後遺障害認定を解説|認定の仕組み、流れ、基準、弁護士依頼のメリットとは?

更新日:

交通事故の被害にあい、治療を続けたけれど完治せず「後遺症」がのこってしまった方は、「後遺障害の認定」を受けて適切な補償を受け取ってください。

主治医から「これ以上は良くなりません」と言われてしまった方や交通事故の後遺症で仕事や日常生活に支障をきたし苦しんでいる方。
後遺症の苦しみを正しく評価してもらい、適正な慰謝料を受け取りたいとお考えだと思います。
そのためにもまずは、正しい後遺障害認定を受けることが重要です。

この記事では、後遺障害認定すべき理由や仕組み、手続きの流れ、弁護士依頼すべき理由などをまとめて解説していきます。

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後遺障害認定が必要な理由

後遺症と後遺障害の違い

治療後に残存してしまった症状を、一般用語として「後遺症」と言います。
後遺症のすべてが補償の対象となるのかと言うと、そんなことはありません。
後遺症の程度が軽微であったり、入通院や治療の方針などに齟齬があったりすると、たとえ症状が残っていたのだとしても補償の対象とならないことがあります。

後遺症のうち、一定の要件を備え補償の対象となるものを「後遺障害」と言います。
交通事故被害者の方が「後遺症の認定」と言うとき、それは実質「後遺障害認定」のことを指していることがほとんどです。

後遺症が後遺障害として認定されるには、必要書類を準備し、第三者機関に対して認定申請の手続きを行い、審査を受けて補償の要件に適っていることを認められる必要があります。

後遺症が残ったからといって、ただ黙って待っているだけでは必要な補償が受け取れない可能性もあるのです。

後遺症が後遺障害認定されたときのメリット

一般的に後遺症が残存した後、後遺障害の認定を受けた場合と受けない場合とでは、最終的に受け取れる補償金の金額が相当変わります。

まず交通事故被害者の方は、治療費、病院への交通費の他、ケガを負った精神的苦痛に対する賠償金「入通院慰謝料」などをもらえます。
後遺障害認定を受けたときにはこれら補償に加えて、後遺障害を負った精神的苦痛に対する賠償金「後遺障害慰謝料」や、後遺障害により失われた労働力によって、将来にわたり減少してしまった給料等への賠償金「逸失利益」を受けとれるようになります。

一般的に、後遺障害慰謝料や逸失利益は高額であり、後遺障害の認定の有無によって賠償金の総額に数倍以上の差が出るのも珍しいことではありません。

後遺障害慰謝料の相場や、相手の保険会社に対する増額交渉の可能性について詳しく知りたい方は、関連記事『交通事故の後遺障害慰謝料の相場はいくら?等級認定から慰謝料支払いの流れ』もご覧ください。

後遺障害等級ごとの具体的な症状

後遺障害は全14の等級に分かれています。
各後遺症のどのような症状が何級に該当するのかは、細かく規定されています。

後遺障害等級表(要介護)

等級症状の内容
第1級
  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級
  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
出典:自動車損害賠償保障法施行令 別表第1

後遺障害等級表(要介護でない)

