財産分与の調停と審判移行の流れ、拒否された場合の対処法

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財産分与の調停

財産分与の調停は、相手が話し合いに応じない場合でも、家庭裁判所の調停委員を介して財産分与の解決を目指せる手続きです。

法務省が令和3年に実施した「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査」によると、財産分与の取り決めを行った人のうち約12%が調停による合意で解決しており、協議では解決が難しい場合の有力な選択肢となっています。

もし調停がまとまらなかった場合、離婚前であれば裁判に進むことができます。離婚後の財産分与請求については、調停が不成立になると審判へ移り、最終的には裁判官が判断を下します。

この記事では、財産分与に関する調停の基本的な流れ、調停が不成立となった後の審判移行の仕組み、相手に拒否された場合の対処法、さらに調停で争いになりやすい4つのポイントについて解説します。

目次

財産分与の調停とは?

財産分与は夫婦が協力して築いた財産を分け合う制度

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際に分け合う手続きです。対象となる財産は、家や土地などの不動産、車、預貯金、有価証券、退職金など多岐にわたります。

財産分与の割合は原則として2分の1ずつとされていますが、何を分与するか、いくらずつ分け合うかは、夫婦が話し合って自由に決めることができます。

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調停は裁判所の調停委員が間に入る話し合いの手続き

調停とは、夫婦だけでは話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所の調停委員が間に入り、合意を目指して話し合う手続きです。

裁判のように裁判官が結論を出す手続きではなく、当事者同士の合意が得られなければ不成立で終わります。調停では夫婦が直接顔を合わせることはほとんどなく、基本的には男女2名の調停委員と交互に面談する形で進めます。

離婚前と離婚後の調停手続きの違い

離婚前と離婚後では利用できる手続きが少し違います。

財産分与について話し合う調停

  • 離婚前・・・離婚調停
  • 離婚後・・・財産分与請求調停

離婚調停とは、離婚の合意ができない夫婦が、離婚することの可否や親権、養育費、慰謝料など離婚条件全般について広く話し合うものです。

一方、財産分与請求調停は、すでに離婚した夫婦が、財産分与についてのみ話し合うものです。

手続きの名称が異なるとはいえ、離婚前と離婚後で話し合う内容が大きく違うわけではありません。

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財産分与の調停を利用すべきケースは?

財産分与の調停は、協議では解決できない場合の選択肢です。具体的には、次の2つのケースで利用を検討してください。

相手が協議に応じない場合

財産分与は、まず夫婦間の協議で決めるのが原則です(民法第768条1項)。

しかし、相手が協議に応じない、または話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることで、調停委員を介した解決を図ることができます。

調停では離婚そのものだけでなく、財産分与や慰謝料、年金分割といった財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。

拒否された場合の具体的な対処法については、後述の「財産分与は原則として拒否できない」セクションで詳しく解説します。

離婚後に財産分与を請求したい場合

財産分与について合意しないまま離婚した場合でも、一定期間内であれば財産分与請求調停を申し立てることができます。2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚後5年以内、2026年3月31日以前に離婚した場合は2年以内が請求できる期限です(民法第768条)。

