物損事故でも治療費は出る?念のために行った病院代が補償されるケースと対応方法

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警察に「物損事故」の届出をした場合でも、事故とケガとの因果関係が認められれば、相手方(自賠責保険を含む)に対して、治療費や通院交通費などを請求できる可能性があります。

特に首や腰のむちうち症状は、事故から数日後になって痛みが出ることも珍しくありません。少しでも痛みや違和感が出てきたら、念のため早めに病院を受診しておくことが、治療費を請求するための第一歩です。あわせて、ケガをしているなら基本的には人身事故への切り替えがおすすめです。

この記事では、物損事故のまま治療費を請求できる条件、病院へ行くべき理由、人身事故へ切り替える手続きの流れを順番に解説します。

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目次

「物損事故=治療費は出ない」は誤解

警察に「物損事故」として届け出ていると、「病院に行っても治療費は自己負担になるのでは…」と誤解してしまう方が多いです。

しかし、物損事故として処理されていても、実際にケガをしていれば治療費を請求できる可能性があります。まずは、請求が認められる根拠と条件を確認しましょう。

物損事故のままでも治療費が支払われるケースはある

「物損事故」のままでも、事故とケガとの関係が認められれば、治療費などの人身損害について賠償を受けられる可能性があります。

損害保険料率算出機構が毎年公表している「自動車保険の概況」でも、自賠責保険の支払いについて次のように説明されています。

交通事故が発生した場合、基本的には、人身事故あるいは物件事故として警察に届出がなされますが、自賠責保険では、人身事故として警察に届出がなされなかったものであっても、実際に負傷されたことが確認された場合には支払いを行うことが必要であり、近年、このような支払いの占める割合が増加しています。

損害保険料率算出機構「2025年度_自動車保険の概況

なお、支払われるのは自賠責保険からだけではありません。自賠責保険の傷害による損害は、治療費だけでなく慰謝料や休業損害も含めて120万円が上限となっています。

相手方が任意保険(対人賠償責任保険)に加入している場合は、この120万円を超える部分についても、慰謝料や休業損害を含めて任意保険会社に請求できます。

任意の自動車保険と自賠責保険の関係

物損事故のままだからといって、痛みを我慢して通院を控えてしまうと、本来受け取れるはずの賠償を受け取れず損をするおそれがあります。

治療費の他に請求できる費用

治療費に加えて、慰謝料や通院にかかった交通費なども支払ってもらえる可能性があります。物損事故として処理された場合に請求しうる人身損害の例は、次のとおりです。

  • 入通院慰謝料:交通事故で入通院に伴う精神的苦痛を和らげ、償うために支払われるお金
  • 治療費:診察料、検査費用、投薬料など
  • 通院費:通院のための電車代、バス代、タクシー代など
  • 休業損害:ケガの治療のために仕事を休まざるを得なかった場合の減収分

示談金全体の内訳や相場を知りたい方は、『交通事故の示談金相場は?一覧表や増額のコツ・示談交渉の注意点を弁護士解説』を参考にしてください。

物損事故のまま治療費等の賠償を受ける条件

物損事故のまま治療費などの賠償を受けるには、まず、事故とケガの因果関係が認められること、相手方が因果関係を争っていないことが必要です。

あわせて、相手方の保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を提出する必要があります。書式は保険会社から入手できます。

因果関係を示すうえで重要なのは、事故後できるだけ早く病院を受診し、事故によるケガであることを医師に伝えたうえで診察を受けておくことです。受診が遅れるほど、事故とケガの結びつきを証明しにくくなります。

