財産分与の時効は離婚から何年?2種類の請求期限を解説

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多くの夫婦は、離婚と同時に財産分与を行います。

しかし、離婚時に財産分与の取り決めをしていなかった方や、離婚後に相手が財産を隠し持っていることに気づいた方もいるでしょう。

そのような場合は、離婚後に財産分与を請求することができます。

ただし、財産分与の請求には期限があります

この記事では、財産分与の請求に関わる2つの期限と、離婚後に財産分与を請求する方法について解説します。

財産分与の時効は2年?10年?

財産分与には2つの期限がある

財産分与は、離婚時にも離婚後にも請求が可能ですが、何年後でも請求できるわけではありません。

離婚後の財産分与の請求には、2種類の期限が設けられています。

2年の除斥期間

財産分与請求権には、離婚から2年の除斥期間(じょせききかん)が定められています。そのため、離婚から2年が経ってしまうと、財産分与の請求ができなくなります。

10年の消滅時効

財産分与の話し合いがまとまったり、調停や裁判が終わると、「どの財産をどのくらい受け取る」という具体的な権利が確定します。金銭の支払いや財産の引渡しを受ける権利は、権利が確定した時から10年で消滅時効にかかります

したがって、権利の確定後に相手が支払いを履行せず、こちらから何のアクションも起こさなければ、10年で権利が消滅してしまいます。

消滅時効と除斥期間の違い

消滅時効も除斥期間も、一定期間権利を行使しないことによって、その権利が消滅するルールであるという点は同じです。しかし、それぞれ異なる点もあります。

消滅時効除斥期間
猶予・更新ありなし
援用必要不要
起算点権利を行使できることを知った時権利が発生した時

猶予・更新

消滅時効は、権利者(請求する側)が期間内に一定の行為を行うことで、猶予されたり、更新されて最初から数えなおしになります。

一方、除斥期間には、完成猶予や更新の制度がありません。

援用

時効は、義務者(支払う側)が援用しなければ効果を発揮しません。つまり、時効が経過していても、相手方が時効を援用すると宣言しない限り権利は失われません。

一方、除斥期間は、義務者が援用しなくても、裁判所の職権により強制的に適用されます。

起算点

除斥期間と消滅時効は、起算点も異なります。

消滅時効は、権利者が権利を行使できることを知った時にカウントが始まります。したがって、権利者が請求権を認識していなかった間は、時効が進行しません。

除斥期間のカウントは、権利者が権利の存在を知らなくても進行します。

民法改正で財産分与の時効はどうなった?

2020年に民法が改正され、消滅時効と除斥期間に関するルールが一部変更されました。

例えば、不貞慰謝料の請求権には、「不倫をした時から20年」という除斥期間が設定されていましたが、この改正によって、除斥期間が消滅時効に改められ、時効の完成が猶予・更新されるようになりました。

一方、今回の民法改正では、財産分与の時効と除斥期間に関する規定は変更されませんでした

2年が過ぎたら財産分与を請求できない?

離婚から2年が過ぎると、原則として財産分与を請求することができなくなります。ただし、これは裁判で財産分与を請求する場合です。

除斥期間は、裁判所が適用することによって効果を発揮します。したがって、離婚から2年が経っていても、裁判外で任意に財産分与を行うことは可能です。

財産分与の時効を延ばす方法は?

2年の除斥期間は延ばせない

離婚から2年という除斥期間は、何をしても延ばすことはできません。

ただし、2年以内に家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てた場合に限り、調停・裁判中に2年を迎えてしまっても請求権が失われません。

10年の時効が完成猶予・更新される条件は?

10年の消滅時効は、権利者が以下のような行為を行うことで、完成が猶予されたり、最初から数えなおしになる(更新される)ことがあります。

  • 裁判上の請求
  • 債務の承認
  • 催告
  • 差押え、仮差押え、仮処分

離婚後に財産分与を請求する方法は?

直接請求する

離婚後でも、財産分与の話し合いの手順は変わりません。本人に直接財産分与の請求を行い、話し合います。

電話やメール、口頭などで請求するのもよいですし、内容証明郵便を送ったり、弁護士を通して連絡することもできます。

ただし、本人に請求を行っても、調停を申し立てない限りは除斥期間が進行してしまいます。話し合いがまとまりそうにない場合や除斥期間が迫っている場合は、財産分与請求調停を申し立てましょう。

財産分与請求調停を申し立てる

家庭裁判所に財産分与請求調停を申し立てて、裁判所の調停委員会を介して財産分与について話し合うことができます。

調停の中で双方が合意できれば、調停は成立となり、財産を受け取る権利が確定します。調停が不成立となった場合は、自動的に審判の手続きに移行します。

審判は、裁判官が財産分与の内容を決定する手続です。

参考

裁判所|財産分与請求調停

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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