離婚の公正証書とは?作成の流れや内容は?メリットは強制執行?
- 離婚の公正証書とは?メリットは?
- 離婚の公正証書の作成方法は?いつ作成する?
- 離婚の公正証書は専門家に依頼するべき?
夫婦が離婚をする際には、子どものことやお金のことなど、様々な事柄を2人で話し合って決める必要があります。
しかし、口約束で話し合いを終えてしまうと、約束したお金が払われなかったり、後から言った言わないの争いになってしまう可能性があります。
そういったトラブルを防ぐために、公正証書を作成しておくと安心です。公正証書を作成する最大のメリットは、養育費、慰謝料、財産分与などの合意について、取り決め通りに金銭の支払いが行われなかった時に強制執行を行えるという点です。
特に養育費の取り決めに関しては、確実に支払いを受けるために公正証書化が非常に重視されており、公正証書の作成に補助金を出している自治体もあるほどです。
この記事では、公正証書がどのようなものなのか、作成するとどんなメリットがあるのか、どうやって作成するのかを解説します。
離婚の公正証書とは?どんなメリットがある?
離婚の公正証書とは?
公正証書とは、公証役場にて公証人に依頼して作成してもらう公文書です。
公正証書は、当事者の意思を証明し、紛争の蒸し返しを防ぐために、遺言や商取引のほか、離婚する際も利用されます。
離婚で作成する公正証書は、通常「離婚給付等契約公正証書」と呼ばれます。
公正証書を作成するのは、法務省が管轄する公証役場の公証人です。
公証人とは、元裁判官、検察官や弁護士など、法律の実務経験を持つ公証役場の職員で、公務員に準ずる立場にあります。
この公証人が、内容の正当性や当事者の合意があるかを確認した上で作成しますので、公正証書には強い効果があります。
離婚で公正証書が役立つ場面は?
離婚には大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法があります。このうち、公正証書が登場するのは、協議離婚の場面です。
協議離婚は、夫婦間で話し合いをして離婚を成立させる方法です。
協議離婚を成立させるために必要な手続きは離婚届を提出だけです。そのため、離婚すること自体に意識が向き、慰謝料などの離婚条件について、口約束だけだったり、全く決めずに離婚したりすることも多いものです。
しかし、口約束だけでは取り決めが守られる保証はありません。
協議離婚の条件にまつわる紛争(一例)
- 慰謝料を払ってくれない
- 養育費を払ってくれない
- 財産分与をしてくれない
etc.
場合によっては、「そんな約束はしていない」と主張されることもあるでしょう。
いくら請求しても議論が平行線をたどり埒が明かない場合、最終的には調停や裁判で争うことになります。そうなったら、反論できる証拠が無ければ、勝つことができません。
このような紛争がある場面で、確実に取り決めを実現させるためのアイテムとして、公正証書は役に立ちます。
離婚の公正証書の法的効果とは?強制執行ができる?
公証人が当事者の嘱託により作成した公正証書には、公正の効力が生じ、反証のない限り、完全な証拠力が生じます。
そのため、公正証書は、民事裁判において有効な証拠になります。
また、金銭の支払いが履行されなかった場合、公正証書に強制執行認諾文言を入れることができれば、裁判所の判決をもらわなくても、強制執行ができます。
そのため、可能であれば、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することをおすすめします。
公正証書の法的効果
- 裁判の有力な証拠になる
- 強制執行認諾文言があれば、裁判をおこして判決をもらわなくても、強制執行できる
なお、協議離婚の際にはよく離婚協議書が作成されます。
ただし、離婚協議書には、強制執行認諾文言を付けることはできず、取り決めを強制的に実現させるほどの強い効力は持ちません。
しかし、公正証書の作成の前提として、離婚条件を整理しておきたい場合など、離婚協議書は役立ちます。
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公正証書離婚と調停・裁判の違いは?
公証役場で公正証書を作成する場合と、家庭裁判所で調停離婚や裁判離婚をする場合の相違点を確認していきましょう。
まず、公正証書と調停・裁判の共通点としては、条件にもよりますが、強制執行がしやすくなるといった効果が生じる点です。
それでは、公正証書離婚と、調停離婚、裁判離婚の違いは何でしょうか?
