離婚慰謝料の相場は?慰謝料がもらえるケース・種類・条件を弁護士が解説

離婚慰謝料の相場は100万円~300万円で、不貞行為やDVなど配偶者に離婚の原因がある場合に請求できます。
法務省「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査(令和3年)」によると、離婚時に慰謝料名目での支払いが行われたのは全体の約12%にとどまり、すべての離婚で慰謝料が発生するわけではありません。
注意が必要なのは、すべての離婚で慰謝料が請求できるわけではない点と、証拠を集めて離婚原因を立証する必要があるという点です。
本来もらえたはずの慰謝料がもらえなかったり、慰謝料をめぐってトラブルになってしまったりすることを防ぐためにも、離婚慰謝料についての正しい知識が必要です。
この記事では、離婚を考えている方に向けて、以下について詳しく解説します。
- 離婚慰謝料の種類
- 離婚慰謝料がもらえるケース・もらえないケース
- 離婚慰謝料の相場
- 不貞相手に慰謝料を請求できるケース
- 離婚慰謝料の請求方法と損害賠償手続き
目次
離婚と慰謝料の基本
離婚慰謝料とは?どんな種類がある?
離婚慰謝料とは、離婚の原因を作った配偶者が相手の精神的苦痛に対して支払う損害賠償金です。不法行為に基づく損害賠償として位置づけられるため、「離婚の損害賠償」「離婚による賠償金」と表現されることもあります。
離婚の慰謝料は、全ての場合で支払われるものではありません。基本的に、配偶者が不倫や暴力、悪意の遺棄などの不法行為を行ったことが慰謝料請求の条件となります。
このような行為によって婚姻関係を破綻させる原因となった配偶者のことを、有責配偶者といいます。
法務省「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査(令和3年)」によると、一方に明確な落ち度がある場合でも、財産分与とは別の名目で慰謝料等を受け取ったのは全体の約5.6%にとどまり、約83%が「支払いなし」と回答しています。
相手への恐怖心や関係を早く断ち切りたいという気持ちから、請求できる権利があっても断念するケースが少なくないことが、この調査から読み取れます。
離婚慰謝料は2種類に分けられます。離婚そのものから生じる苦痛に対する「離婚自体慰謝料」と、離婚の原因となったこと(不倫やDVなど)から生じた苦痛に対する「離婚原因慰謝料」です。実際の請求では、この2つを区別せずに「離婚慰謝料」として金額を決定することがほとんどです。
女性は必ず離婚慰謝料をもらえる?
妻は夫から必ず離婚慰謝料をもらえるというのはよくある誤解です。
慰謝料は離婚の原因を作った側が払うものですので、不貞行為やDVなどを行ったのが妻である場合は、当然妻が慰謝料を払うことになります。
慰謝料以外に離婚時に請求できるお金は?
離婚や別居をするときに配偶者に請求できるお金は、慰謝料だけではありません。
以下の費目については、離婚慰謝料と別に請求できるので確認しておきましょう。
これらのお金は、基本的には相手方に離婚の責任がなくても請求できるものです。
ただし、こちらが有責配偶者である場合、婚姻費用の請求は認められない可能性があります。
離婚慰謝料と解決金・和解金・示談金の違いは?
慰謝料や財産分与、離婚後の生活費などを合わせて解決金・和解金・示談金という名目でお金を支払って、離婚問題を解決させることもあります。
解決金・和解金・示談金とは、夫婦間のトラブルを解決するために任意で支払われるお金のことをいいます。
解決金・和解金・示談金の内訳や金額は夫婦間の話し合いで自由に決めることができ、相手に不法行為がなかったとしても、離婚慰謝料のような目的でお金を受け取れる可能性があります。
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離婚慰謝料をもらえるケースは?
