物損事故のお詫びは不要?電話だけで済む?謝罪の必要性と正しい対応方法

この記事でわかること
「物損事故を起こして保険会社が対応しているけど、自分もお詫びすべき?」
「加害者から謝罪がなくてモヤモヤする…」
こうした「お詫び」に関する悩みは、物損事故の加害者と被害者のどちらにも共通するものです。
結論から言えば、物損事故では加害者に法的な謝罪義務はありません。
しかし、謝罪がないことで被害者が誠意を感じられず、示談がこじれるケースは珍しくありません。
本記事では、「物損事故における謝罪は本当に不要なのか?」「電話だけで十分なのか?」といった疑問に、交通事故に強い弁護士が答えます。加害者・被害者双方にとって納得できる対応の仕方を、具体例を交えてわかりやすく解説します。
目次

そもそも「物損事故」ではお詫びはいらないのか?
法的には謝罪義務なし。でもマナー的には重要
交通事故では、「被害者に謝罪しなければならない」という加害者に対する義務はありません。
特に物損事故の場合、軽微な事故が多く、刑事責任が問われることも通常ありません。また、修理費用など損害賠償の支払いは、主に任意保険を通じて補償されるのがほとんどで、保険会社が代行して被害者と示談交渉を行います。
しかし、たとえ法律上の謝罪義務はなくても、実際のトラブル対応においては、マナーや常識としての「誠意ある対応」が求められます。事故によって相手の車や財物に損害を与えたことは事実であり、最低限の謝罪がなければ被害者は「反省のない人だ」と感じ、示談や修理対応にも影響が出る可能性があるのです。
お詫びするか迷ったときは、基本的に「謝る」ことをおすすめします。たとえ簡単な一言でも、お詫びの気持ちを示すだけで被害者の心証は大きく変わることがあります。
ポイント
- 法律上は謝罪しなくても問題なし
- ただし、謝罪が無いことで被害者が不満を抱き、かえって関係がこじれることもある
- 保険会社の対応とは別に、「一言でも謝罪の電話を入れる」ことが被害者との関係を良好に保ち、余計なトラブルを防ぐ効果がある
保険会社任せでは不十分?加害者本人の対応の重要性
物損事故の多くは、保険会社を通じて補償対応が行われますが、「加害者本人から何も連絡がない」と被害者が不満を感じるケースもあります。
事実上、保険会社の対応だけで賠償は完了しますが、「人としてどこまで対応すべきか」が問われるのが謝罪がもつ重要なポイントです。
保険会社と加害者本人での対応の違い
- 保険会社の対応
- 損害額の算定・補償の支払い
- 法的手続きの代行
- 事務的な交渉
- 加害者本人の対応
- お詫びの言葉、誠意の見せ方
- 人間関係の円滑化
- 感情的なしこりのケア
誠意ある一言だけで、信頼関係が築けるケースもあります。
保険会社が直接の接触を禁じてきたら?
お詫びをするべきかどうか迷う要因としては、自身が加入する任意保険会社から「被害者と直接、接触しないでください」と禁じてくることもあげられます。
保険会社が被害者との接触を禁じるのは、当事者同士でやり取りをすることで、示談交渉の内容が食い違ったり、示談金の支払いに支障が出たりするおそれがあるためです。保険会社としてはトラブル防止のため、慎重な対応を求めています。
それでも、一言だけでもお詫びの気持ちを伝えたいという場合は、あらかじめ保険会社にその旨を説明しておくのがよいでしょう。
たとえば、「示談交渉の話には触れず、気持ちだけ伝えることを了承してほしい」と相談すれば、柔軟に対応してくれるケースもあります。
被害者が感じる「誠意」とは何か?
物損事故の被害者が加害者に対して求める「謝罪」には、「責任を認めて反省している姿勢を示してほしい」という気持ちが込められています。
そのため、以下のような行動をとれば、誠意を感じてもらいやすいでしょう。
- 事故直後に相手に連絡を取り謝罪の言葉をかける
- 保険会社の対応とは別に、自分の言葉で状況説明と謝罪を伝える
- 相手の不満や疑問にできる範囲で丁寧に対応する
事故によって物が壊れたという客観的被害だけではなく、「自分が被害を受けたことを軽く扱われた」と感じたときに不満が強まるケースが多いようです。金銭補償をしたかどうかにかかわらず、「人としてどう対応するか」による部分が大きいといえるでしょう。
謝罪しないことのリスクは?
