離婚調停の流れは?有利に進める方法を解説!
離婚調停は、夫婦間の話し合いでは離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会のもとで話し合いを行う離婚の方法です。
調停委員は、中立的な立場で双方の話を聞いてくれるのが前提ですが、しっかりと準備をして調停委員をうまく味方につけることで、有利に調停を進めることができるでしょう。そのためには、弁護士に適切な助言をもらうのも有効な手段です。
この記事では、離婚調停の流れと、離婚調停を有利に進めるために気を付けるべきことについて解説します。
目次
離婚調停とは?
離婚調停とは
離婚調停とは、夫婦間の話し合いで離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会のもとで解決を図る離婚の方法です。
調停では、夫婦がそれぞれ調停委員と面談をして、意見の調整を行います。面談は1人ずつ行われますので、相手と顔を合わせることはほとんどありません。
調停委員会は、家庭裁判所の裁判官と、男女ひとりずつの調停委員の3人で構成されています。調停委員の2人は、経験豊富な弁護士や、紛争の解決に有用な知識を有し、地域に根付いて活動している専門家などの中から選ばれた、裁判所の非常勤職員です。夫婦が主に話をするのはこの2人になります。
このように調停は裁判所で調停委員が仲介して行う手続きですが、あくまで当事者間での話合いを目的とするものです。裁判所が離婚の成立や離婚の条件を一方的に決めてくれるわけではなく、当事者間での合意が離婚成立のためには必要です。
離婚調停では何を話し合う?
離婚調停では、離婚の可否のほか、一緒に申し立てることができる付随申立てが6つあります。①親権、②面会交流、③養育費、④財産分与、⑤慰謝料、⑥年金分割の6つです。
何について話し合いたいかは、離婚調停の申立書に記入することができます。複数の申立て内容のうち、あとから1つだけ取り下げたり、先に成立させることもできます。
親権については離婚時に決める必要がありますが、それ以外の付随申立ては、離婚後に個別に調停や審判の申立てをすることも可能です(面会交流については、離婚前でも夫婦が別居していれば申立てができます)。
子供に関する争いでは、調査官による家庭訪問など「子の監護状況」や「子の意向」の調査も行われます。
調停離婚のメリット・デメリット
調停離婚には次のようなメリットがあります。
- 相手と直接会わないため、冷静な気持ちで話をできる
- 第三者からの客観的な意見を得られる
- 調停が成立すれば法的な効力がある
- 裁判よりも柔軟な解決方法がとれる
一方で、何度も裁判所に足を運んで話し合いを行ったとしても、最終的に双方が合意しなければ調停は成立しないというデメリットもあります。
離婚調停にかかる期間や費用は?
離婚調停は1回で終わることもあれば10回以上に渡ることもあり、かかる期間は様々です。短ければ1か月程で終わりますし、長ければ2年以上かかることもあります。とはいえ、多くの場合は半年から1年程度で終了します。
離婚調停にかかる費用は約3,000円で、申立てた側が支払います。内訳は以下のようになっています。
- 収入印紙代 1,200円
- 戸籍謄本の取得費用 450円
- 裁判所が郵送に使用する切手代 1000円前後
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離婚調停の流れ
離婚調停は以下のような流れで行われます。
離婚調停の流れ
- 家庭裁判所に申立書を提出
- 裁判所から呼出状が届く
- 第1回の調停期日が開かれる
- 調停を何度か繰り返す
- 調停終了
1.申立書を作成して家庭裁判所に提出する
調停を希望する方の当事者は、家庭裁判所に離婚調停申立書(夫婦関係調整申立書)を提出します。申立書に記載するのは、離婚を希望する旨や、調停で話し合いたいこと、離婚したい理由などです。
申立書の提出先は、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意によって決めた家庭裁判所です。申立書の書式は、裁判所でもらうことができますし、裁判所のホームページ(家事調停の申立書)からダウンロードすることもできます。
2.裁判所から呼出状が届く
担当する裁判官・調停委員や1回目の調停期日が決定したら、裁判所に出向くことを求める呼出状が双方に普通郵便にて届きます。
このとき、相手方に離婚調停申立書の写しも併せて送付されますので、相手を過度に刺激しないよう、申立書の書き方には注意が必要です。
