不倫の示談の進め方は?示談金相場・交渉のコツを解説

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不倫の示談

不倫の慰謝料請求において、「示談交渉はどのように進めればよいのか」「示談金の相場はいくらなのか」「示談交渉を有利に進めるにはどうすればよいか」といった疑問をお持ちの方は多いでしょう。

示談とは、当事者同士の話し合いによって紛争の解決を図る手続きで、不貞行為による慰謝料請求では裁判よりも一般的な解決方法です。適切に進めることで、時間と費用を抑えながら納得のいく解決が期待できます。

この記事では、不倫問題で示談を検討している方に向けて、示談交渉の進め方やコツ、示談書の書き方、不倫慰謝料の示談金相場などを丁寧に解説します。

不倫の示談とは?

不倫・不貞行為の示談とは

不倫の示談とは、不貞行為によって精神的苦痛を受けた被害者が、配偶者や不倫相手に対して損害賠償や接触禁止などを請求し、当事者同士の話し合いによって紛争の解決を図る手続きです。

不倫(不貞行為)は不法行為とされており、被害者は民法709条に基づき不貞慰謝料を請求することができます。

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法709条

この慰謝料を請求するには、必ずしも裁判を起こす必要はありません。むしろ、不貞行為の慰謝料請求は、裁判に至る前に示談によって解決するケースが一般的です。

示談をおこなう際は、精神的苦痛に対する慰謝料やその他問題の解決にかかったすべてのお金を合わせて、示談金としてお金を受け取ることが多いです。

一般的に、示談が成立した際は合意内容を書面にまとめた示談書を作成します。

不倫で示談するメリット・デメリット

不倫で示談するメリット

  • 裁判に比べ時間と費用を抑えられる
  • プライバシーを守りやすい
  • 当事者同士の柔軟な合意が可能

裁判には数か月~数年という時間がかかるのに対し、示談は当事者が合意に至れば数週間~数か月程度の短期間で解決できるほか、裁判よりも費用を抑えることができます。

また、示談交渉は裁判と違って公開されないため、当事者双方のプライバシーを守ることができます。

加えて、当事者同士の合意があれば、柔軟な内容で解決が可能というメリットがあります。

不倫で示談するデメリット

  • 法律知識がないと不利な条件で合意してしまう恐れ
  • 示談書でカバーしきれないトラブルもあり得る
  • 相手が支払いを履行しない場合、裁判が必要

示談では当事者同士の話し合いで条件を決めるため、知識がないと不利な条件で合意してしまう可能性があります。相手に押し切られて、本来受け取れるはずの適正な金額を得られないかもしれません。

また、示談書に記載していない問題が後から発覚した場合、追加で請求することが困難になる場合があるため、示談書に不備がないかは慎重に確認しなければなりません。

なお、裁判で慰謝料の支払いが命じられたにもかかわらず慰謝料が支払われなかった場合、強制執行の手続きで相手方の財産を差し押さえることができます。これに対し、私的に作成した示談書だけでは強制執行ができないため、強制的に慰謝料を回収するには改めて裁判を起こす必要があります。

不倫の示談交渉の進め方

不倫の示談交渉の手段は?

示談交渉の方法①当事者同士の話し合い

加害者と被害者が直接または電話などで話し合い、示談の内容を決める方法です。手続きが簡便で費用がかからない反面、感情的な対立により交渉が難航したり、後日トラブルに発展するおそれがあります。

口頭だけでの合意は証拠として弱いため、合意内容は必ず書面に残すことが重要です。

示談交渉の方法②内容証明郵便を送る

不倫相手に対して損害賠償請求の意思を明確に伝えるために、内容証明郵便を用いて通知を送付する方法です。

内容証明郵便とは、どんな内容の手紙が、いつ、誰から誰に差し出されたかを証明してくれる郵便局のサービスです。内容証明郵便を送れば相手に心理的圧力を与えられるほか、郵便局に記録が残るため、後に裁判に発展した場合には、請求を行った事実や時期を示す証拠となります。

一方で、相手が交渉に応じない場合があるほか、感情的に反発し交渉が進まない可能性もあります。

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示談交渉の方法③弁護士に交渉を依頼する

弁護士に依頼し、示談交渉や示談書作成の手続きを代理してもらう方法です。

法律の専門家が対応することで、適正な賠償額を獲得することができ、交渉の精神的負担も軽減されます。ただし、相手から回収できる慰謝料の額が少ない場合、弁護士費用を差し引くと赤字になってしまうケースもあるため、費用対効果を十分に検討する必要があります。

