離婚前に別居するメリットは?別居したい時の注意点、離婚と別居どちらが得かも解説

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離婚前の別居

離婚したい場合、別居を切り出すメリットがあります。相手と距離を置けることはもちろん、裁判では3~5年の別居から離婚が認められるケースがあるためです。
また、協議離婚・調停離婚でも、別居をすることで、離婚につながりやすい傾向があります。

また、離婚を迷っている場合も、別居を切り出すメリットがあります。別居中、夫婦関係の再構築を試みるか、離婚するか冷静に考えられるからです。

ただし、離婚前の別居にはデメリットもあります。

離婚の交渉で不利にならないように、この記事では、別居・離婚を検討中の方に向けて、別居した方がいいケース、別居のデメリットや注意点、別居の切り出し方、離婚までの生活などについて、解説します。

目次

離婚したいならまずは別居から?

別居をすると裁判離婚しやすくなる!

別居をすると裁判で離婚しやすくなるといわれています。

裁判所は、合理的な理由もないのに夫婦が別居しているということは、婚姻関係が破綻しているからだと判断するためです。

別居は裁判離婚の理由(法定離婚事由)になる!

相手が離婚を拒んでいて、話し合いや調停でも話し合いがまとまらない場合、裁判で離婚を争い、裁判官に離婚を認めてもらわなければなりません。

ただし、裁判で離婚が認められるには、厳しい条件があります。この離婚が認められる条件のことを法定離婚事由といいます。

法定離婚事由は5つあり、最低1つでも存在しなければ離婚は認められません。

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

 配偶者に不貞な行為があったとき。
 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

民法 第770条

長期間の別居は、5つ目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたり、裁判で離婚が認められる可能性が高まります。

「離婚したい理由が価値観の違い・性格の不一致」「相手が話し合いでは離婚に応じてくれない」等の場合、基本的に5つの法定離婚事由には該当しません。

そのため、裁判離婚するために、ある程度の別居期間を置くという人も多いです。

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別居3年から裁判離婚できる?

ケースによりますが、多くの場合、別居期間が3〜5年程度から裁判離婚はしやすくなるようです。

ただ、夫婦の年齢、同居期間、夫婦や子どもの意向なども踏まえて判断されることなので、必ず5年経過すれば裁判離婚できるとは断言できません。

また、3年未満であっても、相手が不貞行為やDVをしている場合は、別居の年数に関係なく、夫婦関係が破綻したとして裁判離婚できるケースはあります。

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別居から調停離婚もしやすくなる!

別居は、調停離婚も進めやすくなる可能性があります。

調停離婚とは、家庭裁判所の調停委員会(裁判官1人、調停委員2人)の関与のもと、夫婦で話し合いを進め、調停手続きで合意して離婚する方法です。

調停離婚は、裁判離婚のように法定離婚事由は不要です。

しかし、法定離婚事由にあたる事情があることを主張することで、調停委員を味方につけ、離婚しやすい流れを作れる可能性はあります。

そのため、離婚調停中は、別居する夫婦も多いです。

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別居中の生活費を請求することで、相手に離婚を決意させる!

別居中の婚姻費用とは?

離婚したい場合、別居して、その別居中の生活費を配偶者に請求し続けることで、相手に離婚を決意してもらえる可能性があります。

夫婦には、婚姻費用を分担する義務があります(民法760条)。

婚姻費用とは、夫婦が婚姻している間の生活費のことをいいます。別居中でも、離婚するまでは婚姻費用は発生します。

婚姻費用には、家賃や食費、光熱費などのほか、学費や医療費、交際費など、家族の生活に必要な費用すべてが含まれます。

婚姻費用は、夫婦それぞれの収入、子どもの人数・年齢によって分担する金額が変わりますが、通常、配偶者よりご自身の方が収入が低い場合、別居中の婚姻費用の支払いを請求できる可能性が高いです。

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別居中の婚姻費用の相場は?

