離婚したい専業主婦の準備ガイド│財産分与・年金・親権・離婚後の生活は…
- 専業主婦が離婚したい場合はどうする?
- 専業主婦だから離婚後の生活費が心配…財産分与の相場は?
- 年金分割や親権など、離婚時に考えておくべきことは?
専業主婦の方が離婚する際、離婚後のお金や住居はどうすべきか不安になると思います。
子どもがいる場合、専業主婦でも親権者になれるかという点も心配ですよね。
そのような不安をお持ちの専業主婦の方に向け、離婚をするときに考えておきたい問題をわかりやすく解説します。
離婚したい専業主婦が考えておくべきポイント7つ
1.財産分与(離婚時に財産を分け合う)
財産分与とは、離婚に際し、夫婦が婚姻期間中に築いた夫婦共有財産を分配する制度です。
夫婦が話し合いで財産分与の割合を決めた場合は、その割合に従います。話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所で調停や裁判等を通じて財産分与の割合を決めます。
実務では、財産分与の割合は原則として2分の1としています。たとえ専業主婦であったとしても2分の1の割合で財産分与を受けることができます。
夫婦が共働きであるか、一方が専業主婦であるかに関係なく、夫婦が協力し合ったからこそ、夫婦共有財産が築けたことに変わりはないからです。
なお、財産分与は、離婚の時から2年経過すると請求できなくなります。
「相手と話し合うのが嫌なので、とりあえず離婚して財産分与は後で考えよう」という方も少なくありませんが、時効について忘れないよう注意が必要です。
2分の1ルールの例外
配偶者が特別な能力や資格によって多額の収入を得ている場合は、財産分与の割合は平等とされないケースがあります。
例えば、夫婦の一方が医師や経営者の場合などで、専業主婦の財産分与の割合は少なくなる可能性があります。
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2.慰謝料(離婚の原因を作った側に請求)
慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償を意味します。
離婚の場合、離婚原因を作った側に慰謝料の支払義務があります。例えば、相手の不貞行為やDVが原因で離婚に至った場合に慰謝料を請求することができます。
離婚慰謝料の相場は、100万円〜300万円です。これは、離婚裁判になった場合の相場です。
なお、離婚成立後3年経つと、慰謝料請求権は時効で消滅するので注意しましょう。
離婚の慰謝料には2種類ある?
離婚の慰謝料には「離婚自体慰謝料」と「離婚原因慰謝料」の2種類があります。
- 離婚自体慰謝料
離婚に至ったことそのものについての慰謝料 - 離婚原因慰謝料
離婚原因となった個別の不法行為(不貞行為やDV)についての慰謝料
もっとも、実務では、両方を合わせて離婚自体慰謝料として請求するケースが多いです。一般的に、離婚自体慰謝料のことを離婚慰謝料と呼びます。
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3.年金分割(夫婦の厚生年金を分割する)
年金分割とは、離婚した場合、婚姻期間中に納付した厚生年金の保険料の納付記録を分割する制度です。
専業主婦の場合、国民年金の第3号被保険者となり、年金額は少なくなってしまいます。
第3号被保険者
第3号被保険者とは、厚生年金の保険者に扶養されている人(専業主婦やパートなど扶養の範囲内で働く人)をいう。
しかし、夫の厚生年金を分けてもらうことで、専業主婦であっても将来受け取れる年金が増え、離婚後の生活の安定を確保することができます。
年金分割については、合意分割と3号分割の2種類があります。
合意分割
合意分割は、2007年4月以降の厚生年金の保険料について適用できる分割方法です。
夫婦の合意によって年金分割をする方法を、合意分割といいます。
年金の按分割合(年金をどれだけの割合で分けるか)は自由に決めることができますが、上限は2分の1となります。
合意がまとまらない場合は裁判で決めますが、大半のケースで按分割合は2分の1と決められます。
3号分割
3号分割は、夫の合意がなくても、請求手続きをおこなえば、分割できるという制度です。
2008年4月1日以降に、夫婦の一方が第3号被保険者であった婚姻期間について、請求をすれば、夫の合意を得なくても自動的に、2分の1の按分割合で年金分割がなされます。
ケース
専業主婦の妻と、会社員である夫が、2023年10月に離婚した場合
- 2008年4月1日から離婚までのうち第3号被保険者期間中の保険料については、3号分割が認められ、按分割合は自動的に2分の1になります。
- 一方、上記以外の期間については扱いが異なります。
たとえば、2007年4月1日~2008年3月31日までの婚姻期間や、2008年4月1日以降であっても妻が厚生年金に加入していた期間があればその期間については、合意分割の手続きによって按分割合を決める必要があります。
請求期限(離婚から2年)
合意分割も3号分割も、離婚時から2年以内に年金事務所を通じた年金分割の請求手続きが必要です。
対象となるのは厚生年金のみ
なお、年金分割の対象となるのは厚生年金のみです。配偶者が自営業しか営んでこなかった場合は年金分割の対象外となります。
