経済的利益は交通事故の弁護士費用計算のもと!計算方法や考え方を解説
交通事故の弁護士費用について調べていると、「経済的利益」という言葉を目にすると思います。
経済的利益とは、弁護士に依頼することで得られる金銭的な利益のことをいい、主に弁護士費用の算定に用いられます。
この記事では、交通事故の被害に遭われた方に向けて、弁護士費用の仕組みと経済的利益について、実例を交えながらわかりやすく解説します。
目次
交通事故の弁護士費用を決める「経済的利益」とは
経済的利益とは、弁護士に依頼することで得られる金銭的な利益のことです。
交通事故の示談交渉や訴訟で弁護士に依頼するときの弁護士費用は「経済的利益」をもとに計算されます。
例えば、加害者側の保険会社から示談金50万円を提示されていたところ、弁護士に依頼して150万円になった場合、この150万円全額または、増額分の100万円を経済的利益として考えます。
獲得した全額を経済的利益とするか、弁護士が介入したことによって増額した金額を経済的利益とするかは、各弁護士事務所によって異なります。
また、着手金を設定している弁護士事務所では、「加害者側に請求する損害賠償金額」を経済的利益として着手金の計算に使うこともあります。
弁護士費用の計算に使う経済的利益
- 弁護士が獲得した賠償金の総額
- 弁護士が介入して増額した金額
- 弁護士が加害者側に請求する金額
経済的利益を使った弁護士費用の計算
弁護士費用の基本は「着手金+成功報酬」
まずは弁護士費用の基本的な構成を確認しましょう。
弁護士費用の構成
- 着手金:依頼した段階で支払う
- 成功報酬:案件終了後に支払う
交通事故の損害賠償で弁護士に依頼する場合、弁護士費用は主に「着手金」と「成功報酬」で構成されます。
現在は弁護士が自由に費用を設定できる
かつては日本弁護士連合会の報酬規程(旧報酬規程)により、一律に弁護士費用が定められていました。
現在は各弁護士が自由に費用を設定できますが、引き続きこの規定を参考にしている弁護士事務所も多く残っています。
この記事では、経済的利益から計算される着手金と成功報酬の目安として、この旧報酬規程で定められた計算基準を紹介します。
経済的利益から着手金を計算
着手金は依頼時に発生する費用です。事案の内容や経済的利益の額に応じて設定されます。
現在は、ケースによって着手金なしで交通事故案件を受任する弁護士事務所も多いです。
旧報酬規程を基準に着手金を計算すると、以下のようになります。
旧報酬規程では、着手金を計算するときの経済的利益に「弁護士が加害者側に請求する金額」を用います。
経済的利益 | 着手金 |
---|---|
300万円以下 | 8% |
300万円~3,000万円 | 5%+9万円 |
3,000万円~3億円 | 3%+69万円 |
3億円超 | 2%+369万円 |
経済的利益から成功報酬を計算
成功報酬は、示談成立後に実際に受け取った賠償金(経済的利益)に基づいて計算されます。一般的に以下の2つの要素で構成されます。
- 基本金額
- 経済的利益に応じた金額
旧報酬規程を基準に成功報酬を計算すると、以下のようになります。
旧報酬規程では、成功報酬を計算するときの経済的利益に「弁護士が獲得した賠償金の獲得総額」を用います。
経済的利益 | 成功報酬 |
---|---|
300万円以下 | 16% |
300万円~3,000万円 | 10%+18万円 |
3,000万円~3億円 | 6%+138万円 |
3億円超 | 4%+738万円 |
【具体例】経済的利益から弁護士費用を計算
以下は、旧報酬規程に基づく弁護士費用の計算例です。実際の費用は弁護士事務所によって異なる場合があります。
条件
交通事故の被害者は、受けた損害に対して加害者側に1,000万円の賠償を求めました。
弁護士による示談交渉の結果、800万円で示談が成立し、期日通りに支払いが行われました。
■着手金の計算
1,000万円×5%+9万円=59万円
■成功報酬の計算
800万円×10%+18万円=98万円
■弁護士費用(合計)
59万円+98万円=157万円
この事例における弁護士費用は、157万円であることがわかりました。
なおこれは、旧報酬規程に従って費用を算定したケースの弁護士費用です。現在は弁護士費用の算定方法が自由化されているため、弁護士に依頼する場合は必ず、料金形態を聞くようにしてください。
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経済的利益によって弁護士の成功報酬が変わる
成功報酬を計算するときの経済的利益は、大きく2つに分かれます。
- 弁護士が獲得した賠償金の総額
- 弁護士が介入して増額した金額
では、どちらを経済的利益として計算した方がお得なのでしょうか。それぞれの特徴や、ケースごとにどちらがお得なのか解説します。
弁護士事務所を選ぶ際の参考にしてください。
2つの経済的利益|それぞれの特徴と違い
経済的利益を賠償金の獲得総額とすると、保険会社から受け取る金額すべてが計算の基準となります。
この場合、料率(計算するときの割合)は低めに設定されることが一般的です。数%の料率に固定額を加えた金額となることが多いようです。
一方、弁護士に依頼したことで増えた金額だけを経済的利益とする場合は、加害者側の保険会社が最初に提示した金額との差額が計算の基準となります。
この場合、経済的利益として計算される金額は小さくなりますが、その分料率は20%~30%程度と高めに設定されることが多くなっています。
2つの経済的利益|計算例で違いを確認
事例をもとに、2つの経済的利益にどのように違いが出るのか見てみましょう。
ここでは、以下の計算式で成功報酬を計算します。
- 弁護士が獲得した賠償金の総額を経済的利益にする
獲得総額×10%+20万円 - 弁護士が介入して増額した金額を経済的利益にする
増額分×30%+20万円
■事故の状況
- 保険会社からの当初提示額:100万円
- 弁護士に依頼して得られた金額:300万円
- 増加した金額:200万円
■成功報酬額の計算
- 総額で計算する場合:300万円×10%+20万円=50万円
- 増額分で計算する場合:200万円×30%+20万円=80万円
この事例では、弁護士が獲得した賠償金の総額を経済的利益として計算する方が、弁護士費用が安くなりました。
2つの経済的利益|どちらがお得?