婚姻費用の相場はそれぞれの収入や子供の数にもよりますが月額4万〜15万円程度です。金額は、夫婦で話し合って決めることができますが、裁判所が公開している標準算定方式による養育費・婚姻費用算定表(令和元年改訂版)が参考になります。

婚姻費用の相場はそれぞれの収入や子供の数にもよりますが月額4万〜15万円程度です。金額は、夫婦で話し合って決めることができますが、裁判所が公開している標準算定方式による養育費・婚姻費用算定表(令和元年改訂版)が参考になります。

ただし、離婚実務に詳しくない場合、裁判所の養育費・婚姻費用算定表を、初見で、しかも短時間で読み解くのは難しいかもしれません。

婚姻費用の相場をパッと知りたい方はカンタン操作で目安が分かる 婚姻費用・養育費計算機』(自動計算ツール)をご利用ください。

婚姻費用の相場が分かる算定表の読み方について、じっくり知りたい方は『養育費・婚姻費用算定表の見方&自動計算ツール(新算定表対応)』の記事をお読みください。

別居中から離婚まで婚姻費用を請求するメリット

婚姻費用を受け取れば、別居中の生活の支えや離婚後の生活への備えに役立ちます。

また、婚姻費用分担請求のメリットは、相手に離婚をうながす効果もあります。

別居して婚姻費用を請求することで、相手は婚姻費用を支払いを負担・不毛に感じ、最初は離婚に前向きでなかった場合でも離婚に応じてくれる可能性が高まるというメリットもあります。

婚姻費用の注意点

ご自身の収入の方が相手の収入よりも多い場合は、逆にこちらが婚姻費用を支払う必要があるため注意してください。

別居から離婚の流れをとるメリット

別居から離婚する流れを取るメリットには、離婚を法的に進めやすくするほか、ご自身や相手の方のお気持ちを整理できる側面もあります。

離婚するかどうか冷静に考えられる

別居した結果、離婚の意思が固まるかもしれませんし、離婚ではなく再構築を選ぼうと思うかもしれません。

いずれにしろ、一度離れることで、ご自身が冷静になって、離婚するかどうかを考える時間をもつことができます。

別居の時点で、離婚が確定していない場合は、夫婦関係調整のためにどのくらい別居するかの目途を、別居合意書で合意しておくこともできます。

こうすることで、夫婦関係を再構築するにも、二人が別々に新たなスタートの切るにしても、無用に別居期間が長引くことを避けられます。

  • 離婚は未定・冷却期間を置く場合
    「夫婦関係の調整のため〇年〇月〇日まで別居する」などと記載
  • 離婚前提の場合
    「離婚条件の調整のために相当期間別居する」などと記載

別居合意書に書いておいた方がよい内容については『別居合意書・婚姻費用の合意書テンプレート│解説付』で解説していますので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。

本気で離婚したいことが相手に伝わる

別居には、自分が本気で離婚したいことが、相手に伝わる効果も期待できます。

今まで自分の意見を軽視してきた配偶者でも、もぬけの殻になった家を見ると、こちらが本気で離婚を望んでいると気づき、ショックを受けるはずです。

そうなれば、離婚や再構築に向けて、真剣に話し合いに応じてくれる可能性が高まります。

離婚前に別居した方が良いケース

ここまで、離婚前の別居には、離婚を進めやすくするメリット等があることを述べてきました。

ですが、別居から離婚するメリットには、ご自身の心や体を守るという重要な意義もあります。

ここからは、離婚前に別居した方が良いケースを紹介していきます。

相手と離れて、ストレスを減らしたい

相手と同居していることで、多大なストレスを感じている場合、心身の不調が生じる前に、別居を検討したほうがよいかもしれません。

別居の最大のメリットは相手と離れられることです。

相手の言動が暴力(DV)やモラルハラスメント(モラハラ)に該当しない場合でも、価値観が大きくずれた相手と同じ屋根の下で共同生活をするのは、とてもストレスがたまります。