費用倒れの可能性については、一度弁護士に直接相談してみることをおすすめします。初回の法律相談を利用すれば、どの程度の慰謝料が見込めるのか、それに対してどれくらいの弁護士費用がかかるのかの目安を教えてくれるでしょう。

不倫の示談交渉の流れ

以下は、不倫の示談交渉の一般的な流れです。

不倫の示談交渉の流れ

  1. 相手方に慰謝料請求の意思を伝える
  2. 示談内容を話し合う
  3. 示談書を作成し署名・押印する
  4. 示談金を支払う

(1)相手方に慰謝料請求の意思を伝える

まず、慰謝料を請求したい相手(配偶者もしくは不倫相手)に対し、慰謝料請求の意思を伝えて話し合いを申し入れます。話し合いの申し入れは、電話や内容証明郵便、弁護士からの手紙などを使っておこなう場合が多いです。

慰謝料請求の前に、相手の反論を抑えるために不倫の決定的な証拠を揃えておきましょう。

(2)示談内容を話し合う

相手方が交渉に応じた場合は、合意に向けて双方が示談条件を話し合います。主に示談金の金額や支払方法、支払期限などを決めます。場合によっては謝罪や今後の接触禁止など金銭以外の条件を取り決めることもあります。

連絡手段は対面でも電話・メールでも構いませんが、丁寧な言葉遣いを心掛け、お互いが納得できる条件を探りましょう。

(3)示談書を作成し署名・押印する

示談交渉で合意したら、示談書を作成します。示談書は当事者のみで作成することも可能ですが、弁護士や行政書士に作成を依頼する場合もあります。合意の内容に不備がないか法律の専門家にチェックしてもらうことで、後のトラブル防止に繋がります。

完成した示談書に双方が署名・押印することで示談成立が正式に確認されます。同じ内容の示談書を2通用意し、当事者が各1通ずつ保管しましょう。

(4)示談金を支払う

示談書の内容に従い、合意した期日までに示談金の支払いをおこないます。未払いを防ぐため、示談を成立させたときにその場で支払うという方法もあります。

銀行振込の方法を取る場合は、振込先の口座情報や振込手数料の負担者を確認しましょう。支払った人は、振込証明や領収書などで支払記録を残します。

不倫の示談交渉のコツ

十分な証拠収集を行う

交渉を始める前に、不倫の事実を裏付ける確実な証拠を可能な限り集めておくことが重要です。証拠が具体的で豊富であるほど、相手に事実を認めさせやすくなり、交渉を有利に進めることができます 。

有効な証拠については『離婚で浮気を立証するのに有効な証拠とは?集め方と種類を解説』をご覧ください。

冷静かつ理性的に話し合う

不倫問題は感情的になりやすいですが、交渉の場では冷静さを保つことが非常に重要です 。感情的な言動は交渉をこじらせ、長期化させる原因となります 。

話し合いの際は、感情的にならず、法的な根拠に基づいて事実を伝え、希望を明確に伝えるようにしましょう。可能であれば、話し合いの様子を録音しておくことも有効です 。

現実的な解決を目指す

慰謝料の金額は、相手の経済状況や家族の有無なども考慮し、現実的な金額で合意を目指すことが円滑な解決のコツです。

非現実的な額の示談金の要求や、法的な根拠のない要求(退職や引っ越しなど)は、交渉の長期化や示談決裂に繋がります。

不倫の示談書の内容と法的効力は?

