お金を理由に離婚できる?浪費癖や経済的DVは離婚理由になる?
「相手のギャンブルや浪費癖で離婚できるか知りたい」
「生活費を渡してもらえない。離婚理由になるのか」
「夫と金銭感覚が合わないため離婚したい」
相手がギャンブルなどでお金を浪費していたり、お金をまったく渡してくれなかったりして、生活が苦しく離婚を考えている方もいらっしゃると思います。
浪費や経済的DV、借金などによって、家計が破綻しているという場合は、離婚が認められる可能性が高いです。ただし、金銭感覚が合わないという程度であれば、離婚が認められにくいでしょう。
今回は、お金が原因で離婚する夫婦の割合や離婚できるケース、お金を原因として離婚に踏み切る前の準備や、お金にだらしない相手と離婚するときの注意点について解説します。
目次
お金が原因で離婚する夫婦の割合は?
「お金が原因で離婚する夫婦の割合はどれくらいなのか」と気になる方も多いと思います。以下の表は、婚姻関係事件の申立を動機別に集計したものになります。
夫(申立人総数15,192) | 妻(申立人総数41,652) | |
---|---|---|
第1位 | 性格が合わない(9,103) | 性格が合わない(15,835) |
第2位 | 異性関係(1,817) | 暴力を振るう(7,711) |
第3位 | 浪費する(1,748) | 異性関係(5,362) |
第4位 | 性的不調和(1,592) | 浪費する(3,550) |
第5位 | 暴力を振るう(1,320) | 性的不調和(2,642) |
第6位 | 病気(592) | 酒を飲み過ぎる(2,394) |
第7位 | 酒を飲み過ぎる(376) | 病気(672) |
(注)申立ての動機は、申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計
表を見ると、夫・妻ともにおよそ10パーセントの人が「浪費する」ということを理由の一つとして離婚調停を申し立てていることがわかります。
また、以下の表は、婚姻関係事件の申立を申立人別に集計したものになります。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
第1位 | 精神的に虐待する(3,252) | 生活費を渡さない(12,040) |
第2位 | 家族親族と折り合いが悪い(1,668) | 精神的に虐待する(10,881) |
第3位 | 同居に応じない(1,338) | 家庭を捨てて省みない(2,537) |
第4位 | 生活費を渡さない(738) | 家族親族と折り合いが悪い(2,332) |
第5位 | 家庭を捨てて省みない(720) | 同居に応じない(599) |
(注)動機別の「その他」「不詳」は除外
表を見ると、妻側は「生活費を渡さない」ことを理由として調停を起こしている人が多いということがわかります。
「相手の浪費癖がひどいから離婚したい」「お金にだらしないから離婚したい」と考えることは、そこまで珍しいことではありません。
金銭感覚が合わない程度では裁判離婚は難しい
「家にお金を入れてくれているけれども、夫と金銭感覚が合わないから離婚したい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
金銭感覚が合わないというだけでは、離婚が認められない場合が多いです。生活が破綻しているとまではいえないような浪費や借金についても、離婚が認められる可能性は低いです。
単なる金銭感覚のずれといえるケースには、以下のようなものが挙げられます。
離婚が認められない金銭感覚のずれ
- 妻側は節約をしているが、夫側は貯金をせず遊興費に充てている
- 夫側が趣味などを節制しているにもかかわらず、妻側は美容にお金をかけている
- 後輩におごる癖がある など
「夫と金銭感覚について話し合ってきたけど、らちが明かない」「夫と金銭感覚が合わないから離婚したい」とお考えの方は、まず別居をしてみることをおすすめします。
同居期間に比べて別居期間のほうが長ければ、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断してもらえて、裁判離婚ができる可能性があります。
一般的にはおおよそ3~5年程度の別居期間があれば、裁判離婚できる可能性があるといわれていますので、「金銭感覚の違いで離婚したい」という方は、別居を考えてみることが重要です。
もちろん、相手が離婚することに合意している場合は、金銭感覚の不一致を理由として離婚することは可能です。
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相手のお金遣いが原因で離婚できるケース
「実際にお金遣いが原因で離婚できるのか」と不安になる方もいらっしゃると思います。
裁判離婚が認められるためには、法定離婚事由(離婚が法的に認められるための理由)が必要です。法定離婚事由は、以下の5つです。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「相手に浪費癖がある」「相手が生活費を入れてくれない」といった問題が、法定離婚事由に該当するような内容であれば、離婚をすることは可能です。
ここでは、法定離婚事由に該当し、離婚が認められるようなお金の問題について解説します。重要となるのは、相手の浪費や散財によって、家計が破綻しているかどうかということになります。
浪費によって家計が破綻している
