離婚したいと思ったら何をすべき?|離婚が認められる条件も解説
「離婚したいけれど、何から準備すれば良いの?」
そんなあなたに、この記事では、離婚したいと思ったら考えておくべきことを弁護士の目線からわかりやすく解説します。
離婚後は、住居や仕事、収入など、生活基盤を整える必要があります。子供がいる場合は、親権や養育費についても、早めに決めておきましょう。
ほかにも、離婚が認められるための条件や、弁護士に相談するメリットについてもご紹介します。
離婚は、決して簡単な決断ではありません。しかし、冷静な判断と入念な準備をすることで、後悔のない選択をすることができます。
目次
離婚したいと思ったら考えておくこと一覧
①離婚原因があるか
離婚する場合、主な方法は「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つです。
下の図をご覧ください。
夫婦の話し合いで離婚する「協議離婚」であれば、離婚原因の有無は問われません。夫婦双方が離婚に合意し、離婚届を役所に提出すれば離婚できます。
しかし、相手が離婚に合意しない場合、調停離婚や裁判離婚を考える必要があります。
この場合重要になるのが、民法が定める離婚原因(法定離婚原因)の有無です。
なぜなら、裁判離婚の場合、法定離婚原因がなければ離婚が認められないからです。
調停離婚をする場合も、法定離婚原因の有無によって、調停の方針が変わってきます。
つまり、法定離婚原因の有無は、どの手続きで離婚すべきかという点に大きく影響するのです。
どのような離婚原因があれば離婚が認められるかについて、詳しくは「離婚が認められるための条件は?」でご説明します。
②離婚に関するお金の問題
離婚をすると、財産分与や慰謝料、年金分割、婚姻費用など、お金に関するさまざまな問題が発生します。
離婚に関するお金
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
- 婚姻費用
財産分与
「財産分与」とは夫婦が婚姻中に協力して築いた共有財産を分ける制度です。
財産分与の割合は、原則として2分の1です。ただし、財産分与請求権は離婚から2年で時効となるため、期限に留意する必要があります。
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慰謝料
慰謝料とは、離婚の原因となった行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。
慰謝料の相場は100万円~300万円程度です。
慰謝料請求権は離婚時から3年で時効となります。
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年金分割
年金分割は、婚姻中に納付した厚生年金の保険料の納付記録を分割する制度です。
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婚姻費用
婚姻費用は、離婚成立までの生活費です。
婚姻費用の金額は、「改定標準算定表」に従って決められます。お子さんの人数と年齢に該当する表を見つけて、配偶者とご自分の年収をあてはめます。
例えば、3歳と6歳の子どもがおり、配偶者の給与収入が年600万円、ご自分の給与収入が年100万円の場合、婚姻費用は月額12〜14万円になります。
婚姻費用は、原則として請求した時からしか支払を受けられません。そのため、別居後はできる限り早めに婚姻費用を請求しましょう。
相手が支払に応じない場合、弁護士に相談して交渉したり、婚姻費用分担請求調停を申し立てましょう。
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③子どもに関する問題
子どもに関する問題は主に以下のとおりです。
子どもに関する問題
- 親権者
- 養育費
- 面会交流
- 離婚後の子どもの姓と戸籍
親権者
親権者は、離婚する場合に必ず決めなければなりません。夫婦の話し合いで合意できない場合は、調停や離婚訴訟を通じて決めます。
親権者の判断基準は、監護能力(年齢、性格、健康状態など)、家庭環境、従来の監護状況、親族の援助、子の年齢、心身の発育状況などです。
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養育費
養育費は、離婚後、子どもを監護していない親が、監護している親に対して支払うお金です。