同じ屋根の下で、毎日顔を合わせながら、あるいは顔を合わせないように相手の行動する時間帯を読みならが、離婚まで生活するのは非常に苦痛です。

ストレスをかかえた状態で、冷静な判断ができる人はそう多くはいません。

離婚をするにあたって、決めておくべき条件はたくさんあり、当事者での話し合いがとどこおるケースも多く、さらにストレスを感じてしまうことが多々あります。

DVやモラハラを受けているケース

相手のDVやモラハラで心身に危険が及んでいる場合は、なるべく早く別居した方がよいでしょう。

生活費や住居などの問題で、別居するための住まいをご自身で確保できない場合は、DVシェルターの利用なども検討してみてください。

暴力やモラハラ、経済的DVなどによって生活が脅かされていた場合は、別居することで安心して生活できるようになります。

離婚手続き中の気まずさに耐えられない

離婚を争っている最中に、家で気まずい思いをする、相手から嫌がらせを受けるといったことに耐えられない場合、別居が有力な選択肢になります。

協議離婚の場合

夫婦の話し合いによって円満離婚できそうな場合でも、離婚条件の話し合いをしながら、同じ家で生活をともにするのは、気まずい思いをするかもしれません。

調停離婚の場合

離婚調停は夫婦が顔を合わせずに話し合いを行うことが前提の手続きであり、調停外での交渉は控えるのが通常です。しかし、夫婦が同居したままで調停を行う場合、調停後に同じ家に帰ることになりますので、帰ったあと、調停のことについて何か言われてしまう可能性があります。

裁判離婚の場合

また、裁判離婚を検討している場合も、同じ家に住みながら、裁判をおこすのは、かなり気まずい状況になります。加えて、すべに述べたとおり、法定離婚事由の要件を満たすためにも、早い段階で別居を開始し、別居の実績を作ることが有効です。

離婚前に別居するデメリット

別居すると証拠集めが難しくなる

離婚をする場合、事前の証拠集めがカギになることがあります。

しかし、家を出て別居した後では、家の中で証拠を探すのが非常に難しくなります。

また、別居後、相手が離婚で不利になる証拠を消してしまう可能性もあります。

そのため、離婚の意思を悟られる前に、別居している間に、ご自身にとって、離婚で有利になる証拠を押さえておく必要があります。

離婚に必要な証拠の種類

たとえば、不倫やDVの慰謝料を請求したい場合や、財産分与の請求をする場合は、証拠が非常に重要です。

  • 慰謝料とは?
    精神的苦痛を加えられた相手に、請求できる損害賠償金。
    離婚や夫婦関係では、不倫、DV、モラハラ等を理由とする慰謝料請求が多い。
  • 財産分与とは?
    離婚する際、夫婦で貯めた財産を分け合う制度。
    預貯金、家、車、株券、保険の解約返戻金等の財産を、通常、2分の1ずつ分け合う。

別居前に集めたい慰謝料請求の証拠

裁判で慰謝料を請求する場合は、証拠によって不倫やDVを立証する必要があります。不貞・DVがあったという事実を裏付ける、写真やメッセージなどを確保できると良いでしょう。

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離婚に必要な証拠|証拠集めの注意点と慰謝料請求のポイント

別居前に集めたい財産分与の証拠

また、財産分与の際に証拠が重要なのは、相手の財産を全て把握する必要があるからです。財産分与で財産が減ってしまわないように、隠し口座にお金を入れていたり、黙って不動産を購入している場合があります。そうなると、自分が受け取れる財産が少なくなってしまいます。

そのため、相手の預金通帳や銀行からの郵便物、不動産登記簿などを探して、コピーをとっておくことをおすすめします。

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離婚の財産隠しの手口は?よくある隠し場所と見つける方法を解説

別居前の家に入れなくなる可能性がある

一度家出をすると、家に入れてもらえなくなる可能性があります。相手が家の鍵を替えてしまうケースもあるようです。

そのため、いつでも帰れるだろうと気軽に家を出ることはおすすめできません。

相手が帰宅を拒んでいるにもかかわらず、無理やりドアをこじ開けて家に入ったとなると、住居侵入罪や器物損壊罪にあたる可能性もあります。

別居をする場合は、持ち物の準備などをしっかりと済ませた上で、家を出るようにしましょう。

悪意の遺棄を理由に慰謝料請求される

一方的な別居は、合理的な理由が無い場合、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に当たります。

悪意の遺棄をした人は、慰謝料請求をされる可能性があります。

そのため、「一方的に別居された」「合理的な理由なく別居された」等と言われないように、予防線をはっておくことが大切です。

互いに納得のうえで別居期間を置くことになった場合では、別居合意書を締結することで、一方的に別居したという主張をさせない対応が考えられます。

また、DV、モラハラ等で別居をしたい場合は、被害者を援助する公的機関への相談、警察への相談などの記録を残しておくという対応が考えられます。

不安な場合は、離婚にくわしい弁護士に相談して、あなたが優位に立てる最も良い方法を伝授してもらうと良いでしょう。

離婚の話し合いが難しくなる

家で顔を合わせることがなくなる以上離婚についての話し合いの機会を設けるのが難しくなります。2人で連絡を取り合って、いつどこに集まって話し合いをするかなどを決める必要があります。