夫の職業 | 年金分割 |
---|---|
会社員 | 厚生年金なので可能 |
公務員 | 厚生年金なので可能 |
フリーランス・自営業 | ✖ |
学生 | ✖ |
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4.親権者
離婚する場合、必ず親権者を決めなければなりません。
当事者で合意できない場合は、裁判所の調停や離婚訴訟で親権者を決めることになります。
親権者を決める場合、これまで主に監護養育を担ってきた者が親権者とされる可能性が高いです。その他にも、現在の監護の態勢、育児を支援してくれる親族の有無、父母の就労状況等を総合的に判断し、親権者が決められます。
専業主婦の場合、「自分に収入がないために親権者になれないのではないか」と不安に感じる方が少なくありません。しかし、離婚後は養育費の支払が見込まれるため、収入がないからと言ってそれだけで親権者の判断で不利になることはありません。
とはいえ、離婚後は自立して生活していける環境を一日も早く築くことが大切です。そのため、なるべく早い段階から就職や公的支援の情報を集め、離婚後の生活に向け準備を進めておきましょう。
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5.面会交流(子どもに会わせるかどうか)
面会交流は、離婚後に子どもと非監護親が面会することです。
離婚して自分が子どもを監護したいと考えている場合、相手と子どもとの面会交流をどうするかという点も想定しておく必要があります。
子どもへの虐待がある等例外的な場合を除き、継続的な面会交流は、子どもの成長にとって重要です。
感情的に受け入れるのが難しいケースも多いと思いますが、子どもの福祉につながるよう冷静に考えてみましょう。
面会交流について当事者で合意できない場合は、家庭裁判所での調停・審判等で決めることになります。
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6.養育費(子供の生活費を元夫に請求)
離婚後、子どもを監護する親は、監護していない親に対し、養育費を請求できます。
養育費も夫婦の合意で定めます。合意できなければ、家庭裁判所の調停や審判で決めます。実務では、養育費の金額は収入や子供の数をもとに「改定標準算定表」に従って決められます。
専業主婦で子どもが幼く働くことができない場合は、収入は0円として算定されます。
ただし、子どもが大きくなった場合は、たとえ専業主婦であっても、働いていれば得られるであろう収入をもとに養育費を算定します。
具体的には、パートタイム労働者の平均収入である年120万円程度の収入があるものとして改定標準算定表にあてはめます。
働いている場合の収入は、給与所得者の場合は前年の源泉徴収票、自営業者の場合は確定申告書から認定します。
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7.婚姻費用(別居中も離婚まで請求可能)
専業主婦が別居した場合、夫に対し婚姻費用(別居期間中の生活費)を請求できます。
婚姻費用の金額は、養育費の場合と同様に、「改定標準算定表」に従って決められます。
婚姻費用の支払義務は、支払い請求したときから生じるのが原則です。
別居をしたら、メールや内容証明郵便等証拠となる方法で、できる限り早めに婚姻費用の請求をしましょう。
相手が婚姻費用の支払に応じない場合、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。
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離婚したい専業主婦の離婚準備5選
①仕事を探しておく(離婚後の生活は経済的自立が課題)
専業主婦が離婚をする際、事前に仕事を探しておくのも非常に重要です。
別居後は婚姻費用が、離婚後は養育費の支払が見込まれます。しかし、いずれも生活費としては不十分な金額なのが実情です。
離婚を考えておられる専業主婦の方は、就職に向けて以下の制度の利用を検討してみてください。
仕事探しの制度
- マザーズハローワーク・マザーズコーナー
- 母子家庭等就業・自立支援センター事業
- 自立支援教育訓練給付金
- 高等職業訓練促進給付金
マザーズハローワーク・マザーズコーナー
これらの施設は、シングルマザーに配慮されており、子ども連れでも仕事の相談がしやすい環境が整えられています。
詳しくは、厚生労働省の「マザーズハローワーク事業」を参考になさってください。
母子家庭等就業・自立支援センター事業
各自治体が主体となり、母子家庭の母等に対し、就業相談から就業支援講習会の実施、就業情報の提供等の就業支援サービスを提供する制度です。
各自治体の実施場所は、厚生労働省の「母子家庭等就業・自立支援センター事業実施先一覧」をご覧ください。
自立支援教育訓練給付金
地方公共団体が指定する教育訓練講座を受講した母子家庭の母等に対し、受講料の6割相当額の助成金を支給する制度です。
詳しくは、厚生労働省の「教育訓練給付について」をご覧ください。
高等職業訓練促進給付金
看護師等の資格を取得するために1年以上修学する場合、高等職業訓練促進給付金が支給されます。
