別居何年で離婚できる?離婚成立に必要な別居期間は3年以上?1年未満は?

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  • 離婚成立に必要な別居期間は1年?2年?3年?
  • 別居半年なら離婚できる可能性は高い?
  • 裁判離婚で別居期間はどのくらい重要?

離婚を切り出しても相手が離婚に応じないケースや、離婚条件の折り合いがつかず、なかなか話し合いによる離婚ができないケースは少なくありません。

そのような場合に、裁判離婚するために重要になるのが別居期間です。

同居期間に比べて別居期間のほうが長ければ、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断してもらえて、裁判離婚ができる可能性があります。

ただし、裁判離婚のために必要な別居期間が何年なのかは、法律には書かれていません。

一般的にはおおよそ3年~5年程度の別居期間があれば、裁判離婚できる可能性があるといわれていますが、不貞行為などの法定離婚事由がある場合は、別居期間にかかわらず離婚できる可能性はあるでしょう。

この記事では、実例や裁判の傾向などにもとづいて、裁判離婚に必要な別居期間は何年なのかわかりやすく解説します。

別居する際の注意点もご紹介していますので、現在、離婚をご検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。

離婚までの別居期間は1年が多い?

別居期間1年未満での離婚が最も多い!

まず始めに、別居開始してから離婚に至るまで何年かかったか調査した統計をご紹介します。

下の円グラフをご覧ください。

別居後に離婚した夫婦の別居期間で最も多いのは1年未満で、82.8%を占めています。

出典:厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計の概況」

次に離婚の方法による別居期間の違いも確認してみましょう。

協議離婚の別居期間は何年?(統計あり)

協議離婚した夫婦の別居期間で最も多いのも1年未満で、86.2%に上ります。

出典:厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計の概況」

こちらの数字から、協議離婚の場合、別居を開始すると多くの夫婦がそれほど時間をかけずに離婚の合意に至っていることがわかります。

裁判離婚の別居期間は何年?(統計あり)

一方、裁判離婚した夫婦の別居期間は、実は最多が1年未満56.8%、次に多いのが1年以上5年未満34.1%となっています。

出典:厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計の概況」

※ここで言う「裁判離婚」には、調停離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚及び判決離婚の5種が含まれます。

裁判離婚(離婚調停や離婚訴訟など)の場合、別居期間が1年以上となるケースが約3倍に増えます。

つまり、裁判離婚に発展するほど話し合いがこじれた場合、離婚成立までにかかる別居期間は長期化することが読み取れます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

令和5年度の離婚の平均審理期間は、15.3か月という調査結果もあります(裁判所「人事訴訟事件の概況」)。裁判所の審理期間を考えると、裁判離婚のほうが、離婚成立までの別居期間が長期化しやすいといえます。

また、別居による婚姻関係破綻を理由とする離婚の場合、ある程度、長期の別居期間をもうけることが必要となります。
これも、裁判離婚成立までの別居期間が長引く要因のひとつでしょう。

別居から何年で裁判離婚できる?

こちらの項目では、裁判離婚に必要な別居期間に関する実務や判例の考え方について、詳しく解説します。

裁判離婚に必要な別居期間は3年~5年?

協議離婚や調停離婚で合意に至らなかった場合、離婚訴訟を提起して、裁判離婚を目指すことになります。

離婚訴訟で離婚が認められるためには、法定離婚事由が存在しなければなりません。

法定離婚事由とは、次の1~5までに該当する事由です(民法770条1項)。

法定離婚事由

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復見込みのない強度の精神病
  5. 婚姻を継続し難い重大な事由

法定離婚事由について、詳しくは「離婚できる理由とは?|5つの法定離婚事由を解説」という関連記事をご覧ください。

ここでは、別居と法定離婚事由の関係について、話を進めましょう。

実務上、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)という法定離婚事由に当てはまるケースが最も多いといわれています。

そして、長期間の別居期間があることも、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するケースがあります。

「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められる別居期間は、夫婦の有責性が同程度の場合、一般的に3〜5年程度が目安となります。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

なお「有責性」とは、婚姻関係を破綻させた責任を意味します。

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離婚できる理由とは?|5つの法定離婚事由を解説

裁判離婚では別居期間以外も考慮される?

