離婚に必要な証拠|証拠集めの注意点と慰謝料請求のポイント
離婚したい場合、離婚原因を証明する証拠があるかどうかが非常に重要です。
相手が離婚に同意せず調停離婚になった場合は、証拠があった方が有利な結果が期待できるからです。
離婚裁判になった場合は、自分の主張を裏付ける証拠の提出が必要です。
慰謝料請求する場合も証拠が必須です。どれだけ証拠集めができたかで、慰謝料金額も変わってきます。
この記事では、離婚の際に集めておくべき証拠を具体的に解説します。ほかにも、証拠集めの際の注意点や慰謝料請求についてご説明します。
目次
離婚に必要な証拠
離婚や慰謝料請求のために証拠が必要な理由
相手が離婚に同意していれば、離婚原因を問わず協議離婚ができます。しかし、相手が離婚に同意しない場合は、調停離婚や裁判離婚を考えなければなりません。
裁判離婚が認められるには、民法が定める離婚原因が必要です。そのため、裁判の中で証拠を提出して、離婚原因の存在を主張立証しなければなりません。
代表的な離婚原因が「不貞行為」です(民法770条1項1号)。また、モラハラ、DV、性格の不一致等は「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があります(同条項5号)。
離婚調停では、自分の主張を裏付ける証拠があった方が調停委員会の納得を得やすくなります。調停委員会の理解を得れば、自分の希望する離婚条件で離婚できる可能性が高くなります。
さらに、不貞行為やDV、モラハラ等の不法行為が認定されれば、慰謝料の支払を受けられます。不法行為を裏付ける強い証拠があるほど、慰謝料額は上がる可能性があります。
そのため、離婚や別居をする前から離婚や慰謝料請求に向けて入念に証拠集めをしておくことがとても重要です。
以下では、不貞行為、モラハラ・DV、性格の不一致に関する証拠をご紹介します。併せて、養育費・婚姻費用や、財産分与に関する証拠もご説明します。
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不貞行為に関する証拠
不貞行為に関する証拠
- メールやLINE、SNSでのやり取り
- 配偶者と不倫相手が一緒に写っている写真・動画
- 2人でホテルに宿泊したことがわかる領収書
- クレジットカード・ETC・電子マネー履歴
- 不貞行為を認める内容の誓約書や念書、録音
裁判離婚が認められるための「不貞行為」とは、異性と肉体関係を持つ行為を意味します。
したがって、「配偶者と不倫相手が肉体関係を持ったこと」が推認できる証拠を集める必要があります。
例えば、メールやLINEでのやり取りは、不貞行為を疑わせる証拠と言える場合が多いでしょう。しかし、これらの証拠だけで不貞行為が認定されるのは困難です。
重要なのは、メールやLINEでのやり取りに加え、不貞行為を推認させる裏付け証拠を集めることです。
具体的には、配偶者と不倫相手がラブホテルに長時間滞在したことがわかる写真、不貞行為を認める発言等です。不貞行為を認める発言については、録音データがあると有益です。
不貞行為が争いになるケースでは、配偶者や不倫相手が一度は不貞行為を認めたものの、その後否定する場合が少なくないからです。
また、「不貞行為を無理やり認めさせられた」という主張も相手方からよくされます。録音をしておけば、相手方が自発的に不貞行為を認めたという裏付けにもなります。
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モラハラに関する証拠
モラハラに関する証拠
- 録音、録画
- 日記、メモ
- 診断書
- 市役所、警察、配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
モラハラの精神的苦痛を第三者に理解してもらうには、録音や録画が有力な証拠になります。
録音や録画が難しい場合は、詳細な日記やメモをつけましょう。
日付や日時を必ず記載し、配偶者の発言を具体的に記録しておきます。
少しでも不調を感じたら、精神科や心療内科に行き医師の診断を受けましょう。
公的機関へ継続的に相談しておけば、モラハラが長期に渡るものであったことの証明になります。
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DVに関する証拠
DVに関する証拠
- 録音、録画
- ケガや壊れた家具等の写真
- 日記、メモ
- 診断書
- 市役所、警察、配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
- DV保護命令事件の記録
- 告訴関係の書類
- 刑事事件の記録
DVの証拠は、モラハラの証拠と重なる部分も多いです。
DV保護命令を申し立てて認められた場合、その記録は有力な証拠になります。悪質なDV事案では、弁護士に相談して、告訴を検討するのも一つの方法です。
