物損事故でも治療費は出る?通院費や病院代が補償されるケースと対応方法
この記事でわかること
交通事故に巻き込まれた際、警察や保険会社から「今回は物損事故ですね」と伝えられた方も多いのではないでしょうか。そして同時に、「物損事故だから治療費は出ないのでは?」と不安に思う方も少なくありません。
結論から言うと、「物損事故=治療費が出ない」というのは正確ではありません。
軽微な事故であっても、体に違和感があり治療を受けた場合には、治療費を請求できる可能性があります。
この記事では、「物損事故と思ったら体に痛みが出てきた」「念のため病院に行ったが費用が心配」という方に向けて、知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
目次

そもそも「物損事故」と「人身事故」の違いとは?
交通事故は、大きく分けて以下の2種類に分類されます。
種類 | 内容 |
---|---|
物損事故 | 車やガードレールなどの「物」に対する損害のみ |
人身事故 | 人がケガをしている |
警察が現場に来た時点で、「ケガはありませんか?」と確認されます。
ケガがなければ物損事故として処理されますが、事故直後は興奮状態にあり、痛みに気づきにくいことがあるのです。
特に、事故後に首や腰が痛くなる「むち打ち症」のような障害は、数時間〜数日後に症状が出るケースも珍しくありません。
こうした場合、後から「人身事故」に切り替えることで、治療費や通院費を正当に請求できることがあります。
「物損事故=治療費は出ない」は誤解!
警察や保険会社から「物損事故です」と言われると、「病院に行っても治療費は自己負担になるのでは…」と誤解してしまう方が多いようです。
しかし、事故によって明らかに体に異常が出ている場合や、後から痛みや不調が出てきた場合は、物損事故として処理された後でも、人身事故に切り替えることができます。
この切り替えによって、加害者側の自動車保険(任意保険)から、以下のような費用が補償される可能性があります。
- 通院費・診察代
- 治療費
- 交通費(通院のための電車・バス・タクシー代)
- 休業損害(仕事を休まざるを得なかった場合)
つまり、「物損事故だから」といって、ケガや体調不良を我慢して通院しないのは、損をする可能性があるのです。
軽い事故でも体に影響が出ることは多い
例えば、以下のようなケースでは、事故直後は症状が軽くても、後から体に支障をきたすことがあります。
- 駐車場で車をぶつけられたが、数時間後に首が痛くなった
- 追突された直後は平気だったが、翌日から頭痛が始まった
- 軽くぶつかっただけと思っていたが、念のため病院に行ったら「むち打ち」と診断された
こうしたケースでは、病院で治療を受けて診断書を作成してもらいましょう。
人身事故への切り替えとともに、治療費等の請求が可能となります。
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念のためでも病院に行くべき理由とは?
交通事故後はアドレナリンが分泌されていて、痛みや不調に気づきにくい場合があります。
そのため「大丈夫」と自己判断するのではなく、「少しでも違和感があるなら、念のため病院に行く」ことを強くおすすめします。
早期に病院へ行って診断を受けることで、以下のようなメリットが得られるでしょう。
- 潜在的な症状の早期発見・治療
早期に検査を受けることで、ケガの有無を確認し、適切な治療を開始できます。 - 事故と症状の因果関係の証明
事故直後に医療機関を受診し、診断を受けておくことで、事故との因果関係の証明がスムーズに進められます。 - 人身事故への切り替えを検討する際の重要な証拠
物損事故から人身事故への切り替えを要求する場合、医師の診断書が非常に重要な証拠となります。
このように早めに医療機関を受診しておけば、後からケガが発覚した後の手続きがスムーズに進められるです。
物損事故から人身事故へ切り替える手続きとは?
人身事故として扱われるには、「医師の診断書」が必要です。手続きの流れは以下のとおりです。
- 医療機関で診察を受ける
- 医師に診断書を作成してもらう
- 警察署へ診断書を提出し、「人身事故への切り替え」を届出る
この切り替えを行うことで、保険会社も治療費の支払い対象として正式に対応してくれるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q.物損事故でも病院代は保険でカバーされますか?
体にケガがある場合は、「人身事故」に切り替えることで、加害者側の保険会社に治療費を請求できます。
ただし、事故とケガの因果関係を証明するために、診断書の提出が必要となることが多いでしょう。
Q.事故直後は無症状でしたが、あとから痛みが出てきました。通院しても大丈夫?
事故直後は無症状でも、念のため通院すべきです。 事故直後には症状が出なくても、数日後、数週間後に痛みや不調が現れることはよくあります。
医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてください。
その際の医療費についても、事故との因果関係が認められれば、相手方の保険会社に請求できる可能性があります。
Q.10対0で完全に相手が悪い物損事故でも、病院の費用は相手に請求できますか?
はい、可能です。
ただし、相手に全責任がある場合でも、事故とケガの因果関係を証明するために、診断書を取得し、人身事故への切り替えを行うことが重要です。
まとめ|物損事故でも体に異変があれば治療費は請求できる!
最後に、物損事故と診断された場合でも、次のようなポイントを踏まえて適切に対応すれば、治療費や通院費などを請求することができます。
- 物損事故と人身事故の違いを正しく理解する
- 症状があるなら、迷わず病院へ行く
- 医師の診断書をもとに、人身事故へ切り替える
- 加害者側の保険会社と必要な連絡・交渉を行う
軽微な事故でも、体に与える影響は人それぞれです。「物損事故だったけど、ちょっと気になる症状がある…」という方は、ご自身の健康と権利を守るために、早めに病院の受診を検討しましょう。
事故対応は心身ともに負担がかかるものですが、冷静にステップを踏めば、正当な補償を受けられる可能性があります。
ご自身の健康を最優先に行動してください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了