離婚しても、慰謝料が発生する場合としない場合があります。離婚慰謝料の請求が認められやすいのは、以下のようなケースです。
1.不貞行為(不倫・浮気)
配偶者の不貞行為(不倫・浮気)が原因で離婚に至った場合は、離婚慰謝料や不貞慰謝料を請求することができます。
ただし、法律上の不貞行為にあたるのは性交渉や性交類似行為があった場合のみであり、キスをしていた、抱き合っていたというだけでは不貞行為で慰謝料を請求することはできません。
不貞行為の例
- 配偶者以外の異性と性交渉をする
- 配偶者以外の異性と手淫や口淫をする(性交類似行為)
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2.悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の義務「同居義務」「協力義務」「扶養義務」に違反して夫婦生活を損なう行為をいい、悪意の遺棄を受けた場合は離婚慰謝料を請求することができます。
悪意の遺棄の例
- 一方的に家を出て生活費を送らない
- 配偶者を家から追い出して帰宅を認めない
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3.DV(暴力、経済的DV)
配偶者からDV(ドメスティックバイオレンス)を受けていた場合、離婚慰謝料を請求できます。
殴る蹴る、物を投げつけるなどの暴力(身体的DV)はもちろんですが、配偶者を経済的に支配する経済的DVも、慰謝料請求の対象になります。
身体的DVの例
- 殴る・蹴る
- 髪の毛をひっぱる
- 物を投げつける
経済的DVの例
- 収入があるのに生活費を渡さない
- 外で働くことを認めない
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4.モラハラ
モラハラは「精神的DV」とも言われ、心ない言葉を浴びせたり、仕事や外出を禁止して社会的に孤立させたりするなど、直接的な暴力などによらずに精神的苦痛を与えたり、相手を支配したりする行為です。
配偶者からモラハラを受けていた場合、それを証明することができれば慰謝料を請求できます。
モラハラの例
- 人格を否定する暴言を言う
- 大声でどなる
- 無視する
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5.性の不一致
セックスレスや性行為の強要、異常性癖といった性の不一致が原因の離婚でも、離婚慰謝料が認められる場合があります。
性の不一致の例
- 合理的な理由なく性交渉を拒否する(セックスレス)
- 望まぬ性行為を強要する
- SMなどの特殊なプレイを強要する
ただし、いわゆるセックスレスといっても、病気が原因で性行為ができない場合や、夫婦が互いに性行為に消極的な場合などは、慰謝料は認められません。
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離婚慰謝料が認められない場合
以下のようなケースですと、離婚慰謝料が認められないことが多いです。
1.性格の不一致
性格の不一致が離婚の原因である場合、どちらが悪いと決めるのは難しいため、基本的に慰謝料の請求は認められません。
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2.健康上の理由
離婚の原因に故意がなければ慰謝料は認められないため、配偶者の病気などの健康上の理由による離婚で慰謝料を請求することはできません。
なお、こちらが病気や障害を抱えており、看病や治療費の負担が必要な状態だったにも関わらず、配偶者がそれをしなかった場合は、悪意の遺棄として慰謝料を請求できます。
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3.借金
単に配偶者が借金をしているという理由での離婚慰謝料の請求は難しいといえます。
ただし、配偶者の行為が悪意の遺棄や経済的DVにあたる場合は、離婚慰謝料を請求できることがあります。
例えば、個人的な借金の返済に家庭のお金を使い込み家族が困窮している場合や、家族の名義で勝手に借金をしている場合は、慰謝料請求が認められる可能性があります。
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4.配偶者の親族との不和(嫁姑問題)
配偶者の親族(義父や義母など)との不仲のみが理由の離婚では、基本的には離婚慰謝料は認められません。
ただし、親族との問題に関して、配偶者が見て見ぬふりをしたり、嫌がらせに加担したりした場合は、離婚慰謝料が認められることがあります。
もっとも、婚姻は夫婦ふたりの問題ですので、離婚の直接的な原因となったのが姑でも、慰謝料は夫に請求することになります。