期間 | 費用 | 夫婦同席の必要性 | |
---|---|---|---|
公正証書 | 数週間程度 | 数万円~十数万円 | あり |
調停 | 1か月~1年程度 | 3,000円程度 | ほとんどない |
裁判 | 半年~2年程度 | 数万円程度 | ほとんどない |
期間
まず、期間が異なります。公正証書は、申し込みから数週間で作成できます。一方、調停となると1か月〜1年程度かかることが多く、さらに裁判へ進むと調停の期間に加えて半年以上という時間がかかります。
迅速さの点では、公正証書が勝ることが分かります。
費用
次に、費用が異なります。公正証書は、比較的高い手数料がかかります。取り決めの内容や金額によって変わりますが、おおむね数万円〜十数万円程度となっています。
一方で調停は、基本は手数料と切手代などを合わせても3,000円程度となっています。さらに、請求の項目が増えるごとに手数料が加算されていきますが、公正証書に比べて安価になっています。
裁判では、基本の手数料13,000円にくわえ、請求の項目が増えるごとに手数料が加算されますが、全て合わせても数万円程度に収まります。したがって、費用面では公正証書がやや劣ることになります。
夫婦同席の必要性
さらに、公正証書と調停・裁判は、手続きの中で夫婦が同席する場面が異なります。相手と顔を合わせずに離婚したいときは、どちらを選べば良いのでしょうか。
公正証書を作成する際は、原則的には夫婦の同席が必須です。しかし調停では、夫婦の同席が求められる主な場面は、第一回期日のはじめと、調停成立時の2回のみとなっています。ただし、DVなどがあって同席することにより心身に危険が及ぶ可能性があれば、これらの手続きも夫婦別席で行われることがあります。
裁判にまで進んだ場合は、多くの方が弁護士に依頼をしています。そうすると、本人尋問がある日以外は弁護士が代わりに出廷することができますので、相手と会うことはほとんどありません。また、本人尋問の際も、DVなどの事情があって同席するのが危険な場合は、遮へい措置やビデオリンク方式といった配慮がなされています。
ですので、相手と顔を合わせたくない場合は、公正証書の作成は避けた方が良いでしょう。
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離婚の公正証書の記載内容
離婚の公正証書に書けるのはどんなこと?
公正証書には、離婚の際に話し合って決める様々なことを記載することができます。
離婚の公正証書(離婚給付等契約)に記載できる項目は、主に以下のようなものです。
離婚全般に関すること
離婚の公正証書には、離婚全般に関することとして、以下のような内容を記載します。
- 離婚の意思表示(離婚の合意)
- 離婚届の提出日・提出者
- 守秘義務
- 住所や勤務先が変わった際の通知義務
- 裁判管轄
- 清算条項(後から取り決め以外の請求をしないことを約束する条項)
- 強制執行認諾文言
強制執行認諾文言は、強制執行をおこなうために重要なものだと分かりましたが、他の条項はどうでしょうか。
お金に関すること
離婚の公正証書では、お金に関することとして、以下のような内容を記載します。
- 離婚慰謝料
- 離婚による財産分与
- 婚姻費用
- 年金分割(別途「年金分割合意書」にすることも可能)
- 期限の利益喪失
- 分割払いの金利
- 支払いが滞った時の遅延損害金
離婚による金銭問題として、慰謝料や財産分与は代表的なものといえます。
どのようなことに注意して、条項を設ける必要があるのでしょうか。
慰謝料については、金額、支払方法、支払期限などを記載します。
財産分与についても、それらの項目が必要になりますが、そもそも財産分与の対象について明記する必要がある場合もあります。
子どもに関すること
離婚の公正証書には、子どもに関することとして、以下のようなことを記載しておきます。
- 子どもの親権者・監護者
- 子どもの養育費
- 子どもとの面会交流
親権者や養育費、面会交流などについて取り決めておく必要がありますが、どのような点に注意しなければならないのでしょうか。
養育費については、支払う時期、毎月の支払金額、支払日、支払方法などを記載します。
面会交流については、子どもと会う頻度を明記したりします。なお、面会交流できなければ養育費を支払わないなどという条項は設けることができません。
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公正証書の作成上の注意点(書くべきこと・書けないことetc.)