等級症状の内容
第1級
  1. 両眼が失明したもの
  2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
  3. 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
  4. 両上肢の用を全廃したもの
  5. 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
  6. 両下肢の用を全廃したもの
第2級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  2. 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  3. 両上肢を手関節以上で失つたもの
  4. 両下肢を足関節以上で失つたもの
第3級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
  3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  5. 両手の手指の全部を失つたもの
第4級
  1. 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 両耳の聴力を全く失つたもの
  4. 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
  5. 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
  6. 両手の手指の全部の用を廃したもの
  7. 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第5級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  4. 一上肢を手関節以上で失つたもの
  5. 一下肢を足関節以上で失つたもの
  6. 一上肢の用を全廃したもの
  7. 一下肢の用を全廃したもの
  8. 両足の足指の全部を失つたもの
第6級
  1. 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
  6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
第7級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  3. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  6. 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
  7. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
  8. 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
  9. 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  10. 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  11. 両足の足指の全部の用を廃したもの
  12. 外貌に著しい醜状を残すもの
  13. 両側の睾丸を失つたもの
第8級
  1. 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  2. 脊柱に運動障害を残すもの
  3. 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
  4. 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
  5. 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
  6. 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  7. 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  8. 一上肢に偽関節を残すもの
  9. 一下肢に偽関節を残すもの
  10. 一足の足指の全部を失つたもの
第9級
  1. 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
  6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
  7. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  8. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  9. 一耳の聴力を全く失つたもの
  10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  12. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
  13. 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
  14. 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
  15. 一足の足指の全部の用を廃したもの
  16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの
  17. 生殖器に著しい障害を残すもの
第10級
  1. 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
  4. 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  6. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  7. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
  8. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
  9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
  10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
  11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級
  1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  4. 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
  6. 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  7. 脊柱に変形を残すもの
  8. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
  9. 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
  10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級
  1. 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  4. 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
  5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
  6. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  7. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  8. 長管骨に変形を残すもの
  9. 一手のこ指を失つたもの
  10. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
  11. 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
  12. 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
  13. 局部に頑固な神経症状を残すもの
  14. 外貌に醜状を残すもの
第13級
  1. 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  5. 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  6. 一手のこ指の用を廃したもの
  7. 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
  8. 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
  9. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
  10. 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用11.を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
  11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級
  1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
  4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
  7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
  8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
  9. 局部に神経症状を残すもの
出典:自動車損害賠償保障法施行令 別表第2

ここに記載されていない後遺症についても各等級の後遺症と同等程度の後遺症だと認定されれば、等級が認定されます。

むちうち、ヘルニア、高次脳機能障害、顔の傷など具体的な症状ごとの等級認定基準を知りたい方は、『【後遺障害等級表】症状別の等級や認定基準を解説!自賠責保険金もわかる』の記事をご覧ください。

また、後遺障害以外の賠償金やその計算方法について知りたい方は『交通事故|人身事故の賠償金相場と計算方法!物損事故との違いは何?』の記事をご覧ください。

後遺障害認定の流れとは?

症状固定~後遺障害認定までの流れ

交通事故によって負った傷害は、治療と時間経過により改善していきます。
しかし場合によっては、これ以上治療を継続しても症状が改善することは無いという状態に至ることもあります。
この、「これ以上治療を継続しても症状が改善しない」という状態を「症状固定」と言います。

症状固定後に残ってしまった症状のことを、一般用語として後遺症と言います。
先述のとおり、後遺症が残ったからといってそのすべてが賠償の対象になるのかといえばそんなことはありません。
後遺症のうち後遺障害として認定された症状は「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」といった特別な賠償が認められますが、後遺症が認定を受けられなかった場合には、これらの賠償金は認められません。

症状固定後は、第三者機関の審査を経ることによって「その後遺症が後遺障害にあたるのかどうか」「後遺障害に当たるとして等級は何級になるのか」が確定されます。
この第三者機関の審査が終わり後遺障害の認定結果がわかった後、相手方任意保険会社と示談交渉をして賠償金の金額をすり合わせていくことになります。

後遺障害認定をするのは「損害保険料率算出機構」

事故被害者の後遺症が、後遺障害の何級に該当するのかを審査するのは「損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)」という組織です。
この組織は「損害保険料率算出団体に関する法律」という法律に基づき設立された第三者機関です。

「第三者機関が後遺障害の判定をする」というのが大きなポイントとなります。
自身のケガの担当医が後遺障害の認定をするわけではないのです。

実務では、担当医師の書いた後遺障害診断書などの書面を参考に損害保険料率算出機構が後遺障害の等級認定を行います。
審査は書面審査のみです。
事故被害者や医師が損害保険料率算出機構に直接赴き説明する機会などは原則としてありません。
書面の出来・不出来がそのまま認定結果に反映されます。

損害保険料率算出機構への、後遺障害認定の申請方法は2種類あります。
「事前認定」と「被害者請求」です。
いずれも、損害保険料率算出機構に必要書類を提出するという点では変わりありません。
ただ提出の方法に違いがあり、認定において有利か不利かという点にも差があります。

