家庭内別居とは?離婚率は?離婚の仕方・財産分与・婚姻費用等も解説

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  • 家庭内別居で離婚できる?
  • 家庭内別居と家庭内離婚は同じ意味?離婚のしやすさは同じ?
  • 家庭内別居から離婚する方法は?

家庭内別居(家庭内離婚)とは、婚姻関係の破綻した夫婦が、同じ家に住み続ける状態のことを指します。

夫婦関係が冷え切って、自然と家庭内別居の状態になることがあります。また、関係改善のための冷却期間や、離婚までの待機期間として、家庭内別居を選ぶ夫婦もいます。

この記事では、家庭内別居(家庭内離婚)の意味、離婚率、家庭内別居のメリット・デメリット、離婚できる可能性や条件、財産分与や婚姻費用に関する注意点などを分かりやすくまとめました。

家庭内別居とは?離婚への影響は?

家庭内別居の定義は?家庭内離婚と同じ意味?

家庭内別居とは、婚姻関係の破綻した夫婦が、同じ家に住み続ける状態のことを指します。

家庭内別居とは、同じ家にいても夫婦のコミュニケーションはほとんどなく、夫婦仲が冷めきった状態です。家庭内離婚も、家庭内別居と同様の意味で用いられる言葉です。

家庭内別居に該当する代表的なケースは、家にいても顔を合わせない、会話がない、家事をそれぞれで行うなどがあげられます。

家庭内別居・家庭内離婚

  • 同じ屋根の下でも、夫婦が顔を合わせないように生活する
  • 寝室を分ける
  • 会話がない、最低限の会話だけする
  • 家事を各自がおこなう
    etc.

また、家庭内別居・家庭内離婚と似た言葉に、仮面夫婦というものもあります。

仮面夫婦も、家庭内別居と同じく、婚姻関係が冷え切った夫婦になります。ただ、仮面夫婦の場合、家の外では円満な夫婦を演じている状態に着目した夫婦の在り方を指します。

仮面夫婦の場合は、家の中で会話をすることや、互いのための家事をすることもあるなど、家庭内別居ほどは夫婦関係が悪化していない場合が多いかもしれません。

家庭内別居からの離婚率は83%?

ある調査では、家庭内別居をした夫婦の離婚率は83%という結果がでています(2021.10.9 PR TIMES「家庭内別居の割合って!?「きっかけ」「期間」「男性・女性の心理」「離婚率」について徹底調査」(2024.4.10現在))。

家庭内別居(家庭内離婚)のメリット・デメリット

家庭内別居のメリット

家庭内別居は、離婚や別居と比べるとこのようなメリットがあります。

家庭内別居のメリット(一例)

  • 経済的な負担が軽い
  • 子どもへの影響が少ない
  • 世間体を気にする必要がない

経済的な負担が軽い

家庭内別居の場合は、離婚や別居と異なり家賃や生活費を分担できる可能性があります。

金銭面でうまくやっていけるのであれば、別居するための新居探し、職探しをしなくてもよいので、経済的な負担は通常時とそれほど変わらないかもしれません。

子どもへの影響が少ない

家庭内別居の場合、子どもが両親と離れることなく、生活環境を維持できます。

離婚してひとり親になると、経済的に苦しくなって子どもの学費や生活費に影響が出てしまうことも多いものです。しかし、家庭内別居であれば、その心配は少ないでしょう。

世間体を気にする必要がない

家庭内別居をしていても、周りからは普通の夫婦に見えますので、子どもの人間関係や親戚づきあいなどに与える影響は少ないといえます。

関係改善の可能性がある

家庭内別居が夫婦の冷却期間となり、夫婦の関係改善の道が開けることもあります。完全に別居するよりも、家庭内別居のほうが夫婦の関係改善のチャンスは多いといえます。

家庭内別居のデメリット

一方で、家庭内別居にはこのようなデメリットもあります。

家庭内別居のデメリット

  • 精神的なストレス
  • 金銭的なトラブル
  • 子どもが気まずい思いをする

精神的なストレス

家庭内別居の場合、相手と同じ家で過ごさなければならないため、ストレスが溜まってしまいます。

声をかけても無視される、一方的に連絡し合うだけの関係性を続けることで、自己肯定感が失われてしまい、心が疲弊してしまうケースも多いでしょう。

金銭的なトラブル

家庭内別居の場合、家計が完全に分離されていないと、金銭トラブルに発展する可能性があります。

夫名義の自宅のローンは旦那が返済しているけれど、子どもの教育費については一切出してもらえず、貯金を切り崩して生活をしなければならないといった状況に陥るケースもあります。