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5.不貞行為の時点で既に婚姻関係が破綻していた
不倫が行われた時点で既に婚姻関係が破綻していた場合は、原則として慰謝料の請求が認められません。
離婚慰謝料・不貞慰謝料とは、不貞行為によって夫婦関係を壊されたことの精神的苦痛に対して支払われるものです。したがって、婚姻関係が破綻した後に行われた不倫については、償うべき損害がないという理屈です。
例えば、離婚前提の別居中だった場合は、婚姻関係が破綻していたと判断される可能性があります。
配偶者や不倫相手に慰謝料を請求した時に、「婚姻関係が破綻した後の不倫だから、慰謝料の支払い義務はない」と反論されることはよくあります。
ただし、婚姻関係が破綻していたという主張が認められるケースは必ずしも多くはありません。
婚姻関係の破綻が認められやすいケース
- 離婚を前提に別居していた
- 離婚の話し合いがある程度進んでいた
婚姻関係の破綻が認められづらいケース
- 単身赴任や出張のために一時的に別居していた
- 別居中でも、家族同然の交流があった
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6.性交渉のない浮気・不倫
配偶者と不倫相手との間に肉体関係がなければ、原則として不貞慰謝料は請求できません。
例えば、キスをしただけ、手をつないだだけといったケースでは、慰謝料請求が認められない可能性が高いでしょう。
また、性交渉が疑われる状況だったとしても、性交渉を行った証拠がない場合は慰謝料請求が認められづらいといえます。
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離婚慰謝料の相場と金額を決める要因
離婚慰謝料の相場は100万~300万円
離婚の慰謝料の相場は一般的に100~300万円程度ですが、様々な要素を考慮してそのケースごとに判断されます。
離婚原因ごとの離婚慰謝料の相場は以下の通りです。
| 離婚理由 | 離婚慰謝料の相場 |
|---|---|
| 不貞行為 | 100~500万円 |
| 悪意の遺棄 | 50~300万円 |
| DV | 50~500万円 |
| モラハラ | 50~300万円 |
裁判で認められた慰謝料の事例
裁判で認められる慰謝料の金額は、行為の悪質性や婚姻期間によって大きく異なります。
慰謝料400万円が認められた事案(大阪高判令3・8・27)
夫が妻の妊娠期間を含む1年以上の長期にわたって不貞行為を継続したことや、妻や子らに対する高圧的な言動を繰り返したこと、さらに有責配偶者である夫から離婚訴訟を提起し、妻が応訴や反訴を余儀なくされた経緯などが考慮され、400万円の慰謝料が認められています。
なお、一審(大阪家裁)では300万円の認定でしたが、控訴審でさらに100万円増額されています。
モラルハラスメントにより220万円が認められた事案(東京地判令1・9・10)
元夫のモラルハラスメント行為により離婚を余儀なくされたとする元妻からの損害賠償請求に対し、慰謝料200万円と弁護士費用20万円の合計220万円の支払いが命じられています。
本事案では、「死ね」「子どもをおろせ」といった暴言について、メッセージ履歴や録音記録が証拠として機能し、暴言の内容・頻度・エスカレートの経緯が認定されました。
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不貞行為と生活費不払いで150万円が認められた事案(福岡家判令2・7・21)
夫が複数の女性と不貞行為に及び、合理的な理由がないにもかかわらず生活費を支払わなくなったことを理由として、不法行為に基づく慰謝料150万円が認められています。
裁判所は不貞相手の人数や生活費不払の期間を考慮しつつも、婚姻期間の短さや生活状況なども踏まえて金額を判断しています。
離婚慰謝料の額に影響する要素
離婚慰謝料の額を決める際には、以下に挙げたものをはじめとする様々な要素が考慮されます。行為の悪質性が高い場合や、精神的苦痛が大きい場合、慰謝料は高額になります。
1.慰謝料を請求する側の事情
慰謝料を請求する側の事情で慰謝料の額に関わってくるのは以下のような事項です。
- 精神的苦痛の程度
- 離婚後の経済状態
2.慰謝料を払う側の事情
慰謝料を払う側の事情で慰謝料の額に影響するのは以下のような事項です。
- 行為内容(不貞、遺棄、DV、モラハラ等)
- 有責行為の態様、回数、期間
- 支払い能力
- 反省や謝罪があるか
3.その他の事情
夫婦それぞれの事情のほかにも、以下のような要素が慰謝料の額に影響を与えます。
- 婚姻の期間
- 別居の期間
- 夫婦に子どもがいるか
- 不貞相手との間に子どもがいるか
離婚慰謝料の額は自由に決められる?