不倫の示談書に書くこと

不倫の示談書には、次のような内容を盛り込むのが一般的です。

不倫の示談書に書くこと

  • 不貞行為の事実とその経緯
  • 示談金の金額・支払方法・期日
  • 秘密保持や接触禁止などの条項(必要に応じて)
  • 清算条項
  • 日付・署名・押印
  • 当事者の氏名・住所

示談書の中で、示談金がいくらか、何月何日までにどのような方法(手渡し・銀行振込など)で支払うかを明確にします。確実に支払いを受けるためには1回払いが望ましいですが、やむを得ない場合は分割払いにすることもできます。

支払いが滞った時のペナルティも決めます。期限の利益喪失(分割払いの支払いが遅れたらそれ以降の分を一括で請求できること)や、遅延損害金の条項を盛り込むのが一般的です。

示談金の支払い以外にも、「不倫関係を解消して、二度と接触しないこと」「付きまといや名誉毀損などの迷惑行為をしないこと」「示談の内容を他の人に話さないこと」などを示談条件に盛り込んでもよいでしょう。

清算条項とは、示談書に記載したこと以外に当事者には権利義務がないことを確認する条項で、紛争の蒸し返しを防ぐ効果があります。

不倫の示談書テンプレート

こちらは、不倫相手に対して不倫慰謝料を請求する場合の示談書のテンプレートです。

【示談書】不貞相手への慰謝料請求
【示談書】不貞相手への慰謝料請求②

法的に有効な示談書を作るためには?

示談書に決まった書式はなく当事者だけで自由に作ることができますが、以下のポイントをおさえておかなければ、法的な効力を否定されてしまい、作成した意味がなくなってしまうかもしれません。

示談書が有効となるためには、当事者の自由な意思に基づく合意であること、内容が明確であること、公序良俗に反しないことが必要です。

強要や詐欺、錯誤があった場合や、公序良俗に反する内容の場合は、示談書は無効または取り消しとなることがあります。たとえば、暴力や脅迫により作成された示談書は無効と判断された判例があります。

示談金の不払いが心配な場合は、公正証書を作成することもあります。公正証書とは、公証役場で公証人に依頼して作成する公文書です。公正証書には強い効果があり、強制執行認諾文言のついた公正証書を作成しておけば、慰謝料の支払いが滞ったときに裁判を経ずに強制執行ができるようになります。

慰謝料をすぐ支払う約束なのであれば、公正証書の必要性は高くありませんが、分割払いにした場合は支払いが滞る可能性があるため作成しておくと安心です。

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 不倫慰謝料の示談金相場は?目安と判断基準

不倫慰謝料の示談金相場

不倫に関する示談金・慰謝料の相場について、法律上明確な基準はありませんが、裁判例や実務上の傾向からいうと50万~200万円程度が相場であるといえます。

不倫が原因で離婚に至った場合は、離婚しなかった場合より慰謝料が高くなります。

この場合、夫に対しては、不倫による精神的苦痛への慰謝料と離婚によって受けた精神的苦痛への慰謝料を合わせて離婚慰謝料として請求するのが通常で、不倫で離婚する場合の離婚慰謝料の相場は100万~300万円程度です。

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不倫慰謝料の額に影響する要素

通常、以下のような事情を考慮して不倫慰謝料の額を決定します。

不倫慰謝料の額を決める要素

  • 不倫の内容(期間、回数、相手の人数など)
  • 婚姻関係の事情(婚姻期間の長さ、未成熟子の有無など)
  • 被害者の受けた精神的苦痛の程度
  • 不倫発覚後の対応
  • 加害者の経済力や社会的地位
  • 離婚するかどうか

たとえば、長期間にわたって不倫関係が続いていた場合や、小さな子どもがいるのに不倫をした場合、また不倫が発覚したあとも反省の態度が見られない場合などは、被害者の精神的苦痛も大きいため慰謝料の額が高額になる傾向があります。

一方で、不倫の時点で夫婦仲がかなり悪かった場合や、加害者がすでに社会的制裁を受けている場合などは、慰謝料が比較的低額になります。

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まとめ|不倫の示談交渉を弁護士に相談するメリット

不倫の慰謝料請求を示談で進める場合は、冷静さと準備が何よりも大切です。不貞行為の証拠をきちんと用意したうえで、相手と丁寧に話し合い、納得のいく形で示談を成立させることが目標です。

また、法的に不備のない示談書を作成して、確実に示談金の支払いを受けることも重要です。

次のような方は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 初めて慰謝料請求を行う方
  • 相手が交渉に応じない場合
  • 示談金が適切か判断できない場合
  • 法的に有効な示談書を作成したい場合

弁護士が代理人として交渉に入ることで、相手方も真剣に対応せざるを得なくなり、スムーズな解決につながることが多いです。

まずは、お一人で悩まず、信頼できる弁護士にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了