協議離婚とは?弁護士に依頼する必要はある?

更新日:
協議離婚とは

協議離婚は、夫婦が互いに離婚に合意し、条件を話し合って決める離婚方法です。離婚を考えるときは、まず協議離婚を目指していくことになります。

協議離婚は裁判所を介さずに離婚する方法のため、手続きが簡易で費用も安く済みます。当事者のみでの話し合いだからこそのメリットもありますが、互いに法律知識のないままで協議をすると、後のトラブルのもとになってしまいます。もめごとを防ぐために、弁護士に相談することは有効です。

今回は、協議離婚の進め方や手続き、トラブルを防ぐ方法を解説します。

協議離婚とは?メリットと注意点

協議離婚とは?

協議離婚とは、夫婦が話し合って離婚やその条件を決める最も一般的な離婚の方法です。

離婚の方法には、ほかにも調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

厚生労働省の令和4年度「離婚に関する統計」によれば、離婚のおよそ90%は協議離婚によって行われています。

協議離婚の4つのメリット

協議離婚には、以下のようなメリットがあります。

Point

  • 手続きが簡単で費用が安く済む
  • 早く離婚できる
  • 自由に条件を決められる
  • 法定の離婚事由がなくても離婚できる

1.手続きが簡単で費用が安く済む

協議離婚をする場合、最低限必要な手続きは離婚届の提出です。離婚届自体に費用はかかりませんが、本籍地以外の役所に離婚届を提出するときには戸籍謄本が必要ですので、数百円の手数料がかかります。

そのほか、協議離婚で決まった事項を証明するために公証役場で「公正証書」を作る場合は、慰謝料や養育費の額に応じて数千~数万円の手数料がかかります。

2.早く離婚できる

協議離婚は、夫婦の合意さえ取れれば今日にでも離婚届を出すことができるため、すぐに離婚できる点がメリットです。

一方で、調停となると短ければ1か月、長ければ2年程度の時間がかかりますし、裁判に進んだ場合はさらに半年〜2年程度と、長い時間がかかります。

3.自由に条件を決められる

協議離婚の場合は、当事者同士の合意さえ取れれば柔軟に条件を設定できるのがメリットです。他方、裁判で家庭裁判所の判断を受ける場合は、法律や判例に基づいた条件が提示されます。

例えば、高い慰謝料を請求したとしても、相手が協議でそれを認めれば受け取ることができます。しかし裁判で争う場合には、個々の事情を考慮しながらも、ある程度は基準に基づいて額が決定されます。

4.法定の離婚事由がなくても離婚できる

調停や裁判で離婚を争う場合は、法定離婚事由といわれる次の5つの理由のうち、どれかが存在しなければ離婚が認められません。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • 婚姻を継続しがたい重大な事由

しかし、協議離婚の場合は、当事者が合意をすればどんな理由でも離婚することができます

協議離婚の注意点

早く離婚したい一心で十分に話し合わずに離婚届を出してしまうと、後のトラブルの元になってしまうため注意が必要です。

離婚の成立から一定期間が経過すると請求できなくなるお金もあるため、離婚前に話し合いをした方がよいでしょう。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

後悔しないためにも、互いが納得するまでしっかりと話し合うことが大切です。

協議離婚で弁護士に依頼する必要はある?

協議離婚には、当事者間で迅速かつ自由な話し合いができるというメリットがありますが、その分トラブルのリスクも存在します。協議離婚で弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

代理で交渉や手続きをしてくれる!

弁護士は依頼者の代理人となって相手との交渉や連絡を行うことができます

特に、互いに感情的になってしまい話し合いが長期化しそうな場合などには、弁護士に間に入ってもらうメリットは大きいです。また、離婚調停・裁判に進んだ場合にも、弁護士が手続きを代わりに行ってくれるため、ご自身の負担を少なくすることができます。

取り決めの内容を考えてくれる!

離婚の際に決めなければならない事項は多岐にわたり、取り決めに漏れがあれば後々トラブルになる可能性もあります。また、それらの中に自分に不利な条件が含まれていても、自分で気づくのはなかなか難しいことです。

弁護士に依頼して、取り決めの内容を一緒に考えてもらうことをおすすめします。

相手と直接会わずに離婚できる!

弁護士は、依頼者の代理人として交渉の場に出ていくことが可能です。相手とのやりとりも間に入って行ってくれますので、相手と顔を合わせず、直接連絡も取らずに協議離婚を進めることができます

特にDVやストーキングが原因で離婚を希望しているような場合には、弁護士に交渉をお願いすると安心です。

有効な離婚協議書を作成できる!

離婚協議書を作っても、内容が法律に触れている場合は無効になってしまいます。しかし、どんな内容が無効になるかは知らない方が大多数でしょう。有効な離婚協議書を作成するために、法律の専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

また、離婚協議書を公正証書として残す場合も、弁護士のチェックを受けておくと安心です。

協議離婚の流れと手続き

協議離婚の流れは、次のとおりです。

  1. 離婚を切り出す
  2. 離婚とその条件について合意する
  3. 離婚協議書を作成する
  4. 離婚届を提出する

1.離婚を切り出す前にも準備が必要!