当事者同士の話し合いで離婚慰謝料について決める場合は、双方が同意すれば自由に慰謝料の額を決定できます。
つまり、相場より高い離婚慰謝料を提示しても、相手が了承すれば払ってもらえるということになります。
しかし、話し合いがまとまらなかった場合は、離婚調停や離婚裁判へ進み、裁判所の調停委員や裁判官の介入を受けることになります。
離婚調停や離婚裁判では、いわゆる「相場」や、上述の考慮要素を加味して慰謝料の金額が決定されます。
離婚慰謝料を高額にするポイント
離婚時に高額の慰謝料を取るための3つのポイントをご紹介します。
①証拠を用意する
離婚慰謝料の金額が様々な要素に左右されるというのは、ご説明した通りです。
これらの要素を証明する証拠が用意できれば、高額な離婚慰謝料を受け取れる可能性が高まります。
例えば、「二度と不倫はしない」と約束したのに不倫を繰り返したという場合、慰謝料が高額になる可能性は高いですが、相手方が「そのような約束をした覚えはない」と主張してくることも考えられるため、約束した事実を証明できる録音や誓約書のような証拠があるとよいでしょう。
また、大きな精神的苦痛を受けたことを証明するためには、医師の診断書なども有効です。
②裁判ではなく話し合いで解決する
上述の相場は、裁判で離婚慰謝料の金額を決める際に適用されるものです。
当事者間の協議や調停で離婚慰謝料の金額を決める場合は、相手方が了承すれば相場より高い慰謝料を受け取ることができるため、話し合いでの解決を図った方が有利に運ぶ可能性があります。
③弁護士に相談する
高額の離婚慰謝料を請求したい場合は、慰謝料を増額できる要素があるのか、どのような証拠が有効かなどを弁護士に相談することをおすすめします。
また、弁護士を通して離婚慰謝料を請求すると、相手にプレッシャーを与えることができるため、高額の慰謝料の支払いに応じる可能性が高まるでしょう。
不倫相手にも慰謝料を請求できる?
不倫相手にも慰謝料請求が可能!相場は?
不貞行為をされた側は、有責配偶者にも不倫相手にも慰謝料を請求できます。
不貞行為(不倫や浮気)は、配偶者とその不倫相手とが共同で行う行為であるため、配偶者と不倫相手が連帯して賠償しなければなりません。
不倫相手に対する不貞慰謝料の相場は、100万~300万円程度となっています。
なお、不貞慰謝料は、離婚せずに婚姻生活を継続する場合も請求できます。離婚せずに不倫相手に慰謝料を請求する場合の相場は、50万~100万円程度と言われています。
不倫相手への慰謝料請求の方法や条件については、『浮気相手に慰謝料請求!相場や条件は?旦那の反応は?注意点&対処法も解説』をご覧ください。
ただし、以下の場合は不貞相手への慰謝料請求が認められません。
慰謝料の二重取りはできない
原則として不貞慰謝料は配偶者と不倫相手の両方に請求できますが、
有責配偶者と不倫相手とどちらにも慰謝料を請求しようとすると、場合によっては二重取りとされ、認められないため注意が必要です。
例えば、不貞行為によって生じた慰謝料の額が100万円だった場合、配偶者から100万円支払われていれば、それ以上不倫相手に請求することはできません。100万円のうちいくらをどちらに請求するかは自由ですが、賠償してもらえる金額は配偶者と不倫相手とで合わせて100万円になります。

婚姻関係が破綻した後の不倫には慰謝料請求できない
不貞行為に対する慰謝料は、不貞によって夫婦関係が壊れてしまったという損害を償うためのものです。
したがって、既に夫婦関係が破綻している状態で行われた不貞行為には、償うべき損害がないため慰謝料請求は認められません。
具体的には、夫婦が離婚を前提に別居をしていると、婚姻関係が破綻していると判断される可能性が高いです。
不倫相手に故意・過失がない場合は慰謝料請求できない
不倫相手に故意・過失がない場合、不倫相手への不貞慰謝料は請求できません。
故意とは、不倫相手が、相手は既婚者であると知りながらあえて交際することをいいます。
過失とは、不倫相手が、注意すれば相手が既婚者であると分かるのに、気づかずに交際することをいいます。
したがって、有責配偶者が既婚者であることを隠して行っていた不貞の場合は、不倫相手に落ち度がないため、不倫相手に対する慰謝料請求は認められない可能性があります。
もっとも、不貞行為を行った配偶者への不貞慰謝料請求は可能です。
離婚慰謝料の請求方法と損害賠償手続き
離婚の方法と慰謝料の請求方法
1.協議離婚
協議離婚は、夫婦間で離婚自体や親権、慰謝料、財産分与などの話し合いを行い、離婚を成立させる方法です。
協議離婚の場合、双方が合意さえすれば、慰謝料の額などの条件を自由に決定することができます。離婚をしたいときはまず、この協議から始めます。
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2.調停離婚
当事者間の話し合いで交渉がまとまらなかったり、話し合い自体が不可能だった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、慰謝料についても離婚調停の中で話し合うことになります。
離婚調停では、裁判所の職員である調停委員が夫婦から別々に話を聞き、双方の意見を調整して合意に至る条件を探します。
双方が離婚条件に合意した場合は、所定の手続きを踏んだ後に離婚が成立します。
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3.裁判離婚
離婚調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、離婚裁判を起こすことができます。
離婚裁判では、裁判官が当事者双方の主張を聞いた上で、判決という形で、夫婦を離婚させるか、離婚慰謝料の支払いを命じるかなどの決定を下します。
もっとも、離婚裁判の途中で裁判官が和解案を出してくる場合が多く、そこで双方が和解に応じれば判決を待たずに裁判は終了し、離婚が成立することになります。
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離婚慰謝料を確実に支払ってもらうには?強制執行できる?
