離婚届の証人は誰にする?証人がいないときは代行や代筆でもいい?
協議離婚の離婚届には、2名の証人が署名する必要があります。
証人の署名は本人の自筆でなければならず、離婚の当事者が代筆したり、勝手に名前を書くことはできません。
離婚届の証人には、18歳以上の成人であれば誰でもなれますが、周りの人には頼みづらいこともあるでしょう。そういった時は、どのように証人を見つければよいのでしょうか。
この記事では、証人になれる人の条件や、証人を頼める人がいない時の対処法、離婚届の証人欄の書き方を解説します。
目次
離婚届の証人になれるのは誰?必要ない場合とは?
協議離婚の離婚届には証人が必要!
民法739条2項および765条1項の規定により、協議離婚の届出には成年の証人2人以上の署名が必要であるとされています。証人の署名がなければ離婚届は受理されません。
離婚届に証人が必要な理由は、夫婦の双方に離婚の意思があることを確認し、当事者の意思がないのに離婚が成立してしまうのを防ぐためです。
離婚届の証人は18歳以上なら誰でもいい!
離婚届の証人は、成年であれば誰でもなることができます。
令和4年4月1日以降、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、離婚届の証人になれるのは18歳以上の人ということになります。
離婚の当事者と証人との関係性は問われないため、どちらか一方の両親や、子どもなどでも構いません。また、証人同士が夫婦であっても問題ありません。外国籍の人でも証人になることができます。
実際には、親や友達、同僚などに証人を頼む人が多いようです。
離婚届の証人がいらない場合もある
離婚届に証人が必要ないケースもあります。
離婚の方法には以下の6つがあります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚(判決)
- 和解離婚
- 認諾離婚
このうち、離婚届の証人が必要なのは協議離婚のみです。
「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」「和解離婚」「認諾離婚」の場合は、離婚届の証人は不要です。
これら5つの離婚方法は、裁判所が介在する手続きであるため、わざわざ証人を用意して離婚の意思を証明する必要がないのです。
調停や裁判の終了時には、調停調書や判決書、和解調書の謄本など、離婚が確定していることを証明する文書が作成されますので、これを離婚届と一緒に提出すれば足ります。
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離婚届の証人は誰に頼む?
- 親
- 成人した子ども
- 兄弟姉妹
- その他の親族
- 友人・知人
- 同僚・上司 etc.
離婚届の証人は、親や友達、同僚などに頼む方が多いですが、離婚したことを知られたくない、周りの人には頼みづらいなどの理由で、証人が決められない方もいるでしょう。
周りに証人を頼める人がいなくても、絶対に署名を自分で書いてはいけません。
離婚届の証人欄を自分で書くことのデメリットについては、この記事の中で詳しく解説します。
代わりに、以下に挙げる2つの方法で証人を用意することができるほか、離婚調停など裁判所を介した離婚方法を利用すれば、証人を用意せずに離婚届を提出することができます。
弁護士に離婚届の証人をお願いする
離婚を弁護士に依頼している方は、弁護士に頼めば証人になってくれる可能性が高いです。証人を頼んでも、追加の弁護士費用はかからないことが多いようです。
証人は2名必要ですので、弁護士の他にその法律事務所の事務員などが証人になってくれることもあるでしょう。
このように、既に弁護士に依頼している方であれば、追加費用なしに2名の証人を用意できる可能性が高いといえます。
離婚届の証人代行サービスを利用する
離婚届の証人を頼める人がいない場合は、行政書士などが有償で提供している証人代行サービスを利用することもできます。
離婚届の証人代行サービスとは、行政書士などの専門家や業者の人が離婚届の証人となり、必要事項を記入してくれるというものです。
インターネットで「離婚届 証人 代行」などで検索すれば、証人代行サービスを行っている事業者を見つけることができます。
こういった代行サービスを利用する場合は、事前に申し込みをした上で、事務所に離婚届を持っていくか、郵送で離婚届のやりとりを行うのが一般的です。即日対応が可能な代行業者も存在するため、親や友人のところへ離婚届を持って行って書いてもらうよりも早く離婚届を提出できる場合もあります。
周りの人に知られずに離婚を成立させるためには、こういった証人代行サービスが役立ちますが、ある程度の費用がかかってしまう点はデメリットです。
証人代行サービスの費用は業者によって大きく異なり、2名分で3,000円程度のところもあれば、1万円以上かかるところもあります。
資格のない人や業者が行っている証人代行サービスは、比較的安価ではありますが、必ずしも安全とは言い切れないため注意が必要です。
離婚届の証人欄の書き方
離婚届の証人欄には何を書く?
証人欄は、離婚届の右上にあります。
証人欄に記入する事項は以下の4つです。
- 署名(※押印は任意)
- 生年月日
- 住所
- 本籍
筆記用具は、黒のインクペンまたはボールペンを使用します。鉛筆や、熱で消えるペンなどは使用できません。
両親や知り合い夫婦などに証人を頼んだ場合は、2人の住所や本籍が同じになることがありますが、問題ありません。
本籍の欄に「同上」と書いても受理されることが多いようですが、万が一受理されなかった場合は、本人のところへ持って行って書き直してもらうことになるため、念のため本籍を省略しないようにお願いしておいた方がよいでしょう。
証人の住所や本籍が間違っていたらどうなる?
