の車で事故した子供も親の任意保険を使えます。
- 限定なし
誰が契約車を運転していても任意保険を使える→親との同居・別居、既婚・未婚問わず使える - 家族限定
被保険者とその配偶者、同居の家族、別居で未婚の子供は任意保険を使える→親と別居で既婚の場合以外は使える
運転者の範囲が「本人限定」「本人と配偶者限定」になっている場合は、子供は親の任意保険を使えません。
運転者の範囲を狭くしているほうが保険料が安くなるため、子供が車を運転することを想定しつつもあえて子供を運転者の範囲に入れていないこともあります。
年齢条件
年齢条件とは、「〇歳以上の人はこの任意保険を使える」という被保険者として認められる人の年齢の条件です。
まず、別居している子供は既婚・未婚を問わず年齢条件の制限は受けないため、親と別居している方は「運転者の範囲」にさえ入っていれば、年齢条件は気にする必要はありません。
親と同居している方は、ご自身の年齢が年齢条件に当てはまっているか確認してみましょう。
たとえ親の保険の「運転者の範囲」に含まれていたとしても、年齢条件をクリアしていなければ親の任意保険は使えません。
親の任意保険を使えるケース
- 親と別居で既婚または未婚:「運転者の範囲」に入ってさえいれば、「年齢条件」に関係なく使える
- 親と同居で既婚または未婚:「運転者の範囲」と「年齢条件」をともにクリアしていれば使える
親の車で事故した!自分の保険は使える?
親の車で事故をした場合、自身で加入している自動車保険の「他車運転特約」が使えることがあります。
ただし、常に使えるとは限らないため、親の車の事故で自分の他車運転特約が使える場合について解説します。親の車で事故したときに使える保険がない時の対策もあわせて解説するので、ご確認ください。
親と別居なら「他者運転特約」が使える
他車運転特約とは、「自分自身でも車を持っていて任意保険に入っているが、他人の車を借りていて事故になった」という場合に使える保険です。
運転していたのが親の車であっても、親と別居している場合は他車運転特約が使えます。親と同居している場合は、親の車に対して自分の他車運転特約は使えません。
なお、同居か別居かは実際の生活拠点から判断されます。
住民票の住所が親と同じだったり、子が親の扶養に入っていたりしても、実際に親子で別居していれば他車運転特約は使えます。
他車運転特約の補償内容
- 対物・対人保険:事故相手への賠償金の補償
- 人身傷害保険:自分が受けた損害への補償
- 車両保険:事故で損壊した車の修理費などの補償
細かい内容は保険会社やプランにより異なることがあります。詳しくは保険の約款などをご確認ください。
使える保険がないときは「1日自動車保険」が安心
「親の車を借りたいけれど、使える保険がなくてもしもの時が心配」というときは、「1日自動車保険」に加入することがおすすめです。
「1日自動車保険」とは1日単位、あるいは時間単位で加入できる自動車保険です。
事故相手に対する補償をする対物・対人賠償保険のほか、自分が乗っていた車に対して使える車両保険、自分や同乗者に対する補償をする搭乗者傷害保険などが含まれます。
スマートフォンやコンビニで手軽に申込・払い込みができるため、親の車を借りる際にはぜひ利用を検討してみましょう。
ただし、詳しい補償内容は保険会社やプランにより異なることがあります。
また、一部の外車やスポーツカー、名義は親でも実態として自分や配偶者が所有している車などは、1日自動車保険に入れないことがあるので事前に確認してみてください。
親の車で事故したら、賠償金はどうなる?
親の車で事故したら、加害者に賠償請求できる一方で、自身も相手から賠償請求されるケースがあります。
親の車で事故した場合の賠償金について、簡単に確認していきましょう。
たとえ被害者でも、加害者から賠償請求される
親の車で事故した場合、たとえ被害者であっても加害者側から賠償請求されることがあります。
多くの場合は被害者側からの請求額のほうが多くなるため、相殺された結果、被害者が加害者に支払う賠償金は0になることが多いです。
しかし、加害者からの請求額が多いほど、相殺される金額が多くなるため受け取れる賠償金は少なくなります。車の修理費や治療費の一部が自己負担になるケースも出てくるでしょう。
また、事故相手が高級車に乗っていた場合などは、加害者側の請求額が多くなり、相殺しても被害者から加害者への支払いが発生することがあります。
任意保険が使えない場合、示談交渉は自力で行う
交通事故の損害賠償金額は、基本的に示談交渉で決まります。
親の車で事故になり、親の任意保険や自分の任意保険(他車運転特約)が使える場合は、「示談代行サービス」により保険担当者に示談交渉を任せられます。
しかし、以下の場合は示談代行サービスが使えないため、自力で示談交渉しなければなりません。
- 親の任意保険も自分の任意保険も使えない
- 親や自分の任意保険は使えるが、自身の過失が0
一方で加害者側は任意保険担当者を代理人として示談交渉に臨むことが多いため、被害者自身での示談交渉は不利と言わざるを得ません。
こうした場合は、専門家である弁護士を立てることもご検討ください。
費用負担なく示談を弁護士に任せる方法もある
弁護士に示談交渉を任せるためには、基本的に弁護士費用がかかります。しかし、親や自身の保険に「弁護士費用特約」がついていれば、保険会社に弁護士費用を負担してもらうことが可能です。
親の保険についている弁護士費用特約は、「親と同居している、または別居だが自身が未婚」であれば使えることがあります。

また、自身の保険についている弁護士費用特約でも、親の車を借りて起きた事故に使える場合があります。
ただし、細かい利用の条件は保険会社によっても異なるので、一度保険会社に確認してみてください。
弁護士費用特約の補償対象者については、『弁護士特約は家族も使える!補償範囲や確認方法、重複加入の必要性も解説』で詳しく解説しています。
もし弁護士費用特約が使えなくても、弁護士への依頼は前向に検討してみましょう。弁護士費用を差し引いても、弁護士を立てたほうが獲得金額が多くなることはあります。
獲得が見込める金額や弁護士費用は事前の法律相談でも確認できるので、まずは法律相談をしてみましょう。


高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了