結論から言ってしまえば、被害者請求の方がおすすめの方法となります。
二つの方法の細かな流れを見ていきましょう。

後遺障害の事前認定の流れ

事前認定は、相手方の任意保険会社が申請の手続きを代行してくれるというものになります。
事故被害者の方が行うのは、担当の医師から診断書を貰いそれを相手方任意保険会社に提出することだけです。

事前認定の手続きの流れ

  1. 担当の医師に後遺障害診断書を書いてもらう
  2. 後遺障害診断書を相手方任意保険会社に提出
  3. 相手方任意保険会社がそのほか必要となる書類を準備
  4. 相手方任意保険会社が損害保険料率算出機構へ後遺障害認定の申請を行う
  5. 損害保険料率算出機構が審査を行う
  6. 審査結果が相手方任意保険会社に届く
  7. 相手方任意保険会社から審査結果を報告してもらう

後遺障害の被害者請求の流れ

被害者請求は被害者自らが必要書類を準備し、後遺障害申請の手続きを行うというものになります。
必要書類の提出先は、相手方の自賠責保険会社です。

被害者請求の手続きの流れ

  1. 担当の医師に後遺障害診断書を書いてもらう
  2. 後遺障害認定の申請に必要な書類を準備する
  3. 相手方の自賠責保険会社に診断書、必要書類などを提出する。
  4. 相手方自賠責保険会社が損害保険料率算出機構へ後遺障害認定の申請を行う
  5. 損害保険料率算出機構が審査を行う
  6. 審査結果が相手方自賠責保険会社に届く
  7. 相手方自賠責保険会社から審査結果を報告してもらう

提出に必要な書類の書式は、定型のものがあります。
そのため、たとえば保険会社の窓口には説明書と併せて用紙等一式が備えられていたりもします。
自賠責保険の担当部署に電話を掛ければ、必要事項を連絡したうえで郵送で取り寄せることもできます。

申請に必要となる書類は、具体的には以下の通りです。

申請に必要な書類

  • 保険金・損害賠償額・仮渡金支払請求書
  • 交通事故証明書
  • 交通事故発生状況報告書
  • 後遺障害診断書
  • 診療報酬明細書
  • 休業損害証明書
  • 看護料の立証書類
  • 通院交通費の立証書類
  • 被害者の領収書と加害者の既払い金を証明するもの
  • 印鑑証明書
  • 委任状(代理人請求の場合)
  • 戸籍謄本

事前認定の場合も被害者請求の場合も、申請から認定結果の通知まではおおむね1~3か月程度かかります。
事故の状況やケガの状況がより複雑であった場合などでは、さらに審査に期間を要する場合もあります。

後遺障害の申請は事前認定と被害者請求どちらがいいのか

結論から言ってしまえば、被害者請求です。

事前認定は、諸々の面倒くさい手続きをすべて相手方任意保険会社に一任できるというのが最大のメリットです。
診断書さえ提出してしまえば、あとは認定の結果を待つだけとなります。
ただ事前認定には、手軽に手続きが進められるという以上のメリットはありません。

先述の通り、事前認定は相手方任意保険会社がもろもろの手続きを行います。
相手方任意保険会社は、言うまでもなく営利組織です。
つねに自社の利益が最大になるよう努力を払っています。
仮に事故被害者の方に後遺障害が認められると、慰謝料が増額してしまうわけですから、保険会社としては支出が増え、利益が減るわけです。
事故被害者の方と相手方任意保険会社は、賠償金の金額という面において常に相反する目的を持っているということができます。

無論、相手方任意保険会社も事前認定の手続き自体はきちんと行ってくれることでしょう。
しかし、等級認定に有利になるような特別な努力は一切してくれません。
また認定の結果についても任意保険会社から単に通知されるだけですので、手続きの透明性が確保できず、結果について不本意なものとなる可能性も高いです。

他方、被害者請求であれば、等級の認定が得られるよう色々な工夫や努力をすることができるようになります。
例えば、後遺障害等級認定に有利となるような補足資料を添付すれば認定の可能性を底上げできます。
診断書に記載されていない情報が盛り込まれたカルテや負傷状況の写真、専門医の意見書などを収集し、また認定に不利な事情などがあればそれを補う説明資料も添付します。

これら後遺障害認定のための色々な努力を尽くすことができることから、認定結果について不本意なものとなる可能性は低くなります。

後遺障害認定の準備は事故直後から!

