離婚するときに弁護士は必要?弁護士なしでは難しいケースを解説

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離婚するのに

「離婚は弁護士なしでもできるのか」
「離婚するのに弁護士はいらないのでは?」

離婚を視野に入れている方のなかには、「離婚するのに弁護士は必要なのか?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

基本的に、離婚を決意したら、まずは話し合いで解決する協議離婚を目指します。

話し合いでの合意が難しい場合は、調停離婚や裁判離婚と段階を踏んでいくことになります。

弁護士なしで離婚の手続きを進めることももちろん可能ですが、やはり弁護士に相談することをおすすめします。

今回は、離婚するときに弁護士が必要な場面と、弁護士に依頼するメリットについて解説します。

離婚は弁護士なしで十分?弁護士の必要性

離婚の手続きや調停、裁判はどれも弁護士なしで自分で進めていくことが可能です。

しかし、相手とスムーズに交渉を行い、適切な財産分与、慰謝料、養育費の請求をしていくためには法の専門家である弁護士が重要な役割を果たします。

感情が高ぶる家庭内の問題では、弁護士が客観的な立場と法の専門知識をもとにサポートをすることで、より公平で合理的な合意にいたる可能性が高まります。

離婚するときに弁護士を立てる割合は?

以下は、裁判所の統計をもとに、婚姻関係事件について、弁護士の関わった割合をまとめた表です。

割合
お互いに弁護士なし35.5%
お互いに弁護士あり32.6%
申立人のみ弁護士あり27.0%
相手方のみ弁護士あり5.0%
出典:裁判所|家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等

全体の5割程度の人は弁護士を立てて婚姻関係事件に臨んでいることがわかります。

協議離婚で弁護士を依頼するメリット

協議離婚の場合、弁護士なしでも解決できると考える方は大変多くいます。

しかし、話し合って決めた離婚の条件のなかに不備があったとしても、自分で気づくのはなかなか難しいことです。

あとになって、「あの時弁護士に相談しておけばよかった…」と後悔する方は実は少なくないのです。

離婚を熟知した弁護士に相談しておけば、不利な条件で離婚することを避けられるかもしれません。

特に、相手が話し合いに応じないケースや、財産分与や慰謝料・養育費など金銭面で争いがあるケースでは、弁護士に入ってもらうメリットは大きくなります。

調停離婚で弁護士に依頼するメリット

離婚調停は、手続き自体は当事者だけで行うことも十分可能です。

しかし、裁判所の統計では弁護士を利用する人の割合は年々増加しており、近年では約半数の当事者が弁護士を代理人として利用しています。

離婚調停を有利に進めるには、調停委員によい印象を与えて味方についてもらうことが重要です。そのためには、冷静に、論理的に、説得力のある話をしなければなりません。

あらかじめ弁護士と打ち合わせをしたり、弁護士に同席してもらうことで、調停を有利に進められるでしょう。

裁判離婚で弁護士に依頼するメリット

離婚裁判を有利に進めるためには、自分の主張をうまく伝えられるような書面を作らなければなりません。

裁判の知識がないままこれをやろうとすると、相当な負担となりますので、弁護士に任せてしまうことをおすすめします。

協議離婚調停離婚裁判離婚
弁護士の必要性依頼をおすすめ高い極めて高い
メリット・不利な条件を回避・交渉を任せられる など・調停を有利に進められる・適切な手続を選択できる など・法的主張が適切にできる
・時間的・精神的負担の軽減 など

弁護士に依頼するデメリットは費用面

弁護士に依頼するときのデメリットは、やはり費用面でしょう。

離婚問題を弁護士に依頼するお金がないという方には、法テラスを利用して弁護士費用を支払うという手段があります。この制度を、「民事扶助制度」といいます。

法テラスとは、国民向けに法的支援をおこなう機関で、電話やメールで相談をすると適切な相談窓口などを案内してくれるほか、経済的余裕のない人に対しては、無料の法律相談や、弁護士費用の立替えといったサービスを提供しています。