詳しくは、こども家庭庁の「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」をご覧ください。
②離婚後の生活拠点・住居を検討
現在持ち家に居住している場合、離婚後もそのまま住み続けられるのか検討する必要があります。
持ち家が誰の名義なのか、住宅ローンの残額はいくらか等によって、解決策は様々です。
住宅ローンが残っている場合の対応は複雑ですので、事前に弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。
持ち家がない場合は、実家に戻れないか親族に相談してみましょう。
賃貸物件を借りる場合は、家賃の工面はどうするか具体的な検討が必要です。
配偶者のDVから一刻も早く逃れる必要がある場合は、母子生活支援施設の利用を検討してください。
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③公的支援制度の情報収集
専業主婦が離婚する場合、以下の公的支援を利用することも検討してみましょう。
公的支援
- 児童扶養手当
- 児童手当
- 母子父子寡婦福祉資金の貸付
- 生活保護
児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親家庭等の児童について支給されます。
支給対象者は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(また一定の障がいの状態にある児童は20歳未満)を監護する母等です。
手当額(令和5年4月〜)は、以下のとおりです。
区分 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
児童1人のとき | 月額44,140円 | 月額44,130円~10,410円 |
児童2人のとき | 月額5,4560円 | 月額54,540円~15,620円 |
児童3人以上のとき | 3人目から児童が1人増えるごとに3,130円~6,250円の範囲で加算 |
前年の所得に基づき所得制限があり、その場合は手当の一部又は全部の支給が制限されます。
詳しくは、各自治体の市役所等にお問い合わせください。
児童手当
児童手当は、0歳から中学校卒業までの児童養育している場合に支給されます。
児童手当は、養育者が複数いる場合は「生計を維持する程度が高い人」に支給されるのが原則です。
しかし、離婚協議中で別居している両親が生計を同じくしていない場合は、同居している親が児童を養育していると考えられるため、同居している親と児童に児童手当が支給されます。
離婚協議中で配偶者と別居している場合は、離婚協議申し入れに関する内容証明郵便の謄本や、家庭裁判所における事件係属証明書、調停不成立証明書等を市区町村へ提出し、児童手当の認定請求を行えば、児童と同居している親が児童手当を受給できるようになります。
母子父子寡婦福祉資金の貸付
20歳未満の児童を扶養している母子家庭の母等は、修学資金、生活資金、住宅資金等の貸付を受けられます。
詳しくは、最寄りの地方公共団体の福祉担当窓口にお問い合わせください。
生活保護
各種支援制度を利用しても生活が困難な場合は、生活保護の受給も検討しましょう。
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④離婚原因の証拠収集(不貞・モラハラ)
離婚原因をつくった側に対して、離婚慰謝料や慰謝料的財産分与を支払うよう請求できます。
離婚慰謝料などを請求するための準備として、もっとも重要なことは、離婚原因についての証拠収集です。
ここでは、不貞行為やモラハラが原因で離婚したいと考えている方に向け、収集しておくべき証拠をご説明します。
不貞行為の証拠
不貞行為(不倫、浮気)は、民法770条1項1号の離婚事由に当たります。
判例によると、不貞行為とは、「自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義されています(最判昭和48年11月15日)。
つまり、裁判離婚が認められるためには、配偶者と不貞相手が肉体関係を持った証拠を集める必要があるのです。
具体的には、メールやSNSのやりとり、写真、動画、2人でホテルに宿泊したことがわかる領収書、クレジットカード・ETC・電子マネー履歴、不貞行為を認める内容の誓約書や念書、不貞行為を認める内容の録音等です。
不貞行為の証拠を集めておけば、配偶者や不倫相手に対し慰謝料請求する際の証拠にもなります。
実際は、これらの証拠がある場合でも、肉体関係を持ったことまで証明するのは困難な場合が少なくありません。
しかし、不貞行為を証明できないとしても「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に当たるとして離婚が認められる可能性もあります。
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モラハラの証拠
モラハラは「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に当たる可能性があります。
