離婚調停の流れと有利に進める方法を弁護士が解説

離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員が間に入り、離婚の条件を話し合いで解決することを目指す手続きです。基本的に相手と直接顔を合わせることなく進められるため、相手との接触を避けたい方でも利用しやすい制度といえます。
最高裁判所の司法統計(令和6年)によると、年間38,281件が申し立てられており、平均審理期間は約6.8か月、平均期日回数は3.6回です。
申立てに必要な費用は収入印紙代1,200円と郵便切手代で数千円(概ね3,000円前後)と比較的安価です。
また、離婚そのものだけでなく、親権・養育費・財産分与・慰謝料といった諸条件もまとめて話し合える点が、この手続きの大きなメリットです。
この記事では、離婚調停の流れや事前準備、うまく進めるためのポイントを、弁護士がわかりやすく解説します。
離婚調停とは?
離婚調停とは家庭裁判所で調停委員を通して話し合う手続き
離婚調停とは、夫婦だけでの話し合いで合意に至れなかった場合に、家庭裁判所の調停委員を交えて解決を目指す手続きです。
調停では夫婦がそれぞれ個別に調停委員と面談し、双方の意見をすり合わせていきます。面談は1人ずつ行われるため、相手と直接顔を合わせることは基本的に避けられる仕組みになっています。
調停委員会は、家庭裁判所の裁判官1人と、社会経験豊富な民間人から選ばれた調停委員2人以上で構成されます。夫婦が主に話をするのはこの調停委員であり、裁判官は後方から手続き全体を支える役割を担います。
調停はあくまで当事者同士の話し合いが目的であり、裁判のように裁判官が離婚の成立や条件を一方的に決めるものではありません。双方の合意がなければ調停は不成立となり、離婚を求める場合は裁判に進む必要があります。
調停を申し立てたからといって、必ず離婚しなければならないわけではありません。話し合いを通じてやり直すことを選ぶことも可能です。この点が、当事者間の話し合いで決める協議離婚と、裁判官の判断に委ねる裁判離婚の中間に位置する、調停離婚ならではの特徴といえます。
離婚調停では何を話し合う?
離婚調停では、離婚の可否だけでなく、以下のような事項についてもあわせて申し立てることができます。
- 親権
- 面会交流(親子交流)
- 養育費
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
どの項目について話し合うかは申立書に記入して申し立てます。複数の申立てのうち、後から一部を取り下げたり、先に成立させたりすることも可能です。
親権は原則として離婚時までに決める必要があります。2026年4月の民法改正により、父母双方を親権者とする共同親権も選択肢に加わりました。
なお、親権者指定の審判・調停を申し立てていれば、親権者が決まる前に離婚届を提出することも認められています。それ以外の付随申立ては、離婚後に個別の調停や審判で解決する方法もあります。
面会交流については、夫婦が別居中であれば離婚前でも申し立てが可能です。子どもに関する争いがある場合は、家庭裁判所の調査官が子の監護状況や意向を調査することもあります。
財産分与や慰謝料は離婚後でも請求できるため、金銭面で折り合いがつかない場合は、まず離婚と親権だけを先に成立させ、後から別途調停を申し立てる方法もあります。
どのような順序で合意を目指すかは個別の事情によって異なるため、弁護士に相談することで状況に合ったアドバイスを受けられます。
調停離婚のメリット・デメリット
調停離婚には次のようなメリットがあります。
- 面談は基本的に個別に行われるため、相手と直接顔を合わせずに話し合いを進められる
- 調停委員という第三者から客観的な助言を得られる
- 調停が成立すれば、確定判決と同じ法的効力がある
- 裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、当事者の意向を尊重した解決を目指せる
一方で、何度も裁判所に足を運んで話し合いを重ねても、最終的に双方が合意しなければ調停は成立しません。合意に至らなかった場合は、裁判で離婚を求める手続きに進む必要があります。
離婚調停にかかる期間や費用は?