口頭で離婚慰謝料を請求することも可能ですが、口約束では反故にされる可能性が高く、そうなった場合の救済方法もありません。
そのため、離婚慰謝料をはじめとする離婚条件の取り決めは、法的効力のある書面にすることをおすすめします。
具体的には、公証役場にて公正証書を作成することが有効です。
慰謝料を支払うと約束した旨を公正証書に記録し、強制執行認諾文言を付けることで、慰謝料が支払われなかった場合に調停や裁判を経ずに強制執行(差し押さえ)ができるようになります。
離婚調停や離婚裁判で慰謝料の取り決めを行った場合も、強制執行が可能です。
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慰謝料請求の時効と期限
離婚が成立した後でも、3年以内であれば元配偶者に慰謝料を請求することができます。
離婚後に不倫が発覚した場合でも不倫相手に慰謝料を請求できますが、不倫相手への慰謝料請求権は、①不倫の事実と不倫相手を知った時から3年、または②不貞行為が行われた時から20年のどちらか早い方が過ぎると時効を迎えます。
慰謝料請求の時効は、一定の手続きによって更新できる場合があります。時効が迫っている場合は、なるべく早くアクションを起こしましょう。
| 請求相手 | 慰謝料の請求期限 |
|---|---|
| 配偶者 | 離婚後3年間 |
| 不倫相手 | 不貞行為を知った時から3年間 不貞行為の時から20年間 ※いずれか早い方 |
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離婚慰謝料と税金の関係
離婚慰謝料には、原則として税金はかかりません。慰謝料は、失った利益を回復するために支払われるものであり、所得や贈与にはあたらないからです。

ただし例外として、慰謝料が相当な金額を超えて高額であると税務署が判断した場合、慰謝料を受け取った側は贈与税を支払う必要があります。
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離婚で慰謝料を請求するには証拠が大事!
離婚慰謝料の請求に証拠が重要な理由
離婚で慰謝料を請求するには、離婚の原因となった行為、つまり不貞行為やDV、モラハラ、悪意の遺棄などの事実が存在することが必要です。その事実を証明しなければならないのは慰謝料を請求する側です。
当事者間での話し合いで解決できる場合には、証拠を用意する必要はありません。
もっとも、証拠もなしに慰謝料の交渉をしても納得を得ることは難しいでしょう。確実な証拠があれば、有利に働く可能性があります。
離婚調停においては、必ずしも証拠が必要になるわけではありませんが、説得力を増すといった意味で役に立つことがあります。裁判になった場合には、証拠を用意して離婚の原因となった行為の存在を証明することが必須になります。
証拠の重要性は、裁判例からも明らかです。
妻が夫の不貞やDVを理由に婚姻関係の破綻を主張し、慰謝料2,000万円を請求した事案では、不貞については客観的な裏付けがなく、DVについても双方に暴行が認められたため夫の一方的な責任は否定されました。その結果、慰謝料請求はすべて認められませんでした(東京家裁令和2年2月3日判決)。
配偶者に離婚を切り出してからでは証拠を集めるのが難しくなってしまうため、離婚に向けて動き出す前から証拠を集めておくことをおすすめします。
離婚慰謝料の請求に必要な証拠
離婚の原因によって、有効な証拠は違ってきます。
1.不貞行為
不貞行為で慰謝料を請求するためには性交渉の事実が必要です。以下のような証拠があればそれを証明できます。
不貞行為の証拠
- 性交渉を直接的に示す写真や動画、音声など
- 2人がラブホテルに出入りしている写真
- ラブホテルの領収書、レシート
- クレジットカードの利用明細
- 本人や不貞相手が不貞を自白している書面や音声、動画
不貞行為の証拠を集めるためには、興信所(探偵)などを利用するのも有効な手段です。
2.悪意の遺棄
悪意の遺棄で慰謝料を請求するためには、以下のような証拠が有効です。
悪意の遺棄の証拠
- 住民票の写し(配偶者が別居して住民票を移動させていた場合)