せっかく公正証書を作成しても、思った通りの効力を発揮してくれないことがあり得ます。公正証書を作成するときには、以下の点に注意してください。
- 強制執行認諾文言を含める
- 強制執行できるのは、一定の金銭の支払いのみ
- 双方の同意のもとで作成する
- 法令に違反する内容は定められない
強制執行認諾文言を含める
公正証書の中に以下のような強制執行認諾文言がなければ、ただちには強制執行ができません。
そのため、公正証書のメリットを最大限生かすためには、強制執行認諾文言を入れておく必要があるでしょう。
強制執行認諾文言は、以下のような条項になります。
強制執行認諾文言の例
第●条(強制執行認諾)
甲は、第〇条の債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。
強制執行できるのは、一定の金銭の支払いのみ
公正証書によって強制執行ができるのは、一定の金銭の支払いのみと決まっています。
したがって、支払う金額と支払時期(支払の始期・終期も含む)を公正証書の中で明示していなければ、強制執行をすることができません。
また、「子どもとの面会交流を公正証書で定めたのに会わせてくれない」などといった金銭の支払い以外の問題については、調停や裁判の手続きを経た上で、履行勧告等によって実現を目指すことになります。
双方の同意がないと作成できない・書けない
公正証書は、双方の同意がなければ作成できません。同意していない内容について、公正証書に記載することもできません。
夫婦が話し合って合意した上で、原則的には2人で公証役場に出向く必要があります。
また、公正証書の内容を後から変更したくなった際も、夫婦の同意が必要になります。
法令に違反する内容は定められない
公序良俗に反する条項や、法令に違反する条項を公正証書に盛り込もうとしても、公証人は認めてくれません。
たとえば、以下のような条項は夫婦の合意があったとしても公正証書に書くことができません。
- 慰謝料として1億円を支払う
- 養育費の支払い・受け取りを拒否する
- 面会交流を拒否する
- 将来的な親権者の変更を予定する
- 将来的な親権者の変更を拒否する
- 再婚を禁止する
- 利息制限法の上限を超える金利を定める
離婚の公正証書の作成方法は?流れ・費用・必要書類など
いつ作成する?(協議離婚の流れ)
協議離婚は、以下のような流れで行うことが多いです。
- 離婚について協議をする
- 離婚協議書や公正証書を作成する
- 離婚届を役所に提出する
このように、公正証書は離婚届の提出前に作成するのが通常ですが、離婚届を提出した後でも、双方が合意すれば作成することは可能です。
離婚の公正証書の作成の流れは?
公正証書を作成する際の流れは以下の通りです。
ただし、利用する公証役場によっては流れが異なる場合があるため、事前に電話で問い合わせることをおすすめします。
- 当事者間で離婚の条件を協議し、案文を作成する
- 公証役場に予約を取り、面談をする
- 予約した日時に夫婦で公証役場へ行く
- 作成した公正証書を夫婦に読み聞かせ、記名押印をする
- 手数料を支払い、完成した公正証書の写しを受け取る
1.当事者間で離婚の条件を協議し、案文を作成する
公証人は、公正証書に記載したい内容が違法ではないか、無効になってしまわないかの審査は行いますが、当事者同士の交渉や調整を行ってくれるわけではありません。
ですので、公正証書に記載することはあらかじめ決めておき、大体の案文を作成してから公証役場へ向かってください。すでに離婚協議書を作成してある場合は、それを持っていけば足りるでしょう。
離婚協議書の案文については「離婚協議書のサンプル・ひな形」のページでご紹介していますので、公正証書の案文作成の際、ご活用ください。
2.公証役場に予約を取り、面談をする
公正証書の作成を開始してもらうには、まず公証人との面談が必要です。多くの公証役場では予約制を取っているため、事前に電話で面談の予約をしておく必要があります。
公証役場は全国に約300か所あり、自宅や職場の近くなど、好きなところに申し込むことができます。交渉役場の具体的な所在地は、日本公証人連合会のHPで確認することができます。
面談の際に、公証人に公正証書に記載したい内容を伝えます。ですので、この時点でおおまかな内容が固まっている必要があります。案文やメモ書きを持って行きましょう。
また、必要書類もこの時に提出します。
この時は、夫婦の一方か代理人が出席していれば問題ありませんので、依頼を受けた弁護士などが行くこともあります。
来所ではなくFAXやメールでの打ち合わせが可能な公証役場もあるようですが、どちらにしろ事前に問い合わせをすることをおすすめします。
3.公正証書の作成が始まる
公証人は申し込み内容をもとに公正証書の原稿の作成に着手します。
ほとんどの場合、公正証書がその場で完成することはないので、原稿が完成するまで待つことになります。記載内容によりますが、作成には1〜2週間ほどかかることが多いようです。
公証人は、作成した原稿と必要な手数料の額をFAXやメールなどで送付してきますので、当事者はそれを見て内容に問題がないか確認します。
記載する内容や提出書類に不備があった場合は、再度公証役場に行ったり、電話や郵便で訂正を行います。
4.予約した日時に夫婦で公証役場へ行く
公正証書の原稿が完成したら公証役場から連絡が来るので、夫婦が公証役場へ出向く日時を決めて予約を取ります。そして、予約した日時に2人で公証役場へ出向き、原稿の最終確認を行います。
この時は、本人確認資料と印鑑を持参してください。
2人が揃って公証役場へ行くのが原則ですが、どうしても出席できない・したくない場合は、公証人に相談してみてください。公証人の判断で、代理人による作成が可能になる場合もあります。
5.作成した公正証書を夫婦に読み聞かせ、署名捺印をする
夫婦は公正証書の原稿を再度確認し、問題が見つかれば公証人がその場で訂正します。
公正証書が完成したら、公証人は夫婦に対して内容を読み聞かせます。問題がなければそれぞれが署名捺印をし、公正証書が完成します。
6.手数料を支払い、完成した公正証書の写しを受け取る
最後に手数料を現金で支払って、完成した公正証書の写し(謄本、正本)を受け取ります。原本は公証役場に保管されます。受け取った写しは、後々必要になることがあるため、なくさないように保管してください。
なお、公正証書の作成を途中で取りやめた場合も、手数料を支払う必要があります。
公正証書の作成にかかる費用は?
