司法書士に離婚相談できる?行政書士、弁護士との比較
弁護士だけでなく、行政書士や司法書士も離婚問題に関する業務を扱っています。
弁護士に依頼すれば、法律相談や交渉、訴訟代理など離婚協議から訴訟まで幅広いサポートが受けられます。
既に離婚に合意している場合、費用を抑えて離婚協議書を作成したいなら行政書士、不動産登記手続きもやってもらうなら司法書士に依頼することもできます。
それぞれのプロの専門性と役割を理解し、あなたの状況に合った最適な相談相手を選ぶことで、問題解決への糸口を見つけ、心の負担を軽減することができます。
この記事では、離婚相談における専門家選びのポイント、費用相場、弁護士・行政書士・司法書士の役割と得意分野について詳しく解説します。
司法書士:不動産登記手続きを依頼したいなら
司法書士は登記の専門家
司法書士とは、登記に関する法律事務の専門家です。
法務局、裁判所、検察庁などに提出する書類を作成することもできます。
また、「認定司法書士」については、このような業務に加えて簡易裁判所にて取り扱うことができる140万円までの民事訴訟事件について訴訟代理ができます。
一方で、行政書士同様、依頼者の代理人としてトラブルの相手方と交渉することはできません。
司法書士にできること|養育費の調停申立書の作成など
司法書士は、「登記業務」のほか、申立書などの「裁判所に提出する書類作成」をサポートすることができます。
例えば、夫婦の共有名義だった家をどちらか一方が財産分与でもらう場合の名義変更、住宅ローンの名義変更などの登記手続きをすることができます。
また、養育費請求調停の申立書など離婚に際して裁判所に提出する書類の作成も司法書士に依頼可能です。ただし、調停や裁判の代理人にはなれません。
なお、司法書士の中でも、認定司法書士であれば、請求金額が140万円以下の簡易裁判所における民事訴訟の訴訟代理をすることもできます。
例えば、相手に不倫などの不貞行為があって、140万円以下の慰謝料を請求するような場合、認定司法書士は訴訟代理ができます。
ただし、財産分与や養育費の支払いといった家庭裁判所で取り扱われる事件については金額にかかわらず認定司法書士であっても代理人となることはできません。
関連記事
・ペアローンは離婚できない?住宅ローンの一本化など対応方法を解説
・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
司法書士に離婚協議書の作成を依頼できる?
司法書士は、財産分与による登記手続きを行うために、法務局に提出する資料に必要な範囲で離婚協議書を作成できるとされています。
「離婚協議書」とは、離婚について夫婦間で合意したことをまとめた文書です。
離婚時期や方法、養育費や財産分与、慰謝料、年金分割などのお金に関すること、親権や面会交流などについてまとめておきます。
離婚協議書作成の主目的が、財産分与の登記手続きに関連する条項の作成であれば、司法書士への依頼が安心です。
もっとも、離婚協議書を作成する意義は財産分与の登記手続きに限られません。離婚協議では取り決めるべき事項は多岐にわたりますが、そのような法律判断や相談を司法書士ではすることができないことに注意が必要です。
離婚協議書を司法書士に作成させた際の費用
司法書士の離婚協議書作成費用は、財産分与の内容や協議書の複雑性によって異なりますが、5万円~10万円程度が相場です。不動産登記手続きが必要となる場合は、別途費用がかかります。
司法書士に離婚の法律相談や交渉はできない
司法書士は、離婚問題に関して以下のようなことはできません。
- 離婚の法律相談
- 離婚交渉
- 140万円を超える慰謝料請求
- 離婚調停や離婚裁判の訴訟代理
司法書士は、離婚の法律相談や相手との交渉ができず、140万円以下の簡易裁判所での民事訴訟以外の訴訟代理もできません。
行政書士:離婚協議書を費用を抑えて作成するなら
行政書士は書類作成のスペシャリスト
行政書士は、国や役所に提出する書類を作成したり、手続きを行う専門家です。
契約書や離婚協議書など、お互いの合意によって作成され、法的な拘束力が発生する書類が代表例です。
行政書士に離婚協議書の作成を依頼する:3万円~
行政書士は主に「離婚協議書」などの文書を作成することができます。
「離婚協議書」とは、離婚について夫婦間で合意したことをまとめた文書です。
離婚時期や方法、養育費や財産分与、慰謝料、年金分割などのお金に関すること、親権や面会交流などについてまとめておきます。
なお、離婚をするうえで離婚協議書の作成自体は必要とされてません。
しかし、離婚に際してトラブルになりやすいお金のことや親権については、あらかじめ文書という形で決めておけば、安心して離婚手続きを進められます。
作成した離婚協議書は、公的文書であり強制力をもつ「強制執行認諾文言付き公正証書」にしておきましょう。
離婚協議書や公正証書の作成費用は、行政書士ごとに異なりますが、3万円~5万円程度が相場のようです。
関連記事
・離婚時に公正証書を作成するメリットは?どうやって作成する?
行政書士ができないこと|行政書士に離婚相談は違法?
