専業主婦の離婚と年金分割|請求期限は原則5年!条件や手続きを解説

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専業主婦の離婚

離婚後、専業主婦の年金はどうなるのでしょうか。

離婚しなければ、老後は夫の年金と自分の年金を合わせて生活費の足しにできたはずですが、離婚するとそうはいきません。

しかし、離婚にともない夫婦で年金分割をできる場合があります。年金分割とは、婚姻中の厚生年金保険料の納付記録を夫婦で分ける制度です。

専業主婦は厚生年金に加入できないため、将来受け取れる年金額が少なくなるリスクがあります。年金分割制度は、そうした離婚後の生活を安定させるために役立つものです。

本記事では、専業主婦の年金分割について、条件・手続き・注意点などを解説しています。

離婚を検討中の専業主婦の方や、熟年離婚の準備中の方にとって参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

専業主婦の離婚後の年金はどうなる?

専業主婦の年金分割とは?

年金分割とは、婚姻期間中に夫婦が支払った厚生年金の保険料納付記録を、離婚する際に夫婦で分割できる制度です。

専業主婦(主夫)の場合、会社員や公務員の夫(妻)とは違い厚生年金に加入できないため、老後に受け取れる年金額が少なくなるリスクがあります。

こうしたリスクを軽減するために活用したいのが、年金分割制度です。離婚する際に年金分割をすることで、専業主婦(主夫)だった方の将来受け取れる年金額を増やせます。

年金分割の金額を決める方法は?

年金分割は、いくらもらうかを具体的な金額で決めるのではなく、(1)婚姻期間中の、(2)年金保険料の納付記録を、(3)どのくらいの割合で分けてもらうかを決めるものです。

実際にもらえる金額は、婚姻期間の長さ・厚生年金保険料の納付記録・年金分割の割合という3要素によって決まります。

なお、年金分割の割合を決める方法は、夫婦の合意または裁判所の手続きになります(合意分割)。

ただし、2008年4月1日以降の専業主婦期間については、相手の合意がなくても2分の1で分割できる「3号分割」という制度もあります。

いずれの方法によっても、年金分割の割合は最大2分の1となります。

年金分割で年金はいくら増える?相場は約3万?

厚生労働省の統計では、令和6年度に年金分割制度を利用した方は、平均年金月額が33,575円アップしていたことが分かっています(年金分割前の平均年金月額は60,934円、年金分割後の平均年金月額94,509円)。

離婚時の年金分割 平均年金月額等の推移

※単位:円

年度分割前分割後増加
令和6年60,93494,509+33,575
令和5年57,97991,081+33,102
令和4年55,21587,949+32,734
令和3年54,28185,394+31,112
令和2年51,58582,358+30,774

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の「離婚分割 受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移」を参考に、抜粋、編集しました。

専業主婦が年金分割できる条件

夫が会社員・公務員の場合は年金分割できる!

専業主婦(主夫)には、国民年金第1号被保険者と第3号被保険者の2種類の方がいます。

年金分割の対象となるのは、婚姻期間中に夫(妻)が厚生年金に加入していた期間の記録です。会社員や公務員(厚生年金加入者)の配偶者として扶養されている専業主婦(主夫)、つまり国民年金第3号被保険者の方は、年金分割を請求できます。

一方、夫が自営業・フリーランス・学生(第1号被保険者)の場合、厚生年金の記録がそもそも存在しないため、原則として年金分割はできません。ただし、婚姻期間中に夫が厚生年金に加入していた期間があれば、その期間の記録については分割を請求できます。

年金分割
第1号被保険者自営業・フリーランス・学生、これらの夫(妻)をもつ専業主婦(主夫)原則✕
第2号被保険者会社員・公務員等
第3号被保険者*会社員・公務員等の被扶養配偶者
例:会社員の夫をもつ専業主婦

* 国民年金の加入者のうち、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満など一定の要件を満たす者)を、第3号被保険者という。

年金分割の対象となる共済年金とは?