別居期間の長さのみで「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められるわけではありません。

過去の判例や裁判例は、同居期間と対比した場合の別居期間の長さ未成熟子の存否別居後の婚姻費用の分担状況などを総合的に考慮して「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を判断しています。

判断要素の例

  • 同居期間と対比した場合の別居期間の長さ
  • 未成熟子の存否
  • 別居後の婚姻費用の分担状況

例えば、東京高判平28.5.25は、同居期間約10年に対し、別居期間は4年10か月余りの事案でしたが、離婚が認められました。

この事案では、妻が強い離婚の意思を有している一方で、夫は関係修復に向けた具体的な行動をしておらず、しかも婚姻費用の支払も十分にしていないという事情も考慮され、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されました。

別居期間が短くても離婚できるケース

以下の事情があると、離婚が認められる別居期間が短くなる傾向があります。

必要な別居期間が短くなる事情

  • 婚姻期間が短い
  • 離婚を請求される配偶者の有責性が比較的高い
  • 未成熟子がいない など
岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

相手方がDVをしている、不貞行為におよんでいるなど、明らかに有責性が高い場合もあるでしょう。

そのような相手方が有責配偶者にあたる場合は、そもそも別居期間がなくても離婚が認められる可能性が高いです。

別居期間が長くないと離婚できないケース

以下の事情があると、離婚が認められる別居期間が長くなる傾向があります。

必要な別居期間が長くなる事情

  • 婚姻期間が長い
  • 離婚を請求する配偶者の有責性が比較的高い
  • 未成熟子がいる など

別居期間2年で離婚不成立になった裁判

別居後約2年を経過している夫婦において、妻からの離婚請求が認められなかった事案があります(東京高判平成25・4・25)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • 夫の女性問題、共働きの家事の負担、生活費の負担、将来設計や金銭感覚のずれ、暴行などの事情により、妻が離婚の意思を固めた
    しかし、表面的には穏やかな婚姻生活を継続していた
  • 離婚の申し出が唐突で、夫婦関係を改善する相応の努力を重ねたが問題が解消されず、別居に至った等の経緯はない
  • 離婚を強く望んでいるが、婚姻関係が深刻に破綻し、およそ回復の見込みがないとはいえない
    など
岡野タケシ弁護士
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夫婦の事情はそれぞれで、裁判所の判断もケースによって分かれます。

離婚成立を目指す場合は、まずは離婚をあつかう弁護士に、どのような対策が必要なのか相談してみるのもよいでしょう。

有責配偶者は別居何年で離婚できる?

ここでは、離婚請求する側の配偶者が破綻の主な責任をつくった場合、すなわち、有責配偶者に当たる場合に、裁判離婚に必要な別居期間はどの程度になるのかご説明します。

有責配偶者の離婚裁判とは?

有責配偶者とは、法定離婚事由(民法770条1項各号)にあたる行為をして、離婚の原因をつくった側の配偶者のことを指します。有責配偶者の典型例は、不貞行為(浮気、不倫)をした配偶者などです。

有責配偶者の例

  • 不倫した夫
  • 悪意の遺棄
    ・理由もなく、一方的に家出
    ・生活費・婚姻費用を入れない
  • DVやモラハラをする旦那 など

実務では、不貞相手と再婚するために離婚したいなどの理由から、有責配偶者から離婚裁判が提起されるケースも多いものです。

基本的には、有責配偶者からの離婚請求は認められません。

しかし、別居期間が長期間にわたり、婚姻関係が破綻していると評価された場合に、例外的に、有責配偶者からの離婚請求が通るケースもあります。

岡野タケシ弁護士
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簡単にお伝えすると、①長期間の別居期間、②夫婦間に未成熟の子どもがいないこと、③離婚請求された側が苛酷な状況におちいらないことの3つの要件が満たされた場合に、有責配偶者からの離婚請求が認められます。

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離婚するための別居期間は10年?