ギャンブルや高価な商品などにお金を使うといった浪費癖があり、そのせいで家計が破綻しているという場合は、離婚が認められる可能性があります。
たとえば、「散財し過ぎた結果借金を繰り返して家計が破綻している」「ギャンブルによる浪費癖が治らず、婚姻関係が破綻している」という状態であれば、それぞれ「悪意の遺棄」「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する可能性が高いです。
お金を厳しく管理しており、生活費を渡してくれない
夫が生活費を渡してくれないという場合は、経済的DVに該当する可能性があり、離婚が認められることがあります。
経済的DVとは、経済的に相手を支配しようとする行為のことをいい、以下のような行動が該当します。
経済的DVに該当する行為
- 生活費を渡さない
- 外で働くことを認めない
- お金の使い方を強く制限する
- 家計の収支を把握させない
- 夫婦のお金を使い込む
- 無断で借金をする
生活費を多少は受け取っている場合であっても、生活に支障が出るほど少ない額しか受け取れていないならば、経済的DVといえるでしょう。
「過度に節約を強要している」「お金の管理について異常なまでに厳しい」といった理由で、生活に支障をきたしているという場合も、離婚が認められる可能性が高いです。
経済的DVは、法定離婚事由のうち、「悪意の遺棄」または「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたり、裁判で離婚が認められる可能性があるということを覚えておきましょう。
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借金で生活が破綻している
「借金を繰り返して、家計が破綻している」という場合も、お金を原因として離婚できる可能性があります。
「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する場合もありますし、場合によっては不倫相手に会うために借金をしているというケースもあります。その場合は、「不貞行為」として、やはり法定離婚事由の1つとして認められる可能性が高いです。
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働ける状態なのに定職に就かず、お金を入れてくれない
相手が健康で、労働ができる状態なのにもかかわらず、定職に就かずに生活費を家庭に入れてくれないという場合も、離婚ができる可能性があります。
夫婦の同居・協力・扶助の義務に反することになりますので、「悪意の遺棄」として離婚が認められるケースがあることを覚えておきましょう。
相手が離婚に合意している
相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、「お金にだらしないこと」を理由として離婚することができます。
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。当事者が合意さえすればどんな理由でも離婚をすることができるところが特徴です。
話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができるので覚えておきましょう。
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ほかに法定離婚事由がある
ほかに法定離婚事由があるという場合も、離婚することができます。
たとえば、「相手がお金を浪費しているだけでなく、DVやモラハラなどの行為をしている」といったケースが該当します。
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お金を原因とした離婚に踏み切る前に
相手の浪費や経済的DVに関する証拠を集めておく
相手のお金の使い方を原因とした離婚に踏み切る前に、「結婚生活が破綻するほど相手が浪費していた」といったことを示す証拠を集めておきましょう。
先ほども言った通り、相手が同意すれば離婚は可能です。しかし、相手が離婚することについて同意していない場合は、離婚調停、離婚裁判というステップに移行することになります。
相手のお金の問題が、離婚裁判で法定離婚事由に該当すると認められるには、「結婚生活が破綻するほど浪費や借金といった問題があった」という証拠が重要になるため、証拠を集めてから離婚することが大切です。
たとえば、以下のような証拠が重要になります。
お金が原因での離婚に重要な証拠
- 生活費が支払われていないことを示す通帳、家計簿
- 生活費が支払われず、生活が苦しいことを示す日記
- 浪費の原因が不貞行為の場合は、肉体関係がわかる証拠(動画や写真、LINEやSNSなど)
- 配偶者の浪費や借金がわかるクレジットカード利用明細
- 借金の督促状
- 収入金額がわかる配偶者の給与明細、源泉徴収票 など
離婚後の生活を考えて準備しておく
いきなり離婚に踏み切る前に、離婚後の生活について準備をしておくことが大切です。
相手のお金の問題で離婚するということになれば、自分が自由に使えるお金が少ない場合があると思います。勢いで離婚するのではなく、「離婚後はどこに住むか」「離婚後に働き口はあるのか」といったことを考えておきましょう。
また、離婚後にもらえるお金や、受けられる公的支援についても調べておくことが大切です。
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弁護士に相談する