告訴が受理されると、必ず捜査が開始されます。刑事事件になった場合、その記録が慰謝料請求の証拠にもなります。
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性格の不一致に関する証拠
性格の不一致に関する証拠
- 日記、メモ
- 陳述書
- 不貞行為やDV等の他の離婚原因に関する証拠
性格の不一致を離婚原因として主張する場合、その他の離婚原因も併せて主張する必要があります。
なぜなら、性格の不一致だけを理由に離婚裁判を起こしても、離婚は認められないからです。
したがって、離婚原因として性格の不一致を主張する場合、夫婦間で口論が絶えなかった旨の陳述書や、口論に至る経緯を詳しく記録した日記等の他に、不貞行為や暴力等の他の離婚原因を裏付ける証拠を提出する必要があります。
性格の不一致しか離婚原因が見当たらない場合の対処法は、別居の継続です。
別居が3〜4年程度続くと、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められやすくなります。
養育費・婚姻費用に関する証拠
養育費・婚姻費用に関する証拠
- 源泉徴収票
- 課税証明書
- 確定申告書の控え
養育費と婚姻費用は、夫婦双方の収入をもとに算定されます。
給与所得者の場合は、前年の源泉徴収票の「支払総額」が収入になります。課税証明書の「支払金額」を算定に用いる場合もあります。
自営業者の場合は、確定申告書の「課税される所得金額」に青色申告特別控除等の現実に支出されてない費用等を加算します。
アトム法律事務所の「婚姻費用・養育費計算機」を使うとカンタンに目安の金額を計算することができます。ぜひ、使ってみてください。
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財産分与に関する証拠
財産分与に関する証拠
- 不動産の登記事項証明書
- 固定資産税評価額証明書
- 預貯金通帳
- 生命保険証書
- 有価証券証書
- 退職金規程
- 住宅ローン等の残高証明
財産分与の割合は、原則として2分の1です。預貯金や不動産等のプラスの財産だけでなく、住宅ローン等のマイナスの財産も分与の対象になります。
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離婚の証拠集めに関する注意点は?
探偵事務所に浮気調査を依頼する場合は慎重に
不貞行為の証拠集めを、探偵事務所に依頼しようと考えている方も多いと思います。
たしかに、探偵事務所が収集した写真等が、離婚や慰謝料請求において重要な証拠とされるケースは多いです。
しかし、探偵事務所の利用の仕方を誤ると、思わぬ損害を被るおそれがあります。
探偵事務所を利用する場合は、特に以下の3点にご注意ください。
探偵事務所を利用する際の注意点
- ①そもそも信頼できる探偵事務所か
- ②依頼するとしても費用倒れにならないか検討する
- ③依頼する場合、日時や場所をある程度絞り込む
①そもそも信頼できる探偵事務所か
探偵業を営む業者は、探偵業の届出が法律で義務付けられています(探偵業法4条1項)。
届出をした探偵業者には、届出証明書番号が交付されます。
依頼しようとしている探偵事務所のホームページや広告に、この届出証明書番号がきちんと表示されているか必ず確認するようにしましょう。
②依頼するとしても費用倒れにならないか検討する
浮気調査を探偵に依頼すると、一般的に高額な費用がかかります。
せっかく慰謝料が支払われても、浮気調査の費用の方が高ければ元も子もありません。
慰謝料額の見込みについて弁護士に事前に相談した上で、探偵事務所の利用を慎重に検討した方が良いでしょう。
③依頼する場合、日時や場所をある程度絞り込む
高額な費用をかけて浮気調査を依頼しても、必ずしも決定的な証拠が得られるとは限りません。
依頼する場合は、メールやLINE等の他の証拠から、配偶者と浮気相手が会う時間や場所をある程度絞り込んでおくのが理想です。
違法な手段で証拠集めをしないよう注意
相手のスマホやパソコンのパスワードを不正取得して、そのパスワードを利用して相手のメールを見ると、不正アクセス禁止法違反になります。
また、不倫相手の住居に無断で立ち入ると住居侵入罪(刑法130条)に問われます。
証拠集めの中で、他人の物を壊すと器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性もあります。
以上のような違法な手段で証拠集めをすると、相手から損害賠償請求をされるおそれがあります。最悪の場合、刑事事件になる可能性もあります。
不利な状況を避けるため、できれば別居前に適切な方法で証拠集めを完了するようにしましょう。
離婚したら慰謝料請求できる?相場は?