公正証書の作成には、公証人手数料が必要です。公証人手数料は、公正証書に取り決める金銭の支払い額(目的金額)に応じて決められます。
離婚の際には、慰謝料や養育費など、複数の金銭の支払いを1つの公正証書で取り決めることがほとんどです。しかし、単にその合計が目的金額となるわけではありません。
慰謝料・財産分与と養育費とで別々に手数料を計算し、その合計を支払うことになります。また、年金分割に関しては扱いが違います。
養育費は、必ずしも月々の支払いの総額ではない点に注意してください。支払いが10年以上に及ぶ場合は、10年分の金額を目的金額として手数料を計算します。
目的金額 | 公証人手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 1万1000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万7000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 2万3000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 2万9000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 4万3000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
さらに、年金分割を定める場合は追加で1万1000円の手数料がかかります。
ただし、年金分割は、公正証書ではなく「年金分割合意書」という書面を作成して公証人の認証を受けることも可能です。その場合は手数料が5500円となります。プライバシーや費用面からすると、年金分割合意書を作成するほうが良いかもしれません。
そのほか、送達や証書の枚数によって、若干の加算があります。
また、提出する謄本などの取得費用も必要です。
公正証書の作成費用をどちらが負担するかは、事前に夫婦で話し合っておくのが良いでしょう。
公正証書の作成に必要な書類は?
公正証書の作成に必要な書類は以下のようなものです。
- 本人確認資料
- 婚姻関係を確認するための戸籍謄本
- 財産分与をする場合
→分与する財産を特定するための書類 - 年金分割をする場合
→年金分割のための情報通知書・年金手帳、年金分割合意書etc. - 代理人が作成する場合
→委任状・代理人の本人確認資料
留意点
公正証書に盛り込む内容や公正証書作成のタイミングによって、必要な書類が異なります。
自分たちのケースではどのような書類が必要なのかを、あらかじめ公証役場に確認しておくことをおすすめします。
本人確認資料
公正証書を作成する際は、以下のうちいずれかの組み合わせで本人確認が必要です。
- 印鑑登録証明書(作成日から3か月以内に発行したもの)と実印
- 顔写真のある身分証明書(運転免許証、パスポートなど)と認印
なお、代理人が作成に行く場合は、本人の印鑑登録証明書が必要になります。
婚姻関係を確認するための戸籍謄本
当事者が夫婦であることを証明するために、戸籍謄本が必要になります。
離婚前に公正証書を作成する場合は、2人が戸籍上夫婦であることを示す必要があり、同じ戸籍に入っているため戸籍謄本は1通あれば足ります。
離婚後の場合は、2人が既に離婚をしていることを示す必要があり、夫婦それぞれの戸籍謄本が必要になります。
分与する財産を特定するための書類
財産分与を公正証書に盛り込む場合は、分与する財産を特定するための書類として、分与する財産やその価値を具体的に示す必要があります。
そのために、例えば以下のような書類が必要です。
- 不動産の登記簿謄本
- 固定資産評価証明書
- 車検証
- 通帳
- 保険証券
- 解約返戻金証明書
年金分割のための情報通知書・年金手帳
年金分割を公正証書で定める場合には、年金分割のための情報通知書と2人の年金手帳が必要です。
情報通知書の取得には3週間前後かかりますので、早めに準備を始めておきましょう。
委任状・代理人の本人確認資料(代理人が作成する場合)
代理人による公正証書の作成が認められた場合は、本人による委任状が必要になります。委任状には、本人の実印と印鑑登録証明書を添えます。
また、代理人の本人確認資料も必要です。
【コラム】公正証書で強制執行する手続き
公正証書による強制執行をおこなうには、執行文の付与と、送達が必要になります。
執行文の付与
強制執行を始めるためには、債務名義(公正証書)にさらに執行文を付与してもらう必要があります。この手続きも、公証役場にて行います。