役所で証人の住所や本籍を詳しく調べることはあまりなく、住所や本籍が間違っていても受理されることが多いようです。
ただし、証人が実在する人物であるかは確認されますので、架空の人物をでっちあげて証人にすることはできません。
多少間違っていても受理されるとはいえ、本籍が分からないからといって空欄のまま提出することはできません。証人をお願いする相手には、事前に本籍を記入する必要がある旨を伝えて、戸籍謄本を取り寄せるなどして調べてもらいましょう。
証人欄を書き間違えたらどうする?
離婚届の証人欄を書き間違えてしまった場合、訂正が必要な箇所を二重線で消し、余白部分に書き直します。そして、訂正印または署名を入れます。
訂正するのに修正ペンや修正テープを使用することはできません。
あらかじめ欄外に捨て印または捨て署名を入れておくと、軽微な誤りであれば役所の窓口で訂正してもらえることがあるので、念のため捨て印か捨て署名をお願いしておいてもよいでしょう。
離婚届の証人欄に印鑑はいらない!
2021年9月1日から、離婚届への本人や証人の押印が不要になりました。とはいえ、任意で押印をすることは可能ですし、離婚届には慣習として押印欄が残されています。
押印したい場合は、認印でも構いませんが、シャチハタなどのスタンプ印は使用できません。また、証人同士が同じ姓だとしても、同じ印鑑を押すことはできません。
証人を頼む際は、印鑑についても伝えておきましょう。
離婚届の証人の署名は代筆不可!偽造はバレる?
離婚届の証人欄は自分で書いていい?
離婚届の証人欄は、絶対に自分で書いてはいけません。
離婚届の証人の署名は、本人の自筆である必要があります。本人が文字を書くのが難しかったり、遠方だったりしても、本人以外が代筆することはできません。
離婚届を提出する際に、窓口の職員が証人の本人確認などを行うことはないため、証人の署名を代筆してもバレない可能性はあります。しかし、筆跡などから署名の代筆が発覚する可能性も否定できません。
証人の署名を自分で書くのは犯罪?
離婚届の署名を偽造して提出する行為は、有印私文書偽造罪・同行使罪という犯罪行為にあたります。
また、偽造した離婚届が受理されると、公正証書原本不実記載等罪が成立します。
証人の署名を偽造した離婚届は無効?
証人の署名や相手方の署名を偽造して勝手に離婚届を提出した場合、離婚そのものが無効となる可能性があります。
離婚届が役所で受理されてしまえば、一旦は離婚が成立します。
しかし、離婚届が本人の意思に反して提出されたものである場合、相手方からの訴えが認められれば、離婚が無効になってしまいます。
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離婚届を偽造したら慰謝料が発生する?
配偶者が離婚に同意していないにも関わらず、相手方の署名や証人の署名を勝手に書いて離婚届を提出すると、相手方から慰謝料を請求される可能性があります。
このような不利益があるため、証人の署名を自分で書くことは絶対にやめましょう。
離婚届の証人を頼まれたら?
離婚届の証人になるリスクはない
親族や知人から頼まれて離婚届の証人になっても、大きなリスクやデメリットはありません。
とはいえ、氏名・住所や本籍を記入しますので、個人情報の取扱いには十分に注意してもらいましょう。
離婚届の証人になるのは縁起が悪い、世間体が悪いと感じるかもしれませんが、当事者が言わない限りは証人になったと周りに知られることはないため、心配する必要はありません。
離婚届の証人は保証人とは違う
証人と言われると、借金の保証人のように何らかの責任を負わされるのではないかと思われるかもしれませんが、離婚届の証人は保証人とは異なります。
したがって、不当な目的がない限りは、離婚届の証人になっても何らの責任を負うことはありません。
ただし、証人は夫婦に離婚の意思があることを証明するという役割を持ちますので、夫婦が離婚に合意していないことを知っていながら、離婚届の偽造に加担したような場合は、有印私文書偽造罪・同行使罪などの犯罪の共犯にあたり、罰せられてしまう可能性があります。
まとめ|離婚届を書く前にやること
離婚届の証人を見つける
離婚届を書く前に、証人となってくれる人を見つけておきましょう。
離婚届の証人は、自筆の署名が必要なだけでなく、生年月日、住所、本籍を記入しなければなりません。自身の本籍地を把握していない人も多いため、事前に本籍地の確認をお願いしておいた方がスムーズに進むでしょう。
離婚条件を決める
離婚することや離婚条件についてよく話し合い、取り決めを行ってから離婚届にサインすることをおすすめします。
離婚を急ぐあまり、条件について十分に検討しないまま離婚届を書いてしまうと、不利な条件になっていることや、他に受け取れるお金があることに気づけないおそれがあります。
離婚前に決めること
どうしても相手が離婚に同意してくれない、離婚条件の折り合いがつかないという方は、勝手に離婚届を出してしまうのではなく、弁護士に交渉を任せることもご検討ください。
アトム法律事務所では、初回無料の弁護士相談を行っています。
離婚に関するお悩みは、アトム法律事務所の弁護士に是非ご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
弁護士や行政書士は守秘義務を負っており、情報が漏れてしまう心配がないため安心です。証人代行サービスを利用する際は、信頼できる依頼先を選びましょう。