審判離婚を解説|調停離婚との違い、メリット・デメリット

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審判離婚

審判離婚」と聞いて具体的なイメージが浮かぶ方は少ないでしょう。

審判離婚とは、調停離婚が成立しない場合に、家庭裁判所の判断で離婚する方法です。

この記事では。審判離婚が利用されるケースの具体例や、審判離婚のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

審判離婚とは?

離婚する方法

審判離婚についてご説明する前提として、まず離婚する方法についてご紹介します。

離婚する方法は、①協議離婚、②調停離婚、③審判離婚、④裁判離婚、⑤和解離婚の主に5つです。

離婚の方法と手続きの流れについてまとめた下図をご覧ください。

離婚の方法と手続きの流れ

この図からわかるとおり、審判離婚が成立するには、離婚調停の申し立てが前提となります。

調停離婚は、当事者が離婚について合意し調停が成立した場合の離婚方法です。

一方、審判離婚は、わずかな離婚条件の違い等のために調停が成立しない場合に、家庭裁判所の判断で離婚する方法です。

次の項で、審判離婚についてさらに詳しくご説明します。

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審判離婚の概要

家庭裁判所は、調停が成立しない場合に相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、調停に代わる審判をすることができます。

調停に代わる審判によって離婚する場合を「審判離婚」と言います。

審判離婚をする場合、離婚のみならず、養育費、親権者、面会交流、損害賠償、財産分与、年金分割等についても定めることができます。

調停に代わる審判は、調停が成立しない場合に、裁判所が解決案を示すことで、紛争を適正かつ迅速に解決するために設けられた制度です。

審判離婚の割合

ここでは、実際に審判離婚をする人がどれくらいいるのか見ていきたいと思います。下表をご覧ください。

【離婚の種類別の構成割合(令和2年)】

離婚の方法割合
協議離婚88.3%
調停離婚8.3%
審判離婚1.2%
和解離婚1.3%
判決離婚0.9%

         (出典:厚生労働省「令和4年度「離婚に関する統計」の概況)

この表を見ると、離婚する夫婦の大半が協議離婚しており、審判離婚するケースは非常に少ないことが分かります。

【今後予想される動き】

現在の家事事件手続法の下では、電話会議又はテレビ会議の方法によって、離婚離婚又は離縁の調停を成立させることはできないと規定されています(同法268条3項)。

しかし、「民事訴訟法等の一部を改正する法律」の成立によって、将来的に当事者双方が裁判所に出頭しなくとも、ウェブ会議を利用して離婚調停等を成立させることができるようになりました。

この法改正の施行日は、令和4年5月25日から3年以内の政令で定める日とされています。具体的な施行日は今後決定されます。

法改正により、今後は当事者が遠方にいて出頭が難しい事案でも、調停離婚が成立しやすくなります。

その一方で、審判離婚を利用する場面は減少すると予想されます。

審判離婚が成立する具体例

ここでは、審判離婚が成立する具体例をご紹介します。

  • 弁護士や書面でのやりとりを通じ、実質的に合意できているが、当事者が遠方に住んでおり、出頭が難しい場合
  • 婚姻費用や養育費の金額、面会交流の頻度等、わずかな離婚条件の相違で合意に至らない場合
  • 別居や離婚に至る経緯等から感情的に対立しており、当事者間での合意は難しいが、裁判所から解決案を示されれば争わないだろうと考えられる場合
  • 当事者が調停期日を連続して欠席しているが、離婚訴訟を提起しても離婚の判決がされることが予想される場合
  • 当事者が調停期日を欠席しているものの、答弁書等から実質的に争わないと推測される場合
  • DV事案で相手との接近を回避した場合
  • 年金分割の按分割合で合意できているものの、情報通知書の取得が期日までに間に合わなかった場合

など

審判離婚が成立するまでの流れ

審判離婚が成立するまでの大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 離婚調停の申し立て
  2. 離婚条件について意見が食い違ったり、相手方の欠席により調停が合意に至らない
  3. 調停委員会が当事者の話し合いがまとまるよう調整を尽くす
  4. 調停委員会は、調停に代わる審判の内容や理由をあらかじめ当事者に説明する
  5. 調停に代わる審判が出される
  6. 審判離婚の成立