電話やメール、メッセージなどで話し合いも可能ですが、連絡が途絶えてしまう可能性は捨てきれません。

そのような場合、弁護士なら、代理人として相手方に連絡をいれることができます。それでも連絡が無い場合には、調停や裁判などの手段への移行について、弁護士は尽力することができます。

仕事の都合などで相手と時間を合わせるのが難しい場合や、相手と顔を合わせたくない場合、スムーズに離婚を進めたい場合などは、弁護士への依頼も検討してみてください。

なお、離婚の仕方、スムーズな進め方については『離婚の仕方は6種類?スムーズな離婚のやり方は?弁護士解説』の記事で解説しているので、ご興味のある方はあわせてご覧ください。

別居すると経済的にきびしくなる

別居は、同居していた時よりも、経済的にきびしくなることが多いです。

離婚までは相手に婚姻費用を請求できますが、それだけでは賄えないこともあるかもしれません。

離婚までにかかる費用、離婚後の生活費について、よくシミュレーションをして、どのように生活費を得ていくか計画を立てましょう。

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離婚したいけどお金がない!離婚の費用&対処法を徹底解説!「お金がないまま離婚」を回避するには…

離婚と別居どちらが得?

相手と関係を改善するつもりはないにも関わらず、離婚ではなく別居を選ぶ方もいます。

離婚せずに別居を続けることのメリットとデメリット、どちらが得かを比べてみましょう。

別居のメリット・離婚のデメリット

離婚しなければ税制上のメリットがある

扶養されている側は、離婚しなければ、社会保険料の負担額は少ないままになります。

一方、扶養をしている側は、離婚しなければ、配偶者控除、扶養控除により税金をおさえられます。

別居中も婚姻費用を受け取れる

別居していても、離婚するまでは配偶者を扶養する義務はありますので、婚姻費用を受け取ることができます

離婚すれば財産分与を受け取れますが、離婚せずに婚姻費用をもらい続けた方が、財産分与の額よりも多くのお金を配偶者から受け取れることがあります。

離婚より別居の方が得なケースについて、詳しくは『女が得する離婚|離婚は女に有利にできている?』で解説しています。

別居した方が離婚しやすい場合

離婚調停や離婚裁判をおこす手間がかかるだけで、実際、離婚が見込めないケースもあります。そのような場合には、裁判所に離婚を訴えるより、別居を優先するメリットがあります。

関係修復のチャンスがある

別居して冷静になることで、かえって関係が良好になるケースもあります。

離婚せずに別居を続けていれば、関係修復のチャンスを残せます。

別居を続けるデメリット・離婚のメリット

別居していても相手との関係が続く

一緒に暮らしていなくても、戸籍上は夫婦であるということのストレスからは逃れられないでしょう。

また、相手から扶養を受けることができるとはいえ、逆に相手が扶養の必要な状態になったときには、こちらが助ける義務があります。

別居中はひとり親向けの支援を受けられない

離婚してシングルマザー・シングルファザーになった人は、国や自治体から支援を受けることができます。

その代表例が児童扶養手当です。

両親が離婚していない場合、1人で子どもを育てていても、児童扶養手当は受け取れないのが原則です。

また、児童手当など、離婚していなくても受けられる支援についても、世帯の所得制限があるため、両親の収入が合算されると支給されなくなってしまいます。

別居して婚姻費用をもらい続けるよりも、離婚して養育費やひとり親向けの支援を受け取った方が得なケースがあります。

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財産分与を受けられる財産が減る

別居中に、相手が財産分与の対象になる財産を隠したり、使い込んだりする可能性があります。

そのため、すぐに離婚しておけばもらえたはずの財産が、別居を続ける間に、目減りしてしまうというデメリットがあります。

別居中は再婚ができない・恋愛できない

もちろん、離婚しなければ再婚はできません

また、別居中に新しいパートナーと肉体関係を持つと、不貞慰謝料を請求されてしまう可能性があります。

離婚を前提とする別居では、婚姻関係が破綻していると判断され、慰謝料請求を認めない例もありますが、どのような判断がくだされるかは個別具体的なケースによります。

離婚成立までは、配偶者以外との肉体関係をもたないという判断が無難です。

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家庭内別居と別居どちらがいい?

