離婚後の健康保険はどうなる?切り替え方法と14日を過ぎた場合の対処法

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離婚に伴う健康保険の手続きは、これまでの加入状況によって大きく2つに分かれます。「保険自体を切り替える」ケースと、「登録情報を変更する」ケースです。

配偶者の扶養に入っていた方は、一般に離婚日の翌日から被扶養者(健康保険上の扶養家族)の資格を失います。国民健康保険への加入は資格喪失日から原則14日以内に行う必要があるため、離婚直後は速やかに手続きを進めることが大切です。

この記事では、離婚後の状況別に健康保険がどう変わるかを整理したうえで、切り替えに必要な資格喪失証明書の取得方法、手続きの具体的な流れ、14日の期限を過ぎた場合の対処法、子どもの健康保険についても解説します。

離婚したら健康保険はどうなる?

扶養に入っていたら資格を失う

専業主婦(主夫)などで配偶者の健康保険(社会保険)の扶養に入っていた場合、離婚によりその資格は失われるため、同じ保険を使い続けることはできません。資格確認書(従来の保険証に代わる書類)が手元にあるときは保険者へ返却します。

一方、国民健康保険には扶養という概念がありません。配偶者や子どもであっても、一人ひとりが被保険者として個別に加入する仕組みになっています。

国民健康保険に加入していたら?

離婚したことで、国民健康保険の資格を失うことはありません。

ただし、配偶者を世帯主とする国民健康保険に加入していた場合、離婚後も国保を継続するなら世帯主の変更手続きが必要です。国保の保険料は世帯主に請求される仕組みのため、手続きを怠ると元配偶者への請求が続き、トラブルの原因になりかねません。

離婚を機に別の市区町村へ引っ越す場合は、転出元で資格喪失手続きを行い、転入先で改めて加入手続きをする必要があります。国民健康保険は自治体ごとに管理されているためです。

なお、国民健康保険をやめて社会保険に加入する場合は、速やかに国保の脱退手続きを行いましょう。手続きが遅れて資格喪失後の保険証をそのまま使用すると、医療機関から医療費を直接請求されるおそれがあります。

加入・脱退・世帯変更のいずれの手続きも、原則として離婚後14日以内に市区町村役場の窓口で行う必要があります。

自分の勤務先の健康保険に加入していたら?

ご自身の勤務先で保険に入っている場合、保険自体を切り替える必要はありません。ただし、状況に応じて登録情報の更新や扶養に関する手続きが必要です。

離婚により氏名や住所が変わった場合、マイナンバーと基礎年金番号が紐付け(連携)されていれば、住民票の異動情報が自動で反映されるため、届出は原則として不要とされています。ただし、加入している保険組合によっては届出が必要なケースもあるため、勤務先に確認しましょう。

連携がされていない場合は、「被保険者氏名変更(訂正)届」や「住所変更届」など所定の書類を勤務先に提出する必要があります。

配偶者を扶養に入れていた場合は、離婚により被扶養者の要件を満たさなくなるため、扶養から外す手続きが必要です。「健康保険被扶養者(異動)届」を、原則として離婚後5日以内に勤務先へ提出しましょう。

任意継続被保険者制度とは

会社を退職するなどして健康保険の資格を失った方が、退職前に継続して2か月以上健康保険に加入していた場合、資格喪失日から20日以内に申し出ることで、最長2年間、在職中と同じ保険に継続加入できる制度です。

保険料は事業主の負担分がなくなるため、在職中の本人負担の概ね2倍程度になります。

離婚後に加入できる健康保険の種類と選び方

健康保険の制度をおさらい

日本では、原則としてすべての国民が何かしらの健康保険に加入しています。大きく分けると、会社員・公務員やその家族が入る社会保険(被用者保険)か、自営業や無職の方などが入る国民健康保険のいずれかです。

75歳以上の方は、全員が後期高齢者医療制度に加入します。

健康保険の制度

パート・アルバイトの方も、一定の要件を満たせば社会保険に加入できます。要件を満たさない方や、勤務先に社会保険がない方は国民健康保険に加入することになります。

なお、「社会保険」という言葉は、健康保険・厚生年金・雇用保険・介護保険・労災保険などをまとめて指す場合もあります。この記事では、会社員や公務員が加入する健康保険(被用者保険)に絞って説明します。