離婚調停にかかる期間は事案によってさまざまで、早ければ1か月ほど、長い場合は2年以上になることもあります。
最高裁判所の司法統計(令和6年)によると、離婚調停にあたる「夫婦関係調整調停事件」の平均審理期間は6.8か月、平均期日回数は3.6回です。1回の期日から次の期日までの間隔は平均約1.9か月で、約2か月に1回ペースで進むのが一般的といえます。
なお、「夫婦関係調整調停」を含む婚姻関係事件全体の終局結果は、調停成立が46.0%、不成立が17.1%、取下げが16.4%と公表されています。
申立てにかかる費用は合計3,000円程度で、内訳は以下の通りです。ただし、郵便切手代は申立先の裁判所によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入印紙代 | 1,200円 |
| 戸籍謄本の取得費用 | 450円 |
| 裁判所に納める郵便切手代 | 1,000円前後 |
関連記事
離婚調停の流れ
離婚調停は、以下のような流れで進みます。申立てから終了まで、平均して6か月から1年程度かかるのが一般的です。
離婚調停の流れ
- 家庭裁判所に申立書を提出する
- 裁判所から呼出状が届く
- 第1回の調停期日が開かれる
- 調停を約1〜2か月に1回繰り返す
- 調停の成立・不成立、取下げなどにより終了
それぞれの段階について、以下で詳しく解説します。
(1)家庭裁判所に申立書を提出する
調停を希望する場合、家庭裁判所に離婚調停申立書(夫婦関係調整申立書)を提出します。申立書には、離婚を希望すること、調停で話し合いたい内容、離婚の理由などを記入します。
提出先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者双方が合意で定めた家庭裁判所です。
申立書の書式は裁判所の窓口で入手できるほか、裁判所ウェブサイトの「家事調停の申立書」からもダウンロードできます。
申立書を書く際は、離婚したい理由をできるだけ客観的に記載することが大切です。申立書の写しは原則として相手方にも送付されるため、感情的な表現や相手を過度に非難する内容は、相手の感情を刺激して調停が難航する原因になりかねません。
たとえば「性格の不一致」を理由にする場合、「相手が全面的に悪い」という書き方より、「価値観の違いにより婚姻関係を継続できない」といった事実ベースの表現が一例として挙げられます。
(2)裁判所から呼出状が届く
担当する裁判官・調停委員と第1回調停期日が決定すると、裁判所に出向くよう求める呼出状が双方に届きます。
このとき、原則として相手方に離婚調停申立書の写しも送付されます。申立書の内容が相手を過度に刺激すると、調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるため、書き方には十分注意が必要です。
(3)第1回の調停期日が開かれる
調停期日には双方が家庭裁判所に出向き、調停委員を交えて話し合いを行います。第1回期日の冒頭では、調停の進め方や調停委員の役割について説明があります。
これは当事者が調停に主体的に参加できるようにするためのもので、原則として夫婦そろって調停室に入り説明を受けます。ただし、暴力などの事情がある場合は、同席せず個別に説明が行われます。
その後は当事者が交代で調停室に呼ばれ、それぞれ事情を聴き取られます。これを数回繰り返しながら調停委員が双方の話を伝え合い、意見の調整を進めていく流れです。
遠方に住んでいる場合や相手と直接会うことに不安がある場合は、ウェブ会議による参加が認められることもあります。希望する場合は、事前に申立先の家庭裁判所へ相談するとよいでしょう。
調停では、主に以下のような内容について話し合いが行われます。
- 離婚したい理由
- 結婚した経緯
- それまでの婚姻生活の様子
- 相手のどこに不満があるのか
- 夫婦が現在どういった生活をしているか
- 婚姻費用(別居中の生活費)はどうしているか
- 離婚後の生活、経済面などはどうなるか
