花粉症のドライバーが安全運転するには?運転への影響と対策を紹介!

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花粉症のドライバー

スギ花粉やヒノキ花粉が飛散のピークを迎える春は花粉症の季節ともいわれており、特に花粉症の症状に悩まされる人が多くなる時期です。

花粉症とは、体内に侵入した花粉に対し人間の身体が起こす抗原抗体反応で、全国的な調査では有病率が4割を超えていることから国民病といわれることもあります。

花粉症は日常生活のさまざまな場面に影響を与えますが、特に車の運転の場面では、事故の原因になるなど重大な影響を与える可能性があります。

本記事では、花粉症が運転に与える影響と安全運転をするための対策を紹介していきます。

花粉症は誰しもが発症する可能性があるので、花粉症の症状が出ているドライバーはもちろん、現在は花粉症の症状が出ていないドライバーの方も参考にしてみて下さい。

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運転中のくしゃみの影響で死亡事故が発生したケースも…

花粉症が車の運転に与える危険な影響を実感してもらうため、実際に2017年4月に発生した交通事故のケースを紹介します。

ある花粉症の男性は花粉症の薬を服用していましたが、運転中に目のかゆみや連続するくしゃみなどの症状が悪化していました。

そして、くしゃみをした際の反動で、ハンドル操作を誤り、前方不注意の状態で対向車線にはみ出し、対向車と正面衝突してしまいました。

その結果、対向車に乗車していた3人を死傷させてしまい、男性は禁錮3年(執行猶予4年)の有罪判決を受けることになりました。

上記のケースからも、花粉症が運転に与える影響を甘く考えるのは禁物ということがお分かりになるかと思います。

花粉症の症状が運転に与える影響

花粉症の症状は、車の運転に以下のような悪影響を与えます。

視界・視野の低下

花粉による目のかゆみやかすみ、涙目といった症状が出ると、視界や視野が確保しにくくなります。

その結果、赤信号・一時停止の標識や飛び出してきた人・障害物を見落としたり、発見が遅れたりする可能性が高まり、安全運転が困難となります。

誤操作・前方不注意

花粉症になると、突発的なくしゃみが連続して発生しやすくなります。

運転中にくしゃみを連発すると、その反動でハンドル操作を誤ったり、アクセルやブレーキを間違って踏んでしまったりする可能性があります。

また、くしゃみをする際には目を閉じてしまうことが多いですが、目を閉じていたのが0.5秒でも、もし時速60キロで運転中だったなら約8メートル、高速道路を時速100キロで運転中だったなら約14メートルもその間に進むので、安全な車間距離を十分に確保できず、追突事故を起こす可能性が高まります。

さらに、花粉症になると鼻水が出やすくなりますが、運転中に鼻をかもうとすると、ハンドルを手放す必要があり、脇見運転となってしまうので、安全運転が困難となります。

集中力・判断力の低下

花粉症の症状が出ている状態で運転するのは、程度にもよりますが、過労状態や眠気がある状態で
運転する行為に類似
しているといわれます。

そのため、頭がぼーっとして、集中力や判断力が低下した状態で運転することになり、安全運転が困難となります。

花粉症薬の服用が運転に与える影響

花粉症対策として、抗ヒスタミン薬などの花粉症薬を服用している方も多いかと思いますが、花粉症の症状を抑える薬の服用は、副作用により以下のような車の運転への悪影響を与える可能性があります。

服用後の運転を禁止している薬もある

そもそも、花粉症薬には、運転への支障が大きいため、服用後の運転を禁止している薬も存在します。

そういった花粉症薬を服用後に運転すると、事故を起こす危険性が非常に高まります。

なお、道路交通法は、薬の副作用の影響などにより、正常な運転ができない状態で運転することを禁止しています。

何人も…過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。

道路交通法第66条

上記に違反した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則を科せられる可能性があります。

眠気・倦怠感

花粉症の症状を緩和するための薬には、副作用として眠気や倦怠感をもよおすものもあります。

抗ヒスタミン薬により脳内のヒスタミンがブロックされると、鎮静作用が働き、眠気が起こってしまうのです。

そのため、上記の副作用がある花粉症薬を服用しての運転は、居眠り運転などの危険性を高めます。

集中力・判断力の低下

また、眠気を自覚しているかどうかを問わず、花粉症薬の服用には集中力・判断力の低下という副作用があるケースが多いです。

花粉症の症状がある方は、花粉症薬の服用の有無にかかわらず、集中力や判断力が低下した状態で運転する危険性が高いのです。

なお、服用後の運転を禁止している薬でなくとも、眠気や集中力・判断力の低下といった副作用の影響で正常な運転ができないおそれがある状態と判断されれば、上記の道路交通法違反となる可能性があるのは注意点となります。

