離婚と別居どちらが得?損得判断の基準と計算例を弁護士解説

離婚する場合と、別居のまま婚姻関係を続ける場合では、お金の面や手続き、気持ちの負担などに大きな違いがあります。
別居を続ければ婚姻費用を受け取れる可能性がありますが、離婚すると財産分与や各種の公的支援を受けられることがあります。また、再婚できるかどうかや、税金の扱いも両者では異なります。
この記事では、離婚と別居のどちらが自分にとって有利かを、5つの視点から比較し、具体的な金額の例も交えてわかりやすく解説します。
目次
離婚と別居の違いを5つの視点で比較
離婚するか別居を続けるか判断するには、両者の違いを体系的に理解することが重要です。以下の表で、主要な5つの観点から比較します。
| 項目 | 離婚 | 別居 |
|---|---|---|
| 受け取れるお金 | 財産分与・養育費・児童扶養手当 | 婚姻費用 |
| 戸籍上の地位 | 配偶者ではなくなる | 配偶者のまま |
| 再婚・恋愛 | 再婚・恋愛ともに自由 | 再婚不可・不貞は慰謝料リスク |
| 税制・社会保険 | 扶養から外れる | 扶養継続・配偶者控除あり |
| 相手との関係 | 原則終了 | 扶養義務などが継続 |
それぞれの項目について、以降のセクションで詳しく解説します。
離婚と別居どちらが得?
相手と関係を改善するつもりはないにも関わらず、離婚せず別居し続ける方もいます。
離婚せずに別居を続けることのメリットとデメリット、どちらが得かを比べてみましょう。
離婚ではなく別居を選ぶメリット
①離婚しなければ税制上のメリットがある
扶養されている側は、離婚しなければ、社会保険料の負担額は少ないままになります。
一方、扶養をしている側は、離婚しなければ、配偶者控除、扶養控除により税金をおさえられます。
②別居中も婚姻費用を受け取れる
別居していても、離婚するまでは配偶者を扶養する義務はありますので、婚姻費用を受け取ることができます。
離婚すれば財産分与を受け取れますが、離婚後は婚姻費用を請求することができません。
そのため、離婚せずに婚姻費用をもらい続けた方が、財産分与の額よりも多くのお金を配偶者から受け取れることがあります。離婚しない方が得なケースについては、後ほど具体例を交えて説明します。
③別居した方が離婚しやすい
離婚調停や離婚裁判をおこす手間がかかるだけで、実際、離婚が見込めないケースもあります。そのような場合には、裁判所に離婚を訴えるより、別居を始めた方がゆくゆくは離婚が成立しやすくなるというメリットがあります。
④関係修復のチャンスがある
別居して冷静になることで、かえって関係が良好になるケースもあります。
離婚せずに別居を続けていれば、関係修復のチャンスを残せます。
離婚ではなく別居を選ぶデメリット
①別居していても相手との関係が続く
一緒に暮らしていなくても、戸籍上は夫婦であるということのストレスからは逃れられないでしょう。
また、相手から扶養を受けることができるとはいえ、逆に相手が扶養の必要な状態になったときには、こちらが助ける義務があります。
②別居中はひとり親向けの支援を受けられない
離婚してシングルマザー・シングルファザーになった人は、国や自治体から支援を受けることができます。
その代表例が児童扶養手当です。
両親が離婚していない場合、1人で子どもを育てていても、児童扶養手当は受け取れないのが原則です。
また、児童手当など、離婚していなくても受けられる支援についても、世帯の所得制限があるため、両親の収入が合算されると支給されなくなってしまいます。
別居して婚姻費用をもらい続けるよりも、離婚して養育費やひとり親向けの支援を受け取った方が得なケースがあります。
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③財産分与を受けられる財産が減る
別居中に、相手が財産分与の対象になる財産を隠したり、使い込んだりする可能性があります。
そのため、すぐに離婚しておけばもらえたはずの財産が、別居を続ける間に、目減りしてしまうというデメリットがあります。
④別居中は再婚ができない・恋愛できない
もちろん、離婚しなければ再婚はできません。
また、別居中に新しいパートナーと肉体関係を持つと、不貞慰謝料を請求されてしまう可能性があります。
離婚を前提とする別居では、婚姻関係が破綻していると判断され、慰謝料請求を認めない例もありますが、どのような判断がくだされるかは個別具体的なケースによります。
離婚成立までは、配偶者以外との肉体関係をもたないという判断が無難です。
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離婚より別居の方が得なケースとは?
婚姻費用をもらい続けることができる場合、財産分与を受け取って離婚するよりも金銭的には得な可能性があります。
別居の方が得なケース
以下の例で、離婚と別居どちらが得か考えてみます。
現時点で離婚した場合の財産分与:500万円
離婚しなかった場合の婚姻費用:月13万円
この場合、別居を始めてから3年3か月経った時点で、受け取る婚姻費用の合計が500万円を超えます。そのため、3年3か月以上別居を続ければ、離婚よりも金銭的に得ということになります。