家庭内別居とは、夫婦が同じ家に住み続けながら、別々の生活を営む状態のことです。

家の中でコミュニケーションを取らないだけでなく、家計を完全に分けたり、家事を別々にするという場合もあります。

家庭内別居のメリット

家庭内別居のメリットは、家賃や光熱費が一家庭分で済むため、経済的負担が軽いという点や、子どもが両親と暮らせるという点です。

世間体や経済的事情から離婚や別居に踏み切れない場合、家庭内別居をするメリットがあります。

また、離婚や別居に労力をかけず、互いに干渉しない生活を送りたい夫婦も、家庭内別居をすることがあるでしょう。

家庭内別居のデメリット

一方、デメリットとしては、同じ家で過ごすことのストレスや、家事の負担や生活費をめぐってトラブルが起きる可能性があるという点が挙げられます。

また、ケースにもよりますが、家庭内別居では裁判離婚できる理由として、認定されにくい傾向もあります。

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離婚前に別居するならここに注意!

離婚前に家出したら不利になる?

DVやモラハラなどの正当な理由がないのに無断で家出した場合、悪意の遺棄をしたとして、自分が有責配偶者になってしまう可能性があります。

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

民法第752条

この条文のとおり、夫婦は同居・協力・扶助の義務を負うことになります。そして、正当な理由がないのに一方的に別居することは、同居義務違反にあたる可能性があるのです。

自分が有責配偶者になってしまった時のデメリットは、以下の3つです。

  • 離婚が認められづらくなる
  • 慰謝料を請求されてしまう
  • 婚姻費用を受け取れなくなる

1.離婚が認められづらくなる

基本的に、有責配偶者からの離婚請求は認められません

別居期間を作ることで「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として裁判離婚を目指すことも可能ではありますが、有責配偶者からの離婚請求の場合は、8~10年程度の別居期間がなければ認められないことが多いため、かなり長い時間が必要です。

2.慰謝料を請求されてしまう

悪意の遺棄は、慰謝料請求の理由になり得ます。悪意の遺棄に対する慰謝料の相場は50〜300万円程度です。

3.婚姻費用を受け取れなくなる

自分が有責配偶者である場合、自分が婚姻関係を壊した上、さらに婚姻費用まで請求するというのは、信義則違反になってしまいます。この場合、責任の程度によって、婚姻費用の請求が全く認められないか、あるいは減額されてしまいます

このように、勝手に別居を始めてしまうと不利になってしまう可能性があります。

したがって、別居時には、置き手紙などで構いませんので相手に別居の意思を伝えておくことが重要です。

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離婚で家出をすると不利になる?家を出るタイミングと準備を解説

子どもを置いて家出すると不利になることも

子どもを置いて家出をすると、親権争いにおいて不利になる可能性があります。

裁判所が親権について判断するときは、現在子どもの世話をしている人が引き続き世話をするということを重視します。これを継続性の原則といいます。

したがって、子どもの親権を得たい方は、子どもと一緒に別居するようにしましょう。

無理に子どもを連れ去るのはハイリスク

子どもを置いてくと親権争いにおいて不利になることがある一方で、違法に子どもを連れ去るのもよくありません。子どもの連れ去りが違法であるとされた場合、家庭裁判所の審判で子どもを引き渡すように命じられたり、親権争いにおいて不利になることが考えられます。