家庭内別居においては、家事や家計に関するルール決めは欠かせません。

子どもが気まずい思いをする

家庭内別居の場合、家の中で、子どもは両親の不和を感じ取り、不安やストレスを抱える可能性があります。

父親に声をかけてはいけない、母親の話題を出してはいけないなど、子どもなりに神経をつかって生活を続けるケースも多いでしょう。

家庭内別居からの離婚方法

家庭内別居から離婚する方法3つ

家庭内別居から離婚する方法としては、大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります。

協議離婚や調停離婚は、夫婦間の話し合いによって離婚を成立させる方法であり、当事者の合意さえあれば、どのような理由でも離婚できます。

家庭内別居を続けた末にやっぱり夫婦関係を修復することができないということであれば、合意によって、協議離婚や調停離婚を成立させることもあるでしょう。

協議や調停を行っても離婚に合意ができなかった場合は、家庭裁判所に離婚裁判を申し立てて争います。

離婚する方法について詳しく知りたい方は、「あなたに最適な離婚の仕方は?|スムーズな離婚を実現するために」の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

家庭内別居は裁判離婚の理由になる?

裁判で離婚するには、民法に定められる法定離婚事由が存在し、婚姻関係が破綻していると認められる必要があります。

法定離婚事由

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上の生死不明
  4. 回復の見込みのない強度の精神病
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由

1~4にあたる離婚原因がない場合でも、ある程度の長期間別居をすることで5つ目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められ、裁判離婚できる可能性があります

裁判離婚に必要な別居期間に明確な基準はありませんが、3~5年程度がひとつの目安と考えられています。

ここで問題になるのが、家庭内別居の状態が「別居」といえるのかです。次の項目で詳しく述べます。

家庭内別居は「別居」になる?

裁判において、家庭内別居が「別居」と評価される可能性は低いというのが、実情です。

また、そもそも「家庭内別居」の状態にあると、裁判で認定してもらうことも簡単ではありません。

同居している夫婦であれば、通常、協力して共同生活をおくるものです。

家庭内別居をしている夫婦であっても、同じ屋根の下で同居していることに変わりないため、裁判所に家庭内別居を認定してもらうためには、夫婦が協力して共同生活をおくることができていないことを証明するための証拠を準備する必要があります。

家庭内別居の事実を認定してもらうには、たんに主張するだけではなく、完全に家計を分離している、配偶者の家事を手伝わないなどの事情が分かる証拠を積み重ね、婚姻関係の破綻を証明する必要があります。

ただし、このような証明が功を奏するとは断言できず、現実問題として、家庭内別居そのものを理由とした裁判離婚は非常に難しいものです。

なお、家庭内別居の裏に不倫やDV・モラハラがあるならば、それを理由に離婚を請求した方が認められる可能性は高いでしょう。

離婚をするための証拠(一例)

  • DVが分かる写真や日記を残す
  • ボイスレコーダーなどで、モラハラ発言の記録を残す
  • 家庭内別居において、家計が分離されていることが分かる証拠を残す
    etc.

家庭内別居からの離婚準備

家庭内別居中の離婚の切り出し方

家庭内別居中はそもそも顔を合わせないため、対面で離婚を切り出すのは難しいケースが多いでしょう。

その場合は、メールやLINE、置き手紙を用いて、離婚を申し入れたり話し合いのアポイントを取ることができます。

家庭内別居中に、どうしても顔を合わせずに話し合いをしたい場合は、弁護士に交渉を依頼するのもよいでしょう。
弁護士は相手方と連絡窓口になってくれるため、家でも相手と話さずに離婚の手続きを進めることができます。

また、引っ越しをして完全に別居を始めるという手段もあります。家庭内別居から完全な別居に移行することで、相手に本気度が伝わりますし、別居の実績があれば裁判で離婚が認められる可能性が高まります。

別居中は、収入の多い方の配偶者に婚姻費用(別居中の生活費)の分担を請求することができます。婚姻費用は相手にとって負担になりますので、相手が離婚に応じる動機のひとつになるでしょう。

なお離婚を切り出した後は、離婚条件についての話し合いを始めなければならないので、財産分与、年金分割、慰謝料、親権、養育費などについて、譲れない条件を考えておくとよいです。

家庭内別居から離婚する場合、経済的自立が大切

家庭内別居から離婚をするには、さまざまな準備をしておく必要がありますが、まずは経済的に自立できるようにしておくことが大切でしょう。

貯金をする、仕事を探す、離婚に伴う財産分与や慰謝料請求の準備をするなど、離婚にむけて準備を進める必要があります。

完全別居と家庭内別居、離婚のしやすさは?

完全別居とは?家庭内別居との違いは?