離婚したら必ず慰謝料請求できるわけではない
慰謝料請求できるのは、相手方の違法な行為により精神的苦痛を被った場合に限られます。
言い換えれば、相手方の行為が違法でなければ慰謝料請求はできません。
離婚の場合に慰謝料請求できる場合・できない場合をまとめると、以下のとおりです。
【慰謝料請求できる場合】
- 不貞行為
- DV
- モラハラ
- 悪意の遺棄(一方的に家を出た上、生活費を一切負担しない場合等)
- 性交渉の拒否
【慰謝料請求できない場合】
- 性格の不一致
- 婚姻関係破綻後の不貞行為
- 夫婦双方に離婚原因がある場合(例えばダブル不倫。ただし、責任の程度に差がある場合は慰謝料が減額されます。)
慰謝料金額を判断する際の考慮要素
裁判所が慰謝料金額を判断する場合、主に以下の事情が考慮されます。
- 違法行為の責任の程度
- 悪質性の程度
- 精神的苦痛の程度
- 慰謝料請求する側の責任の有無・程度
- 婚姻期間の長さ
- 子どもの人数、年齢
- 支払能力
- 請求者の離婚後の経済状況
- 一部支払を受けていると評価できる事実の有無(財産分与や解決金の支払等)
- 調停や訴訟での対応
例えば、不貞行為を理由とする慰謝料請求の場合、婚姻期間が長い、未成熟子がいる、それまで夫婦関係に問題はなかったにもかかわらず不貞行為を原因に離婚した、不貞発覚後も不貞を続けている、調停や訴訟で不貞行為を一切認めていない等の事情は、慰謝料を増額する方向に働きます。
離婚慰謝料の相場
裁判になった場合に認められる離婚慰謝料の相場は、100万円〜300万円程度です。
相手方の支払能力が高い、違法行為の悪質性が高い等の事情があれば、相場よりも高額になる可能性はあります。
裁判ではなく、交渉や調停であれば、相手方が早期に離婚をしたいために相場より高額の慰謝料の支払に応じる可能性はあります。
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慰謝料請求の時効に注意
慰謝料請求は、離婚後3年しかできません。
協議離婚をする方の中には、「とりあえず離婚を先行させて、お金の問題は後で話し合おう」と考えている方も少なくありません。
しかし、離婚が成立してしまってからだと、そもそも相手が話し合いに応じない可能性が高くなります。
離婚後に後悔しないためにも、慰謝料を始めとするお金の問題は、早い段階から離婚問題に強い弁護士に相談しておくのがおすすめです。
離婚の証拠集め・慰謝料請求の相談は弁護士へ
「離婚と慰謝料請求を考えているが、今ある証拠で十分か?」「慰謝料はいくらくらいになるか?」等、少しでも気になる点があれば、まずは弁護士の無料相談を利用するのがおすすめです。
弁護士への相談が、人生を再スタートする第一歩になります。お一人で悩まず、いつでもお気軽に弁護士にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
何より、モラハラの苦しさを一人で抱え込まないことが大切です。