謝罪しないことで、被害者が「誠意がない」と感じ、以下のようなリスクが生じます。
- 示談交渉がまとまらない
- 過剰な請求をされる(心情的に強く出られてしまう)
- 弁護士や警察に相談され、大事になる
このような事態を防ぐには、事故後の早い段階での「最低限の謝罪・説明」が非常に効果的です。たとえ電話一本であっても、加害者がひとこと「ご迷惑をおかけしました」と伝えるだけで、被害者の受け止め方が大きく変わります。
法的義務がないとはいえ、謝罪を怠ることで結果的に自分が不利になるリスクは無視できません。
物損事故での謝罪は「電話だけ」で足りる?
一般的に電話だけで済むケース
物損事故が軽微であり、すでに保険会社が連絡しているケースでは、電話だけの謝罪でも十分なことがあります。
被害者の状況や事故の内容によって、電話だけで十分なケースも多いです。
- 軽微な接触事故で被害が少ない場合
- 被害者が謝罪を求めていない(または「お詫びはいらない」と明言している)
- 保険会社が速やかに対応しており、補償にも問題がない場合
たとえば、「駐車場で軽くぶつけてしまったが、すぐに保険会社が対応している」などの場合、丁寧な電話での謝罪と現場写真の送付で完了することもあるでしょう。
面会や手紙が望ましいケース
以下のようなケースでは電話だけでなく、面会や手紙などより丁寧な謝罪が望まれます。
- 破損の程度が大きい
- 相手が不満を感じている様子が見える
- 保険会社の対応が遅い、または誠意が感じられないと受け取られている
このような状況では、誠意を見せることが後々の信頼関係にもつながります。
アドバイス
迷ったら、まず電話で被害者の意向を確認しましょう。必要に応じて、対面や書面での謝罪に切り替える柔軟さが、余計なトラブルを防ぐカギになります。
物損事故で「お詫び不要」と言われたときの対応
「お詫び不要」と言われても完全無視はNG
被害者側から「お詫びは不要です」と言われたとしても、鵜呑みにして完全に無視するのは避けましょう。
表面的には謝罪不要と言っていても、内心では「一言くらい欲しかった」と思っている可能性があります。形式的でも、丁寧な念のためのお詫びは、被害者の心情に配慮する意味でも重要です。
お詫び不要と言われた時の例文
お礼と念のための確認の意味で、以下のような言葉を添えて連絡してみましょう。
例文①
この度はご迷惑をおかけして申し訳ありません。お詫びは結構とのことですが、何かトラブルがあればすぐご連絡ください。誠意をもって対応いたします。
例文②
念のため、一言お詫びをさせていただきたくお電話しました。対応は保険会社を通じて進めておりますが、今回はこちらの不注意でご迷惑をおかけしました。
こうした一言があるだけで、被害者側も「誠意がある人だな」という印象を受け、円満な解決へとつながります。
物損事故の被害者側が注意すべき点とできる対策
もし、被害者として「加害者から何の連絡もない…」という状況で不安を感じ、感情的に対応すると、かえって損害賠償の交渉がうまくいかなくなることがあります。
以下のような点に注意して、対応を検討してみてください。
- 記録を残しておく(事故当時の状況、保険会社とのやり取りなど)
- 弁護士に相談する(保険に弁護士費用特約がついている場合は特に)
- 保険会社にも「相手方と連絡が取れない」と伝える
被害が適切に補償され、精神的なストレスが減るよう、専門家の助けを借りるのも有効です。
まとめ|物損事故で「お詫びはいらない」と言われても柔軟に対応する
物損事故では、「お詫びはいらない」と思われがちですが、被害者の心情に配慮した対応が後々のトラブル防止にもつながります。
- 法律上、謝罪する義務はない
- しかし、誠意を見せることが信頼関係を築くカギ
- 電話だけで済むこともあるが、状況に応じて柔軟に対応する
- お詫び不要と言われた場合も、丁寧な言葉を添えるのがベター
大切なのは誠実な対応です。迷ったときは保険会社に相談し、場合によっては弁護士にも相談するなど、適切な対応をとりましょう。加害者も被害者も、冷静かつ落ち着いた対応で事故後の不安を最小限に抑えることができます。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了