運転中の事故リスクを低下させるための対策

上記のとおり、花粉症のドライバーは運転中に事故を起こしてしまうリスクが花粉症ではない方と比較して高いといえます。

そういった事故を起こしてしまうリスクを低下させるためには、以下のような対策が考えられます。

花粉対策をする

花粉を車内に入れない

運転中に花粉症の症状が出るのを抑えるため、まずはできるだけ花粉を車内への侵入を軽減することが効果的です。

具体的には、乗車前に衣類やバッグ、靴に付着した花粉を念入りに払い落とすのを普段から習慣づけるという対策が考えられます。自分だけでなく同乗者がいる場合、同乗者にも花粉を念入りに払い落とすという対応を求める必要があります。

花粉は静電気があるところに集まりやすいため、衣類に柔軟剤を使用して静電気を抑えたり、静電気を発生させないようにするスプレーを利用したりして、花粉の付着をできるだけ抑えるのも事前の対策として有効です。

また、生地表面が凸凹しており、花粉が付着しやすいウール・起毛フリースといった種類の素材などはできるだけ避け、つるっとしており花粉が付着しにくいポリエステルやナイロンといった種類の素材を使用した衣服を着用するのも効果的です。

さらに、外気を取り入れる際に空気中の花粉も一緒に車内に取り込まないためには、以下のような対策も有効です。

  • エアコンは内気循環モードで使用する
  • 換気も窓を開けるのではなくエアコンを使用する
  • エアコンに花粉除去機能がついたフィルターを装着する
  • 運転時に限らず駐車時もなるべく車の窓を開けない

なお、エアコンフィルターは徐々に性能が低下してしまうので、定期的に(できるだけ毎年)交換するよう心がけましょう。

車内に入った花粉を除去する

上記のような対策をしても、花粉の車内への侵入を完全に防ぐことは不可能です。

そのため、車内に入った花粉をできるだけ除去するのも対策として重要です。

具体的には、車内のこまめな掃除ですが、花粉の掃除はできる限り花粉が舞わないよう、以下の手順で行うのが重要なポイントです。

  1. ウェットシートなどで拭き掃除
  2. モップ
  3. 掃除機

花粉はダッシュボードやシートにたまりがちなので、その部分を重点的に拭き掃除しましょう。

そして、エアコン吹き出し口などの凹凸がある細かい部分の掃除にはモップが便利です。

また、シートの隙間などの奥まった部分の掃除には掃除機がおすすめです。

【コラム】運転中のマスク着用には要注意!

花粉対策としてマスク着用が習慣になっている方も多いかと思いますが、眼鏡を掛けている方がマスクを着用したまま運転すると息で眼鏡が曇ってしまい、視界の悪化につながるので注意が必要です。

視界の悪化を防ぐには、曇りを予防するクロスやクリーナーを利用したり、息漏れを防いで眼鏡を曇りにくくするマスクを利用したりする対策が考えられます。

ティッシュの置き場所に気を付ける

花粉症の方が運転中にティッシュで鼻をかむ場面を完全になくすのは困難ですので、事故リスクを低下させるには、ティッシュの置き場所に気を付けることが大切です。

ティッシュが見つからずに探す必要がある場所や取りにくい場所に置いておくと、脇見運転となる時間がその分長くなり、事故リスクが高くなるからです。

ティッシュケースを社内の天井などに固定できるホルダーを活用すれば、前方を見ながらティッシュが取ることができ、脇見運転となるのを防ぐことができます。

症状が悪化したら速やかに運転を中止する

運転中に花粉症の症状が悪化してきたら、速やかに運転を中止して症状が落ち着くまで待ちましょう。

症状が落ち着かない場合、同乗者が運転をできるのであれば運転を代わってもらったり、運転代行業者を呼んだりすることも検討しましょう。

冒頭でお伝えしたとおり、花粉症が運転に与える悪影響を過小評価するのは禁物です。

処方された薬の成分に注意を払う

花粉症薬を服用している方は、処方された薬の成分に注意を払いましょう。

具体的には、医師から処方される薬の添付文書には、副作用や自動車運転への注意について記載があるので、よく確認しましょう。

先ほどもお伝えしたとおり、自動車運転を禁止する記載がなくても、副作用により運転への影響が出る可能性も十分あるので、服用後(特に直後)はできるだけ運転を控えるのが大切です。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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