離婚をしたいと思ったときに、何の準備もせずに相手に離婚したい旨を伝えることはおすすめしません

特に、相手の不貞行為やDVなどの行為が原因で離婚を考えている場合は、のちの交渉のためにも離婚を切り出す前に不貞行為やDVの証拠を残しておきましょう。離婚を切り出した後に証拠を集めようとしても、相手が証拠を隠してしまうおそれがあります。

また、あらかじめ夫婦の財産を確認しておくことも重要です。離婚の財産分与で取られる財産を少なくするために、相手が財産を隠してしまうことがあります。例えば、貯金を隠し口座に入金したり、黙って不動産を購入したりといった手段があります。こういった隠し財産の証拠も、離婚を切り出す前に確保しておきたいところです。

2.協議離婚で決めるべきこと

離婚の際には、以下のような事項について夫婦で話し合って決める必要があります。

  • 離婚の意思
  • 親権者
  • 養育費
  • 面会交流
  • 慰謝料
  • 財産分与
  • 年金分割
  • 婚姻費用

関連記事

離婚の慰謝料がもらえるのはどんな時?相場はいくら? 

離婚時の財産分与とは?対象となる財産と分け方を解説!

3.離婚協議書は公正証書にするのがおすすめ!

離婚の条件が決まったら、離婚届を出す前に離婚協議書を作成することをおすすめします。離婚協議書は夫婦間で自由に作成することができますが、それだけでは公的書面としての効力は持ちません。

公証役場にて強制執行を認める旨を記載した「公正証書」を作成し、いわば公的なお墨付きを得ることで、慰謝料や財産分与がきちんと支払われなかった場合に強制執行ができるようになります。

公正証書を作成するには数千~数万円程度の手数料がかかりますが、養育費や財産分与、慰謝料などの支払いを取り決める場合には、作成しておくと安心です。

関連記事

離婚協議書の書き方|作成時の注意点や効力を解説

4.離婚届を提出すれば離婚が成立

離婚届を入手するには、役所で受け取る方法とインターネットでダウンロードする方法の2通りがあります。なお、協議離婚を届け出る場合は、2名の証人に署名・捺印してもらう必要があります。証人は、成人であれば誰でも問題ありません。

離婚届を提出する方法は、直接窓口に提出しに行く方法と、役所に郵送する方法の2通りです。離婚成立日は、役所に離婚届を提出した日、郵送の場合は役所に届いた日となります。

離婚届を提出しに行く際は、提出する方の本人確認書類と印鑑を、本籍地以外で離婚届を出す場合は戸籍謄本も持っていきましょう。

離婚が協議で決まらなかったらどうする?

離婚が協議で決まらなかった場合には、以下のような手段が考えられます。

  • 離婚調停を申し立てる
  • 別居する
  • 婚姻費用を請求する
  • 弁護士に交渉を依頼する

離婚調停を申し立てる

相手がどうしても離婚に応じない場合や、離婚の条件が決まらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。

離婚調停とは、裁判所の職員である調停委員が双方から話を聞き、意見を調整して合意を目指す手続きです。

調停でも離婚に応じない場合は裁判で争うことになります。なお、早く離婚をしたい場合、調停を申し立てずに裁判をしたいと思う方がいるかもしれませんが、離婚調停を経なくては離婚の裁判は行うことができません。

関連記事

離婚調停の流れは?有利に進める方法を解説!

別居する

相手が離婚を頑なに拒んでいる場合は、別居をすることも離婚を進めるのに有効な手段です。離婚に対する本気度を示せるだけでなく、長期間別居していることを離婚の理由として裁判を起こすことができるからです。

裁判で離婚をするには、法定離婚事由が必要です。法定離婚事由がなければ裁判を起こしても離婚は認められません。そして、長期間別居をしているという事実は法定離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたり、裁判で離婚が認められる可能性があります。

ただし、別居をする際に黙って出ていくことは避けましょう。正当な理由なく突然家出をして帰ってこないというのは「悪意の遺棄」にあたり、むしろ相手から離婚慰謝料を請求されてしまう原因になります。ですので、あらかじめ別居をしたい旨を伝えておくことが重要です。

婚姻費用を請求する

相手の収入で生計を立てていた場合は、相手に対して別居中の婚姻費用(生活費)を請求することができます。たとえ別居をしていても、夫婦である以上は互いを助け合う義務があるからです。婚姻費用を請求すれば、相手は負担に感じて離婚に応じてくれるかもしれません。

婚姻費用は、基本的には請求した時点より前に遡って請求することができないため、請求したい場合は早めに動くことが重要です。

関連記事

離婚前の婚姻費用とは|別居中の生活費、相場はいくら?

弁護士に交渉を依頼する

離婚の話し合いに応じてくれない配偶者も、弁護士から連絡が来れば話を聞いてくれるかもしれません。スムーズに協議離婚を進めたい場合はまずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

全国/24時間/無料

無料相談窓口のご案内