年金分割の対象となるのは、基本的には厚生年金の保険料納付記録と覚えておくとよいでしょう。

ただし厳密にいえば、平成27年10月1日以前の共済年金の保険料納付記録(標準報酬)も年金分割の対象となります。

共済年金とは、国家公務員や地方公務員、私立学校教員が加入する公的年金でした。組合員の減少などにより、平成27年10月に被用者年金一元化により厚生年金へ統一され、共済年金制度は廃止されました。

夫が自営業等でも年金分割できる例外は?

婚姻期間中に会社員をやめて自営業になった等の事情がある場合は、夫に厚生年金記録が残るため、年金分割の請求ができます。

厚生年金の年金記録がある例

  • 婚姻期間中に、会社員から自営業になった
  • 婚姻期間中に、フリーランスから会社員になった
  • 結婚当時は大学院生だったが、その後就職して公務員になった
    など

元夫(元妻)が婚姻期間中に厚生年金保険料を支払った記録さえあれば、専業主婦(主夫)は離婚にともないその期間の年金分割を請求できます。

離婚で専業主婦が年金分割する時の注意点

年金分割の請求期限は?離婚後5年以内が原則!

年金分割には請求期限があります。期限を過ぎると年金分割を請求できなくなるため、注意が必要です。

2026年4月1日以降に離婚した場合、請求期限は原則として離婚の翌日から5年以内です。2026年3月31日以前に離婚した場合は、従前どおり原則として2年以内となります。

年金分割の請求期限

以下1~3のいずれかの事由が生じてから、2026年4月1日以降に離婚した場合は5年以内、それ以前は2年以内が請求期限です。

  1. 離婚をしたとき
  2. 婚姻の取り消しをしたとき
  3. 事実婚関係にある方が国民年金第3号被保険者ではなくなり、事実婚関係が解消したと認められるとき

こちらは2026年6月現在の情報です。最新の情報については、ご自身でご確認ください。

例外(1) 請求期限が延長される場合

合意分割では、話し合いがまとまらない場合に裁判所の手続き(調停・審判)で案分割合を決めることがあります。そのため、以下の事由に該当した場合は、該当した日の翌日から6か月が経過するまでに限り、分割請求することができます。

請求期限が6か月延長される例

  • 離婚から5年(※)を経過するまでに審判の申立てをおこない、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6か月以内に審判が確定した。
  • 離婚から5年(※)経過するまでに調停の申立てをおこない、本来の請求期限が経過後、または本来請求期限経過日前の6か月以内に調停が成立した。

※2026年3月31日以前に離婚した場合は5年ではなく2年

こちらは2026年6月現在の情報です。また、請求期限の例外について一部をご紹介するものです。詳細はご自身でご確認ください。

例外(2) 請求期限が早まる場合

合意分割の案分割合を決定した後、年金分割の手続き前に離婚相手が死亡した場合は、死亡した日から1か月以内が請求期限になるといった例外もあります。

離婚したら遺族年金を受け取れない

離婚した専業主婦(主夫)は、元夫(元妻)の遺族年金を受け取ることはできません。

遺族年金とは、国民年金または厚生年金の被保険者が亡くなった場合に、その方に生計を維持されていた遺族に支給される年金のことです。

生計を維持されていた遺族とは?

  • 生計を同じくしていること
  • 前年の収入が850万円未満または所得が655万5,000円未満であること
  • 遺族であること

離婚すれば生計を同じくすることはなく、また離婚した専業主婦(主夫)は元配偶者となるため遺族にも該当しません。離婚後、元夫(元妻)の遺族年金を受け取ることはできません。

また、遺族年金の年金分割もできません。遺族年金は、厚生年金の納付記録に関する年金分割とはまったく別の制度です。

厚生年金の上乗せ部分は年金分割できない

年金制度は、よく3階建ての構造といわれます。1階部分は日本に住む20歳以上が全員加入する国民年金、2階部分は企業などに勤務している人が加入する厚生年金、3階部分は年金の上乗せ部分です。

会社員・公務員年金分割
3階企業型DC・厚生年金基金等
2階厚生年金
1階国民年金

年金分割では、2階部分の厚生年金だけが対象となります。1階部分の国民年金のほか、3階部分の上乗せ部分も年金分割の対象外です。

なお、対象外となる3階部分には、確定拠出年金(企業型DC等)・確定給付企業年金・厚生年金基金などが含まれます。

厚生年金基金を分ける方法は?