社会保険と国民健康保険との違い

種類対象者保険料の目安
職場の健康保険(社会保険)就職・転職して会社に入った方給与に応じた額
(会社が半額負担)
国民健康保険職場の健康保険等に加入していない方
(一定の適用除外あり)
前年の所得をもとに計算
(自治体により異なる)

離婚を機に就職・転職する方や、すでに仕事をしている方は、勤務先の健康保険に加入するのが一般的です。保険料の半額を会社が負担するため、国民健康保険と比べて個人の負担が抑えられることが多くなります。

国民健康保険は市区町村が運営する保険で、離婚後に無職・フリーランス・パートなど、職場の健康保険に加入できない方が主に選ぶ選択肢です。保険料は前年の所得をもとに計算されるため、収入が少なかった場合は比較的安くなることがあります。

一方、退職直後など前年の収入が高かった場合は、保険料が割高になるケースもあります。軽減措置が適用される場合もあるため、加入前に市区町村の窓口で確認するのが確実です。なお、計算方法は自治体によって異なります。

離婚後の健康保険はどう切り替える?

切り替えには資格喪失証明書が必要

保険を切り替える際には、「資格喪失証明書(健康保険資格喪失証明書)」が必要になります。これは、離婚や退職などにより社会保険の資格を失ったことを証明する書類で、新たな健康保険へ加入する際に提出を求められるものです。

会社員の配偶者の社会保険の扶養に入っていた方は、一般に、離婚により被扶養者の要件を満たさなくなるため、離婚日の翌日から被扶養者資格を失います

健康保険に未加入の期間が生じると、医療費を全額自己負担することになるため速やかに手続きを進めましょう。

資格喪失証明書を取得するには?

多くの場合、元配偶者(被保険者)の勤務先で被扶養者削除の手続きが行われ、その結果として資格喪失証明書が発行されます。元配偶者の会社の担当部署(総務・人事など)が窓口です。

離婚後に連絡が取りにくい場合や元配偶者が対応してくれない場合は、加入していた保険者(協会けんぽ支部、健康保険組合など)または市区町村窓口に相談し、代替書類や手続き方法を確認しましょう。

なお、配偶者からの暴力(DV)を理由に離婚した場合は、支援センター等が発行する証明書をもって保険者に申し出ることで、元配偶者を通さずに手続きができる特例もあります。

健康保険の種類で手続きが異なる

離婚後に就職して勤務先の健康保険に加入するか、国民健康保険に加入するかで手続きは異なります。

就職する場合

離婚後に正社員・アルバイト・パートとして働く場合は、新しい勤務先を通じて健康保険の加入手続きを行います。社会保険に加入できれば、子どもを自分の扶養に入れることも可能です。

ただし、アルバイトやパートの場合は、週の労働時間や月収などの条件を満たさなければ加入できないことがあります。また、勤務先が社会保険に対応していない場合もあります。

就職しない・社会保険に加入できない場合

就職しない場合や社会保険に加入できない場合、自営業・フリーランスとして働く場合は、市区町村役場で国民健康保険の加入手続きを行います。

手続きは、健康保険の資格を失った日から原則14日以内に行いましょう。

健康保険の切り替え手続き中に病院にかかった場合は?

健康保険の切り替え手続き中でも、マイナンバーカードがあればマイナ保険証として医療機関を受診できます。ただし、手続き直後はシステムへの反映が完了しておらず、すぐに利用できない場合もあります。

マイナンバーカードがない場合は、従来の保険証に代わる資格確認書を利用しますが、加入手続きから手元に届くまで通常1〜2週間程度かかります。

その間に受診が必要な場合は、いったん医療費を全額自己負担し、後日、加入先の保険者に請求(療養費の支給申請)することで、自己負担分を除いた金額の払い戻しを受けることができます。

離婚後に国民健康保険へ切り替える注意点

国民健康保険への加入は離婚後14日以内

国民健康保険への加入届は、資格を失った日(離婚翌日)から14日以内に市区町村へ提出する必要があります(国民健康保険法施行規則3条)。

お住まいの市区町村の担当窓口に必要書類を持参し、加入申請を行います。手続きに必要な書類は主に以下のとおりです。

  • 資格喪失証明書
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • マイナンバーが確認できる書類
  • 印鑑(自治体によっては不要)

マイナンバーカードをお持ちの場合は、1枚で本人確認とマイナンバーの確認を兼ねられます。

資格喪失証明書が手元にない場合

国民健康保険の加入手続きでは、資格喪失証明書がなくても、市区町村によっては離婚届の受理証明書や戸籍謄本など別の書類で代替できる場合があります。

書類だけで即座に代替できるとは限らないため、まずは窓口で事情を説明し、相談してみましょう。市区町村から元配偶者やその勤務先へ問い合わせを行ってくれる場合もあります。

加入手続きが14日を過ぎたらどうなる?