軽い事故でも念のため病院へ行くべき理由

「たいした事故ではないから大丈夫」と自己判断するのは危険です。軽い事故でも身体に影響が出ることは多く、受診の遅れは治療費請求の場面で不利に働きます。

事故直後は無症状でも後から痛みが出ることは多い

交通事故の直後はアドレナリンが分泌されており、興奮状態で痛みや不調に気づきにくい場合があります。たとえば、次のようなケースがよくみられます。

  • 駐車場で車をぶつけられたが、数時間後に首が痛くなった
  • 追突された直後は平気だったが、翌日から頭痛が始まった
  • 軽くぶつかっただけと思ったが、念のため病院に行ったらむちうちと診断された

特に首や腰のむちうちは、事故から数日後に症状が出るケースも珍しくありません。後から痛みが出た場合の対処法は、『交通事故で後から痛みが…対処法と因果関係の立証方法は?判例も紹介』で詳しく解説しています。

早めに受診する3つのメリット

事故以前と比べて少しでも違和感があるなら、念のため病院へ行くことを強くおすすめします。早期の受診には、次のようなメリットがあります。

  • 潜在的な症状の早期発見・治療
    早めに検査を受けることで、ケガの有無を確認し、適切な治療を開始できる
  • 事故と症状の因果関係の証明
    診断を受けておくことで、事故とケガの因果関係を示しやすくなる
  • 人身事故へ切り替える際の重要な証拠
    物損事故から人身事故への切り替えを求める場合、医師の診断書が重要な証拠となる

病院を受診する際には、事前に自分と相手方双方の任意保険会社に連絡を入れておくことも大切です。

事前に相手方の任意保険会社に連絡をしておけば、相手方の任意保険会社が病院に直接治療費の支払い(任意一括対応)をしてくれるケースが多いです。

治療費支払いの流れ(任意一括対応)

連絡をしないまま受診すると、病院の窓口で治療費を実費で立て替えなければなりません。

また、自分が加入している保険の内容によっては、自分の保険会社からも治療費や入院・通院に応じた保険金の支払いを受けられる可能性があります。自分の保険会社にも連絡をしておきましょう。

ケガをしたなら人身事故への切り替えがおすすめ

物損事故のままでも治療費を請求できる可能性はありますが、ケガをしているなら基本的には人身事故への切り替えをおすすめします。切り替えの意味と手続きを確認しましょう。

物損事故と人身事故の違い

法律上、人がケガをしたり死亡したりした事故を人身事故といいます。人の死傷がなく、物の破損にとどまる事故が物損事故です。

人身事故と物損事故

物損事故と人身事故の違い

物損事故人身事故
定義物件損害のみが生じた事故人が死傷した事故
損害の例車や携行品、ガードレールの破損、レッカー代など治療費、入院代、通院費、慰謝料、休業損害など。物件損害が生じることもある

もっとも、実務では、ケガをしていても軽傷の場合などに、警察で物損事故として処理されることが多くあります。物損事故のままでも、事故とケガの因果関係が認められれば、治療費や慰謝料など人身損害の賠償を受けられる可能性があります。

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人身か物損か誰が決める?両者の違いや警察が物損にしたがる理由・デメリット

人身事故への切り替えをおすすめする理由

物損事故のままでは、後になって相手方から「本当に事故によるケガなのか」と因果関係を争われやすくなります。

加えて、ケガをしているのに物損事故のままにしておくと、相手方の保険会社から「軽傷だから物損事故のままになっている」と判断され、治療費の支払い対応を早期に打ち切られるリスクも高まります。

事故によって明らかに身体に異常が出ている場合はもちろん、後から痛みや不調が出てきた場合でも、物損事故として処理された後に人身事故へ切り替えることは可能です。

人身事故へ切り替える手続きの流れ

人身事故として扱ってもらうには、医師の診断書が必要です。切り替えの手続きは、次の流れで進めます。

  1. 医療機関で診察を受ける
  2. 医師に診断書を作成してもらう
  3. 警察署へ診断書を提出し、人身事故への切り替えを届け出る

切り替えに法律上の期限はありません。しかし、事故から日数が経つほど、警察に診断書の受理を断られるケースが増えます。目安として、事故後1週間以内の手続きが望ましいでしょう。