有責配偶者からの離婚請求の場合、別居期間が10年を超える場合は、長期間であると判断されやすく、離婚成立の可能性が高まります。

一方、別居期間が10年以下のケースでは、別居期間の長さだけでなく、双方の経済状況、別居後の婚姻費用の分担状況や、離婚後の他方配偶者の経済状況への配慮など、様々な事情を総合考慮して判断されます。

以下では、有責配偶者からの離婚請求が認められた事案と、認められなかった事案をそれぞれご紹介します。

別居期間6年で離婚成立となった事案

別居期間6年で有責配偶者である夫からの離婚請求が認められた事案があります(東京高判平14.6.26)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • もともと会話の少ない夫婦であり、妻が不貞を疑わせるような行動をしたことにより夫婦間の溝が大きく広がった
  • 妻が相当な収入を得ている
  • 夫が妻に対する離婚給付として、夫名義の自宅建物を分与し、住宅ローンの残りも完済するまで支払続ける意向を示している など

別居期間9年以上で離婚不成立の事案

こちらは、同居約14年、別居期間9年以上で有責配偶者である夫からの離婚請求が認められなかった事案です(東京高判平19.2.27)。

こちらの離婚裁判では、以下のような事情が考慮されて、離婚不成立となりました。

▼裁判所が考慮した事情

  • 夫婦間の子は、重い障害を有するため、日常生活全般にわたり介護を必要する状況にある
  • 子の世話をする相手方配偶者(妻)は、54歳であり就業して収入を得ることが困難な状態である
  • 離婚すると、妻は現住居から退去しなければならなくなる可能性があり、経済的に困窮することが十分予想される など

裁判離婚の別居期間でよくある質問

Q.家庭内別居は別居期間に含まれる?

離婚が認められるために必要な「別居」は、物理的に距離が離れている別居に限りません。

寝室や食事を別々にして、実質的にも夫婦共同生活を営んでいるとはいえない場合は、家庭内別居も別居に含まれる可能性があります

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Q.単身赴任は別居期間に含まれる?

単身赴任は、離婚の前提となる別居には含まれません

ただし、単身赴任中に事情が変化して、離婚の前提となる別居が始まったと評価できる場合は、その時点から別居期間が始まったと判断される可能性があります。

具体的には、単身赴任中に不貞行為が始まり、夫婦関係が悪化した場合が考えられます。

不倫相手とのラインなどのやりとり、夫婦関係が破綻していないことが分かるやりとりなどがあれば、証拠として残しておきましょう。

  • 配偶者と不倫相手の性行為についてのやりとり
  • 配偶者と不倫相手がラブホテルに立ち寄る写真
  • 単身赴任中でも夫婦で頻繁に連絡をとりあっていることが分かる証拠
    etc.
岡野タケシ弁護士
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弁護士

不貞行為による離婚・慰謝料請求では、単身赴任中の不貞行為の時点で、夫婦関係が破綻していないことが分かる証拠も必要になります。

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離婚に向けた別居期間の注意点

別居前に証拠収集を完了する

相手が離婚に応じない場合、相手に離婚原因があることを証明する証拠をいかに揃えるかが重要です

自分の主張を裏付ける証拠が充実しているほど、離婚調停で調停委員会の納得を得やすくなります。

調停委員会の理解を得れば、相手方を離婚に向けて説得してくれやすくなります。

離婚訴訟においても証拠は非常に重要です。

すでにご説明したとおり、裁判離婚するには、法定離婚事由が必要です。

そのため、法定離婚事由に当たる事実(不貞行為、DV、モラハラなど)を証明する証拠が多いほど、裁判離婚できる可能性が高まります。

証拠が多いほど、慰謝料の面でも有利になります。

以上の理由から、別居を考えている方は、別居前に証拠収集をできる限り終えておくことが望ましいです。

不貞行為を証明するためには、メールやLINEのやりとりなどが有効です。

DVやモラハラであれば、録音・録画、日記などがあれば主張が認められやすくなります。

DVやモラハラに限らず、別居に至る経緯を日記に書いておくと後々役に立ちます。必ず日付を書いた上、相手の言動などを具体的に記載します。

岡野タケシ弁護士
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相手の有責性の高さを証明できれば、別居期間が短くても離婚が認められる可能性が高くなります。