国民健康保険は、14日を過ぎて加入申請した場合でも、資格喪失日(離婚翌日)に遡って加入したものとして扱われます。これを「遡及加入」といいます。

手続きが遅れた分の保険料も、さかのぼって支払う必要があります。手続きが遅れれば遅れるほどまとめて支払う保険料が増えるため、気づいた時点でできるだけ早く手続きを行うことが重要です。

期限超過後の手続きは、通常の国民健康保険加入と同じ流れです。資格喪失証明書などの必要書類を持参して市区町村の窓口に申し出てください。「離婚後に加入の手続きが遅れた」と説明すれば、担当者が案内してくれます。

期限超過中に医療費を支払っていた場合

保険証がない状態で受診し、全額自己負担で払っていた場合は、遡及加入の手続き完了後に保険給付分の払い戻し(療養費の支給申請)を請求できます。受診時の領収書は捨てずに保管しておくことが大切です。

ただし、災害などやむを得ない事情があると自治体に認められた場合を除き、遡及加入の手続きをした日からしか保険給付(医療費の払い戻しを含む)を受けられない可能性があります。

国民健康保険の加入手続き期限

保険料は遡って請求される一方、その期間の医療費給付は受けられないケースがある点には注意が必要です。

療養費の支給申請には原則2年の時効があります。起算点は原則として療養費を支払った日の翌日ですが、制度・類型によって取り扱いが異なるため、詳細は窓口で確認してください。

子どもの健康保険は離婚後どうなる?

子どもを連れて離婚する場合、子どもの健康保険には以下の選択肢があります。

  1. 自分の社会保険(勤務先の健康保険)の扶養に入れる
  2. 自分と同じく国民健康保険に入れる
  3. 元配偶者の社会保険の扶養に入れたままにする

離婚後は、養育する親と同じ健康保険に子どもを入れるのが一般的です。

自分が国民健康保険に加入する場合、子どもも同じ国民健康保険に一緒に加入します。市区町村の窓口での手続きの際に、子どもも含めて申請できます。

子どもを元配偶者の社会保険の扶養に入れたままにすることも、条件によっては可能です。「主として生計を維持している」という要件を満たす必要があるため、勤務先や健康保険組合への確認が必要になります。

この場合、養育する親には子どもの保険料の負担がなく、元配偶者も扶養控除を受けられるというメリットがあります。

一方で、扶養を継続するには元配偶者が養育費を継続して支払うなど、実際に子どもを扶養している状況が必要です。また、保険証の更新や手続きのたびに元配偶者の勤務先を経由する必要が生じるなど、連絡を取り合う負担が発生する点を考慮しておきましょう。

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離婚後の健康保険で困ったときは弁護士に相談

離婚後の健康保険について、この記事の要点をまとめます。

  • 配偶者の扶養に入っていた方は離婚翌日から保険証が使えなくなる
  • 加入先の選択肢は主に「国民健康保険」「職場の健康保険」の2つ。
  • 国民健康保険への加入届は資格喪失日から14日以内が原則。
  • 手続きには資格喪失証明書(元配偶者の勤務先などから取得)が必要。
  • 14日を過ぎても手続きは可能。ただし保険料は遡って支払う必要がある。
  • 子どもは養育する親と同じ健康保険に入れるのが一般的。

健康保険は毎日の生活に直結する大切な制度です。離婚後の手続きは、できる限り早めに済ませることをおすすめします。

健康保険の切り替え手続き自体は市区町村や職場で対応できますが、離婚に関する問題は、健康保険以外にも財産分与・親権・養育費など多岐にわたります。

一人で抱え込まず、専門家に相談することで、手続きの見落としや損失を防ぐことができます。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了