後遺障害認定の審査は、書面によって行われます。
説得力のある書面を作成できるか否かが、後遺障害認定の成否に関わってくるわけです。

医師は治療のプロではありますが、書類作成のプロというわけではありません。
後遺障害診断書の重要性や賠償金の算定の流れなどについて、それほど詳しくないという方も多いのです。
治療方針の齟齬のために、後遺障害の認定を受けられなくなってしまったという事例は数多くあります。

たとえばむちうち症の治療について、医師によっては鎮痛薬を処方し安静にするよう言いつけるだけにとどめ、検査や通院治療に消極的な姿勢をとる人もいます。
仮にむちうちによる神経痛などが残存したとき、この治療方針では有効性の高い後遺障害診断書を作成できません。
後遺障害の書面審査では治療の経過などについても調査されます。
通院日数が少ない、検査結果などの医学的な証拠がないという事情は、等級認定において不利にはたらきます。

そもそも、後遺障害診断書を書くこと自体を忌避する医師もいます。
交通事故の紛争に巻き込まれたくない、後遺障害診断書の書き方がよくわからないといった理由で、診断書の作成に協力してくれないこともあるのです。
また後遺障害診断書を書くということは、後遺症が残ってしまったという事実を決定づけることになります。
医師はケガを治療し回復させることを使命としているわけですから、これを面白く思わない方もいることでしょう。

事故直後から、「後遺障害の申請を見越した治療方針を立ててもらうこと」「後遺障害診断書の作成に協力してくれる医師、病院を選ぶこと」が重要となります。

後遺障害認定に対する異議申立てとは?

後遺障害認定の異議申立ての流れ

後遺障害認定の申請後、思ったような結果が得られなかったときには後遺障害認定に対する異議申立てを行うことができます。

異議申立ての際は、異議申立書を書き、相手方の保険会社に提出します。
最初、事前認定の方式で後遺障害の申請をした後、自ら書類をそろえて被害者請求の方式で異議申立てを行うこともできます。

最初の後遺障害認定の審査と同じく、審査をするのは損害保険料率算出機構です。
ただ異議申立ての場合は、より公平・適正な審査となるよう、外部の専門家も参加します。
具体的には、弁護士、専門医、交通法学者、学識経験者などです。

審査の結果は、およそ2~3か月後に通知されます。
初回の後遺障害認定の申請より期間は長くなりがちです。
また初回の後遺障害の申請と同じく、事故の状況やケガの状況などによってこの期間は伸びる可能性もあります。

後遺障害認定の異議申立ての注意点

実務上、異議申立てによって認定結果がくつがえるケースは少ないです。
後遺障害の認定結果は一度審査をした上で出された結論です。
審査する側としても、そう易々と認定結果を改めることはできないわけです。

後遺障害の異議申立てを行う際には、以下の2点について気をつけると良いでしょう。

  • なぜ非該当、もしくは低い等級になったのか理由を分析する
  • その理由が妥当ではないことを示す証拠を提示する

なぜ非該当、もしくは低い等級になったのか理由を分析する

後遺障害の認定結果の通知書には、その等級になった、もしくは等級認定に至らなかった理由が記載されています。
しかし通知書記載の理由だけでは、いまいち要領を得ないようなケースもあります。
そのようなときには、相手方自賠責保険会社宛てに「理由開示の申立て」をするとよいでしょう。

「理由開示の申立て」は自動車損害賠償保障法という法律に記載された手続きです。
自賠責保険会社は、被保険者や被害者から書面でこの種の説明を求められたとき、それに応えなくてはならないと決まっています。

保険会社は(略)書面を交付した後において、被保険者又は被害者から、国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、書面により(略:保険金の支払いに関する一定の事項など)について説明を求められたときは(略:特別な場合を除き)国土交通省令・内閣府令で定めるところにより、当該説明を求めた者に対し、書面により、当該説明を求められた事項を説明しなければならない。(後略)