送達
強制執行を行うために必要な手続きのひとつとして、送達というものがあります。送達とは、事件の関係者に対して、所定の手続きに従って書類を送り届けることです。
強制執行を行う場合は、債務者に債務名義(公正証書)の謄本が届いていることが必要で、謄本の送達を証明するために「送達証明書」の提出が求められます。
公証人に送達の申し立てをすると、公正証書の謄本を債務者へ発送してもらうことができ、送達証明書を受け取ることができます。
ただし、公正証書作成時に債務者本人が出席していれば、その場で送達を済ませることが可能です。これを交付送達といいます。
公正証書の作成時に代理人が出席した場合は交付送達は行えず、後から送達の申し立てをする手間が必要になります。交付送達は、当事者本人が公正証書作成に出席するメリットであるといえるでしょう。
離婚の公正証書の作成を専門家に依頼するメリット
公正証書の作成の手続きは、自分たちだけでも行えます。しかし、複雑な手続きが必要ですし、有効な取り決めを作成するには専門知識も必要です。
手続きや相手との交渉に不安がある場合は、弁護士や行政書士・司法書士などの専門家への依頼も検討してみてはいかがでしょうか。
弁護士に依頼するとできること
弁護士に依頼すると、公正証書の作成に関する手続きなどを全て任せることができます。そして、弁護士に依頼する最大のメリットは、相手との交渉を取り持ってくれる点です。相手との連絡を全て任せてしまうことも可能です。
行政書士や司法書士は、公正証書作成の手続きを行うことはできますが、交渉を仲裁したり、取り決めの内容にアドバイスをすることが法律上できません。
行政書士に依頼するとできること
行政書士は、法律文書作成や手続きの専門家です。公証役場との連絡や手続き、必要な書類の準備を行えます。また、夫婦間の合意をもとに、公正証書の案文を作成することもできます。
ただし、相手との交渉の仲裁やアドバイスをすることはできません。その分、弁護士と比べて費用は安価になっています。
司法書士に依頼するとできること
司法書士も、公証役場との連絡や手続き、必要な書類の準備をすることができます。夫婦間の合意をもとに、公正証書の案文を作成することもできます。
また、司法書士は登記の専門家ですので、不動産に関する取り決めをする場合は、登記の手続きも任せることができます。ただし、行政書士と同じく、交渉を取り持ったり、取り決めの内容に関与することはできません。
司法書士に依頼する場合も、弁護士と比べて費用を抑えることができるのがメリットです。
弁護士・行政書士・司法書士、どれを選んだらいい?
取り決めの内容がすでに決まっている場合は、行政書士や司法書士に依頼して、費用を抑えつつ公正証書作成にかかる手間を省くのが良いでしょう。
相手との交渉が難航していたり、どんな取り決めをすればいいか分からない場合は、弁護士に依頼して総合的なサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
離婚届が受理されれば協議離婚はできますが、離婚にまつわる数々の不安をなくすには公正証書を作成しておくと安心です。
公正証書を作成しておけば、離婚にまつわる金銭の支払いがとどこおった時に、強制執行がしやすくなるメリットがあります。
養育費、財産分与、慰謝料などの支払いが問題になる夫婦間では、万が一に備えて離婚給付等契約(公正証書)を、離婚する前に作成しておくことが大切です。
また、年金の合意分割をおこなう場合には、離婚給付等契約の公正証書か、別途合意書を作成して公証人の認証を受ければ、2人そろって窓口に行く必要がなくなるので便利です。
なお、離婚時に公正証書を作成する前提として、夫婦の話し合いや資料の準備などが必要となります。
離婚の公正証書の4つのポイント
- 離婚の公正証書を作成するタイミングは、離婚届を出す前
- 夫婦で話し合い、合意できなければ公正証書離婚できない
- 資料をそろえて、公証役場で作成
- 離婚の話し合いや手続きで困ったら、専門家に相談してみる
何から始めればよいのか分からない方、離婚の手続きについて専門家のサポートが欲しい方もおられるでしょう。
そのような方は、離婚をあつかう弁護士の無料相談をご活用ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
守秘義務とは、夫婦間しか知り得ないことを第三者に口外しない義務です。
清算条項は、当事者間に一切の債権債務が無いことを確認する条項です。
両方とも書面作成の際、非常に重要になる項目です。