離婚調停不成立後に離婚する方法|不成立にしないポイントも解説
せっかく離婚調停を申し立てたのに不成立になってしまったら、その後が不安ですよね。
しかし、これで道が閉ざされたわけではありません。
離婚調停が不成立になった後でも、離婚する方法や離婚条件を決める方法はあります。
この記事では、離婚調停不成立後に離婚する方法や、離婚条件を決める方法をわかりやすく解説します。
併せて、離婚調停を不成立にしないためのポイントもご説明します。
目次
離婚調停が不成立となった後に離婚するには?
離婚調停の不成立とは?
当事者間で合意が成立する見込みがない場合、調停は不成立で終了します。
どのタイミングで調停不成立とするかは、最終的には調停委員会の判断になります。調停委員会は、調停委員2名と裁判官1名から構成されます。
不成立するかどうか決める際に、重視されるのは当事者の意向です。
相手方が離婚を頑なに拒否していても、申立人が離婚裁判(離婚訴訟)を回避するため調停での解決を強く希望するケースでは、粘り強く話し合いが続けられる場合もあります。
反対に、双方の意見が激しく対立しており、話し合いの余地が全くない事案では、早期に不成立となる可能性もあります。
離婚調停不成立後の対応は?
離婚調停不成立後の対応は、①離婚裁判を起こす、②協議離婚をする、③審判離婚をする、④別居を継続するの4つが考えられます。
以下では、それぞれの対応についてご説明します。
調停不成立後の対応①離婚裁判を提起する
離婚調停が不成立となった場合、家庭裁判所に離婚裁判を提起するのが一般的です。
離婚裁判では、離婚そのものの他に、財産分与、親権者、養育費、慰謝料などについても裁判所の判断を求めることができます。
離婚裁判では、次の5つの法定離婚原因のうち少なくともいずれか1つを主張する必要があります。
判決で法定離婚原因があると認められると、強制的に離婚が成立します。
法定離婚原因(民法770条1項)
- 1号:不貞行為
- 2号:悪意の遺棄
- 3号:3年以上の生死不明
- 4号:強度の精神病
- 5号:婚姻を継続し難い重大な事由
離婚裁判中に当事者間で合意し、和解離婚するケースもあります。
和解離婚の場合、離婚条件について柔軟に取り決めができるメリットがあります。
実務では、裁判離婚より、和解離婚をする割合の方が高くなっています。
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調停不成立後の対応②協議離婚をする
離婚調停が不成立となった後でも、夫婦で話し合って協議離婚することは可能です。
協議離婚が成立した場合、当事者同士の約束にはそのままだと強制力がありません。
将来の不払いのリスクに備え、強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておくのがおすすめです。
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調停不成立後の対応③審判離婚をする
審判離婚は、調停が成立しない場合に、家庭裁判所の判断で離婚する方法です。
具体的には、養育費や面会交流の頻度などのわずかな離婚条件の食い違いで調停が不成立となった場合などに審判離婚が成立する場合があります。
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調停不成立後の対応④別居を継続する
性格の不一致など明確な離婚理由はないが離婚したい場合や、自分が有責配偶者に当たる場合、調停不成立後に別居を続けるのも一つの方法です。
これらのケースでは、離婚裁判を提起してもすぐに離婚が認められるのは難しいからです。
しかし、別居を長期間継続すれば、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たり、裁判離婚できる可能性が高くなります。
一般的には3年〜4年程度の別居により離婚が認められやすくなります。
ただし、有責配偶者からの離婚請求の場合は、基本的に10年程度の別居期間が必要です。
長期間別居を継続した後は、相手方に対し、離婚の交渉を再度申し入れたり、離婚裁判の提起を検討します。
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調停不成立後に離婚条件はどうやって決めるの?
財産分与
離婚調停の中で財産分与を求めたものの調停が不成立となってしまった場合は、家庭裁判所に離婚裁判を提起し、その中で財産分与に関する処分を申し立てます。
もっとも、離婚調停の中で、財産分与以外の事項については合意できている場合は、財産分与については定めない離婚調停を成立させる場合もあります。
この場合、離婚調停成立後に協議をしたり、財産分与調停を申し立てます。
財産分与調停では、当事者の話し合いによる解決を目指します。
財産分与調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続に移行します。審判では、裁判官が最終判断を行います。
なお、財産分与は、離婚の時から2年経過すると請求できなくなるため注意が必要です。
養育費
離婚調停において養育費のみ争いがあり離婚調停が不成立となってしまった場合は、家庭裁判所に離婚裁判を起こし、その中で養育費についても請求します。
または、養育費以外の事項について合意する離婚調停を成立させることも考えられます。
その場合は、調停成立後に、協議を行ったり、養育費請求調停を申し立てます。
養育費請求調停が不成立になった場合は、自動的に審判手続に移行します。審判では、裁判官が最終判断を行います。
親権者
離婚調停で、どちらかが親権者になるか対立し調停が不成立となった場合は、家庭裁判所に離婚裁判を提起し、その中で親権者の指定について申し立てます。
裁判では、自分が親権者にふさわしい事情を具体的に主張立証する必要があります。
これまでの監護実績や、今後の監護養育の具体的な計画を主張立証することがポイントです。
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慰謝料
離婚調停で慰謝料について争いがあり調停不成立となった場合、家庭裁判所に離婚裁判を起こし、その中で離婚に伴う慰謝料を請求します。
離婚訴訟の中で慰謝料を請求できるのは、離婚原因になった事実によって生じた損害の賠償を請求する場合に限られます。
典型的には、夫の不貞行為(不倫、浮気のこと)によって離婚に至った場合に、不貞慰謝料を請求するケースです。
離婚調停で離婚について合意できている場合は、離婚調停を成立させ、慰謝料については後日民事訴訟を提起するという方法も考えられます。
なお、離婚成立後3年経つと、慰謝料請求権は時効で消滅するため注意してください。
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慰謝料のために裁判すべき?
