モラハラ夫と離婚したいと思ったら?必要な準備や心構えを解説

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モラハラ夫と離婚

モラハラとは、モラルハラスメントという言葉を略したもので、暴力によってではなく、言葉や態度によって相手を傷つける行為のことを指します。

令和4年度の司法統計では、妻からの離婚調停の申し立て理由の第3位が「精神的に虐待する」となっています。このように、多くの女性が夫からのモラハラに苦しみ、離婚を決意しています。

この記事では、モラハラ夫と離婚したいと考えている方向けに、モラハラが理由の離婚は認められるのか、モラハラが理由で離婚するにはどういった準備が必要なのかを解説します。

モラハラが理由で離婚できる?

モラハラとは?

モラハラとは、言葉や態度によって相手を傷つける行為のことを指し、職場や家庭で起こります。夫婦間でのモラハラは、身体的DV(家庭内暴力)に対して精神的DVと呼ばれることもあります。

このような行為が、モラハラの代表例です。

  • 人前で妻の性格や容姿などを否定する
  • 妻の収入を指摘して金銭的に侮辱する
  • 妻の行動を執拗に監視・制限する
  • 妻の実家や両親を誹謗中傷する
  • 不倫をほのめかす
  • 妻を無視する
  • 妻の過去の失敗を度々言及する
  • 気分が悪い時に妻へ八つ当たりする
  • 妻が意見を主張すると大声で怒鳴る
岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

直接的な暴力がないため被害が顕在化しづらいのがモラハラの特徴ですが、被害者の心に大きな傷を負わせる行為であり、深刻な問題です。

モラハラで協議離婚はできる!

離婚の方法には、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります。それぞれで、離婚ができる条件が異なります。

協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。

協議離婚では、当事者が合意さえすればどんな理由でも離婚をすることができます。したがって、相手と合意できればモラハラが理由で協議離婚ができます

モラハラで調停離婚はできる!

協議で離婚の合意ができなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。

離婚調停とは、家庭裁判所の調停委員会が双方から別々に話を聞き、中立な立場から意見を調整して合意を目指す離婚の方法です。双方が合意に至れば調停は成立し、離婚をするかしないかが決定します。

離婚調停では、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができます

したがって、モラハラが理由で調停離婚することは可能です。

モラハラで裁判離婚はできる!

離婚調停でも合意に至れなかった場合は、家庭裁判所に離婚裁判を申し立てることができます。裁判では、裁判官が「2人を離婚させるべきか否か」を判断します。

裁判で判決が下されれば、当事者が納得しなくとも離婚の成否が決まります。

裁判で離婚が認められるためには、厳しい基準をクリアする必要があります。その基準が法定離婚事由です。

法定離婚事由

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復の見込みのない強度の精神病
  5. 婚姻を継続しがたい重大な事由

モラハラは、婚姻を継続し難い重大な事由にあたり、離婚が認められる可能性があります。

婚姻を継続し難い重大な事由とは、夫婦関係が破綻しており、修復することが不可能である状態のことをいいます。

離婚裁判で争点になるのは、モラハラの事実を立証できるかという点です。

何の証拠もなく「夫からモラハラを受けていたんです」と主張しても、認められる可能性は低いでしょう。したがって、モラハラで裁判離婚をするためには、モラハラを受けた証拠を用意する必要があります。

モラハラで離婚するには別居も有効

離婚裁判でモラハラを立証するのが難しければ、別居期間を作ることもひとつの手段になります。夫婦がある程度の長期間別居をしていると、婚姻を継続し難い重大な事由での離婚が認められる可能性が高いからです。

離婚が認められるための具体的な別居期間に明確な基準はありませんが、3〜5年程度の別居がひとつの目安と考えられています。

モラハラは悪意の遺棄にあたる可能性も

モラハラと思われる行為でも、法定離婚事由のうちの悪意の遺棄にあたり裁判離婚が認められる場合があります。例えば、以下のような行為があれば、悪意の遺棄を理由に離婚できる可能性があります。

  • 理由を告げずに一方的に家出する
  • 生活費を入れない
  • 妻を家から追い出して帰宅を許さない
岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

あなたの受けている行為が悪意の遺棄にあたるか、確認してみてください。

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モラハラが理由で慰謝料を請求できる?

モラハラを証明できれば、慰謝料を請求することができます。モラハラに対する慰謝料の相場は、50万~300万円程度と言われています。

慰謝料の額に影響する要素として、被害者がどの程度の精神的苦痛を受けたか、相手方がどのような行為をどのくらい行ったか、反省や謝罪があるかなどが考慮されます。

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モラハラは離婚条件に影響する?

モラハラの有無や程度は、離婚条件に影響を与える場合があります。

親権や面会交流で争いになった場合、モラハラの事実は相手にとって不利に働きます。裁判所が、モラハラ夫を親権者として相応しくないと判断したり、子どもに悪影響を及ぼすとして面会交流を認めない可能性があります。

一方で、財産分与や養育費、婚姻費用は、互いの財産や収入をもとに計算されるため、モラハラ自体がこれらの金額に影響を与える可能性は低いと言えます。

モラハラ夫と離婚するための準備

モラハラで離婚するために必要な準備

証拠を集める

モラハラで離婚をするためには、証拠が非常に重要です。離婚を切り出す前に、証拠を集めておきましょう

モラハラに関する証拠

  • 録音、録画
  • 日記、メモ
  • うつ病などの診断書
  • 市役所、警察、配偶者暴力相談支援センター等への相談記録

別居する

別居することは、夫のモラハラから心身を守るために重要です。また、夫と離れることで、冷静に離婚について考えることができるようになります。

さらに、別居期間を作ることで裁判で離婚が認められやすくなるため、確実に離婚を成立させるために有効です。

なお、別居を開始する際は、置き手紙を残しておくことをおすすめします。相手が警察に捜索願を出してしまったり、知り合いに手あたり次第連絡して迷惑を掛けてしまうのを防ぐためです。