この期限を過ぎると財産分与を請求する権利が消滅するため、離婚後に財産分与の取り決めをしていないことに気づいた場合は、早めに調停の申し立てを検討してください。

財産分与の調停の流れ

離婚調停も財産分与請求調停も、基本的な流れは変わりません。

申立書を家庭裁判所に提出する

調停を利用したい場合は、一方の当事者が離婚調停申立書・財産分与請求調停申立書などいくつかの書類を作成して、管轄する家庭裁判所に提出します。

離婚調停と財産分与請求調停では、使用する申立書が異なるため注意してください。

また、財産に関する資料も併せて提出します。

調停の費用も申立時に支払います。費用の内訳は裁判所に納める収入印紙、切手代、戸籍謄本の取得費用で、合計で3,000円程度です(裁判所によって異なります)。

調停の申し立て方法について詳しくは、『【記入例あり】離婚調停申し立ての流れ|必要書類・書き方を徹底解説』をご覧ください。

なお、申立書の書式や記載例は、裁判所の公式サイトで公開されています。手続きの詳細を確認する際は、あわせてチェックしておくと安心です。

裁判所|夫婦関係調整調停(離婚)の申立書
裁判所|財産分与請求調停の申立書

調停期日が開かれ、話し合いが行われる

第1回の調停期日が決まると、裁判所から当事者双方に向けて呼出状が届きます。1回目の調停は、申し立てから1~2か月後に行われることが多いようです。

調停が行われる日には夫婦が裁判所に出向き、別々に調停委員と面談します。1回の面談は30分~1時間程度のことが多く、それを2往復ほど繰り返します。

調停委員は、夫婦の一方が話したことについて、もう一方に質問をします。それを繰り返して、意見の調整を行います。

夫婦が合意に至るまでの間、1か月に1回程度の頻度で調停期日が繰り返されます。

成立または不成立となって調停が終了

離婚することや財産分与についての合意ができたら、調停は成立となり、調停調書が作成されます。

反対に、これ以上調停を続けるべきでないと判断された場合には、調停は不成立となって終了します。

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財産分与調停が不成立になった後の審判移行

調停が不成立となった後の流れは、離婚前と離婚後で異なります。

財産分与の話し合いの流れ

離婚前の調停が不成立になった場合

離婚調停が不成立となった後も離婚を求める場合は、離婚裁判を起こす必要があります。裁判に進むには、原則として事前に調停を経ていることが求められます。

裁判では、離婚が認められるかどうかに加え、財産分与についてもあわせて判断を求めることが可能です。

また、調停がまとまらなかった場合でも、当事者の事情を踏まえて、裁判所が「調停に代わる審判」という形で結論を示すことがあります。ただし、この手続きが用いられるケースは多くなく、通常は調停不成立のまま終了します。

離婚後の財産分与請求調停は審判へ移行する

離婚後の財産分与請求調停がまとまらなかった場合、手続きは審判へ移行します。

新たに申し立てをする必要はなく、裁判官が提出資料や当事者の事情を踏まえて、分与の可否や金額、方法を判断します。そのため、調停で合意に至らなくても、最終的には裁判官による結論が示される仕組みになっています。