モラハラの証拠として、相手方の暴言等の録音・録画が重要です。それが難しい場合は、詳細な日記をつけておきましょう。
できれば、モラハラを受けてから時間を空けずに記録しておきます。その際、作成日付とモラハラを受けた日時も必ず書きましょう。そして、暴言等の具体的な内容、暴言等を受けたときの感情を記録します。
精神的な不調を少しでも感じたら、精神科等を受診し、診断書を作成してもらうのも大切です。
モラハラを受けている方は、そもそも自分がモラハラの被害者だと認識していない場合も少なくありません。
特に専業主婦の方は、自分が仕事をしていないことを引け目に感じ、相手から心を傷つける暴言を言われても黙って耐えるのが当たり前になっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方は、ぜひ一度、専門的な第三者に相談してみてください。市役所や警察、配偶者暴力相談支援センター等の公的機関への相談が、モラハラに気付くきっかけになります。
公的機関への相談記録は、離婚訴訟等でモラハラの有力な証拠にもなります。
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⑤双方の財産の把握(財産分与の準備)
離婚を決断した場合、財産分与の準備も欠かせません。
財産分与の対象は、婚姻中に夫婦で築いた夫婦共有財産です。プラスの財産だけでなく、住宅ローン等マイナスの財産も対象になる点に注意してください。
財産分与の準備として、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価額証明書、原告と被告の双方名義の預貯金通帳、生命保険証書、有価証券証書(株券、ゴルフ会員権等)、源泉徴収票、給与明細書。住宅ローン等負債の残高証明等を集めておきましょう。
他方、独身時代の貯金や相続財産等は、特有財産に当たり財産分与の対象外です。
専業主婦の方もご自分の預貯金通帳等を見直し、特有財産に当たるものがないかよく確認してみてください。
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離婚したい専業主婦の離婚方法
まずは冷静に離婚を切り出す
いざ離婚すると決めても、相手への離婚の切り出し方は悩ましいところです。
離婚の第一歩は、まずは当事者の話し合いです。事前に伝えたいことを整理して、冷静に離婚を切り出しましょう。
当事者での話し合いが困難な場合は、弁護士へ相談したり、離婚調停の利用を検討してみてください。
別居を検討する
相手が離婚に応じない場合、別居を検討するのも一つです。
別居のタイミングは様々ですが、別居をしてから離婚調停を申し立てるケースが多いです。
また、離婚事由が弱く、すぐに離婚するのが難しいと見込まれる場合、ある程度の期間別居を続けるのも選択肢の一つです。
なぜなら、実務上、別居期間が長くなるほど婚姻関係が破綻していると認められやすくなるからです。
一概には言えませんが、3年程度別居を続けると、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると裁判所に認められる可能性が高くなります。
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離婚が合意できたら公正証書を作成する
当事者間で離婚が合意できた場合、協議離婚が成立します。
その場合、離婚届だけでなく、離婚協議書等の書類を作成し、親権や養育費等の合意内容をまとめておきましょう。
養育費等がきちんと支払われるか心配な場合は、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成するのがおすすめです。
強制執行認諾文言付き公正証書があれば、相手方の不払いがあったときに、強制執行が可能です。
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離婚が合意できない場合は裁判所を利用
当事者間で離婚が合意できない場合、離婚調停や離婚訴訟を利用することになります。
離婚調停
離婚調停は、裁判官と2名以上の調停委員からなる調停委員会が関与して、離婚に向けた当事者の合意を目指す手続きです。
申立人と相手方の双方が裁判所に出席して、話し合いを行います。
当事者のみでも対応可能ですが、親権や養育費を決めるに当たっては、法的な専門知識が不可欠です。
したがって、弁護士が関与した方が、有利な離婚条件で離婚できる可能性が高まります。
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離婚訴訟
離婚訴訟は、離婚調停が不成立の場合に提起することになります。
訴訟では、準備書面や証拠の提出が必要になるため、ご自分で対応するのは困難です。
相手方が離婚に応じないと見込まれる場合は、ぜひ早期の段階から弁護士に相談し、離婚訴訟を見越した準備をしておくことをおすすめします。
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・離婚裁判の流れと注意点を解説|期間や費用はどのくらいかかる?
専業主婦の離婚・50代の離婚でよくある質問
Q1.離婚後の生活費が足りません。元夫に請求できますか?
