交通事故で即死した被害者遺族にとって必要・大切な対応を弁護士が解説
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この記事でわかること
交通事故で家族を亡くした遺族の方は、大切な人を失った悲しみや喪失感、加害者に対する怒りなど、さまざまなお気持ちを抱えたまま、多くのことに対応する必要があります。
そのような状態で遺族の方が自分だけで適切な対応をするのは困難ですので、弁護士や専門家の支援を受けることが大切になります。
この記事では、交通死亡事故の発生から解決までの流れや適切な対応、交通事故で家族を亡くした遺族が受けられる支援などについて解説をしています。
目次

交通死亡事故発生から葬儀までの流れ
交通死亡事故が発生した場合、葬儀までの流れは以下のとおりです。
(1)事故の連絡を受ける
警察から連絡が入ることが考えられます。
(2)ご遺体を引き取る
医師による死亡診断書もしくは死体検案書を受け取ります。
(3)死亡届を提出する
死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡届を役所に提出します。
(4)葬儀を執り行う
お葬式となります。
それぞれの手続きについて詳しく解説します。
(1)事故の連絡を受ける
交通事故で即死状態になった場合、被害者に連絡先を聞くことはできないので、警察が所持品(免許証や車検証、健康保険証など)から身元を調べて、自宅や家族のところに連絡がいきます。
(2)ご遺体を引き取る
即死状態で病院に搬送される前に事故現場や救急車の中で死亡した場合は、警察による検死が行われ、被害者がどのような原因で亡くなったのかや事件性の有無などを確認します。
検死は事故直後におこなわれることもあれば、事故の翌日以降におこなわれることもあります。検死の結果、死因が特定できないときや事件性の疑いがある場合には司法解剖が行われることもあります。
検死や司法解剖がおこなわれた場合は死体検案書が交付されるので、受け取ってください。
また、事故によってはご遺体の損傷が考えられるので、エンバーミングも検討してください。交通事故との因果関係が認められれば、エンバーミングにかかる費用は加害者に請求可能です。
(3)死亡届を提出する
交通事故で被害者が死亡した場合は、死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届を提出する必要があることが戸籍法第86条で定められています。
死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
戸籍法第86条
死亡届の提出時には死亡診断書や死体検案書が必要なので、忘れず用意してください。
(4)葬儀を執り行う
基本的に、葬儀の準備は葬儀社と打ち合わせの上、葬儀社の指示に従って進めるようにしてください。
加害者側が通夜・葬儀への参列や香典を申し出てきても、受け入れたくなければ拒否できます。加害者側の保険会社を通じて、事前に連絡をしておくことも可能です。
また、通夜・葬儀への参列や香典を受け入れると、ご遺族側は加害者に対して一定の許しを示していると判断されることもあります。
示談交渉や刑事裁判に悪影響が出る可能性もあるので、加害者側の申し出を受け入れるかどうかは慎重に判断してください。
交通死亡事故の解決までの流れ
(1)損害賠償請求権の相続
交通事故被害者が死亡したケースでは、死者は損害賠償請求できないので、被害者の損害賠償請求権を相続した相続人が損害賠償請求をする流れになります。
相続人が誰になるかや相続の割合は法的に以下の表のように定められています。
被害者に配偶者と子がいるケース | 配偶者:2分の1 子:2分の1 |
被害者に配偶者がおり、子がいないケース | 配偶者:3分の2 直系尊属:3分の1 |
被害者に配偶者がおり、子・直系尊属(主に父母)がいないケース | 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1 |
被害者に配偶者がおらず子がいるケース | 子のみで等分 |
被害者に配偶者・子がおらず直系尊属がいるケース | 直系尊属のみで等分 |
被害者に配偶者・子・直系尊属がおらず兄弟姉妹のみがいるケース | 兄弟姉妹のみで等分 |
ただし、当事者間で別の分割方法を決めた場合・遺言によって遺産分割方法が定められている場合には上記の表に従う必要はありません。
被害者が即死したケースでも慰謝料は相続される
