落下物による事故の過失割合。高速道路と一般道で違う?落とし主の責任は?

更新日:

落下物による事故

交通事故は、後続車から追突されたり、出合頭に衝突したりするだけではありません。先行車の落下物とぶつかったり乗り上げたりする事故もあります。

落下物事故の過失割合は、高速道路と一般道路で考え方が異なるので注意が必要です。

また、落下物事故による損害は、落とし主に治療費や慰謝料などを請求することができます。しかし、落とし主がわからない場合はどうすればいいのでしょうか。

本記事では、落下物事故の過失割合から、落下物事故を回避する方法、さらに落下物事故にあった後の対応などについて解説していきます。

なお、本記事で紹介する過失割合に関しては、「別冊判例タイムズ38」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)に記載されている情報をベースにしています。

交通事故の無料法律相談
相談料 0
毎日50件以上のお問合せ!
交通事故の無料法律相談
¥0 毎日
50件以上の
お問合せ

落下物による事故の過失割合

高速道路における落下物事故の過失割合

高速道路における落下物事故の基本の過失割合は、後続車:先行車(落とし主)=40:60です。もっとも、修正要素に応じて過失割合は変わるので、下記表もご覧ください。

後続車先行車
基本4060
視認不良-10+10
追越車線-10+10
後続車がバイク-10+10
先行車の著しい過失・重過失-10~20+10~20
後続車の速度違反+10~20-10~20
後続車のその他の著しい過失・重過失+10~20-10~20

すべての車は積載物が落下しないよう安全に運送する義務がある一方、前方を注視して走行する義務もあります。

もっとも、高速道路での落下物事故の場合、車両のスピードが速く避けにくい点が考慮され、落とし主である先行車に6割の基本の過失割合が割り当てられているのです。

ただし、個別の事情により、過失割合は変化します。たとえば、積載物の落下を防ぐための措置が講じられていなかった場合は先行車、前方を注視していなかった場合は後続車に過失がつくなど、修正要素に応じて調整される可能性があるでしょう。

補足

落下物といっても、遠くからでも視認できるものもあれば、近づいてはじめて視認できるものもあります。また、落下物で車線を埋め尽くしてしまい、後続車としては停車するか乗り上げるしかない状況もあるでしょう。

そのため、ここでいう落下物とは以下のような場合をさしますので、注意してください。

  • 比較的近づいた距離になってはじめて危険性が認識できるもの
  • 物理的に一定の大きさであったり、滑りやすかったりするもの
  • 後続車に軽度の前方不注視があること

上記のケースに当てはまらない落下物による事故の場合、ここで紹介した過失割合になるとは限りませんので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

一般道における落下物事故の過失割合

一般道における落下物事故の過失割合は、高速道路よりも後続車の過失割合が大きくなる傾向にあります。

一般道では高速道路に比べると車両のスピードが遅く、落下物に気づいて避けやすいため、後続車の前方不注意や走行速度、車間距離が問題になりやすいからです。

もっとも、一般道を走行中、先行車から予測不能なほど突然、大量のものが落下してきてぶつかったような場合は、後続車:先行車(落とし主)=0:100になる可能性はあるでしょう。

一般道では後続車により大きい過失がつくことが予想されるとはいえ、個別の事故状況によって過失割合は大きく異なるので、一般道路における落下物事故の過失割合をここで一概に述べることはむずかしいです。

詳しい過失割合に関しての見解は、弁護士に聞いてみましょう。

落下物による事故を回避する方法

車間距離を十分あけて運転する

車間距離を十分にあけて運転することで、急ブレーキや急ハンドルでしか落下物を避けられない事態を回避できます。

また、車間距離を十分にあけることで、前方の車が落下物を発見して停車した場合にも、早めに反応して追突事故を回避することができるでしょう。

安全なスピードで走行する

安全なスピードで走行することで、落下物を避けるための余裕を増やすことができます。

安全なスピードで走行していれば、落下物にぶつかったり乗り上げたりするのを早めに回避できるだけでなく、速度違反による過失が付くこともありません。

落下物にぶつかりそうになったら安全に停車

落下物にぶつかりそうになったら、急ブレーキや急ハンドルで避けようとせず、安全に停車するようにしましょう。

また、落下物が車に衝突する可能性がある場合は、車を路肩などに避けて停車します。

落下物による事故は、運転者の安全運転によって大きく回避することができます。紹介した方法に注意して、安全運転を心がけましょう。

落下物による事故に関する疑問

Q.落下物にはどのような種類がある?