厚生年金基金・国民年金基金は年金分割の対象ではありませんが、離婚時の財産分与の対象となる場合があります。

ただし、分与時点でまだ受給していないことが多く、具体的な評価額の算定が難しい点に注意が必要です。対応方法としては、①「その他一切の事情」(民法768条3項)として考慮する、②扶養的財産分与で考慮する、③財産分与では考慮しない、といったパターンが考えられます。

評価や分割の具体的な方法は専門知識が必要なため、離婚問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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専業主婦になる前の厚生年金が夫を超える

婚姻中に会社や公務員の職をやめて専業主婦(主夫)になった場合、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録があなた自身にも残ります。

  • 出産をきっかけに、専業主婦になった
  • 子育てに専念するために、公務員をやめて専業主婦(主夫)になった
    など

婚姻期間中をトータルで見てあなたの収入のほうが元夫(元妻)よりも多い場合、逆に元夫(元妻)からあなたに対して年金分割を請求される可能性があります。

離婚届で当然に年金分割されるわけではない

年金分割を希望する場合は、所定の手続きを別途おこなう必要があります。離婚届を提出しただけでは年金分割はされないので、注意してください。

年金分割の方法は2種類!利用条件は?

合意分割

合意分割とは、夫婦双方が合意した割合で年金分割をする制度です。

夫婦間で分割の割合について合意できない場合は、家庭裁判所への調停・審判の申立てにより、裁判手続で割合を定めることができます。いずれの方法でも、分割割合は最大2分の1となります。

合意分割の要件

  • 2007年4月1日以降に離婚等した
  • 婚姻期間中に厚生年金(共済年金を含む)の保険料納付記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること
  • 合意または裁判所の手続きで年金分割の割合を定めたこと
  • 請求期限を経過していないこと(2026年4月1日以降の離婚は翌日から5年以内、それ以前は2年以内)

こちらは、2026年6月現在の情報です。日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」の内容を分かりやすく編集しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。

合意分割ができない場合の流れ

合意分割の話し合いがまとまらない場合、婚姻中に第3号被保険者だった期間については、後述する3号分割を利用できます。

ただし、婚姻中にご自身も会社員や自営業などで働いており、第2号・第1号被保険者だった期間がある場合、その間は3号分割の対象外です。

この期間の年金分割について、合意できない場合は、家庭裁判所の調停や審判を利用して割合を定めることになります。

3号分割

3号分割とは、当事者の合意がなくても一定の要件を満たすだけで、厚生年金の保険料納付記録の2分の1について分割を受けられる制度です。

合意分割との違いは、相手の同意なしに年金分割ができること、および年金分割の割合が2分の1で固定されていることです。

3号分割を利用できるのは、2008(平成20)年4月1日以後に国民年金の第3号被保険者であった期間がある方です。

3号分割の要件

  • 2008年5月1日以後に離婚等した
  • 婚姻して、2008年4月1日以後の国民年金第3号被保険者であったこと
  • 上記の第3号被保険者であった期間中、離婚した元夫(元妻)に厚生年金(共済年金を含む)の保険料納付記録があること
  • 請求期限を経過していないこと(2026年4月1日以降の離婚は翌日から5年以内、それ以前は2年以内)

こちらは、2026年6月現在の情報です。日本年金機構「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」の内容を分かりやすく編集しています。最新の情報については、必ずご自身でご確認ください。

年金分割手続きの流れと必要書類は?