なお、財産分与については、最初から審判を申し立てることも可能です。ただし、その場合でも裁判所の判断により、まずは調停での話し合いが行われることがあります。

審判の結果に不服がある場合の対応

審判の結果に納得できない場合は、2週間以内であれば、即時抗告(高等裁判所への不服申立て)が可能です。

申し立てを行うことで、高等裁判所であらためて判断を受けられます。

審判に進んだ後の手続きは複雑になることもあるため、早めに弁護士へ相談することも検討するとよいでしょう。

財産分与は原則として拒否できない

拒否が認められない理由と法的根拠

財産分与を請求する権利は、法律で認められた権利です。

双方の合意によって財産分与を放棄することはできますが、相手方から請求されたら原則として財産分与を拒否することはできません

たとえ一方が専業主婦であっても、家事や育児によって財産の形成に貢献したといえるため、原則として2分の1の割合で財産分与を受け取る権利があります。

共働きでも、双方に共有の財産があるのであれば、収入の多寡に関わらず財産分与を行います。

ただし、相手方が特有財産を主張したり、借金と相殺したりして可能な限り支払う額を少なくしようとすることは十分に考えられます。

離婚前に拒否された場合の3つの対処法

離婚協議で相手方が財産分与を拒否している場合は、まず離婚調停の申し立てを考えましょう。

調停を行っても合意が難しい場合は、夫婦で再度協議するか、離婚裁判を申し立て、附帯処分として財産分与についての審理を求めることになります。

訴訟中に裁判官から和解を促されることもよくありますが、和解ができなければ最終的に裁判官が判決を言い渡します。

このように、裁判を起こせば相手の合意がなくても財産分与について決まります。

なお、日本の制度上、いきなり離婚裁判を申し立てることはできません。離婚裁判を起こすには、事前に離婚調停を行って不成立になっている必要があります(調停前置主義)。

また、弁護士に交渉を依頼するのも有効な手段です。

離婚後に拒否された場合は財産分与請求調停を申し立てる

財産分与について合意せずに離婚し、後から財産分与を請求したいという場合は、財産分与請求調停を申し立てましょう。

財産の引き渡しを拒否された場合は強制執行が可能

財産分与の合意をしたのに、離婚後に財産分与の引き渡しを拒まれているという場合は、強制執行の手続きを使って引き渡しを実現できる可能性があります。

ここでいう強制執行とは、裁判所が相手方の給与や財産を差し押さえることです。

強制執行ができる条件や差し押さえのやり方については、『離婚の強制執行で未払い金を回収|養育費・慰謝料等の手続きの流れと費用』で解説しています。

財産分与の調停で決める4つの争点

離婚調停では、離婚をするかどうかを話し合うのはもちろんですが、財産分与や慰謝料、親権、養育費、面会交流、婚姻費用についても併せて話し合うことができます。

その中でも、財産分与などお金に関する問題は、争いになりやすい部分です。

財産分与の話し合いでよく争点になるのは、以下の4点です。

共有財産と特有財産の範囲

夫婦の双方が保有する財産のうち、財産分与の対象となるものを共有財産、財産分与の対象から除く個人の財産を特有財産と呼びます。

婚姻前から使用している口座の預貯金や、親から頭金の援助を受けて購入した家などは、共有財産として扱うべきかどうかはっきりしないことが多く、双方の主張がぶつかりやすいです。

財産を手放したくない人は、特有財産であることを主張してくるでしょう。

また、住宅ローンや自動車ローンなどの借金子ども名義の預貯金退職金なども、財産分与の対象に含めるかどうかの争いになることがあります。

財産形成への貢献度を示す寄与割合

寄与割合とは、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度を示す割合です。夫婦の財産は寄与割合に応じて分けられます。

財産分与の割合は原則として2分の1ですが、割合を変更することも可能です。その場合、それぞれが財産の形成にどれくらい貢献したかが争われます。

不動産や車など現物の評価方法

現金や預貯金はそのまま半分ずつに分ければよいですが、不動産や車などの分割に適さない財産は、何円の価値があるかを評価して相当する価値を分け合います。

分与する側からすれば、低く評価した方が相手に渡す額が少なくなります。受け取る側からすれば、高く評価したほうが有利になります。

財産の評価方法は一通りではありませんので、どの評価方法を選ぶかで争いが生じることがあります。

財産を確定する基準時の考え方

財産分与の基準時とは、どの時点の財産をもとに財産分与額を算定するかという基準となる日のことです。

原則として、別居した時(夫婦の協力関係が終わった日)の財産を基準にしますが、そもそも別居日がいつなのか、別居後も協力関係があったかは個別の判断が必要です。

また、価値の変動しやすい財産に関しても、どの時点の価値を基準とするかが非常に重要です。

財産分与の基準時については、『財産分与の基準時|いつの時点の財産が対象?よくあるトラブルと解決法』の中でも解説しています。

財産分与の調停で聞かれることと必要な持ち物

調停で聞かれる主な質問内容

離婚調停では、調停委員から様々なことについて質問されます。その中でも、財産分与に関しては以下のような事項がよく聞かれます。

  • 希望する財産分与の額・内容
  • 夫婦の財産の状況

限られた時間の中ですべての主張を伝えるのは簡単ではありませんので、伝えたいことや聞きたいことをまとめたメモを作成して持っていくとよいでしょう。

調停当日の持ち物リスト

離婚調停の際には、以下のような物を持っていきましょう。

  • 本人確認書類
  • 印鑑
  • スケジュール帳
  • メモ帳・筆記用具
  • 話したいことをまとめたメモ
  • 裁判所に提出した書類の控え
  • 財産に関する資料
  • 電卓
  • 振込先口座のわかるもの

太字は、財産分与を請求するときに必要な物です。

離婚調停で財産分与を請求する場合は、相手方の財産の内容を証明する資料を提出する必要があります。財産の資料は、調停の申立書類と一緒に提出するか、調停期日に持参します。