周りに相談する

モラハラ夫は外面がよく、周囲にはいい夫だと思われていることが多いです。そういった状況で離婚しようとすると、周りの人が夫の味方についてしまう可能性があります。

自分の両親や義両親、友人、同僚など周りの人にモラハラの被害について相談し、味方になってもらえれば、話し合いが有利に運ぶ可能性が高まります。

モラハラ夫との離婚を成功させるための心構え

本気で離婚したいということを示す

モラハラ夫は、相手を下に見ていることが多いため、別れたいと伝えても取り合ってくれない可能性があります。本気で離婚したいという強い意思を示すことが重要です。

離婚を切り出す際は、「別れる」などのあいまいな表現ではなく「離婚」という言葉を使って、はっきりと離婚の決意を伝えましょう。

長期戦になることを覚悟する

モラハラ夫は、簡単には離婚に応じない可能性が高いです。話し合いで離婚の合意ができなかった場合は、離婚調停を起こすことになりますが、調停の終了までは多くの場合半年程度、長ければ2年以上かかることもあります。

裁判になった場合はそれに加えて1年以上かかることが多いため、長期戦になることを覚悟しておきましょう。

なるべく裁判に持ち込まない

モラハラを理由に裁判離婚をするのは簡単ではありません。証拠を集めて、モラハラを立証する必要があるからです。

裁判に持ち込むよりも、話し合いや調停の方が、離婚できる可能性は高いと言えます。

モラハラ離婚の難しさ

モラハラは立証するのが難しい

モラハラ離婚の最大の争点は、モラハラを立証できるかです。

協議離婚を目指す場合は、必ずしも証拠が必要ではありません。しかし、裁判で離婚が認められるには、裁判の中で証拠を提出して、モラハラの存在を主張立証しなければなりません

また、離婚調停でも、自分の主張を裏付ける証拠があった方が調停委員会の納得を得やすくなります。調停委員会の理解を得れば、自分の希望する離婚条件で離婚できる可能性が高くなります。

このような理由で、モラハラを立証できるかどうかが非常に重要なポイントになります。

しかし、モラハラは、DVや不倫に比べると明確な証拠が残りづらいため、立証が難しい行為です。

モラハラ夫が離婚に応じない

モラハラをするような夫は、簡単には離婚に応じない可能性が高いです。

モラハラ夫の多くは、以下のような特徴を持っています。

モラハラ夫の特徴

  • 自分の行為がモラハラであるという自覚がない
  • 自分が被害者だと思っている
  • 相手が悪いから、教育の為にやっている

このように思い込んでいる相手との離婚の話し合いは、なかなか進まないどころか、まったく話し合いにならない可能性があります。

協議離婚や調停離婚の場合、双方の合意がなければ離婚が成立しません。そのため、モラハラ夫が離婚に応じない場合は、裁判離婚を検討することになります。

モラハラ被害者が離婚を決断できない

協議離婚や調停離婚の場合、被害者が離婚を決断し、離婚に必要な手続きを進める必要があります。しかし、被害者がモラハラから抜け出せない状態では、離婚を決断するのが難しいというケースも少なくありません。

モラハラ夫とモラハラを受けている妻は、共依存という状態に陥っていることがあります。共依存の状態にある妻は、自分がダメだから叱られている、夫から離れたら生きていけないと感じてしまいますが、それはモラハラ夫によって植え付けられた価値観です。

また、モラハラのサイクルの中には、ハネムーン期といって、急に相手が優しくなったり、モラハラを謝罪してくる時期があると言われています。ハネムーン期が終わると、ストレスを蓄積させる蓄積期に入り、ストレスの発散をする爆発期へと進みます。

ハネムーン期は、モラハラ夫から抜け出せない理由のひとつです。被害者は、モラハラが治ったと勘違いしたり、自分は本当は愛されていると感じてしまい、離婚に踏み切れなくなってしまいます。

モラハラは離婚後にトラブルになりやすい

モラハラ夫との離婚は、その後トラブルになりやすいという問題があります。

離婚後も元夫からしつこく連絡が来て、復縁を迫られるケースが少なくありません。さらに、SNSでの誹謗中傷やストーカー行為のような嫌がらせへと発展することもあります。

離婚後のモラハラ夫が、「俺にはお前しかいない」「お前を一番愛しているのは俺だ」などとポエムのようなメールを送ってくることがあります。こういった行動は、ロミオとジュリエットの窓辺で愛を語るシーンになぞらえて、「ロミオ化」「ロミオメール」などと呼ばれています。

こういったメールに気持ちが揺らいで復縁してしまうと、再びモラハラのサイクルに取り込まれてしまいます。

モラハラ離婚は弁護士に相談!

モラハラ夫との交渉は非常に難航することが予想されます。また、モラハラ夫は、話し合いの中で相手を傷つける行動を取る可能性が高いため、第三者を挟んでの話し合いが望ましいです。

弁護士は、依頼者の代理人となって相手方との交渉をすることができるため、話し合いの場に同席してもらったり、代理で出席してもらうことができます。したがって、相手と顔を合わせずに離婚の話し合いを進めることが可能になります。

モラハラで離婚を希望する場合は、早い段階で弁護士を入れて話し合いを始めることをおすすめします。

モラハラ離婚の弁護士費用の相場は以下のようになっています。

弁護士費用相場
協議離婚40万~90万円
調停離婚50万~110万円
裁判離婚60万~120万円

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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