3.調停期日が開かれ、話し合いが行われる
調停期日には、双方が家庭裁判所へ出向き、調停委員と話します。第1回期日の最初には、調停の進め方や調停委員の立場などが説明されます。この説明の時は2人が同席するのが基本ですが、直接話をする必要はありません。
その後、1人ずつ調停室に呼び出され、30分程度の事情聴取が2往復ほど行われます。調停委員は、夫婦の一方が話したことについて、もう一方に質問をします。それを繰り返して、意見の調整を行います。
調停で聞かれるのは次のような内容です。
- 離婚したい理由
- 結婚した経緯
- それまでの婚姻生活の様子
- 相手のどこに不満があるのか
- 夫婦が現在どういった生活をしているか
- 婚姻費用(別居中の生活費)はどうしているか
- 離婚後の生活、経済面などはどうなるか
- 子供の親権や養育費、面会交流をどうしたいか
- 夫婦関係を修復できる可能性があるか
- 財産分与、慰謝料などをどうしたいか
- 相手が応じない場合は訴訟を提起したいか
1回の期日はおおむね2時間ほどで終了しますが、それより長くかかることもあります。
相手が事情聴取を受けている間は待合室で待機することになりますが、双方が鉢合わせしないように別々の待合室を用意するなどの配慮が行われています。
4.調停を何度か繰り返す
その後は、調停成立に至るまでの間、1か月に1回程度の頻度で調停が開かれます。調停委員から、次回期日までに用意しておくべき資料や、検討しておくべき課題が与えられることもあります。
調停の回数は1~5回程度が多く、10回以上繰り返すことはまれです。
5.成立または不成立となって調停が終了
離婚調停で双方が合意に至った場合は調停調書が作成され、調停が成立します。この場合、調停が成立した時点で離婚の効力が生じます。その後、10日以内に役所に調停調書の謄本と離婚届を提出して、離婚したことを届け出る必要があります。
反対に、これ以上調停を続けるべきでないと判断された場合には、不成立調書が作成されて調停が終了します。この場合、夫婦は再度協議をするか、離婚裁判に移行するかを選びます。
また、まれに裁判官の判断により審判(裁判官が離婚についての決定を下す手続き)が行われることもあり、その場合は審判の内容を記した審判書が作成されて調停は終了します。ただし、審判には裁判の判決ほどの強い効力はなく、2週間以内に異議申立をすれば覆すことができます。
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離婚調停を有利に進めるには?
調停委員を味方につける
調停委員はあくまで中立的な立場ですが、こちらの主張をうまく汲み取ってもらえなければ、納得のいく判断はしてもらえないでしょう。調停委員をうまく説得し、味方につけることで交渉を有利に進めることができます。
1.常識的な身なり・言葉遣い
常識的な立ち居振る舞いができる人のことを、信頼したいと思うのは自然です。特に親権で争いがある場合、親権を得ようとする人の印象は重視されるでしょう。
2.感情的になりすぎない
事情聴取中に感情をコントロールできず突然泣き出したり、興奮したりしてしまうと、調停の進行に支障が出てしまうため悪印象を持たれてしまうかもしれません。また、離婚調停で説得力のある主張をするには、感情論ではなく事実に基づいて話す必要があります。
3.主張を一貫させる
話の途中で主張が変わってしまっては、伝えたいことがきちんと伝わりません。自分の主張はあらかじめまとめておき、論理的に話せるようにしておくことをおすすめします。
ただし、話し合いの中で一切主張を曲げてはいけないというわけではありません。調停の成立に協力的な姿勢は、調停委員に好印象を与えます。
4.証拠を用意する
相手の不貞やDVなどが原因で離婚を望んでいる場合は、証拠を用意すると説得力が上がります。例えば、不貞相手との肉体関係を匂わせる写真やメッセージ、DVで負った怪我の写真や診断書などです。もし調停が整わず裁判となった場合、こういった証拠は必須になりますので、用意しておいて損はありません。
離婚調停を有利に進めるには、しっかり準備をしてから臨むことが大切です。
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弁護士に依頼して離婚調停を有利に進めよう
離婚調停に臨むとき、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