電卓は財産分与などの金額を計算する際にあると役立ちます。

また、財産分与の振込先口座の情報もメモして持っていきましょう。

これらのほかに、裁判所から資料などを持ってくるように指示されることがありますので、指示に従って用意します。

財産分与調停の4つのメリットと注意点

調停を利用する4つのメリット

財産分与調停のメリット

  • 相手と直接会わないため、冷静な気持ちで話ができる
  • 第三者からの客観的な意見を得られる
  • 財産開示を促してもらえる
  • 債務名義が得られる

相手と直接会わないため、冷静な気持ちで話ができる

調停中に夫婦が顔を合わせることは基本的にはありません。そのため、相手と会うのが不安な方や、顔を合わせるとヒートアップしてしまいそうだという方でも安心して利用することができます。

冷静な気持ちで話し合うことができるため、合理的な判断がしやすいといえます。

第三者からの客観的な意見を得られる

調停委員という第三者からの客観的な意見を得られるのも調停のメリットです。

妥当な財産分与方法などといった情報を、初めて離婚する人が手に入れるのは簡単ではありません。調停委員のアドバイスを受けることで、一方的に不利な条件で合意してしまうことを防げるでしょう。

財産開示を促してもらえる

財産分与の際に相手が財産を隠していると、こちらが受け取れる財産が少なくなってしまいますので、何とかして相手の財産を把握しなければなりません。

こちらから相手に対して銀行口座などの開示を求めることはできますが、法的な手続きではないため、応じてもらえないことも少なくありません。

そういった場合、調停委員が相手方に財産を開示するよう説得してくれることもあります。

債務名義が得られる

調停で財産分与が決定すると、債務名義が得られます。

債務名義とは、金銭などの支払いを受ける権利があることを証明する書類です。

これがあると、相手方が財産分与を履行しなかった場合に、強制執行(差し押さえ)を行って強制的に実現させることができるようになります。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

協議離婚をする際にも、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成すれば同様の効果が得られます。ただし、公正証書の作成には夫婦間でやり取りする金額に応じて5,000円~数万円の手数料が必要です。

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調停利用時の注意点

一方で、何度も裁判所に足を運んで話し合いを行ったとしても、最終的に双方が合意しなければ離婚調停は成立しないというデメリットがあります。

離婚後の財産分与請求調停は、調停が不成立になると審判へ移行するため、ほぼ確実に裁判官の判断が得られます。

しかし、当事者が審判の結果に納得できなければ、2週間以内に即時抗告を申し立てて審理をやりなおしにすることができるため、必ずしも結果が確定するものではありません。

財産分与の調停に関するよくある質問

Q. 財産分与の調停はいつまでに申し立てられる?

離婚後に財産分与の調停を申し立てられる期限は、2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚から5年以内、2026年3月31日以前に離婚した場合は2年以内です(民法第768条)。離婚前の場合は期限の制限はありません。

Q. 調停が不成立になったら審判に移行する?

離婚後の財産分与請求調停が不成立になった場合、審判手続へ移行します。新たな申し立ては不要で、裁判官が一切の事情を考慮して分与の内容を決定します。

Q. 相手の通帳を調停で開示させられる?

調停や裁判では、家庭裁判所の調査嘱託により預貯金残高や取引履歴の開示を求めることができます。法改正により、裁判所が当事者に財産情報の開示を命じる権限も明確化され、財産調査がより円滑になりました。

Q. 財産分与の調停費用はいくら?

財産分与の調停にかかる実費は、申立手数料(収入印紙1,200円)と連絡用郵便切手です。郵便切手の金額は申立先の裁判所によって異なるため、申立先の裁判所に確認してください。弁護士に依頼する場合は別途弁護士費用が必要になります。

まとめ

財産分与の話し合いがうまくまとまらない時は、離婚調停で財産分与についても話し合うことができます。

また、財産分与について決めずに離婚した場合も、2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚後5年以内、2026年3月31日以前に離婚した場合は2年以内であれば、財産分与請求調停を起こして財産分与を請求することができます(民法第768条)。

財産分与には、財産の範囲や評価方法などに関する専門的な判断が必要になるため、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了