慰謝料とは、被害者が被った精神的苦痛に対する金銭的な補償です。
そのため、交通事故により一瞬で被害者が命を落とす即死のケースの場合には、精神的な苦痛が被害者に生ずる余地は存在しないとも考えられます。
もっとも、突然幸せな一生を終えることとなり、家族や友人との別れを余儀なくされた被害者の無念は即死のケースであっても変わることはありません。
そのため、交通事故では、たとえ即死のケースであったとしても、被害者に精神的な苦痛が発生したと考えて、被害者の死亡慰謝料請求権が発生し、相続人に相続される形となります。
(2)示談交渉
交通死亡事故で加害者側から被害者遺族(相続人)に支払われる損害賠償金額について示談交渉を行うことになります。
下記で説明するとおり、死亡事故の損害賠償金には葬儀費用も含まれるため、死亡事故では四十九日の法要が終了してから示談交渉を始めるのが一般的です。
示談交渉では、費目ごとの損害賠償金額や過失割合について話し合いが行われます。
即死したケースでの損害賠償金の費目・相場
交通事故で被害者が即死したケースでの遺族が受け取れる主な損害賠償金費目は、以下のとおりです。
交通死亡事故の賠償金内訳
- 死亡慰謝料
- 死亡逸失利益
- 葬儀費用
交通事故によってご家族が亡くなった場合、損害賠償金の一部として死亡慰謝料が請求できます。
死亡慰謝料には、相続した被害者本人の慰謝料と遺族自身の固有の慰謝料とがあります。
両者を合計した死亡慰謝料の相場は、被害者の家族内での立場により、以下のようになっています。
死亡慰謝料の相場
一家の支柱 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円程度 |
独身の男女・子ども・高齢者 | 2000万円~2500万円程度 |
ただし、上記の金額はあくまで相場ですので、以下のような事情があれば、死亡慰謝料が数百万円程度増額する可能性があります。
- 加害者が飲酒運転、無免許運転などをしていた
- 加害者が事故後逃走する、証拠を隠滅する、虚偽の供述をするなどの行動をとった
- 交通事故の態様が悪質、残酷であった
- 被害者の遺族が精神疾患にかかった
また、交通事故によってご家族が亡くなった場合、損害賠償金の一部として死亡逸失利益という費目も請求でき、下記の計算方法で金額を算定します。
逸失利益とは
被害者が死亡しなければ将来得たであろう収入から、本人の生活費を控除したもの
死亡逸失利益=一年あたりの基礎収入(年収)×(1-生活費控除率)×稼働可能期間に対応する係数
被害者の属性によって、生活費控除率は一般に以下のように定められています。
死亡者の属性 | 生活費控除率 |
---|---|
被扶養者1人の一家の支柱 | 40% |
被扶養者2人以上の一家の支柱 | 30% |
女性* | 30% |
男性 | 50% |
年金生活者 | 年金収入部分のみ 10%程度高く控除することが多い |
*女子年少者について40~45%とすることもある
また、主な稼働可能期間に対応するライプニッツ係数は以下のとおりです。
稼働可能期間 | ライプニッツ係数* |
---|---|
1年 | 0.97 |
2年 | 1.91 |
3年 | 2.83 |
4年 | 3.72 |
5年 | 4.58 |
10年 | 8.53 |
20年 | 14.88 |
30年 | 19.60 |
40年 | 23.11 |
45年 | 24.52 |
49年 | 25.50 |
*2020年4月1日以降の交通事故に適用
さらに、死亡事故の場合、通夜・葬儀・祭壇・火葬・墓石などにかかる葬儀費用も、損害賠償請求することができます。
葬儀費用の相場金額は、原則として上限150万円です。
ただし、150万円を上回る場合も必要・相当と認められる範囲で請求できる可能性があります。
死亡事故の慰謝料や賠償金の相場や計算方法の詳細を知りたい方は『死亡事故の慰謝料相場と賠償金の計算は?示談の流れと注意点』を参考にしてください。
示談成立前に賠償金の一部を受け取る方法
交通事故発生から示談金を受け取れるまでにはある程度の時間がかかりますが、死亡事故では葬儀などで、賠償金を受け取る前にまとまったお金が必要になるケースもあるでしょう。
上記のようなケースに対応するため、自賠責保険(交通事故被害者救済のため、法律ですべての自動車に加入することが義務付けられている保険)には仮渡金という制度があります。