行政書士に離婚相談をする場合、行政書士ができることとできないことを理解しておく必要があります。
行政書士がサポートできるのは離婚手続きに関する書類作成のみです。法律相談や法的なアドバイス、離婚相手との交渉は行政書士にはすることができません。
離婚協議を進めるうえで「離婚ができるのか」、「いくら慰謝料を請求できるのか」、「親権者になることができるのか」といった相談は、法律相談にあたります。
取り決めた内容を行政書士に書面にしてもらうことはできますが、内容や条件はあくまで自分たちで取り決めなければなりません。
行政書士ができること
- 離婚協議書の作成
- 財産分与や養育費に関する書類作成
- 離婚届の提出手続き
- その他、離婚手続きに関する書類作成
行政書士ができないこと
- 離婚の法律相談
- 離婚交渉
- 調停や裁判手続き
離婚すること自体や慰謝料・養育費などの離婚条件について合意が既にできている場合には、公正証書での離婚協議書を行政書士に依頼することで、弁護士に依頼するよりも費用を抑えることができます。
弁護士:離婚協議から訴訟まで、幅広くサポート
弁護士は法律のエキスパート
弁護士は、法律事務全般の専門家です。
離婚調停や裁判での代理人としての役割だけでなく、裁判外での離婚問題の相談、相手方との交渉をすることができます。
弁護士は離婚に関するあらゆる手続きに対応可能
離婚協議から裁判に至るまで、すべての離婚に関する業務に対応することができるのは弁護士だけです。
離婚協議では、離婚協議書の作成だけでなく、内容について法的なアドバイスをしたり、離婚の相手方と交渉をすることができます。
行政書士や司法書士では、相手方との交渉や法律相談はすることができません。
特に離婚はしたいけどもう相手と顔を合わせたくないといった場合には、弁護士が間に入ってくれるため、精神的な負担も軽く済みます。
さらに、弁護士は調停や離婚裁判での代理人となることができます。
調停や裁判において、離婚問題の経験と実績が豊富な弁護士に依頼することで、有利な条件で離婚することが期待できます。
弁護士への依頼は比較的高額:30万円~
一方で、あらゆることに対応できる法律の専門家であるために、弁護士への依頼料は、行政書士・司法書士と比べても比較的高額となってしまう傾向にあります。
相談料や着手金のほか、裁判の成功度合いに応じた報酬金など、調停や裁判を通じて弁護士費用がかさむことも考えられますので、事前に十分な予算を確保しておく必要があります。
費用を抑えたい場合は、まずは無料相談を活用してみましょう。弁護士との相性を確認し、信頼関係を築けるかどうかを判断することが大切です。
関連記事
あなたの状況に合った相談先を選ぶためのポイント
各士業のメリット・デメリットのまとめ
弁護士、行政書士、司法書士はそれぞれできることやメリット・デメリットが異なります。
いずれの専門家に依頼するのが最適か、離婚のケースによって答えは変わってきます。
弁護士、行政書士、司法書士の各士業のメリット・デメリットをまとめると、以下の表のようになります。
弁護士 | 行政書士 | 司法書士 | |
---|---|---|---|
法律相談 | 〇 | × | × |
相手との交渉 | 〇 | × | × |
離婚協議書作成 | 〇 | 〇 | 〇 |
財産分与の不動産登記 | 〇 | × | 〇 |
裁判所提出書類の作成 | 〇 | × | 〇 |
慰謝料・養育費請求の訴訟代理 | 〇 | × | △※ |
離婚審判・離婚裁判の訴訟代理 | 〇 | × | × |
費用面 | 高額 | 安価 | 安価 |
※紛争の対象となっている金額が140万円以下の民事訴訟であれば、訴訟代理可能。
司法書士・行政書士に離婚相談すべき人
夫婦間でまったく争いがなく、後は離婚協議書を書くだけというような場合には行政書士や司法書士に依頼した方が安価で済みます。
司法書士、行政書士は離婚協議書を作成することができ、費用の相場は数万円程度となります。
一方で、法律相談や交渉、高額な慰謝料請求、離婚審判・離婚裁判の訴訟代理などはできません。
離婚協議書作成:司法書士 vs 行政書士
財産分与に関する不動産登記業務、調停の申立書の作成だけをしてもらいたい場合には司法書士に依頼をするのが最適でしょう。
以下のような場合には、行政書士への依頼がおすすめです。
- 離婚協議がスムーズに進み、条件面も合意ができている
- 費用を抑えたい
- 財産分与に関する問題は比較的シンプル
以下のような場合には、司法書士への依頼がおすすめです。
- 財産分与の内容が複雑で、専門的なアドバイスが必要
- 不動産登記や売却手続きが必要
弁護士に離婚相談すべき人|離婚問題に争いがある場合
離婚すること自体や条件について争いがある場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
法律相談や、相手との交渉・調停・訴訟は弁護士にしかできません。
弁護士であれば様々な離婚トラブルに対応してきた経験と総合的な法律の知識があるため、効果的で有利な解決を目指すことができます。
たとえ離婚協議中にはトラブルがなかったとしても、法的な問題を見落としてしまい、離婚後に法律問題に直面してしまうといったこともあります。
そうしたトラブルを未然に防ぐことができるのも弁護士だけです。
離婚をする上で何かしらトラブルが発生するかもしれないと不安をもっているなら、弁護士に相談しておく方が安心して離婚手続きを進めることができます。
離婚は人生における大きな決断です。後悔しない選択をするために、専門家の選び方や相談内容は事前にしっかりと準備しましょう。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
また、弁護士は行政書士になる資格を有するほか、司法書士が一般的に担当する業務も行うことができます。