年金分割手続きの流れ

年金分割の進め方は、以下のような流れになります。

1.情報通知書の請求手続き・受け取り

情報通知書とは、年金分割に必要な情報が記載された書類のことです。年金分割の対象となる期間や、按分割合の範囲などが確認できます。

情報通知書は、年金事務所に情報提供請求書を提出して取得します。離婚する夫婦の一方だけでも、二人一緒でも請求可能です。一人で請求した場合、離婚前は請求した方のみが受け取り、離婚後は双方に交付されます。

2.年金分割の話し合い

合意分割をする場合、年金分割の案分割合について話し合いをします。話し合いでまとまらなかった場合は、家庭裁判所による調停または審判によって案分割合を定めます。

3.年金事務所での手続き

合意分割の割合や3号分割の内容が決まったら、標準報酬改定請求書等の書類をそろえて年金事務所に申告します。

必要書類

標準報酬改定請求書のほか、以下のような書類の提出が必要です。

合意分割・3号分割(共通)

必要書類(共通)

  • 請求書に個人番号を記入する場合
    →個人番号が分かる書類
    例)マイナンバーカード
  • 請求書に基礎年金番号を記入する場合
    →基礎年金番号が分かる書類
    例)年金番号通知書、年金手帳
  • 婚姻期間が分かる書類
    例)戸籍謄本(全部事項証明書)

合意分割の必要書類

必要書類(合意分割のみ)

  • 二人の生存を証明できる書類
    ※請求日前1か月以内に交付
    例)それぞれの戸籍謄本
    ※請求書に双方のマイナンバーを記入した場合は省略可
  • 年金分割の割合が分かる書類
    例)公正証書の謄本、公証人の認証を受けた私署証書、年金事務所の合意書、審判書の謄本と確定証明書、調停調書の謄本
  • 年金事務所の合意書で割合を明らかにする場合
    →当事者双方の本人確認書類
    例)運転免許証、パスポート、マイナンバーカード
    ※この場合、当事者双方が年金事務所の窓口へ出向く必要があります

3号分割の必要書類

必要書類(3号分割のみ)

  • 相手方の生存を証明できる書類
    ※請求日前1か月以内に交付
    例)戸籍謄本
    ※請求書に相手方のマイナンバーを記入した場合は省略可

年金分割の手続きは、2026年4月1日以降に離婚した場合は原則5年以内、それ以前に離婚した場合は原則2年以内に済ませる必要があります。できるだけ早めに対応しましょう。

3号分割の場合は、第3号被保険者であった側が標準報酬改定請求書などを準備して請求手続きをおこないます。書式は年金事務所のホームページから取得可能です。

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専業主婦の離婚と年金分割まとめ

年金分割は、専業主婦(主夫)の離婚後の生活を支える制度のひとつです。

専業主婦が離婚する場合、夫が会社員などで厚生年金に加入しているときは、その保険料納付記録を夫婦で分割するのが年金分割です。

年金分割のおもな注意点

  • 対象は婚姻中の厚生年金記録のみ
  • 請求期限は、2026年4月1日以降の離婚は原則5年以内、それ以前は2年以内
    (死亡した場合は早まる)
  • 分割割合は最大2分の1
  • 遺族年金は年金分割できない
  • 厚生年金の上乗せ部分(厚生年金基金・企業年金など)は年金分割できない

年金分割の方法には3号分割と合意分割があり、それぞれ要件・手続き・必要書類が異なります。

分からない点があれば、お近くの年金事務所などに問い合わせてみましょう。

専業主婦(主夫)は家事を担い元夫(元妻)を支えてきた結果、元夫(元妻)は仕事に専念して厚生年金保険料を納付できたといえます。ご自身の権利として、離婚時には年金分割を請求することを検討してください。

なお、離婚の際には年金分割以外にも、慰謝料・財産分与など夫婦間で決めるべきことがあります。不安なことは、離婚にくわしい弁護士の無料相談などを活用してみてください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律税務グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了