- 子どもの親権・養育費・親子交流(面会交流)をどうしたいか
- 夫婦関係を修復できる可能性があるか
- 財産分与・慰謝料などをどうしたいか
- 相手が応じない場合は訴訟を提起したいか
調停はあくまで話し合いによる解決を目指す手続きであるため、自分の気持ちや主張をできるだけ冷静かつ具体的に伝えることが大切です。
感情的になったり質問に的確に答えられなかったりすると、事実関係を調停委員にうまく伝えにくくなります。事前に「何を伝えたいか」をメモにまとめておくと、スムーズに話し合いを進めやすくなります。
1回の期日は原則として1時間半〜2時間程度ですが、場合によってはそれ以上かかることもあります。相手が事情聴取を受けている間は待合室で待機することになり、双方が顔を合わせないよう別々の待合室が用意されるなど、配慮がなされています。
(4)調停を約1〜2か月に1回繰り返す
調停が成立するまでの間、約1〜2か月に1回程度の頻度で期日が開かれます。期日の終わりには、調停委員から次回までに用意すべき資料や検討しておくべき事項が伝えられることもあります。
最高裁判所の司法統計(令和6年)によると、調停の期日回数は1〜5回で終わるケースが全体の約7割を占めており、10回以上繰り返すことはまれです。
(5)調停の成立・不成立、取下げなどにより終了
双方が合意に至った場合は調停調書が作成され、調停が成立します。調停成立と同時に離婚の効力が生じ、その後10日以内に調停調書の謄本と離婚届を役所に提出する必要があります。
一方、これ以上調停を続けるべきでないと判断された場合は不成立調書が作成されて調停が終了し、離婚を求める場合は離婚裁判に移行することになります。なお、話し合いの途中で申立人が調停を取り下げて終了するケースもあります。
また、調停が成立しない場合でも、裁判官の判断により「調停に代わる審判」が行われることがあります。審判の告知から2週間以内であれば異議を申し立てることができ、異議が認められれば審判は効力を失います。異議が申し立てられないまま確定した場合は、確定判決と同一の効力を持ちます。
関連記事
・離婚調停が不成立になったらどうなる?その後の4つの選択肢と手続きを解説
離婚調停を有利に進めるには?
調停委員を味方につける
調停委員はあくまで中立的な立場ですが、自分の事情や主張を適切に理解してもらえなければ、納得のいく結果にはつながりません。
誠実な態度で臨み、調停委員に自分の主張をきちんと伝えることが、話し合いをスムーズに進めるうえで重要です。
①常識的な身なり・言葉遣い
常識的な立ち居振る舞いができる人を信頼したいと思うのは自然なことです。特に親権で争いがある場合、その印象は重視されるでしょう。
②感情的になりすぎない
事情聴取中に感情をコントロールできず泣き崩れたり興奮したりすると、調停の進行に支障が出ることがあります。
説得力のある主張をするためには、感情論ではなく事実に基づいて話すことが大切です。
③主張を一貫させる
話の途中で主張が変わると、伝えたいことがきちんと伝わりません。自分の主張はあらかじめまとめておき、論理的に説明できるよう準備しておきましょう。
ただし、一切譲らない姿勢が必要というわけではなく、合意に向けて協力的な態度を示すことも円滑な進行につながります。
④証拠を用意する
相手の不貞やDVを理由に離婚を希望している場合は、証拠を用意しておくと主張の裏付けになります。不貞相手とのやり取りを示すメッセージ履歴、DVによる怪我の写真や診断書などが代表的な例です。
調停が不成立で裁判に移行する場合も、こうした証拠は重要になります。
⑤親権争いでは子の利益を具体的に示す
親権の判断では、子どもの意向・監護実績・生活環境など子の利益に関わる事情が重視されます。
相手を批判するよりも「自分が親としてどう子どもと向き合ってきたか」を具体的なエピソードで伝えることが効果的です。
調停期日には清潔感のある服装で臨むことも、印象を整えるうえで意識しておきたいところです。
関連記事
・離婚調停中にやってはいけないこと&不利な発言は?対処法も解説!