自動車損害賠償保障法16条の5

理由開示の申立てを行えば、等級非該当となった、もしくは低い等級が認定された理由の詳細が分かるようになるでしょう。

等級非該当となった、低い等級となった理由としては、主に以下のものが挙げられます。

  1. そもそも等級に認定されるような症状ではない
  2. 入院・通院の実日数が少ない
  3. 症状の主張に一貫性がない
  4. すべき検査がされていない
  5. 添付資料が少なく、医学的な証拠に乏しい
  6. 書類に不備があった
    など

これら理由を徹底的に精査し、対策を練る必要があります。
先述の通り、異議申立てによって後遺障害の認定結果がくつがえるケースというのはそう多いものではありません。
「こんなに辛い思いをしているのに非該当なのはおかしい!」などと主張するだけでは、思ったような成果は得られないのです。

その理由が妥当ではないことを示す証拠を提示する

理由の分析が終わったら、認定の理由が妥当ではないと言えるような事情を探し、それを証拠化します。
具体的には照会・回答書、意見書、またCTやMRIの画像、その他検査の結果を示す書類などを作成、添付します。

必要な検査が行われていなければ、早急にそれを行い資料として添付します。
入通院の日数が少ないと指摘されていたなら、その理由を示す医師の意見書などを添付すると良いかもしれません。
あるいはセカンドオピニオンとして別の医師に診断書・意見書を作成してもらうという手段もあります。

どのような資料を作成・添付すべきかは、個別事情により大きく変わるでしょう。
やみくもに異議申立てをしても示談までの期間が長引き、単に苦痛が増大するだけに終わってしまいます。
異議申立てをするときには、交通事故に精通した弁護士などに相談し、戦略的に対策を練るのが賢明です。

異議申立ての結果にも納得できなかったときは…

異議申立ては何回も行うことができます。
ただ1回目の異議申立てが失敗に終わった場合、2回目3回目の異議申立てがうまく行く可能性というのは低いと言わざるを得ません。
異議申立ての結果にも納得できなかった場合には、自賠責保険・共済の「紛争処理機構」への紛争処理の申請を検討します。

申請を受けた紛争処理機構は、 第三者である弁護士、医師、学識経験者で構成する紛争処理委員会を組織し、保険会社の保険金支払内容の妥当性について審査を行います。
保険会社の等級認定結果の妥当性についても審査が行われます。
保険会社は紛争処理機構による最終的な調停結果を守るよう定められています。

紛争処理機構への申請は、保険会社への異議申立てと同じく書面で行います。
必要となる書類は以下の通りです。

  • 紛争処理申請書
  • 紛争処理申請書 別紙
  • 同意書
  • 証拠書類など認定に有利となる参考資料

フォーマットは、紛争処理機構の公式HP上で公開されています。(http://www.jibai-adr.or.jp/enterprise_04.html)

紛争処理機構への申請後の流れ

  1. 必要書類を紛争処理機構へ送付
  2. 紛争処理機構がその申請を受理できるかどうか審査
  3. 不受理の場合は不受理通知が、受理された場合は受理通知が送付される
  4. 紛争処理委員会が審査を行う
  5. 審査の結果が、申請者や相手方保険会社などに通知される

手続きに要する期間はおおむね2~3か月程度。
保険会社への異議申立てと同じくらいか、それよりさらにかかる可能性もあります。
なお保険会社への異議申立てと違い、紛争処理機構へ申請できるのは1回きりとなります。

なおも後遺障害の認定について争う場合には民事訴訟をおこすという方法もあります。
民事訴訟、つまりは裁判を起こすのは大変な時間と手間がかかります。
ただ、仮に勝訴することができれば、相手方保険会社に対して強制力をもって支払いを要求することができます。
交通事故裁判の流れなどについてくわしく知りたい方は、『交通事故の裁判の起こし方や流れ』の記事をご覧ください。

後遺障害認定による増額実例を紹介!