落下物には、積み荷だけでなくさまざまな種類があります。NEXCO東日本によれば、高速道路上で多い落下物は以下の通りです。

1位:プラスチック・ビニール・布類(毛布/シートなど)
2位:自動車部品類(タイヤや自動車附属品など)
3位:木材類(角材やベニヤ板など)

NEXCO東日本「落下物はどのように回収しているの?

落下の原因の多くは、積み荷の固定が甘いことです。走行前に積み荷の確認を行いましょう。

Q.落とし主の責任は誰にある?

落下物の責任は、基本的に落とし主にあります。高速道路でも一般道でも共通して、貨物などの落下を防止する義務が道路交通法で決められています。

乗降口のドアを閉じ、貨物の積載を確実に行う等当該車両等に乗車している者の転落又は積載している物の転落若しくは飛散を防ぐため必要な措置を講ずること。

道路交通法第71条第4項

貨物などが崩れ落ちないように縄をかけて固定したり、シートをかぶせたりしなければなりません。

また、高速道路では加えて、貨物などの積載状況をあらかじめ点検することが義務付けられているほど、落下物による事故は危険なのです。

自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、(略)積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。

道路交通法第75条の10

さらに、貨物などを落とした場合は、放置したままにしてはいけません。

車両等に積載している物が道路に転落し、又は飛散したときは、速やかに転落し、又は飛散した物を除去する等道路における危険を防止するため必要な措置を講ずること。

道路交通法第71条第4の2項

Q.落下物を見つけたらどうする?

道路上に落下物を見つけたら道路緊急ダイヤルの「#9910」に連絡しましょう。連絡は運転者以外の方が行ってください。

また、当然ですが、高速道路上の場合は、危険なのでぜったいに自分で回収しに行ってはいけません。

道路緊急ダイヤルを忘れてしまった場合は、警察に110番通報してもいいでしょう。

小さなものでも、落下物をそのままにしていると非常に危険です。自分が落としたわけではないから関係ないとは思わず、落下物を発見したらすぐに関係各所に連絡し、事故の防止や安全確保に努めましょう。

Q.落とし主が不明な場合の賠償はどうなる?

落とし主が不明な場合、自損事故として扱われることになるでしょう。落とし主がわからないということは賠償してもらえる相手もわからないので、損害賠償請求がむずかしいのが現実です。

自損事故として処理されることになったら、ご自身が加入する任意保険の「車両保険」や「人身傷害保険」などに保険金を請求して、補償を受けとることになるでしょう。

もっとも、契約する保険によっては補償の対象外である場合もあるので、詳細な保険の内容は約款や担当者に確認するようにしてください。

また、事故にあったら警察への連絡は必ず行いましょう。

自損事故として処理するにしても、警察に事故の報告をしなければ保険金の請求に欠かせない「交通事故証明書」がもらえません。

落下物にぶつかったり踏んだりしたら弁護士に相談

落下物にぶつかったり踏んだりして事故にあい、お怪我をされた場合、落とし主に損害賠償請求することができます。

落とし主が任意保険に加入している場合、保険会社は低額な慰謝料しか提示してこないのが通常でしょう。慰謝料の金額に疑問をもったら、増額の可能性があるか弁護士にご相談ください。

弁護士が示談交渉に介入することで、増額する可能性が高まります。

弁護士による交渉で増額する可能性は高まる

アトム法律事務所では、弁護士による無料の法律相談を行っています。法律相談の受付は24時間いつでも対応中なので、空いた時間を使って気軽にお問合せください。

交通事故の無料法律相談
相談料 0
毎日50件以上のお問合せ!
交通事故の無料法律相談
¥0 毎日
50件以上の
お問合せ

もし、落下物による事故が自損事故として扱われており、人身傷害保険から補償を受け取る場合は、残念ながら保険金の増額余地は少ないです。

もっとも、怪我が完治せず後遺障害認定を受けた場合、逸失利益に関しては増額の可能性があるので、弁護士に増額の見込みを聞いてみることをおすすめします。

いずれの場合も、法律相談は無料なので気軽にお問い合わせください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

突然生じる事故や事件に、
地元の弁護士が即座に対応することで
ご相談者と社会に安心と希望を提供したい。