詳しくは法テラスの公式サイトをご覧ください。

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協議離婚で弁護士が必要なケース

協議離婚は、夫婦が互いに離婚に合意し、条件を話し合って決める離婚方法です。

協議離婚で弁護士が必要なケースについては、以下のようなものがあります。

協議離婚で弁護士が必要なケース

  • 相手が離婚に反対している
  • 財産分与・養育費・慰謝料を請求したい
  • DVやストーキングの被害を受けている
  • 子どもを連れ去られた
  • 相手が弁護士を立てた

相手が離婚に反対している

相手が離婚に反対しており、離婚の話をしようと思ってもうまくいかないという場合があります。

互いに感情的になってしまったり、自分や相手の親が介入してきたりして、離婚についての話し合いがまとまらないということもあるでしょう。

弁護士に依頼することで、離婚に反対している相手と代理で交渉ができるため、話し合いが進むようになる可能性があります。

財産分与・慰謝料・養育費を請求したい

養育費や慰謝料といった、離婚条件について揉めているという場合も、弁護士に依頼したほうがよいケースです。

養育費や慰謝料、財産分与といった金銭面や、親権や面会交流などの子どもとの接し方に関して争うことがあると思います。

弁護士に依頼すれば、適切な財産の請求や離婚条件の提示をするための解決策を法的な観点からアドバイスしてくれます。

離婚の話し合いが長引いてもつれてしまうのを回避できる可能性が高くなるでしょう。

DVやストーキングの被害を受けている

相手からDVやモラハラといった暴力・暴言行為を受けていたり、別居していてもストーキング行為を受けていたりする方もいるでしょう。

そういった場合では、対面で話し合いをするのが難しいと考えられます。

弁護士は、依頼者の代理人として交渉の場に出ていくことが可能です。相手とのやりとりも間に入っておこなってくれますので、相手と顔を合わせず、直接連絡も取らずに協議離婚を進めることができます。

子どもを連れ去られた

離婚協議中に親権について話をしているときに、相手に一方的に子どもを連れて出ていかれてしまったというケースがあります。

別居中の相手に強引に子どもを連れ去られてしまうと、そのまま会えなくなってしまうのではと不安になる方もいると思います。

そういった場合は、違法な連れ去りに該当するおそれもあるので、弁護士への相談が必要になる可能性が高いです。

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相手が弁護士を立てた

相手だけが弁護士を立てて、こちら側が弁護士に相談しなかった場合、こちらが離婚の合意を求めたり、金銭面や子どもについての条件を交渉したりしても、不利な状況に陥る可能性が高いです。

離婚協議で不利になるだけでなく、離婚調停や裁判に進んだとしても、相手のペースに持ち込まれて不利な条件を突き付けられるおそれもあります。

対等な立場で交渉を進めるには、相手が弁護士を立てた場合は弁護士への相談が必要になるといっていいでしょう。

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離婚調停で弁護士が必要なケース

離婚調停は、夫婦間の話し合いでは離婚に関して合意ができなかったときに、裁判所の調停委員会のもとで話し合いをおこなう離婚の方法です。

離婚調停で弁護士が必要なケースについては、以下のようなものがあります。

離婚調停で弁護士が必要なケース

  • 調停に出席できそうにない
  • 法的知識に不安がある
  • 書類の準備ができそうにない

調停に出席できそうにない

調停に出席できそうにないという場合は、弁護士が必要となる可能性が高いです。

調停は基本的に平日におこなわれます。弁護士なしで調停を進めるのであれば、ご自身が調停の日に必ず出席しなければなりません。

場合によっては、調停が長引いてしまい、調停のたびに仕事を休むことになるおそれがあります。

弁護士を立てることで、自分の代理人として調停に出席してもらうことができます。平日に調停に向かうことができないという場合は、弁護士が必要になるでしょう。

法的知識に不安がある

法的な知識に少しでも不安があるという場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

調停を弁護士なしでおこなうのであれば、調停委員に対して自分で法的な主張をして納得させる必要があります。

また、相手方の主張が法的に正しく妥当なのかどうか、自分で判断していくことになります。相手が弁護士に依頼していれば、法的知識の差から不利な状況に陥るおそれが大きいです。