夫婦で合意できない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決めます。
養育費の金額も婚姻費用と同様に、「改定標準算定表」に従って決められます。
お子さんの人数と年齢に該当する表を見つけて、配偶者とご自分の年収をあてはめます。
例えば、3歳と6歳の子どもがおり、配偶者の給与収入が年600万円、ご自分の給与収入が年100万円の場合、養育費は月額8〜10万円になります。
なお、子どもは実親、養子縁組した親のいずれの相続権も、原則として認められます。
万一、養育費の支払っている元配偶者が死亡した場合、遺産相続によって、子どもは生活費を手にすることができる可能性があります。
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面会交流
面会交流とは、離婚後に非監護親と子どもが面会することです。夫婦で合意できない場合、家庭裁判所の調停や審判で決めます。
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離婚後の子どもの姓と戸籍
離婚後に子どもと姓も戸籍も自分と同じにしたい場合、以下の手続きが必要です。
- ご自分の戸籍を新しく作る
- 子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出する
- 最寄りの市区町村役場に「許可審判書」と「入籍届」を提出する
新しくつくる戸籍は旧姓でも婚姻中の姓でも構いません。
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④離婚後の生活
離婚後の生活で考えておかなければならない問題は、主に以下のとおりです。
離婚後の生活
- 離婚後の生活費
- 離婚後の住居
- 公的支援
離婚後の生活費
離婚後の生活費について、離婚しようと思ったら早めにシミュレーションしてみましょう。
特に専業主婦の方は、離婚後すぐに自立した生活ができるよう、離婚前から仕事を探しておくことが大切です。
離婚後の住居
離婚後の住居は、現在の持ち家や賃貸住宅に住み続けるか、実家に帰るかなど、さまざまな選択肢があります。まずはご自分の希望を整理してみましょう。
住宅ローンが残っていればその対応策が必要になります。
住宅ローンの問題は、離婚後の生活を大きく左右するため、弁護士などの専門家に一度相談するのがおすすめです。
公的支援
離婚してひとり親家庭となった場合、様々な公的支援制度を利用することができます。
児童扶養手当、児童手当、医療費助成、所得税や住民税の軽減など、幅広い支援制度が用意されています。離婚したいと思ったら、これらの支援制度についても情報収集しておきましょう。
離婚が認められるための条件は?
裁判離婚するには法定離婚原因が必要
離婚をしたいと思ったら、まず「法定離婚原因」があるか確認しましょう。
法定離婚原因とは、裁判で離婚を認めてもらうのに必要な理由のことです。
【法定離婚原因(民法770条1項)】
1号:不貞行為(浮気や不倫)
2号:悪意の遺棄(生活費を渡さない、一方的に家出して帰らないなど)
3号:3年以上の生死不明
4号:強度の精神病
5号:婚姻を継続し難い重大な事由
実務の中で、最も多い離婚原因は「婚姻を継続し難い重大な事由」です。
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻共同生活が破綻し、その修復が著しく困難な状態であることを意味します。
過去の裁判例で「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められた具体例として以下のものがあります。
【「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められた具体例】
- 配偶者や子どもに対する暴行、虐待(典型例はDV)
- 重大な侮辱、モラハラ
- 勤労意欲の欠如、過度の浪費や散財、ギャンブル
- 犯罪行為による収容
- 疾病や身体的障害
- 宗教活動
- 親族との不和
- 性格の不一致
離婚したいと持ったら、ご自身の状況が法定離婚原因に該当するかどうかを、弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。
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令和4年の離婚原因で多いのは?
