離婚調停中にやってはいけないこと|不利になる発言と対処法

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離婚調停中に不利になる発言

この記事では、離婚調停中、もしくはこれから離婚調停を起こそうと思っている方に向けて、「離婚調停中にやってはいけないこと」や「離婚調停中に不利になる発言」をわかりやすく解説します。

不利な状況を避けるための対処法や、離婚調停を有利に進める方法もご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

なお、離婚調停については「離婚調停の流れは?有利に進める方法を解説!」の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。

離婚調停中にやってはいけないことは?

財産隠し

離婚調停では財産分与が問題になるケースも多いです。このとき、やってはいけないのが「財産隠し」です。

具体的には、預貯金などの財産の存在を最初から言わなかったり、相手方から指摘されたにもかかわらず、「存在しない」と虚偽の説明をする行為です。

このような行為をした後で財産の存在が判明すると、財産隠しをした人の発言全体の信用性がなくなってしまいます

対処法

当初から正直に財産を申告しましょう。夫婦が婚姻関係中に協力して築いた夫婦共有財産は、原則として2分の1ずつ配分されます。

相手方への直接連絡

離婚調停中に相手方に直接連絡すると、ご自身の身に危険が及ぶおそれがあります。

また、調停外で「言った」「言わない」の新たなトラブルが生まれてしまい、離婚調停が長引いてしまう可能性もあります。

対処法

相手方との交渉は、弁護士を介して行うのが安全です。

弁護士に依頼すれば、離婚調停以外でも相手方とやりとりできるため、調停外で離婚条件がまとまる可能性もあります。

また、別居後の生活に必要な物品を自宅に取りに行きたいなどの連絡も、相手方と直接やりとりしなくても可能です。

無断欠席をする

離婚調停を無断欠席すると、調停委員や裁判官の心証が悪くなります。そうなると、自分に不利な方向で調停が進行する可能性が高くなります。

また、家庭裁判所からの電話や手紙での呼び出しを無視して、正当な理由なく無断欠席を繰り返すと、5万円以下の過料に処されるおそれもあります(家事事件手続法258条1項、51条3項)。

対処法

仕事や子どもの問題でどうしても離婚調停に出席できない場合は、早めに家庭裁判所に連絡しましょう。弁護士に依頼している場合は、弁護士に事情を説明しましょう。

相手方名義の預金の過度な使い込み

離婚調停中の行為ではありませんが、別居後にやってはいけないのが相手方名義の預金を過度に引き出して使ってしまうことです。

相手方名義の預金が夫婦共有財産であれば、預金を引き出して生活費に使っても原則として財産分与の中で清算されることになります。

しかし、「自分の財産を減らしたくないから」という理由で相手方名義の預金を過度に引き出して使ってしまうと、損害賠償請求されるおそれがあるのです。

対処法

後々のトラブルを防ぐには、別居に際し、相手方名義の預金は勝手に持ち出さないのが一番安全です。

別居後の生活費が心配な方は、婚姻費用を請求しましょう。婚姻費用は原則として請求時点からしか支払義務が生じません。そのため、別居後はできる限り早く婚姻費用を請求しましょう。

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離婚調停で不利になる発言とは?