感情的になってしまい、調停委員の心証を悪くしてしまうほか、そもそも話し合いにならないということもあるでしょう。

弁護士に依頼すれば、こちら側も論理的な主張ができるうえに、相手の主張が妥当なのかどうかの判断もしてもらうことができます。

書類の準備ができそうにない

必要な書類や資料の準備ができそうにないという場合も、弁護士に依頼したほうがよいケースといえます。

離婚調停を申し立てる際には、申立書のほかにも、事情説明書などいろいろな書類を作成しなくてはなりません。また、養育費、財産分与、年金分割に関して、複数の資料を用意する必要も生じます。

仕事や家事をこなしながら慣れない書類作成や資料収集をするのは時間がかかりますし、気持ちのうえでもとても負担になるでしょう。

弁護士に依頼すると、書類作成を任せることができますし、資料を用意するサポートをしてもらうことができ、負担を減らすことができます。

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離婚裁判は弁護士がほぼ確実に必要

離婚裁判とは、離婚調停で解決できなかった場合に、裁判所の判断を求める離婚手続きです。

弁護士をつけずに離婚裁判をおこなうことは、制度上は可能ですが、実際には弁護士なしの離婚裁判はかなり難しいといえます。

離婚裁判で弁護士が必要となる理由には、以下のようなものがあります。

離婚裁判で弁護士が必要な理由

  • 法定離婚事由を的確に主張できる
  • 相手の主張に法的に反論できる
  • 裁判を弁護士に任せられる
  • 専門的な書類を準備してもらえる
  • 本人尋問の練習ができる

法定離婚事由を的確に主張できる

法定離婚事由を的確に主張したいという場合は、弁護士への相談が必要となるでしょう。

法定離婚事由とは、民法で定められた離婚の理由で、以下の5つうち少なくとも1つが存在しなければ、離婚は認められません。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

弁護士に依頼することなく自分の手で法定離婚事由を説明するには、証拠を示して自分で法的な主張をしなければなりません。

自分で的確に主張することは、十分な法的知識と経験がなければ難しいため、弁護士に依頼することをおすすめします。

相手の主張に法的に反論できる

弁護士に依頼すれば、相手の主張に対して法的な観点から反論することができます。

相手が何らかの主張をしても、こちら側に法律についての知識が十分ない状況であれば、的確に反論することは難しいでしょう。

弁護士に依頼すれば、相手の主張が法的に妥当なのかどうか判断したうえで反論できるというメリットがあります。

裁判を弁護士に任せられる

弁護士に依頼すれば、面倒な裁判の手続きを弁護士に任せることができます。

十分な法的知識と経験がない状態では、裁判を有利に進めるのが難しくなったり、精神的な負担が大きかったりといったデメリットがあります。

弁護士を立てることで、裁判を弁護士に一任することができます。

専門的な書類を準備してもらえる

弁護士に依頼することで、訴状や陳述書といったさまざまな書類の作成を代理でおこなってもらうことができます。

もちろん、訴状などの書類を自分で作ることは可能です。ただし、法的に専門知識がない状態で作成することはかなり難しいでしょう。

弁護士に依頼すれば、相手の主張に対する反論書や、裁判の準備に必要なさまざま書類の作成を任せられるというメリットがあります。

本人尋問の練習ができる

弁護士に依頼すれば、本人尋問の練習をすることができます。

本人尋問とは、離婚の当事者本人が裁判に出頭して、双方の代理人や裁判官からの質問に答える手続きのことをいいます。

本人尋問の内容は、離婚の争点を明らかにする判断材料になりますので、重要な手続きとなっています。

弁護士に依頼すれば、尋問での受け答え方などを練習できるほか、相手からの反対尋問で聞かれそうなことについても、事前に対策をとることができます。

離婚は弁護士がいると心強い!

離婚手続きは弁護士なしでおこなうこともできますが、「書類を作成してもらえる」「代理で交渉してもらえる」「法的な主張ができる」といったさまざまなメリットを考えると、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、協議離婚から離婚裁判までの手続きで、法律のプロとして強い味方になってくれます。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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