令和4年(2022年)司法統計年報家事編によると、離婚原因は以下のとおりでした。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
1位 | 性格が合わない | 性格が合わない |
2位 | 異性関係 | 暴力を振るう |
3位 | 浪費する | 異性関係 |
4位 | 性的不調和 | 浪費する |
5位 | 暴力を振るう | 性的不調和 |
6位 | 病気 | 酒を飲み過ぎる |
7位 | 酒を飲み過ぎる | 病気 |
引用元:「令和4年司法統計年報家事編 第19表 婚姻関係事件数ー申立ての動機別申立人別」
夫、妻ともに「性格が合わない」が離婚原因の1位になっています。
性格の不一致は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当します。しかし、性格の不一致だけでは裁判離婚は認められません。
重要なのは、他の事情とも相まって、「婚姻共同生活が破綻し、その修復が著しく困難な状態である」と主張立証することです。
離婚原因が弱い場合は別居も続けるのも一つ
「相手と性格が合わないから離婚したい」と考えている方は少なくないと思います。しかし、上述のとおり、性格の不一致だけでは裁判離婚できません。
不貞行為(不倫、浮気のこと)やDVなど他の離婚原因が見当たらなければ、今すぐ離婚するのは難しいかもしれません。しかし、そのような場合も離婚を諦める必要はありません。
まずは別居を選択するのも一つの方法です。
その理由は、裁判所では、夫婦のどちらか一方のみに責任があるとは言えないケースで、別居期間の長さを離婚を認めるかどうかの重要な基準にしているからです。
具体的な事情によって一概には言えませんが、実務では、3年〜4年程度別居を続けると婚姻関係が破綻していると認定されやすいです。
したがって、まずは別居を先行させ、弁護士に相談しつつ、適切なタイミングで離婚に向けた次のステップに移る方が、スムーズに離婚できる可能性があります。
別居をした場合、できる限り早めに婚姻費用を請求するようにしましょう。
婚姻費用は生活費として重要なだけではありません。相手が「婚姻費用の支払をするくらいなら離婚に応じる」と考え、想定よりも早期に離婚が成立する可能性もあるのです。
別居前に、配偶者の浮気に関する証拠や、婚姻費用や養育費を請求する場合に備えて収入に関する証拠も忘れず収集しておくようにしましょう。
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離婚したいと思ったら弁護士に相談すべき?
ここでは、離婚問題を弁護士に相談するメリットをご紹介します。
離婚をするための適切な手続きを選べる
弁護士に相談すれば、法律上の離婚原因があるかどうか検討した上で、協議離婚、離婚調停、離婚訴訟など適切な手続きを選択できます。
場合によっては、まずは別居を継続した方が良いケースもあります。
また、弁護士が関与して離婚協議を進める方法も考えられます。
何が「適切」かはご相談者様のご事情やご希望によって様々です。
早期の離婚を希望するのか、財産分与や慰謝料、養育費といった離婚条件にこだわるのかなど、人それぞれ希望は異なります。
離婚に強い弁護士は、ご相談者様のお話を丁寧に聴き取り、ご相談者様のご希望を把握します。
その上で、裁判で離婚が認められる見込みなどを総合的に考慮して、離婚調停での解決を目指すべきか、離婚裁判まで考えておくべきかなど専門家ならではの観点からアドバイスいたします。
離婚条件で有利になる可能性が高まる
財産分与や慰謝料、親権や養育費など離婚条件の面で少しでも有利な結果を得るためには、法律や裁判例、実務の運用に関する専門的な知識が不可欠です。
弁護士が関与すれば、法的な専門知識をもとに、ご相談者様に有利な離婚条件を実現できる可能性が高まります。
もちろん相手がいる問題である以上、必ずしもこちらの主張がすべて通るとは限りません。
その場合でも、証拠を精査して相手を説得するなど、ご相談者の利益にかなうよう弁護士は全力を尽くします。
精神的ストレスが大幅に軽くなる
離婚調停や離婚訴訟では、離婚理由に関する主張や、財産分与や養育費などお金に関する主張を相手方と何度もやりとりします。
こうしたやりとりは、どうしても感情的になってしまうことが多く、ご本人にとって非常に大きな負担です。
しかし、弁護士が関与すれば、ご本人が相手とやりとりする必要はなくなります。
弁護士は、書面の作成はもちろん、調停期日にも同席もします。また、離婚裁判になった場合、期日には基本的に弁護士が出席します。
したがって、弁護士が間に入れば、ご本人の精神的ストレスは大幅に軽減されます。
離婚問題はその後の人生を大きく左右する問題です。お一人で悩まず、まずは弁護士の無料相談を利用してみましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
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