離婚調停の中で慰謝料について激しい争いとなるケースは少なくありません。
しかし、慰謝料のみが争点となっている場合に、離婚調停全体を不成立としてしまうのは現実的ではない場合が多いでしょう。
その理由は、裁判を起こせば、時間的にも経済的にも負担が大きくなるからです。
しかも、裁判で慰謝料請求が認められても、離婚に伴う慰謝料請求の相場は100万円〜300万円とされ、100万未満となるケースも珍しくありません。
このような事情を踏まえると、慰謝料のみが争点の場合に裁判を起こすのが適切か、弁護士に相談の上、よく検討した方が良いでしょう。
調停での解決が適切な場合は、金額面で譲歩したり、名目を「解決金」とすることで相手方の心理的な抵抗を押さえるなどの工夫が有効です。
婚姻費用
離婚調停を申し立てる場合、婚姻費用分担請求調停も同時に申し立てるケースが多いです。
どちらの調停も不成立になった場合、婚姻費用分担請求調停のみ、自動的に審判に移行します。
審判では、裁判官が「改定標準算定表」をもとに婚姻費用の支払について判断します。
婚姻費用の確保に向けた調停の戦略
婚姻費用は別居中の配偶者やその子どもにとって、日々の生活費となるお金であるため一日も早い支払の実現が望まれます。
そのため、離婚調停と婚姻費用分担請求調停が同時に進行している場合は、婚姻費用分担請求調停を先に成立させるよう申立人側から積極的に求めることが重要です。
相手方が婚姻費用の支払を強く拒んだり、金額面での対立が激しい場合は、婚姻費用分担請求調停はあえて不成立にするのも一つの方法です。
婚姻費用分担請求調停が不成立になると、自動的に審判に移行するからです。
審判書があれば、不払いの際、強制執行が可能になります。
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離婚調停を不成立にしないための対処法
解決に向けた具体的な代案を提示する
離婚調停を不成立にさせないためのポイントは、事前に離婚条件をよく検討し、「譲歩できるライン」と「譲歩できないライン」を決めておくことです。
その上で、お互いの主張が対立した場合に、相手の真意を冷静に把握した上で、具体的な代案を提示することが調停不成立の回避につながります。
例えば、離婚調停で親権者について激しく対立するケースは少なくありません。
もっとも、相手方が親権を主張してきたとしても、真意から親権者になりたいと思っているわけではない可能性があります。
そこで、相手方が親権を主張してきた場合は、相手の真意について、調停委員によく聴き取りをしてもらいます。
その結果、実は「申立人に負けたくない」という気持ちからであったり、「子どもとの関係を失いたくない」という気持ちが根底にあり、親権を主張していると判明する場合があります。
この場合、面会交流の頻度や内容について相手の主張に歩み寄る内容の提案を行うことで、親権者については申立人で良いと相手が応じる可能性が出てきます。
面会交流に寛容な姿勢をとることで、相手方による養育費の自発的な支払も期待できます。
離婚裁判を意識した主張をする
離婚調停で相手方と意見が食い違った場合、重要なのは離婚裁判を意識した主張をすることです。
さらに、その主張を裏付ける証拠を提出すると説得力が格段に上がります。
離婚調停は、離婚裁判を見越して進行されるため、裁判でも認められる可能性が高い主張をすると調停委員会の納得を得られやすくなるのです。
そうすると、調停委員や裁判官が相手方を説得してくれやすくなります。
離婚で争っている場合は、相手方の不貞行為、DV、モラハラなどを裏付ける客観的な証拠を提出すると有利になります。
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離婚調停がスムーズに進むよう意見を言う
離婚調停でよくあるのが、双方の主張が激しく対立し、そこから状況が進展しなくなってしまうパターンです。
このような状態が続くと、調停不成立になる可能性が高くなります。
そこで重要なのが、調停がストップした状態を打開するような意見を当事者の方から述べることです。
例えば、評議を開いて調停案を出してもらうよう促すことが考えられます。
評議とは、調停委員と裁判官の話し合いです。調停案は、調停委員が妥当と考える解決案です。
調停案をきっかけに、再び双方が意見を出し合うことで、離婚問題の解決に向けて調停が動き出す可能性が高まります。
「自分から調停委員に意見を言うのは難しそう」と少しでも不安な方は、調停が始まる前に無料相談を利用するなどして、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了