切り替えの詳細やデメリットが気になる方は、『物損から人身へ切り替え│デメリットは?変更期間や拒否の対処法も解説』をご参照ください。

10対0の物損事故で治療費・慰謝料を請求するときの注意点

信号待ち中の追突など、過失割合が10対0になる事故は、いわゆる「もらい事故」と呼ばれます。被害者に落ち度がないため、一見スムーズに賠償を受けられそうに思えますが、実は過失割合が10対0だからこそ注意すべき点があります。

(1)過失0だと自分の保険会社の示談代行サービスが使えない

10対0の事故では、被害者側の保険会社が示談交渉を代行できないため、被害者本人が相手方の保険会社とやり取りすることになります。

保険会社が示談交渉を代行できるのは、契約者が相手方への賠償金の支払いで自社の保険を使う場合に限られます。

過失割合10対0の事故では、被害者は一切賠償責任を負わないため、相手方への賠償金の支払いで保険を使うことがなく、保険会社が示談代行に関与する法的根拠がないのです。仮にこの場合に保険会社が示談交渉を代行すると、弁護士法72条が禁止する非弁行為に該当してしまいます。

加害者側の保険会社は日常的に多数の示談交渉を取り扱っており、交渉のプロです。

被害者個人が知識を身につけて交渉しても、「物損事故だから払えない」「物損事故なので減額する」などと言われ、適切な賠償をもらうことが難しくなることが少なくありません。

増額交渉(弁護士なし)

(2)保険会社の提示額をそのまま受け入れない

さらに注意したいのは、保険会社が最初に提示する示談金は、弁護士に依頼した場合に用いられる基準より低いケースが多い点です。10対0で全額の賠償を受けられる事故であっても、保険会社独自の基準で計算された金額であれば、妥当な水準とは限りません。

弁護士に依頼すれば、弁護士基準(裁判基準)で算定した適正な金額をもとに増額交渉を行ってもらえます。

増額交渉(弁護士あり)

物損事故の治療費・通院費に関するよくある質問(FAQ)

Q.事故直後は無症状でしたが、あとから痛みが出てきました。通院しても大丈夫?

事故直後は無症状でも、念のため通院すべきです。 事故直後には症状が出なくても、数日後、数週間後に痛みや不調が現れることはよくあります。

医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けてください。

その際の医療費についても、事故との因果関係が認められれば、相手方の保険会社に請求できる可能性があります。

Q.10対0で完全に相手が悪いです。物損事故のままでも、病院代は請求できますか?

はい、できる可能性はあります。

ただし、相手に全責任がある場合でも、事故とケガの因果関係を証明するために、診断書を取得し、人身事故への切り替えを行うほうが良いでしょう。

Q.10対0で保険会社から示談金を提示されましたが、妥当な金額なのか分かりません。

保険会社が最初に提示する示談金は、弁護士基準(裁判基準)より低いケースがほとんどです。

10対0で提示されていても、保険会社独自の基準で提示されていれば、妥当な金額とは限りません。

サインする前に弁護士に確認することで、増額できる可能性があります。アトム法律事務所では、提示された示談金について無料相談も可能です。

Q.物損事故と人身事故の違いが分かりません。

法律上、人がケガや死亡をした事故を「人身事故」といいます。

人がケガや死亡をせず、「物」の破損にとどまる事故を「物損事故」といいます。

もっとも、実務上は、ケガをしていても、軽傷の場合などには、警察で「物損事故」(物件事故)として処理されることも多いです。

この場合でも、事故とケガとの関係が認められれば、治療費や慰謝料など、人身損害の賠償を受けられる可能性があります。

物損事故

  • 物件損害が生じた事故
  • 物件損害の例
    車、携行品、ガードレールの破損
    レッカー代 など

人身事故

  • 人が死傷した事故
  • 人身損害の例
    ・治療費・入院代
    ・通院費
    ・慰謝料
    ・休業損害 など
    ※物件損害が生じることもある