どちらを経済的利益とした方が弁護士費用が抑えられるかは、ケースによって異なります。
- 獲得総額を経済的利益とした方が得
- 後遺障害が残る重い事故
- 死亡事故
- 賠償金額が高額になる
- 弁護士に依頼することで大きく増額が見込める
- 増額分を経済的利益とした方が得
- 軽いケガで後遺症が残らない場合
- もともとの提示額が妥当な場合
- あまり増額が見込めない場合
死亡事故や後遺障害に認定されるような重い事故の場合は、賠償金額が高額になり、弁護士が介入することで大きく増額される可能性が高くなります。そのため、賠償金全額を経済的利益として計算したほうが、弁護士費用を抑えられる可能性が高くなります。
逆に、軽いケガで後遺症が残らない場合や、保険会社から示された金額が妥当な場合は、増額される金額が限られます。このような場合には、増額分だけを経済的利益として計算したほうが、弁護士費用を抑えられる可能性があります。
自分の事故の状況に照らして、どちらが有利になるのか検討することが重要です。複数の事務所に相談して弁護士費用の見積もりをもらうことで、より適切な選択ができるでしょう。
経済的利益と弁護士費用特約の関係
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、被害者が加入している任意保険会社が、弁護士費用を一定額まで補償してくれる保険の特約です。
すなわち、弁護士費用特約を使えば、被害者は自己負担なく弁護士に依頼できる可能性があります。具体的には、後遺障害認定されない程度の交通事故であれば、特約の補償範囲に収まることが多いです。
もっとも、後遺障害認定されるような交通事故は損害賠償金が高額になるため、被害者の費用負担があったとしても、それを超える金額を獲得できるでしょう。
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保険会社による違い
弁護士費用特約における経済的利益の考え方は、保険会社によって異なります。具体的には、保険会社が日本弁護士連合会(日弁連)と協定を結んでいるかどうかで変わってきます。
日弁連と協定を結んでいる保険会社の場合、「日弁連リーガル・アクセス・センター(LAC)」の基準に従って計算されます。この場合、「弁護士が介入したことで増額分」を経済的利益として計算します。
一方、日弁連と協定を結んでいない保険会社は、独自の基準で経済的利益を判断します。経済的利益をどのように考えるかは、各保険会社の社内規定によって決められています。
弁護士選びにおける注意点
費用倒れにならないか確認する
費用倒れとは、弁護士依頼による増額分よりも、弁護士費用の方が高額になってしまう状態のことです。つまり、弁護士に依頼することで依頼者が赤字になってしまうことをいいます。
費用倒れの可能性があるか確認するために、法律相談の段階で以下のような質問をすると良いでしょう。
- どの程度の損害賠償金が見込めるか
- 弁護士が介入することでどの程度の増額が期待できるか
- その結果、弁護士費用がおよそいくらになるか
なお、弁護士費用特約が使えれば、費用倒れになるおそれはほとんどありません。特約が使えるのであれば、増額が見込めるとわかった時点で弁護士依頼することをおすすめします。
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弁護士費用以外で注意するポイント
弁護士を選ぶ際には、費用面以外に以下の点にも注意しましょう。
- 交通事故の解決実績・医学的知識は豊富か
- やり取りしてみて印象や相性は良さそうか
弁護士選びでは、単に交通事故案件を扱っているかだけでなく、その実績を確認することが重要です。
弁護士が示談交渉する相手は、加害者側の任意保険会社であることが多いです。保険会社は交渉のプロなので、交通事故事案の実績が乏しい弁護士だと、交渉で不利になってしまうおそれがあります。
また、後遺障害申請や示談交渉では、医学的知識が必要不可欠です。症状や程度の把握、事故との因果関係の説明など、専門的な主張ができなければ、後遺障害認定の審査機関や保険会社を納得させることは困難でしょう。
さらに、事前の法律相談を通じて相性を確認することも重要です。話しやすさや説明の分かりやすさから、長期的な信頼関係を築けるかどうかを判断しましょう。口コミや評判も参考にはなりますが、実際に自分でやり取りしてみることが大切です。
まずは無料相談を利用してみる
以下のような不安がある場合は、一度弁護士の無料相談を利用することをおすすめします。
- 弁護士費用はどのくらいかかる?
- 弁護士に依頼することで自分にどのくらい利益がある?
- 弁護士費用特約の補償範囲を超えない?
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了