仮渡金制度とは、事故によって死亡してしまった被害者遺族やけがをした被害者に対して、必要とする当座の出費のために速やかに保険金の支払いをする制度で、死亡事故の場合は290万円が支払われます。
そのため、相手方の自賠責保険会社に仮渡金の請求をすることにより、賠償金額確定に先立ってお金を受け取ることが可能です。
死亡事故での過失割合の問題点
示談交渉では過失割合(交通事故が発生した責任が被害者と加害者のどちらにどのくらいあったのかを数値で示したもの)が争いになりますが、被害者が即死したケースでは、過失割合が被害者側に不利な過失割合が認定される可能性が通常よりも高くなります。
事故状況を理解している被害者の言葉を聞くことができないため、もし加害者側が事実とは異なって「被害者が信号無視して突然交差点に進入してきたため衝突した」など加害者側に有利となる身勝手・理不尽な主張をしてきたとしても、それに反論していくのが難しいからです。
交通事故被害者の遺族が最終的に受け取れる損害賠償額は被害者側の過失割合分が差し引かれた金額になるため、示談交渉における過失割合の決定は非常に大切です。
(3)裁判
示談交渉による当事者間での解決が難しいケースでは、裁判所に民事裁判を提起して、裁判所の判決という形で判断をしてもらう流れになります。
判決に納得がいかない場合には、判決の翌日から14日以内に控訴という手続きをとれば、上級の裁判所による判断をしてもらえます。
【参考】刑事事件の流れ
交通事故問題には、民事事件と刑事事件の二つがあり、上記は民事事件の解決までの流れです。
刑事事件は、死亡事故の場合、加害者が逮捕され、警察署に連行されるケースも多いです。
その後、警察が事故現場の検証や当事者・関係者の取調べ・事情聴取といった捜査を行って、検察庁に事件の記録(書類)を送ります(「送検」といいます。)。
検察官は、警察から送られてきた事件記録を検討し、検察庁が加害者の故意・過失や因果関係といった犯罪成立要件を満たしており、加害者に刑事責任を負わせる必要があると判断すれば、過失運転致死罪や危険運転致死罪といった罪名で(交通違反がある場合は道路交通法違反でも)起訴するという流れになります。
起訴された場合、過失運転致死罪の場合は7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金の範囲内で、危険運転致死罪の場合は1年以上20年以下の懲役の範囲内で処罰の有無・内容が判断されます。
また、刑事裁判において、被害者遺族は「被害者参加制度」を利用して刑事裁判手続において意見陳述などをすることにより、被害感情を量刑判断に反映させることが可能です。
具体的には、被害者遺族の意見陳述の影響により、懲役を何年にするかや執行猶予(罪を犯さずに日常生活を送り、一定期間経過すれば、刑務所に行かなくて済む制度)を付けるかが変わってくるケースもあります。
交通事故で家族を亡くした遺族が受けられる支援
経済的な支援
遺族年金
交通事故で死亡した被害者が国民年金や厚生年金保険をかけていた場合、死亡した被害者によって生計を維持されていたのであれば、条件を満たしていることで遺族年金を受け取ることができます。
ただし、遺族年金は交通事故の損害賠償金と調整されます。調整は主に、遺族年金と損害賠償金からの二重補償を防ぐ目的でおこなわれます。
交通遺児貸付制度
自動車事故対策機構(ナスバ)は、自動車事故により保護者が死亡した生活困窮家庭の中学校卒業までの子どもを対象に、生活資金の無利子貸付を行っています。
貸付金額は、子ども一人につき、一時金155,000円、決定月以後月額10,000円または20,000円(選択制)となっています。
交通遺児育英会の奨学金
交通遺児育英会では、保護者が道路における交通事故で死亡した家庭の高校生以上の生徒・学生を対象に、奨学金を貸与(大学等は一部給付制度あり)して修学支援を行っています。
精神的な支援
警察庁の交通事故被害者サポート事業
警察庁では、交通事故被害者やその家族・遺族の方々を対象に、深い悲しみや辛い体験から立ち直り、回復に向けて再び歩み出すことができる環境を醸成し、交通事故被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とした交通事故被害者サポート事業を実施しています。
交通事故サポート事業では、専門家の講演や遺族による自分の思いや体験談の発表を通じ、交通事故で家族を亡くしたこどもの周囲にいる保護者や支援者に対して必要な支援や課題等の発信をテーマとした参加無料のシンポジウムを開催しています。