弁護士に依頼して離婚調停を有利に進めよう
離婚調停に臨むとき、弁護士に依頼することで以下のようなメリットがあります。
関連記事
①書類の作成等の負担を減らせる
離婚調停を申し立てる際には、申立書のほかに事情説明書・子についての事情説明書など、複数の書類を作成しなければなりません。養育費・財産分与・年金分割に関しても、さまざまな資料を用意する必要があります。
仕事や家事をこなしながら、慣れない書類作成や資料収集を行うのは時間も気力も要します。
弁護士に依頼すれば、書類の作成や資料収集のサポートを任せられるため、負担を大きく軽減できます。
②調停委員とのやりとりをサポートしてもらえる
調停委員に主張をうまく伝えるには、冷静かつ論理的に話す必要があります。しかし、自分の言葉で話そうとするとつい感情がこもってしまい、伝えたいことが伝わりにくくなることもあります。
弁護士に依頼すれば、事前の打ち合わせで考えを整理してから調停に臨めます。調停への同席も可能なため、主張し忘れや話の脱線があった際にもフォローしてもらえます。
調停委員の対応に不安を感じる場面でも、弁護士が同席していれば落ち着いて自分の主張を伝えやすくなります。
③離婚条件について適切なアドバイスをもらえる
調停が一度成立すると、その内容は確定判決と同一の効力を持ち、後から覆すことは極めて困難です。
相手方が法外な慰謝料を請求していたり、相手方に有利な財産分与を提案していたりする場合でも、その場で同意してしまえば取り消しはできません。
弁護士に依頼すれば、相手方の提示条件が妥当かどうかを法的な観点から判断してもらえます。譲歩して受け入れるべきか、条件交渉を続けるべきか、あるいは調停を不成立として裁判に移行すべきかといった判断は、専門家のアドバイスなしでは難しい場面も多くあります。
④相手方とのやりとりの窓口になってもらえる
調停期日以外にも、相手方と連絡が必要になる場面は少なからず生じます。感情的に対立している当事者同士では、直接のやりとりがうまくいかないことも珍しくありません。
弁護士に依頼すれば、相手方とのやりとりは弁護士を通して行えます。DVやモラハラを理由に離婚を考えている場合は、相手方との直接の接触は避けるべきであり、窓口として動いてくれる弁護士の存在が特に重要になります。
離婚調停の注意点
調停で話したことは外に漏らしてはいけない
離婚調停は裁判と異なり、非公開の手続きです。調停で見聞きしたことを外で話したり、無断で録音・録画したりすることは認められていません。
個人情報を知られたくない場合は非開示希望申出を
離婚調停を申し立てると、提出した申立書は原則として相手方にも送付されます。ほかの提出書類についても、家庭裁判所の許可があれば相手方が内容を閲覧・コピーできる場合があります。
こうした書類には住所や勤務先などの個人情報が記載されることが多く、DVやストーカー被害のおそれがある場合は、居場所が知られることで身の安全に影響が出る可能性があります。
不安がある場合は「非開示希望申出書」を家庭裁判所に提出することで、住所などの個人情報が相手方に開示されないよう配慮してもらえます。居場所を知られたくないという理由だけで、離婚調停をためらう必要はありません。
さらに、令和5年2月20日施行の法改正により、より強力な「秘匿決定」の制度が導入されました。
住所等が相手方に知られることで社会生活に著しい支障を生じるおそれがあると認められる場合、当事者の申立てにより裁判所が秘匿決定を行うことができます。決定が出れば、申立書に実際の住所を記載せずに手続きを進められます(裁判所『当事者に対する住所、氏名等の秘匿制度等 』)。
離婚調停の呼び出しを無視しない
配偶者が離婚調停を申し立てて呼出状が届いたら、離婚に応じたくない場合でも無視すべきではありません。出席しなければ調停は不成立となり、相手方から離婚裁判を起こされる可能性があります。
また、後から調停に出席したとしても、調停委員の心証が悪化し、交渉が不利な方向に進むおそれがあります。正当な理由なく期日を欠席した場合は、制裁が科される可能性もあります。
離婚調停に関するよくある質問
Q.家庭裁判所での離婚調停の流れは?
家庭裁判所に申立書を提出後、呼出状が届き、約2か月に1回のペースで調停期日が開かれます。平均3.6回の期日を経て、調停の成立・不成立・取下げのほか、裁判所が判断を下す審判により終了する場合もあります。
Q.離婚調停の手続きにかかる費用は?
離婚調停の申立費用は、収入印紙1,200円・郵便切手代1,000円前後・戸籍謄本450円で、合計約3,000円程度です。郵便切手代は申立先の裁判所によって異なります。弁護士に依頼する場合は、これとは別に弁護士費用がかかります。金額は依頼内容や事務所によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。
Q.弁護士なしで離婚調停の手続きはできる?
弁護士なしでも申し立ては可能です。ただし、裁判所の公表データによると、離婚調停を含む婚姻関係事件で弁護士が関与する割合は令和2年以降6割を超えています。財産分与や親権で争いがある場合は、専門家のサポートを検討する価値があります。
Q.離婚調停が不成立になったら?
調停不成立の場合、離婚裁判(訴訟)を提起できます。裁判では裁判官が証拠をもとに判決を下すため、相手の合意がなくても離婚が成立する場合があります。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
離婚調停を有利に進めるには、しっかり準備をしてから臨むことが大切です。