離婚調停の陳述書の書き方|例文・サンプル付き
離婚調停の際には、陳述書を提出することができます。
陳述書は、調停委員会に自分の主張を説明し、調停を有利に進めるために重要な書類です。
陳述書には決まった書式がなく、各々が自分で考えて書く必要がありますが、書き方がわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、離婚調停の陳述書の書き方について、注意点や例文・サンプルを交えて解説します。
目次
離婚調停の陳述書の書き方・サンプル
作成時の注意点
- 陳述書に決められた書式はなく、書き方は自由です。各裁判所のホームページにも陳述書のサンプルや書き方が公開されている場合があります。不明な点は申立先の裁判所に確認してください。
- 時系列に沿って、具体的に(どこで、だれが、だれと、なにを、どうしたのか)を記載します。
- 陳述書は相手も見ます。相手に知られては困る事項(住所や勤務先・子の通学先など)は書かないでください。
- 通常、陳述書にはA4サイズの紙を使用します。長くても5枚程度に収めるのがよいでしょう。
- 手書きでもパソコンで作成しても構いません。文字の大きさは、通常12ポイント程度で作成します。
- 複数枚にわたる場合は、ページの下部にページ番号を振ります。
- 氏名の欄には、作成者が自筆で署名、押印してください。
離婚調停の陳述書とは
離婚調停の陳述書とは?
離婚調停の申し立ての際には、以下のような書類を提出します。
- 離婚調停申立書
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
- 事情説明書
- 子についての事情説明書
これらの書類を通して、裁判所は夫婦の状況や離婚を決意するに至った経緯、希望する離婚条件などを把握し、これをもとに調停を進行します。しかし、これだけでは十分に事情を説明しきれないと感じる方もいるでしょう。
そういった場合に、陳述書を提出することができます。
陳述書とは、事情証明書を補足するような役割を果たすものです。必須ではなく、任意で作成して提出することができます。
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離婚調停の陳述書はいつ提出する?
陳述書は、離婚調停の申し立てと同時に提出することもできますし、申し立て後、第1回期日の前に提出することもあります。
また、調停が始まってから提出することもあります。調停中に相手方が陳述書を提出してくることがあるため、その反論として陳述書を出す場合もあります。
調停委員会が陳述書の提出を求めてくることもあり、そういった場合は、調停委員が設定する締め切りまでに陳述書を提出しましょう。
事案にもよりますが、だいたい期日の一週間前に裁判所に提出しておくと、調停委員会が陳述書を事前に読んでくれるので、当日の進行がスムーズになります。
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離婚調停の陳述書はどうやって提出する?
離婚調停の申立書類は、裁判所の窓口で提出することも、郵送で提出することもできます。申立時に陳述書を併せて提出する場合は、他の書類と一緒に窓口または郵送で提出しましょう。
調停期日に陳述書を提出する場合は、調停委員に直接手渡します。
なお、陳述書を提出する際は、裁判所用、相手方用、自分用の計3通を用意しておきましょう。
陳述書には何を書く?
陳述書に決まった書式はありませんが、以下の事項は最低限記載します。
- 事件番号
- 表題(陳述書)
- 作成日
- 宛先(家庭裁判所名)
- 申立人の署名・捺印
離婚調停の申し立てと同時に陳述書を提出する場合は、まだ事件番号がありませんので、事件番号を記入する欄のみ作っておくのがよいでしょう。事件番号が振られた後に提出する場合は、必ず事件番号を記載します。
本文には、以下のようなトピックについて書くのが一般的です。
- 夫婦のプロフィール
- 結婚した経緯
- 夫婦の職業や収入、財産
- 子どもの年齢や学校、登校状況
- 離婚を決意するに至った経緯
- 別居開始日や別居に至った経緯
- 離婚したい旨や希望する条件
経緯や具体的な出来事は、時系列順に書くと調停委員会にも伝わりやすいでしょう。
離婚調停の陳述書を書く時のポイント
陳述書は相手にも見られる
陳述書は、原則的に相手方にも見られます。
したがって、相手を挑発するような内容や、相手に知られたくない情報(自分の住所や勤務先、子どもの学校名など)は書かないようにしてください。
陳述書を相手方に見られないようにするには、非開示希望申出を行うか、調停期日に直接調停委員に手渡し、返してもらうという手段もあります。
陳述書に相手を刺激するようなことを書かない
相手を過度に刺激する内容は、スムーズな進行の妨げになる可能性がありますので、書かないようにしましょう。
例えば、本当は暴力などなかったにも関わらず、暴力を受けていたから離婚したいというように、嘘を書いてはいけません。相手にとっても調停委員会にとっても印象が悪くなってしまいます。
陳述書には感情ではなく事実を書く
調停委員会が理解しやすい陳述書を作成するためのポイントは、感情ではなく具体的な事実を書くことです。
例えば、「夫がいつも暴力を振るうので許せません」などと書いても、調停委員会には、どのような暴力行為がどのくらいの頻度で行われており、申立人がどの程度の苦痛を受けていたのかは伝わりません。
こちらの主張を十分に理解してもらうためには、「夫は〇年〇月〇日の〇時頃、自宅にて、私が夫の不貞行為を指摘したのがきっかけで、私に対し殴る蹴るの暴力を加えました。その結果、私は肋骨を骨折する怪我を負いました」などのように、客観的な日時や状況を書くようにしましょう。
併せて、主張を裏付ける証拠、例えば暴力によって負った怪我の診断書などを提出することをおすすめします。
別居開始日及び別居に至る直前の経緯を記載する
陳述書を作成する上で欠かせない、そして忘れがちな視点が「別居開始日及び別居に至る直前の経緯を記載する」点です。
調停委員会にとって「別居開始日」と「別居開始に至る直前の経緯」は、離婚が認められるかどうか決める上で非常に重要な判断要素になります。
別居開始日は、破綻の有無を決めるポイントになります。別居期間が長いか短いかで訴訟の結果が変わります。そして、訴訟の結果を見越して調停も進められます。
別居期間が長ければ、申立人としてはそれだけで破綻の主張がしやすくなります。
一方、別居期間が短ければ、申立人は、相手方の有責性が高いことをより強調していく必要があります。
そして、「誰が、いつ家を出たのか、子どもは連れて行ったのか」という点も忘れず記載しましょう。
本人にとっては当然のことなので省略しがちですが、調停委員会は多くの事件を扱っているため、書面上でこれらの事実について明確に説明しておくと事案を即座に把握してもらいやすくなります。
陳述書で主張すべき事実の判断は弁護士に任せるのがおすすめ
陳述書では、自分の辛い思いを分かってもらいたいがために、相手方の暴言、暴力などをできるだけ詳しく、かつ、大量に書こうとしがちです。
しかし、重要なのは、別居に至る直前の経緯です。言い換えれば、別居に至る直接的な原因は何だったのかという点です。離婚を決意した経緯を詳細に説明することも事案によっては大切ですが、主張すべき事実には強弱をつけるのが大切です。
この判断はやはり弁護士に任せるのがおすすめです。
弁護士に相談して、陳述書をチェックしてもらったり、アドバイスをもらうのも有効です。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
給与明細や病院の診断書などの証拠資料も、陳述書に添付して提出することができます。