相手のお金の使い方を原因とした離婚に踏み切る前に、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談すれば、自分が離婚したいと考えているお金の問題について、実際に法定離婚事由に該当するかどうか、専門家の目線から判断してくれます。
離婚をするうえでの注意点や、財産分与はどうするのか、子どもがいる場合は、親権・養育費はどうするのかといった、離婚条件についても代理で交渉してくれるため、心強い味方になってくれるはずです。
お金にだらしない相手と離婚するときの注意点
財産分与は可能だが、金額は少なくなるおそれも
離婚原因が浪費や借金といったお金に関するものであったとしても、財産分与を行うことは可能です。
ただし、浪費や借金といったトラブルで離婚する場合は、財産分与をしようと思っても、そもそも離婚時に夫婦の共有財産がなく、財産分与ができなかったり、金額が少なくなったりすることもある点に注意が必要です。
なお、「財産分与をする前に、浪費癖のある夫に貯金や財産を使い込まれてしまうのではないか」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
別居を始めた後に、配偶者が貯金を使い込んだり別の口座に移したりしてしまっても、その分財産分与の額が減ってしまう訳ではありません。別居後に配偶者に貯金を引き出された場合には、別居時の残高を基準として財産分与を請求することができます。
また、貯金の使い込みを防ぐために、貯金の仮差押え(一時的に貯金を処分させないようにすること)という手続きを利用できる可能性があります。
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・離婚すると貯金はどうなる?貯金の財産分与と貯金隠しの対処法を解説
慰謝料請求は支払ってもらえないおそれも
離婚原因が浪費や借金といったお金に関するものであったとしても、その理由が婚姻生活を破綻させるものであったと証明できれば、慰謝料請求が認められる可能性はあります。
ただし、慰謝料請求が認められたとしても、相手に貯金や財産がなければ、慰謝料を回収することは難しいです。
慰謝料について公正証書(公証人に依頼して作成してもらう公文書)を交わして離婚したとしても、離婚後に相手が破産申請を行った場合は、一般的に慰謝料は免責されることになります。
そのため、慰謝料請求が認められる可能性はありますが、実際には慰謝料が支払われないといった事態に陥るおそれがあります。
慰謝料の代わりとして、財産分与の割合をこちらが大きくなるように取り決めるという対処法も可能です。自動車や生命保険なども、財産分与の対象となりますので、よく確認しておくことをおすすめします。
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養育費については、お金がない相手でも請求できる
離婚原因が浪費や借金といったお金に関するものであったとしても、こちらが親権を取得した場合は、相手に養育費を払ってもらうことができます。
慰謝料については、仮に相手が破産した場合は、一般的に免責され、こちら側が回収することが難しくなります。
ただし、養育費の場合は、仮に相手が破産したとしても、免責されることはありません。
養育費については、相手にお金がない状態でも請求できるということを覚えておきましょう。
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・離婚後の養育費の相場はいくら?支払われなかったらどうする?
相手が自己破産したときを考え、一括の支払いを求める
先ほどの通り、相手が離婚後に自己破産した場合は、慰謝料や財産分与の取り決めを公正証書に残したとしても、一般的に免責されてしまうことになります。
慰謝料や財産分与のお金をきちんと支払ってもらうためにも、できるだけ一括で支払うよう相手に求めることが重要です。
義両親に相談するのはリスクがあることも
「義両親から何か夫に言ってもらえば、お金遣いの荒さも治るのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。実際、それで夫のお金遣いの荒さが落ち着いたということもあるようです。
ただし、離婚を迷っている状態で両親や義両親に話を聞いてもらうのは、場合によっては離婚問題に親が介入する事態になってしまい、話がこじれてしまうリスクもあります。
自分の身内など近しい第三者に相談するときは、離婚問題がこじれてしまうおそれがある点に留意してください。
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相手のお金遣いを原因に離婚したい場合は弁護士に相談!
相手の浪費や借金といったお金に関する問題で、結婚生活が破綻していると認められれば、離婚が認められる可能性があります。
相手の浪費や借金、経済的DVなどで離婚を考えているという方は、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、自分が離婚したいと考えているお金の問題について、実際に法定離婚事由に該当するかどうか、専門家の目線から判断してくれるというメリットがあります。
財産分与や慰謝料はどうするのか、親権・養育費の取り決めはどうするかといった、離婚条件を交渉するうえでも心強い味方になってくれるはずです。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了