ここでは、夫婦で住まいを別々にすることを完全別居と呼びましょう。

完全別居と家庭内別居では離婚のしやすさが変わる傾向があるといっても過言ではありません。

完全別居と家庭内別居のどちらを選ぶかは、住まいを別々にする経済的余裕があるかなどのほか、離婚成立の可能性を高めたいかどうかが深くかかわってきます。

離婚成立の可能性を高めたい場合

まず、離婚裁判をおこしてでも離婚を成立させたいならば、家庭内別居ではなく、完全別居をして別居期間をもうけるのがよいでしょう。

また、離婚調停をおこす場合も、完全別居をした方が、離婚のしやすくなる傾向があるでしょう。

というのも、家庭内別居と、完全別居では調停委員の印象もかなり変わるからです。

また、離婚調停は夫婦が直接顔を合わせないことが前提の手続きです。

そのため、現実問題として、離婚調停の期日が終わって、同じ家に帰るというのはかなり気まずく感じるものでしょう。家で相手から嫌がらせを受ける可能性も捨てきれません。

夫婦関係の再構築を視野に入れる場合

離婚を検討しつつも、なかには、夫婦関係を再構築できる望みがあるケースや、スムーズに離婚の話し合いが進みそうなケースもあります。

そのような場合は、住む場所が離れると話し合いの機会が失われてしまうため、同じ屋根の下で家庭内別居をしつつ、お互いに冷静になってから話し合うのもよいでしょう。

家庭内別居からの離婚…注意点は?

離婚の財産分与とは?基準時は家庭内別居の時?

離婚時には、財産分与が可能になります。

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、夫婦が公平に分け合うという制度です。

家庭内別居から離婚することになった場合、どの時点の財産を、財産分与の基準とするかが問題になることがあります。

一般的に、別居を始めた時に夫婦の協力関係は失われるため、別居開始後に築かれた財産は財産分与の対象になりません。

家庭内別居の場合にもこれを適用するかはケースにより、なるべく財産を渡したくない相手方との間で、財産分与の基準時をめぐって争いになる可能性があります。

家庭内別居中の交際は不倫になる?

家庭内別居の状態では、まだ正式には離婚してない状態です。

そのため、配偶者以外の第三者と肉体関係(不貞行為)をもった場合、不倫となります。不貞行為(不倫)は、絶対に避けましょう

配偶者以外の第三者と性交渉などをおこなえば、自分が「有責配偶者」とされ、離婚の責任を問われかねません。

「有責配偶者」というのは、夫婦のうち、夫婦関係を破綻させる原因となった方のことをいいます。

有責配偶者からの離婚請求は、原則的に認められませんので、離婚したくてもできなくなります。そのうえ、有責配偶者は、離婚慰謝料を請求される側となります。

例外はある?夫婦関係破綻後の不貞行為は?

とはいえ、実際に、既に婚姻関係が破綻した状態の夫婦もいるでしょう。

夫婦関係が破綻している場合に、別居中に不倫をしたときは、慰謝料請求や離婚請求の理由にならないケースもあります。

ただし、すでに述べたとおり、家庭内別居の場合は、夫婦関係が破綻していないと判断されやすい傾向があります。

住まいを別にする別居であっても、それだけで夫婦関係が破綻していると認定されるわけではないので、家庭内別居の場合はより慎重になるべきです。

家庭内別居であれ、完全別居であれ、不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたことを証明できなければ、こちらが有責配偶者になってしまうことは避けられません。

離婚が済むまでは、配偶者以外の第三者との肉体関係を結ぶことは控えるほうが無難です。

家庭内別居は相手に生活費の分担を請求できる

別居中は、収入の多い方の配偶者に対して、婚姻費用(別居中の生活費)の分担を請求することができます。

婚姻費用の分担については、家庭内別居であっても同じく、請求することができます。

ひと月の婚姻費用の額を算出する際は、裁判所が公開している婚姻費用算定表(裁判所HP)がよく用いられます。

ただし、家庭内別居の婚姻費用は、完全に別居している場合に比べて低額になる可能性があります。

家庭内別居の場合は、同居しているので、家賃や光熱費はひと家庭分しかかからず、完全な別居よりも費用を抑えられるからです。

家庭内別居の場合は、同居のおかげで負担せずに済んだ部分を差し引いて、婚姻費用を支払ってもらうなどの方法をとることになるでしょう。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

もしも相手が婚姻費用の支払いに応じない場合は、婚姻費用分担請求調停を申し立てて、家庭裁判所の手続きによって請求することができます。

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家庭内別居・離婚の無料相談は弁護士まで

家庭内別居の状態にあって、何か月も会話をしていないという夫婦は少なくありません。そのようなケースでは、離婚の話し合いを始めることすら困難な場合もあります。

弁護士は、依頼者の代理人となって相手方との交渉を行うことができます。

また、家庭内別居の夫婦の離婚では、婚姻費用や財産分与の計算・交渉が複雑になります。家庭内別居の離婚は、弁護士に相談して有利に進めましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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