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相手に別居する旨と今後の方針を伝える

別居をする際、できれば事前に相手の同意を得ることが望ましいです。

なぜなら、何も言わず家を出てしまうと、夫婦の同居義務(民法752条)に反する「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に当たると主張され、慰謝料を請求されるおそれがあるからです。

もっとも、現実には事前の同意を得るのが難しいケースが大半でしょう。

その場合は、置き手紙が有効です。手紙には、別居を決めた理由や今後の方針を簡潔かつ冷静に書いておきます。

相手から「黙って出て行った」と主張されないために、置き手紙のコピーをとっておきましょう。

話し合いが難しい→離婚調停を申し立てる

別居をして冷静に話し合いができる状態になれば、当事者で協議離婚に向けて話を進めましょう。

それが難しければ、弁護士に早めに相談して離婚調停を申し立てるのがおすすめです。

離婚調停では、離婚だけでなく、親権者、面会交流、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割などの離婚条件についても決められます。

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別居後は早期に婚姻費用を請求する

婚姻費用は、夫婦が婚姻している間の生活費です。

たとえ別居しても、収入の多い方の配偶者は婚姻費用の支払義務があります。

婚姻費用の支払義務は、基本的に請求時点から生じます。

したがって、別居後は、できる限り早く婚姻費用の支払を求めましょう

相手が支払に応じなければ、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てます。離婚調停と一緒に申し立てる場合も多いです。

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別居期間中に離婚後の生活設計を立てる

別居して離婚の決意が固まった場合、離婚後の生活設計を具体的に立てることが大切です。

就職や、養育環境の整備、公的支援を調べるなど、別居期間を活用して再出発の準備を着々と整えましょう。

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離婚・別居期間のアドバイスは弁護士にお尋ねください

「別居何年で離婚できるの?」
「うちは別居期間が1年未満…離婚できる?」
「別居期間3年だけど離婚慰謝料は貰える?」

このような疑問・不安をお持ちの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

話し合いによる離婚の場合、別居半年、別居期間1年というケースでも、夫婦で合意できれば離婚可能です。

一方、裁判離婚の場合は、離婚が認められる別居期間の目安として、一般的には約3年~5年程度が見込まれます。ただし、別居期間が3年~5年になれば必ず離婚できると決まっているわけではありません。

また、有責配偶者がおこした離婚裁判でも、別居期間が10年程度になると離婚成立が認められるケースもあります。ただし、こちらも、10年別居すれば離婚できると断言できるものではありません。

別居期間が長期化すれば裁判離婚が認められる可能性は高まるとは思われますが、別居期間の長さ以外にも、様々な事情が考慮されたうえで、裁判離婚の成立・不成立が決まります。

相手の有責性など具体的なご事情は、夫婦によって様々です。

弁護士は、あなたのお話しをお聴きし、裁判例に照らし合わせて、別居期間をはじめとする離婚問題の解決に向けたアドバイスをいたします。

配偶者の不倫になやまされ、しまいには離婚を切り出されてしまったという方も、納得のいく解決をさぐるためにも、離婚をあつかう弁護士の無料相談を活用してみてください。

離婚をあつかう弁護士は、離婚に有利な別居期間だけでなく、慰謝料や財産分与など、離婚問題全般に関するご相談にも対応できます。

弁護士相談の内容

  • 離婚成立のための別居期間の長さ
  • 離婚までの婚姻費用の請求
  • 離婚慰謝料の請求
  • 離婚にともなう財産分与
  • 年金分割
  • 養育費
    etc.

離婚に踏み切る決意ができていない方も、将来の選択肢を広げるために、早期に情報収集をしておくことに越したことはありません。いつでもお気軽にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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