その他にも、『自助グループ支援マニュアル』や『交通事故で家族を亡くした子供の支援のために』といった書類の配布・掲載などの活動を行っています。
交通遺児友の会
交通遺児友の会では、交通遺児等とその家族を会員として、自然とのふれあいや体験学習を通じ、子供たちや家族の交流の場を提供したり、家族同士の楽しい思い出づくりの機会を設けたりしています。
ナスバによる相談支援業務
ナスバでは、同じ悩みを持つ当事者が所属する自動車事故被害者・遺族団体による無料相談窓口を設置しています。
弁護士による法的な支援
法律相談
法律の専門家である弁護士に法律相談をし、今後の流れや法的な問題点の説明を受けるだけでも、遺族の不安や心配は大きく軽減されます。
交通事故に注力している法律事務所では無料相談を実施している事務所も多く、アトム法律事務所でも24時間365日お電話やLINEでの無料相談予約を受け付けています。

死亡事故では弁護士に依頼する必要性が高い
相談だけでも、ご遺族の不安や心配を軽減することはできますが、死亡事故の場合は、以下の理由から弁護士に依頼まですることをおすすめします。
- 遺族が直接対応するのは精神的負担が大きい
- 保険会社の提示額より高額な賠償金を受け取れる可能性が高い
- 適正な過失割合で示談できる可能性が高い
遺族の直接対応は精神的負担が大きい
悲嘆にくれる死亡事故の遺族が加害者側と直接やり取りすること自体、非常に精神的負担の大きいものですが、示談交渉ではそれに加えて次のような苦痛を感じる可能性があります。
- 十分な示談金額を認めようとしない加害者側の姿勢への怒り
- 高圧的・不親切な加害者側の態度へのストレス
しかし、弁護士に依頼すればご遺族は加害者側と直接やり取りせずに済みます。
死亡事故の示談交渉は一般的に半年~1年程度かかります。その期間加害者側と直接やり取りするのは、少しずつ社会復帰していく妨げにもなるでしょう。
そのため、弁護士に依頼する必要性が高いといえます。
保険会社の提示額より高額な賠償金を受け取れる可能性が高い
交通事故の賠償金を計算する基準には、以下の3種類が存在します。

①自賠責基準 | 自賠責保険会社が計算する基準 最も低額 |
②任意保険基準 | 任意保険会社が計算する基準 自賠責基準とそれほど変わらない |
③弁護士基準(裁判基準) | 実際の裁判で請求可能な基準 最も高額 |
保険会社が提示してくる賠償金は①自賠責基準や②任意保険基準で計算した金額ですが、弁護士に依頼すれば③弁護士基準で計算した高額な金額で示談できる可能性が高いです。
なお、先ほど紹介した死亡慰謝料の相場は、弁護士基準の金額であり、保険会社が提示してくる金額はより低額な可能性が高いです。
そのため、弁護士に依頼すれば保険会社の提示額より高額な賠償金を受け取れる可能性が高いのです。
適正な過失割合で示談できる可能性が高い
先ほどお伝えしたとおり、被害者が即死したケースでは、過失割合が被害者側に不利な過失割合が認定される可能性が通常よりも高くなります。
しかし、弁護士に依頼すれば、ドライブレコーダーを入手して事故時に赤信号だったか青信号だったかを確認したり、事故が発生した場所を訪れて加害者の言い分に不合理な点がないか検討したりすることにより、適正な過失割合で示談できる可能性が高くなります。
なお、損害賠償請求の前提となる相続問題が発生している場合にも、弁護士に依頼することにより解決できるケースもあります。
弁護士費用特約があれば費用負担も軽減できる
弁護士に依頼するには弁護士費用が掛かりますが、弁護士費用特約を使える場合、弁護士費用の負担を大きく軽減できます。弁護士費用特約とは、保険契約者が法律問題に巻き込まれた場合に、弁護士費用を保険会社に負担してもらえる特約です。
死亡事故の場合は被害者本人が加入している保険だけでなく、遺族が加入している保険でも使える場合があります。
保険会社によって弁護士費用特約の補償内容は異なりますが、一般的には以下の補償がなされます。
- 相談料:10万円まで
- 着手金・成功報酬など:300万円まで

なお、仮に弁護士費用特約が使えず、弁護士費用を遺族が負担する必要があるケースであっても、死亡事故では、弁護士費用よりも弁護士に依頼したことによる賠償金の増額金額が上回るケースがほとんどですので、弁護士費用特約の有無にかかわらず、弁護士に依頼する必要性が高いといえます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了