反対に、夫婦の共有財産は多いけど相手の年収は少ないといった場合は、婚姻費用は年収に基づいて計算されるのが一般的なため、離婚した方が多くの財産を受け取れる可能性が高いでしょう。
なお、相手側が婚姻費用を負担したくないために離婚を請求してくる可能性がある点には注意が必要です。
『婚姻費用をもらい続けるには?離婚とどっちが得?具体的な方法と注意点』では、その他のケースについても具体的に解説しています。
家庭内別居と別居どちらがいい?
家庭内別居とは、夫婦が同じ家に住み続けながら、別々の生活を営む状態のことです。
家の中でコミュニケーションを取らないだけでなく、家計を完全に分けたり、家事を別々にするという場合もあります。
家庭内別居のメリット
家庭内別居のメリットは、家賃や光熱費が一家庭分で済むため、経済的負担が軽いという点や、子どもが両親と暮らせるという点です。
世間体や経済的事情から離婚や別居に踏み切れない場合、家庭内別居をするメリットがあります。
また、離婚や別居に労力をかけず、互いに干渉しない生活を送りたい夫婦も、家庭内別居をすることがあるでしょう。
家庭内別居のデメリット
一方、デメリットとしては、同じ家で過ごすことのストレスや、家事の負担や生活費をめぐってトラブルが起きる可能性があるという点が挙げられます。
また、ケースにもよりますが、家庭内別居では裁判離婚できる理由として、認定されにくい傾向もあります。
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・家庭内別居とはどういう状態?離婚率は高い?離婚するならここに注意
婚姻費用の相場は月4万から15万円
婚姻費用の相場はそれぞれの収入や子供の数にもよりますが月額4万〜15万円程度です。
金額は、夫婦で話し合って決めることができますが、裁判所が公開している標準算定方式による養育費・婚姻費用算定表(令和元年改訂版)が参考になります。

この算定表では、夫婦双方の職業(会社員か自営業か)、年収、子どもの人数・年齢に基づいて婚姻費用を算定します。その他、住宅ローンを負担しているなど個別の事情も考慮することがあります。
婚姻費用の相場をパッと知りたい方は、『カンタン操作で目安が分かる 婚姻費用・養育費計算機』(自動計算ツール)をご利用ください。
婚姻費用の詳しい請求方法や注意点については、『婚姻費用の相場は月10~15万円?別居・離婚調停の生活費請求を解説』をご覧ください。
離婚と別居の判断で弁護士に相談すべき理由
離婚と別居のどちらが得かは、個別の状況により大きく異なります。以下のような疑問をお持ちの方は、弁護士への相談をおすすめします。
- 婚姻費用と財産分与、どちらが総額で多くなるか
- 自分のケースでどのくらいの別居期間が必要か
- 税制や社会保険でどちらが有利か
- 別居する場合の具体的な進め方
弁護士は、法律と実務の両面から損得をシミュレーションできます。一人で悩まず、離婚に詳しい弁護士にご相談ください。
なお、別居の具体的な準備や注意点については、『離婚のための別居準備|こっそり進める手順と不利にならない別居の仕方』で詳しく解説しています。
離婚と別居に関するよくある質問
Q.婚姻費用と財産分与、どちらが多く受け取れる?
どちらが有利かはケースによりますが、相手の収入が高く、共有財産が少ない場合は、婚姻費用を一定期間受け取り続けたほうが、結果的に総額が多くなることがあります。
たとえば、財産分与が500万円の場合でも、婚姻費用が月13万円であれば、約3年3か月以上別居を続けると、婚姻費用の合計が500万円を超えます。
ただし、別居を長引かせることで、相手から離婚を求められる可能性があるほか、財産分与の対象となる財産が減ってしまうリスクもあります。金額だけでなく、今後の見通しも踏まえて判断することが大切です。
Q.別居中に児童扶養手当はもらえる?
原則として、別居中は児童扶養手当を受け取ることはできません。児童扶養手当は、離婚後のひとり親を対象とした制度であり、別居中は婚姻関係が続いているためです。なお、配偶者からのDVがあり、裁判所の保護命令を受けている場合などには、例外的に受給が認められることがあります。
Q.別居から何年で離婚できますか?
一般的には、3年から5年程度の別居期間があれば、裁判で離婚が認められやすくなります。ただし、年齢や結婚期間、子どもの有無などによって判断は変わります。
一方、DVや不貞行為など、別の離婚理由がある場合は、別居期間が短くても離婚が認められることがあります。不貞行為をした側から離婚を求める場合は、信義則の観点から判断が厳しくなり、事案によっては5年から10年程度の長い別居期間が必要とされることもあります。
詳しくは『離婚成立の別居期間は?1年や2年でできる条件と裁判の相場』をご覧ください。
Q.別居中も扶養に入れますか?
原則として入れます。別居していても、離婚していなければ法律上の配偶者であるため、健康保険や年金の扶養に入ることが可能です。これは別居を続けるメリットの一つですが、離婚すると扶養から外れ、社会保険料を自分で負担する必要があります。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