過去、当事務所でとり扱った交通事故の実例をいくつかご紹介します。
いずれのケースも、相手方保険会社から後遺障害には該当しないとの連絡を受けており、弁護士介入後に後遺障害が認定されたというケースとなります。

ケース1 手にしびれが残った事例

事故の状況自動車対自動車の事故。
渋滞で停車していた被害者車両の後方から、加害者車両が追突した。
後遺症の症状むちうち症を負い、手にしびれが残った。
後遺障害等級無等級→14級9号
保険会社提示額75万2000円
最終回収額261万8146円
増額の経緯相手方保険会社は、後遺障害に該当しないものとして賠償金の額を算定していた。
弁護士が後遺障害の申請を行ったところ、14級9号が認定された。
再度示談交渉に臨んだところ、186万6146円の増額となった。

ケース2 左手親指に可動域の制限が残った事例

事故の状況バイク対自動車の事故。
被害者バイクが交差点を直進中、対向の右折自動車と衝突した。
後遺症の症状左手親指の可動域が半分以下になった。
後遺障害等級無等級→14級相当
保険会社提示額36万440円
最終回収額295万円
増額の経緯相手方保険会社は「後遺障害には認定されないので申請しなくていい」等と主張。
被害者もそれに従ってしまっていた。
弁護士が後遺障害の申請を行ったところ、14級相当だと認められた。
再度示談交渉に臨んだところ、258万9560円の増額となった。

ケース3 鎖骨の変形と神経痛が残った事例

事故の状況バイク対自動車の事故。
被害者バイクが道路を直進中、路面店に入ろうとした対向の自動車と衝突した。
後遺症の症状鎖骨が変形し、肩に痛みが残った。
後遺障害等級無等級→12級相当
保険会社提示額54万9204円
最終回収額587万1716円
増額の経緯相手方保険会社は後遺障害に該当しないものとして賠償金の額を算定していた。
弁護士が後遺障害の申請を行ったところ、12級相当だと認められた。
再度示談交渉に臨んだところ、532万2512円の増額となった。

後遺障害認定を弁護士に依頼するメリットとは?

後遺障害認定に有利になるよう医師に働きかけられる

先述のとおり、後遺障害の認定においては戦略的な事前準備が重要です。
早急に弁護士に依頼していただければ、後遺障害の認定を見越して現状の治療方針が正しいのか誤っているのか判断をくだすことができます。

仮に現状の治療方針が後遺障害の認定という面から言って不利な場合には、医師にその旨を伝えることができます。
この際、被害者ご自身から伝えるのは得策ではありません。
医師もプロとして治療にあたっていますから、医療の素人の意見として捉えて、まともに聞き入れてくれない可能性があります。
弁護士という損害賠償手続きのプロからの意見であれば、聞き入れてくれる可能性も高まるわけです。

また、医師によっては後遺障害診断書の作成に不慣れである場合もあります。
後遺障害の認定は書面審査です。
書面の出来・不出来が認定結果に直接あらわれてきます。
より出来の良い後遺障害診断書を作成することが、後遺障害の認定においては非常に重要となるのです。
弁護士であれば、医師と協力・検討の上でより有効性の高い後遺障害診断書が作成されるよう取り計らうことができるのです。

被害者請求の煩雑な手間が軽減される

後遺障害の申請にあたっては、事前認定より被害者請求を行うべきです。
ただ被害者請求には、書類の準備を自分でしなければならないという手間があります。
個々の書類も、記載するのに専門的な知識を要求されることが多く、事故被害者ご自身の力だけでは非常に大変になってしまいます。

弁護士なら、これら書類作成を代理することができます。
被害者請求によってより適正な後遺障害認定を目指せると同時に、ご自身は書類作成の手間を軽減。
ケガの治療に専念することができるようになるのです。

示談金の金額を増額できる

弁護士に依頼すれば、上記の様々な努力によってより適正な後遺障害等級に認定される可能性が上がります。
後遺障害に認定されれば、認定されなかったとき比較し示談金の金額が相当増大します。

またそもそも相手方の任意保険会社は、示談交渉の際、裁判の判例の基準よりも低い額を提示してきます。
被害者ご自身からいくら裁判基準での支払いをするよう要求しても、通常それを聞き入れてくれることはありません。
弁護士なら、相手方保険会社に過去の裁判例、過去の交通事故実務の実例を提示し、根拠をもって増額を要求できます。
保険会社としても弁護士が相手となった場合、裁判を起こされるリスクなどが考慮されるため、増額交渉に応じざるを得なくなります。

弁護士に依頼すれば、示談金の大幅な増額が見込めるわけです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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