- 賃貸借契約書(配偶者が新たに別居先の住居を借りたことを示す)
- 通帳の写し(以前は送金されていた生活費が送金されなくなっていることを示す)
- メールやSNSのやり取り(別居に正当な理由がないことを示す)
- 配偶者の行動を記録した日記やメモ書き
3.DV・モラハラ
DVやモラハラで慰謝料を請求するためには、以下のような証拠が有効です。
DV・モラハラの証拠
- 医師による怪我やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断書、受診歴
- 暴力による怪我や、壊された物などの写真
- 警察や公的機関への相談記録
- 配偶者の言動を記録した日記やメモ書き
- 暴行や暴言を記録した映像や音声、メールやSNSなどのメッセージ
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離婚慰謝料の証拠の集め方
離婚慰謝料を請求するための証拠の収集には、以下のような方法があります。
- 弁護士に相談する
- 自力で集める
- 探偵(興信所)に依頼する
慰謝料請求にどのような証拠が必要か分からないという方は、まず弁護士に相談してアドバイスを受けるのがよいでしょう。
DV・モラハラの慰謝料を請求するのであれば、自分で相手の言動の記録を取ることが重要です。
不貞慰謝料を請求する場合は、浮気現場の写真撮影などを探偵に依頼するのも有効な手段です。
離婚慰謝料に関するよくある質問
Q. 離婚慰謝料をもらえるケースと請求できないケースの違いは?
離婚慰謝料は、不貞行為・DV・モラハラ・悪意の遺棄など配偶者に不法行為がある場合に請求できます。性格の不一致や健康上の理由など、どちらか一方に責任を帰すことが難しい場合は認められません。
Q. 離婚慰謝料の相場はいくら?
離婚慰謝料の相場は100万円~300万円です。不貞行為では100万~500万円、DVやモラハラでは50万~300万円が目安で、婚姻期間や行為の悪質性、証拠の有無などによって金額が変わります。
Q. 離婚慰謝料に税金はかかる?
離婚慰謝料には原則として税金はかかりません。精神的苦痛に対する損害賠償であり、所得にも贈与にも該当しないためです。ただし、相当額を大きく超えると税務署が判断した場合は、受け取った側に贈与税が課される場合があります。
Q. 不倫相手にも慰謝料を請求できる?
不倫相手にも慰謝料請求は可能です。配偶者と不倫相手は共同不法行為者として連帯責任を負います(民法第719条)。ただし二重取りは認められず、両者から受け取れる総額は損害額の範囲内です。
離婚の慰謝料を弁護士に相談するメリット
離婚問題で弁護士ができること
1.配偶者との交渉
協議離婚の場合、相手と直接話し合いをしなければならないため、ヒートアップしてしまったり、話し合いが長期化してしまうおそれがあります。弁護士に依頼した場合、配偶者とのやりとりを代理で行ってもらうことが可能です。
また、離婚や慰謝料の合意がとれたとしても、離婚の際に決めなければいけないことは非常に多くかつ複雑なため、条件に漏れや不備があったことが後々発覚して問題になってしまうことも考えられます。トラブルなく離婚をし、慰謝料を受け取るためにも、専門家のサポートを受け、しっかりと話し合いをすることが重要です。
さらに、弁護士はどんな証拠があってどんな風に交渉をすれば慰謝料が認められるか、どのくらい慰謝料を請求できるかを良く知っているため、協議だけでなく調停・裁判においても有利に交渉を進めることができるでしょう。
2.手続きの代行
離婚調停・裁判となった場合も、弁護士は煩雑な手続きを代わりに行います。
また、弁護士は本人の代理で裁判に出席できるため、本人が裁判期日に裁判所に出向く機会はほとんどありません。
このように、弁護士は離婚問題全般に幅広いサポートを提供します。離婚や慰謝料に関してお困りごとがある場合は、離婚に詳しい弁護士に相談し、安心かつスピーディーに解決を目指すことをおすすめします。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

弁護士
なお、離婚裁判は原則として調停を行った後でなければ起こすことができません。