「子どもを連れて別居すること」と「子どもを連れ去ること」は似ていますが、以下の場合は違法になる可能性があります。

  • 保育園・幼稚園や学校から子どもを連れ出した
  • 子どもを待ち伏せて連れ去った
  • 激しい親権争いの途中で子どもを連れ去った

違法な連れ去りとならないためには、子どもを連れて別居することに関して、相手の同意を得ることが重要です。

一方で、相手方が子どもを虐待していたり、子どもの前でDVを行っていた場合には、子どもを連れて別居しても違法になる可能性は低いといえます。

別居中の恋愛は要注意

別居中であっても、離婚の成立前に他の人と肉体関係を持ってしまうと、不貞行為によって婚姻関係を破綻させたとして、こちらが有責配偶者になってしまう可能性があります。

既に別居開始から時間が経っており、既に婚姻関係が破綻していた時期の不倫であれば、それによって婚姻関係を破綻させたとは考えづらいでしょう。しかし、別居を始めて間もない頃や、家族としての交流がある時期に不倫をしてしまうと、自分が有責配偶者となってしまいます。

早く新しいパートナーを見つけたいと思うかもしれませんが、離婚を有利に進めるためにも、踏みとどまるべきケースもあるのです。

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離婚届を出す前に離婚条件について話し合う

とにかく早く離婚したいと思っていても、離婚の条件については離婚前によく話し合っておきましょう。

離婚の際には、慰謝料や財産分与、年金分割など、決めなければならないことがたくさんあります。それらをきちんと話し合って書面に残しておかなければ、受け取れたはずのお金も受け取れないまま終わってしまうかもしれません。

相手と直接話したくない場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合は、弁護士への相談も検討してみてください。

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別居の切り出し方・置き手紙の例文は?

黙って別居するのはNG!

別居を開始する際は、相手に「離婚を前提に別居したい」という旨を伝えておかなければ、慰謝料や婚姻費用など様々な面でこちらが不利になってしまう可能性があります。

さらに、何も言わずに家からいなくなると、相手が捜索願を出したり知り合いに連絡して探し回ったりして、周りに迷惑がかかってしまうおそれがあります。

別居を始める時は、冷静かつ明確に、必ず相手にその別居することを伝えてから家を出るようにしましょう。

別居の切り出し方の例

これ以上あなたと一緒に暮らすのは難しいです。

私たちが険悪なまま過ごすのは、子どもにも悪影響があると思うので、私と子どもは実家に帰ります。

お互い冷静になったら、これからのことについて話し合いましょう。

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別居時の置き手紙の例文

〇〇さんへ

もうあなたとの生活は続けられないと感じたため、子どもを連れて家を出ます。

冷静な頭で、離婚に向けて話し合いたいと思っています。

今後は、LINEでのみ連絡をお願いします。

〇〇より

離婚が決まってから離婚するまでの生活はどうなる?

同居中に離婚について合意ができたとしても、実際に離婚届を出すのはまだ先になるというケースはよくあります。

離婚するのが決まっているのに一緒に生活し続けるのは、ストレスのかかることですし、どのように過ごせばいいか迷ってしまう方も多いでしょう。

ここでは、離婚が成立するまでの過ごし方を4パターンご紹介します。

  • 離婚前に別居する
  • 離婚成立までは家庭内別居する
  • 離婚成立までは夫婦として生活する
  • 離婚成立まで同居人として生活する

離婚前に別居する

離婚が決まっている相手と同じ家にいるのは気まずいという方や、新しい家が確保できる方は、すぐに別居を始めてよいでしょう。

ただし、別居後は相手との話し合いや荷物の整理などが難しくなるため、離婚の準備がしっかりと整ってから家を出るようにしましょう。

離婚成立までは家庭内別居する

相手と関わり合いたくないがすぐに別居するのは難しいという場合、離婚が成立して家を出るまでの間は家庭内別居という形で、家計や生活スペースを分けて過ごすという方法があります。

離婚成立までは夫婦として生活する

相手への情がまだ残っている場合などは、離婚までの間は夫婦として生活し続けることもあります。

特に子どもがいる夫婦の場合は、父母が家の中で隔絶した状態になると子どもに負担がかかってしまうおそれがありますので、別れるまでの間は夫婦・父母として穏やかに過ごすのが望ましいといえます。

離婚成立まで同居人として生活する

相手への情は残っていないが、まったくコミュニケーションを取らないのは生活上不便であるという方や、完全に家庭内別居をするのは大変という方は、離婚成立までの間を単なる同居人として過ごしてもよいでしょう。

夫婦であろうとするプレッシャーがなくなると、かえって関係が良くなることもあるようです。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了