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1.書類の作成等の負担を減らすことができる
離婚調停を申し立てる際には、申立書の他、事情説明書、子についての事情説明書など、いろいろな書類を作成しなくてはなりません。また、養育費、財産分与、年金分割に関し、複数の資料を用意する必要も生じます。
仕事や家事をこなしながら慣れない書類作成や資料収集をするのは時間がかかりますし、気持ちのうえでもとても負担になります。
弁護士を依頼すると、書類作成を任せることができますし、資料を用意するサポートをしてもらうことができ、負担を減らすことができます。
2.調停委員とのやりとりをサポートしてもらうことができる
調停委員にうまく主張を伝えるには、冷静に、論理的に話す必要があります。しかし、自分の言葉で話そうとするとつい感情がこもってしまい、伝えたいことが伝わらないかもしれません。
弁護士を依頼すると、打ち合わせで考えを整理したうえで調停に臨むことができます。また、弁護士に調停に同席してもらうことができますので、調停委員に対して自分の考えを伝える手助けをしてもらえます。主張し忘れたりつい話が脱線してしまった時にも、フォローしてもらうことができます。
もしも調停委員が高圧的であったり、価値観を押し付けてくるように感じられる時でも、弁護士が同席していれば、安心して自分の主張を伝えることができます。
3.離婚の条件に対して適切なアドバイスをもらうことができる
相手方が法外な慰謝料を請求していたり、相手方に有利な財産分与の提案をしていたりしても、提示された条件に同意して調停が成立すれば、結果は覆せなくなってしまいます。
弁護士に依頼すると、相手方の提示している離婚条件についてどのように判断するべきか、アドバイスをもらうことができます。
自分が譲歩して相手方の提示を受け入れるべきなのか、それとももっと有利な条件を出して調停で話合いを続けるのがよいのか、もしくは、これ以上調停で話し合ってもまとまる見込みはないので不成立で終わらせ裁判に移行すべきなのか、そのような判断は弁護士のアドバイス抜きでは難しいといえるでしょう。
4.相手方とのやりとりの窓口になってもらうことができる
調停期日以外に相手方と連絡をとる必要は少なからず生じます。調停では調停委員を介してやりとりができますが、調停期日以外では、弁護士がいなければ直接やりとりをするしかありません。しかし、感情的に対立している当事者間ではスムーズにやりとりを行うことができません。
弁護士を依頼すると、相手方とのやりとりは弁護士を通して行うことができます。特に、DVやモラハラを理由に離婚したいと考えている場合には、直接相手方とやりとりをすることは避けるべきですので、相手方との窓口になってくれる弁護士が必須といえます。
離婚調停の注意点
調停で話したことは外に漏らしてはいけない
離婚調停は、裁判と違って非公開の手続きです。調停で見聞きしたことは外では一切話してはいけませんし、録音・録画機器を持ち込むことも厳禁です。
個人情報を知られたくない場合は非開示希望申出を!
離婚調停を申し立てる際に提出した申立書は、相手方にも送付されます。また、他の提出書類についても、家庭裁判所の許可を得れば、相手方や利害関係人が閲覧・複写できてしまうものがあります。
こういった書類には申立者の住所や勤務先などの個人情報が記載されていることが多く、もしDVやストーカー行為などのおそれがある場合には、居場所が知られることで身に危険が及んでしまう可能性もあります。
こういった事態が危惧される場合には、家庭裁判所に非開示希望申出書を提出することで、それらの個人情報が開示されるのを防ぐことができる制度があります。ですので、相手に居場所を知られたくないからといって、離婚調停を忌避する必要はありません。
離婚調停の呼び出しを無視しない
配偶者が離婚調停を申し立てて自宅に呼出状が届いたら、たとえ離婚に応じたくなかったとしても無視すべきではありません。当事者の一方が調停に出席しない場合、調停は不成立となり、離婚裁判を起こされてしまいます。
また、たとえその後に調停に出席したとしても、調停委員の心証が悪くなり、交渉が不利な方向に進んでしまうおそれがあります。
さらに、調停期日を正当な理由なく欠席した場合、5万円以下の過料に処される場合があります。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
調停を始めたからといって必ず離婚しなければならない訳ではなく、調停の結果、離婚をせず円満にやりなおすということもできます。