以下では、それぞれの段階について詳しく解説します。

①離婚調停の申し立て

審判離婚の前提として、離婚調停を申し立てる必要があります。

離婚調停を経ずに、いきなり審判離婚を求めることはできません。

②離婚条件について意見が食い違ったり、相手方の欠席により調停が合意に至らない

離婚調停の中では、離婚だけでなく、養育費、財産分与、面会交流等の離婚に関連する問題を話し合います。

ときには、相手が離婚自体に合意しているものの、離婚条件に関するわずかな意見の相違から離婚調停が成立しない場合もあります。

また、相手が最初から調停に出席しないケースもあります。

このような場合、離婚調停を成立させることができません。

③調停委員会が当事者の話し合いがまとまるよう調整を尽くす

離婚調停が成立しない場合も、すぐに不成立となるわけではありません。

調停委員と裁判官で構成される調停委員会から解決案が示される等して、当事者間で合意に至るよう調整が尽くされます。

また、欠席を続ける相手に対しては、出席勧告を行います。

④調停委員会は、調停に代わる審判の内容や理由をあらかじめ当事者に説明する

上記③の調整を経ても、調停が成立しそうにない場合、調停委員会から調停に代わる審判の内容や、その判断理由についてあらかじめ当事者双方に説明される場合が多いです。

⑤調停に代わる審判が出される

家庭裁判所が、調停に代わる審判を出します。

⑥審判離婚の成立

当事者が調停に代わる審判の告知を受けてから2週間以内に異議申し立てがなければ、審判離婚が成立します。

調停に代わる審判の効果

当事者から2週間以内に異議申し立てがなければ、調停に代わる審判は確定します。

審判確定日が、審判離婚の成立日になります。

確定した調停に代わる審判は、確定判決又は確定審判と同一の効力を有します。

したがって、調停に代わる審判で養育費等の支払が命じられたにもかかわらず相手が支払わない場合、強制執行が可能です。

審判離婚が成立した後の手続き

審判離婚が成立した場合、忘れてはならないのが役所への届出です。

離婚の届出は、通常申立人が行います。

申立人は、審判確定日から10日以内に以下の必要書類を揃えて、役所の戸籍係に届け出なければなりません。

届出地は、夫婦の本籍地、住所地、所在地のいずれかです。

【審判離婚の届出に必要な書類】

  • 離婚届
  • 審判書の謄本
  • 確定証明書
  • 届出先の市区町村が本籍地でない場合は戸籍謄本(戸籍全部時効証明書)

審判離婚に異議が出た場合の流れ

当事者から2週間以内に異議が出た場合、調停に代わる審判は効力を失います。

実務では、異議が出るケースは少ないです。

審判離婚のメリット・デメリット

審判離婚のメリット

  • 離婚問題が早期に解決する

調停に代わる審判が確定すれば、審判や裁判をすることなく早期に離婚が成立します。

また、確定した調停に代わる審判があれば、将来不払があっても強制執行ができるため、離婚に関するお金の問題も解決できます。

  • 離婚裁判よりも柔軟な解決が可能

審判離婚のメリットは、調停離婚と同じように柔軟な解決ができる点です。

離婚裁判になると、法律に規定された事項しか判断されません。

しかし、審判離婚の場合は、法律に規定されていない事項についても、当事者の意向や提出された資料等を考慮して、決めることができます。

例えば、住宅ローンが残っている場合、審判離婚では、住宅ローンの負担者、支払方法等を、当事者の事情に合わせて柔軟に決めることができます。

審判離婚のデメリット

調停に代わる審判に対し、異議申し立てがされると、その効力が失われる点が審判離婚のデメリットです。

調停に代わる審判が無効になると、離婚調停を不成立にしてすぐ離婚訴訟を提起した場合よりも、離婚問題の解決に時間がかかってしまいます。

そのため、実務では、異議申し立てされる可能性が高い事案では、調停に代わる審判の利用は促されません

例えば、離婚調停の段階で夫の不貞行為が主張されており、妻が離婚と慰謝料の支払を求めているものの、夫が不貞行為を強く否定している場合です。

夫が離婚裁判での解決を望んでいる場合、調停に代わる審判を出したとしても異議が出される可能性が高いでしょう。

このような場合、調停に代わる審判が利用される可能性は低いです。

審判離婚を始めとする離婚問題の相談は弁護士へ

離婚する方法は様々です。ご本人の抱える事情によって、どの方法で離婚するのが最適かは異なります。

最適な離婚方法は、法律の専門家である弁護士にぜひご相談ください。

弁護士は、ご相談者様のお話を丁寧に聴き取った上、証拠を十分に検討します。

その上で、最適な離婚方法や、ご相談様にとって有利になる離婚条件とその実現方法について的確にアドバイスいたします。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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