離婚した元配偶者に対して、離婚後の生活費を請求することはできません。
離婚が成立すれば、夫婦ではなくなるので、お互いに扶養する義務もなくなるためです(民法752条参照)。
ただし、離婚する際に、元配偶者に対して請求できるお金はあります。
たとえば、婚姻費用(婚姻中の生活費)の未払い部分や、財産分与、年金分割などについては、元夫に請求可能です。
財産分与は、離婚後の生活保障をかねるケースもあります。場合によっては、離婚後数年間、月に数万円ずつ請求している方もいるでしょう。
お子様がいらっしゃる場合には、養育費の請求もできます。養育費は、元夫の年収とご自身の年収、お子様の人数・年齢などを考慮して決めます。
また、元夫が浮気やDVなどをおこない離婚の原因を作った者(有責配偶者)である場合は、慰謝料を請求することもできるでしょう。
離婚慰謝料の相場は、約50万円~300万円程度といわれており、離婚後の生活費の足しにすることができます。
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Q2.離婚したい50代の専業主婦です。離婚で重要なことは?
専業主婦が50代で離婚する場合は特に、離婚後の生活費で困らないようにするため、きちんと財産分与や年金分割ができるように準備をしておくことが、非常に重要です。
財産分与とは、婚姻中に維持・取得した財産(夫婦の共有財産)について、離婚する時に折半する制度です。たとえ夫名義の資産であっても、預貯金、購入した家・自家用車、株式、保険の解約返戻金なども、財産分与の対象になります。
また、元夫が会社員・公務員の場合、厚生年金を分割できる年金分割制度もあります。
ただし、財産分与や年金分割の時効は、離婚から2年となるため、注意が必要です。
この記事をご覧の皆様は、まずは弁護士の無料相談を受けるなどして、元配偶者に請求できる項目、金額、請求の手順、必要書類などを確認するところから始めてみてください。
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Q3.財産分与の相場は、専業主婦の場合いくら?
離婚時の財産分与の金額については、夫婦の共有財産の総額、共有財産への貢献度などが考慮されて決まるので、相場をお伝えすることは難しいものです。
ただ、離婚時の財産分与の割合については、2分の1ルールというものがあります。そのため、通常であれば、離婚調停などの場合、夫婦の共有財産を折半することになります。
たとえば、夫婦の共有財産が1000万円ある場合、離婚する際、妻はその半分にあたる500万円受け取る権利があるのです。
ただし、個人の資格や能力が、夫婦の共有財産に大きな影響を与えている場合、2分の1ルールが適用されない場合もあります。
たとえば、夫が医師で、妻が専業主婦をしている事案では、夫婦の共有財産(総額約1億円)について、夫:妻=6:4で財産分割をした事例があります(大阪高判決H26.3.13)。
Q4.専業主婦でも、親権者になれますか?
母親が親権者になるケースは多いものです。
子どもに愛情をもって接し、献身的に子育てをしているのであれば、専業主婦でも親権者になれる可能性はあります。
一方、虐待、ギャンブル依存、アルコール依存、子どもと別居しており日ごろから子育てをしていないなどの事情がある場合は、親権者になることが難しくなります。
離婚後の生活費について心配がある場合は、父親から養育費を受け取る、母子家庭に資金援助をしてくれる公的制度を利用するなどの方法が考えられます。
なお、実務では、親権者を定めなければ離婚ができないことや養育費の不払いを抑止する目的などから、親権者と身上監護権者を分けるケースもあります。
しかし、親権者と身上監護権者を分けることについては、子どもの法的手続きの場面で支障をきたす、監護に口を挟まれるなどのデメリットがあることは認識しておくべきです。
まとめ
専業主婦で離婚したい場合は弁護士相談から始めよう
離婚したい専業主婦のためのガイド、いかがでしたでしょうか。
今回は、離婚したい専業主婦の方に向けて、離婚する時に考えるべきこと、離婚を決断したときにやるべきこと、専業主婦が離婚を切り出す方法・離婚手続きなどを解説してきました。
いままで専業主婦として頑張ってきたけれど、夫に理解されず、50代、60代で離婚をしたいと決断される方も多いものです。
しかし一方で、家庭の外でのキャリアを積む機会がなかったことで、離婚後の生活に不安を感じる方も多いものです。
離婚したいと考えている方は、まずは離婚を進める場合、どのような準備が必要になるのか確認したり、離婚後の人生設計をするところから始めてみてください。
離婚手続きや、離婚時に相手方に請求できるお金などについては、弁護士の無料相談を活用して、不安を取り除きましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
特に専業主婦にとって、財産分与は離婚後の生活をスムーズに始めるために非常に重要です。当事者での話し合いが難しければ、早めに弁護士に相談するようおすすめします。