感情的な発言

離婚を決意するまでの辛く苦しい日々を調停委員にも理解してほしいというお気持ちは当然のものです。

しかし、相手方に対する悪口や批判など感情的な発言に終始していると、肝心の争点が整理できず、せっかくの調停期日が無駄になってしまいます。

離婚調停は当事者が交互に調停委員と話をします。

それぞれの持ち時間は30分程度、1回の調停期日で2,3回しか順番が回ってこないので、1回1回のやりとりで話すべきことを事前に整理して冷静に伝える必要があります。

対処法

大切なのは「離婚裁判を意識した事実を主張すること」です。

例えば、ご自身が申立人となった離婚調停手続きで、相手方が離婚したくないと主張しているとしましょう。

この場合、法定離婚事由を意識した事実を主張するのが大切です。できれば、その事実を裏付ける証拠も提出しましょう。

法定離婚事由とは、民法が定める離婚理由です。離婚裁判になると、法定離婚事由がなければ離婚できません。

例えば、暴言やモラハラは「婚姻を継続し難い重大な事由」という法定離婚事由に当たります。

暴言やモラハラを裏付ける証拠(メールや日記など)を調停段階から提出できれば、調停委員が相手方を説得してくれやすくなります。

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本心ではないのに譲歩する発言

離婚調停を早く終わらせたいあまり、相手方の示した離婚条件に安易に同意してしまうケースがあります。

しかし、調停調書が作成されてしまえば、そう簡単には合意内容を変更できません。

例えば、調停で決まった養育費の金額を増額してほしい場合、相手方との話し合いで解決しなければ、新たに調停を申し立てる必要があります。

納得しないまま譲歩してしまうと、将来的に新たなトラブルが生じるおそれがあるのです。

対処法

離婚調停が始まる前に、「絶対に譲歩できないこと」「離婚条件によっては譲歩してよいこと」を整理しておくのがポイントです。

譲歩してよいと考える場合、どのような離婚条件であれば同意できるかまで具体的に考えておきましょう。

ただし、婚姻費用、養育費、財産分与については、客観的資料によってある程度結論が決まってくる場合が多いです。

これらの離婚条件について、およそ実務の基準からかけ離れた主張に固執するのは避けましょう。

調停委員の心証が悪くなってしまうだけでなく、調停期間が伸びて離婚問題全体の解決が遠のいてしまいます。

全く譲歩しない発言

離婚調停は話し合いの場です。話し合いがまとまるには、お互いの譲り合いが欠かせません

相手方の主張が自分の主張と食い違うと、大きなストレスを感じるものです。

しかし、だからといって全く譲歩しない姿勢を貫くと、離婚調停の成立は難しくなります。

離婚調停が不成立となった場合、離婚訴訟に移行する可能性があります。離婚訴訟は離婚調停に比べて、大きな負担がかかります。

例えば、離婚調停が成立するまでの目安は約半年程度ですが、離婚訴訟の場合は通常でも1年以上、長ければ3年以上に及ぶケースが少なくありません。

対処法

ここでも、譲歩できるラインを決めておくことが重要です。

例えば、面会交流について、相手方と子どもを一切会わせたくないと考えているとします。

しかし、面会交流を完全拒否する姿勢のままでいると、相手方は婚姻費用や養育費の支払を拒否する可能性が高くなります。また、親権者の判断においても不利な方向に働きます。

そのため、どのような条件であれば面会交流に応じられるかを考える方が有益です。

一つの選択肢として、FPICなどの第三者機関を利用した面会交流が考えられます。

面会交流が早期に実現すれば、相手方が婚姻費用や養育費の支払に応じることが期待できます。また、親権者の判断においても有利に働きます。

不貞行為を疑われる言動

離婚調停中に不貞行為を疑われる発言をすると、相手方から「不貞行為だ」と主張される可能性が非常に高いです。

夫婦関係の破綻について主たる原因をつくった側は「有責配偶者」になります。不貞行為をした側は、有責配偶者になるケースが一般的です。

離婚調停中に不貞行為を疑われる発言をすると、調停委員が有責配偶者の言い分が通るよう相手方を積極的に説得してくれる可能性は低くなります。

また、不貞行為を疑われると、相手方から慰謝料を請求されるおそれが出てきます。

婚姻費用については、有責配偶者の生活費分は否定されるのが実務の考え方です。

対処法

離婚調停中に不貞行為を疑われる発言をしないこと、また調停中に異性と交際を始めたり同棲をするなど不貞行為を疑われる行動をしないのが適切です。

なお、夫婦関係が破綻した後に異性関係をもっても不貞行為には該当しません。しかし、その立証は簡単ではありません。

離婚調停中に不貞行為の有無が新たな争点となると、調停が長期化し、場合によっては離婚訴訟まで発展する可能性があります。

離婚調停を有利に進めるには弁護士に相談!

弁護士との事前準備で離婚調停を有利に進めよう

離婚調停を有利に進めるには、十分な事前準備がとても大切です。その際、法律の専門家である弁護士のサポートがあれば、さらに入念な準備を行うことができます。

具体的には、「絶対に譲歩できない点」と「離婚条件によっては譲歩してよい点」を整理しておく必要があります。

さらに、主張のタイミングも重要です。譲歩できる点について、その主張をどのタイミングで行うかについては、交渉の経験が豊富な弁護士に任せるのが安心です。

というのも、最初から「ここまでなら譲歩できる」と言ってしまうと、相手に足元を見られてしまい、それ以上有利な結果にはならないからです。

弁護士であれば、譲歩できる点を主張すべきタイミングを見計らって、依頼者の利益ができるだけ大きくなるように交渉できます

法的観点からの意見で離婚調停を有利に進める

調停期日では、男女各1人ずつの調停委員とやりとりするのが一般的です。

調停委員は、社会生活上の豊富な知識や専門的な知識を持つ人の中から選ばれます。もっとも、全員が法律や離婚事件の実務について精通しているというわけではありません。

そのため、離婚調停を有利に進めるには、弁護士が法的観点から適切な意見を述べることが非常に重要になってきます。

仮にご本人のみで対応していると、「調停委員がこう言っているのだから、この離婚条件に応じた方が良いのかもしれない」と考え、不本意ながら同意する事態になりかねません。

一方、弁護士が離婚調停に同席していれば、相手方が法的に不合理な主張をしてきた場合に、即座に反論します。また、当方の主張の正当性を法的根拠に基づいて説明します。

調停というと、話し合いのイメージが強いですが、自己に有利に進めるには、やはり法的知識が不可欠なのです。

陳述書など有利になる書面を提出できる

離婚調停では、重要な問題について書面を作成して提出することが求められます。

例えば陳述書です。

陳述書は、主に子の引渡しや監護者を決める場合に提出を求められます。また、面会交流について意見が食い違っている場合にも、陳述書の提出が求められる場合もあります。

陳述書には監護状況などを具体的に記載する必要があります。説得力のある陳述書を作成するには、主張すべきポイントを知っていなければなりません。

弁護士であれば、どのような事実があれば有利な結果につながりやすいか熟知しています。

そのため、自己に有利にな書面を提出するには、弁護士に依頼するのが最適です。

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離婚調停の陳述書の書き方|例文・サンプル付き

適切な調停条項を作成できる

離婚調停で最も重要なのが調停条項の作成です。

調停条項がきちんとしたものであるかどうかで、離婚後の生活が安定したものになるかどうか決まると言っても過言ではありません。

調停条項に不備があると、いざ強制執行しようと思ったときに実行できないなど、将来思わぬトラブルを招くおそれがあります。

弁護士がついていれば、調停条項を慎重に分析します。

調停内容が正しく反映されているか、将来依頼者に不利になる条項がないか、あるいは、依頼者の利益を確保するために必要な条項が抜けていないかといったあらゆる観点から条項を確認します。

調停条項に法律のプロの目が入るかどうかで、その後の展開は大きく変わってきます。将来の生活を守るためにも、離婚調停には弁護士の同席をおすすめします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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