Q.事故直後は痛みがなかったのに、後から痛みが出てきました。

実務上、物損事故のままでも治療費や通院費の請求ができなくはないですが、こうした場合は「人身事故」に切り替えるほうが無難です。

事故直後は興奮状態にあり、痛みに気づきにくいことも多いです。

特に、事故後に首や腰が痛くなる「むちうち症」は、数時間〜数日後に症状が出るケースも珍しくありません。

後から「人身事故」に切り替えることで、事故とケガとの関係を警察に記録として残しやすくなり、治療費や通院費の請求に役立つことがあります。

アトムの解決事例

ここでは過去にアトム法律事務所の弁護士が実際に対応し、適切な慰謝料を獲得した事例をご紹介します。

(1)過失割合10対0|約68万円回収

歩道歩行中に車のミラーが接触し右腕両膝を負傷した事例

歩道を歩行中、歩道が切れたところで後方から来た車両のミラーが接触した過失割合10:0の事案。

依頼者は右腕打撲、両膝捻挫を負い、相手方保険会社の負担で治療を継続。人身事故届出のメリットや、物損のままでも影響がないかを相談したいとのことで相談に至った。


弁護活動の成果

受任後、相手方保険会社との示談交渉を行い、最終的に約68万円の支払いを受けた。

治療中に保険会社から治療終了の打診を受けた際も、依頼のタイミングについて弁護士に相談し、適切な時期にサポートを受けられた。

年齢、職業

40~50代、会社員

傷病名

右腕打撲、両膝捻挫

後遺障害等級

無等級

「人身事故に切り替えるべきか、物損のままでよいか」という、事故直後に多くの方が迷う論点そのものを弁護士に相談した事例です。後遺障害の認定がない打撲・捻挫のケースでも、示談交渉によって適正な賠償を受けられる場合があります。

(2)過失割合10対0|約327万円回収

雪道で対向車がセンターオーバーし頚椎捻挫等を負った事例

雪道走行中に対向車がセンターラインをオーバーして衝突した過失割合10対0の事案。

被害者は頚椎・腰椎捻挫、右肩・左膝打撲を負い通院を開始した。処罰感情がなく、仕事の都合で捜査協力の負担を心配していたため、物損事故のまま進めることを希望して相談に至った。


弁護活動の成果

弁護士介入後、物損扱いのまま示談交渉を進める方針で受任し、治療中に症状が長引いたため後遺障害等級認定申請を実施。初回申請は非該当だったが、異議申立てにより14級9号の認定を獲得した。


その後の示談交渉により、最終的に約327万円の支払いを受けた。

年齢、職業

40~50代、公務員

傷病名

頚椎捻挫、腰椎捻挫、右肩・左膝打撲

後遺障害等級

14級9号

警察に物損事故として届け出たままでも、事故とケガの因果関係が認められれば、治療や後遺障害の認定を進められることを示す事例です。初回の申請で非該当とされても、異議申立てにより認定を受けられるケースもあります。

また、10対0の事故では被害者側の保険会社が示談交渉を代行できないため、相手方とのやり取りに不安があれば、早めに弁護士へ相談することが重要です。

弁護士の無料相談窓口はこちら│24時間ご予約受付中

物損事故として処理された場合でも、事故とケガの因果関係が認められれば、治療費や通院費を請求できる可能性があります。症状があるなら迷わず病院へ行き、医師の診断書をもとに人身事故への切り替えを検討しましょう。

アトム法律事務所では、「物損事故のまま進めていいのか」「適切な慰謝料を受け取りたい」といったご相談を24時間365日電話やLINEで受け付けています。

相談のみのご利用も可能ですので、相手保険会社とのやり取りに不安がある方は、お早めにご相談ください。ご連絡お待ちしております。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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