離婚後でも慰謝料請求できる?証拠なしでは?浮気相手にはいつまで?

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  • 離婚後でも慰謝料請求できる?時効はいつまで?
  • 離婚後に浮気相手にも慰謝料請求は可能?
  • 離婚後の慰謝料請求は証拠なしでも可能?

離婚後に浮気相手との不倫が発覚した場合でも、慰謝料請求は可能です。また、離婚時に慰謝料請求をしなかった場合でも、離婚後に慰謝料請求できる可能性はあります。

しかし、慰謝料請求はいつでもできるわけではなく、期限が設けられています。

離婚慰謝料の請求権の時効(請求期限)は、離婚が成立した日から3年間です。ただし、債務の承認がある場合は、その日から3年間となります。

婚姻期間中の不貞行為について、離婚後に発覚した場合は、その事実を知った日から3年間(あるいは不貞から20年間)となるなど、いつまで請求できるのかは個々の事案によって異なります。

ただ、離婚時や離婚後の状況、証拠の有無などによって、請求できない場合もあります。

この記事では、離婚後に慰謝料請求ができる期限と、請求方法について解説します。浮気相手に対する慰謝料請求についても解説するので、ぜひ最後までお読みください。

離婚後に慰謝料請求できる?いつまで?

離婚後でも元夫に慰謝料請求できる!

離婚後でも、元配偶者に対して、慰謝料請求をすることは可能です。

配偶者の不法行為(例:不貞・モラハラ・DVなど)が原因で、婚姻関係が破綻して離婚することになった場合は、いわゆる離婚慰謝料を請求できます。離婚慰謝料とは、離婚自体によって受けた精神的苦痛を補填するための賠償金です。

離婚慰謝料は、財産分与の一環として請求したり(慰謝料的財産分与・財産分与の慰謝料的要素)、解決金という名目で受け取ったりすることも多いものです。こうすることで、慰謝料を支払うことに抵抗がある当事者間においては、より円滑な解決につながる場合があります。

離婚当時に慰謝料が請求できることを知らなかった方や、離婚届を出すことを優先したため慰謝料の話し合いが後回しになっていた方も、元夫への慰謝料請求を諦める必要はありません。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

ただし、慰謝料請求には、請求期限(時効)があります。

そのため、離婚後、慰謝料請求すると決めた場合、なるべく早く行動にうつしましょう。

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離婚後にできる元夫への慰謝料請求は2種類

離婚後にできる元夫への慰謝料請求には2種類あります。すでにお話しした離婚慰謝料のほかに、離婚の原因となった言動そのものにもとづく慰謝料請求も可能です。

慰謝料請求の対象となる不法行為には、不貞(肉体関係をともなう不倫)、モラハラ(精神的虐待)、DV(家庭内暴力)、悪意の遺棄(例:生活費を渡さない)などがあります。

離婚していない場合でも、離婚後でも、これらの行為を理由とする慰謝料請求は可能です。

このうち、とくに「不貞」があった場合に請求する慰謝料のことを、不貞慰謝料と呼ぶことも多いでしょう。

離婚慰謝料不貞慰謝料
請求相手元夫元夫と浮気相手
請求できるケース離婚した場合に請求できる・不貞があった場合に請求可能
・離婚していなくても請求可能
時効離婚の日から3年間・不貞を知った時から3年間
(または)
・不貞行為の時から20年間

慰謝料請求はいつまで?3年・20年で時効?

夫への慰謝料の請求期限は、離婚慰謝料と不貞慰謝料とで異なります。

離婚慰謝料の請求期限(時効)

離婚慰謝料の請求期限は、離婚の日から3年間です。

離婚の原因となった行為(不倫や暴力など)行為によって、夫婦関係が破綻し離婚に至ったといえる場合は、離婚後3年以内であれば離婚慰謝料の請求が可能です。

離婚の原因となった行為が何年前のことであっても、離婚慰謝料を請求する権利は失われません。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

財産分与の一環として慰謝料請求する場合もあります。

慰謝料的財産分与は、離婚成立から2年が時効となるので、注意が必要です。

不貞慰謝料の請求期限(時効)

不貞行為に対する慰謝料請求の期限は、不貞行為が発覚してから3年間、または不貞行為から20年間の早い方です。

ただし、婚姻中は時効の完成が猶予されます。したがって、万一、不倫発覚から3年が経過し、かつ、不貞行為から20年が経過していた場合でも、離婚後6か月が経過するまでは、不貞慰謝料の請求が可能です。

なお、時効をカウントし始める時点のことを、起算点といいます。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

不貞慰謝料の3年の時効の起算点となる「不貞行為の発覚」とは、不倫の事実および浮気相手の素性が分かった時です。

不貞慰謝料の20年の時効の起算点は、不貞行為の時です。

離婚後の浮気発覚!慰謝料請求はできる?

夫婦が性格の不一致などを理由として離婚した後、浮気が発覚したようなときは、浮気が離婚原因ではないため、離婚慰謝料を請求することはできません。

しかし、不貞行為があってから20年以内、かつ不倫の発覚(不倫の事実・浮気相手の発覚)から3年以内であれば、浮気そのものを理由として不貞慰謝料を請求することができます

離婚後の浮気発覚

  • 浮気による離婚ではないので、離婚慰謝料は請求できない
  • 浮気そのものを理由として、不貞慰謝料を請求できる

離婚後に発覚した浮気について、不貞慰謝料を請求する場合、時効はどうなるのでしょうか。

この場合、20年の時効と、3年の時効のうち、いずれか先に経過した時点で、慰謝料請求権は消滅します。

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離婚後に慰謝料請求する手続き

離婚後に慰謝料請求する手続きは、離婚慰謝料と不貞慰謝料で大きくは変わりません。

慰謝料請求をする場合、直接交渉する、調停をおこす、裁判をおこすといった手段が考えられます。

直接交渉する

まずは、元配偶者や不倫相手に慰謝料を請求する意思を伝えます。手段は、口頭やメールなどのほか、内容証明郵便を送付したり、弁護士を通して連絡するのもよいでしょう。

内容証明郵便とは、どんな内容の手紙が、いつ、誰から誰に差し出されたかを証明してくれる郵便局のサービスです。

特に、後から慰謝料請求調停や裁判を起こす場合には、いつ請求を送ったかを証明することが重要なため、内容証明郵便は日付の証拠としてよく用いられています。

内容証明郵便は、見慣れた手紙とは違う形式で届くため、心理的にプレッシャーを与え、慰謝料の支払いを促す効果もあります。

岡野タケシ弁護士
岡野タケシ
弁護士

交渉が成立し、慰謝料の支払いに合意ができたら、合意書(示談書・離婚協議書・離婚給付等契約公正証書)を作成しましょう。

そうすることで、合意の内容を、後日確認することができ、紛争の蒸し返しを防止することができます。

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慰謝料請求調停を起こす

交渉しても慰謝料の支払いに応じない場合は、裁判所に慰謝料請求調停を申し立てることができます。

調停とは、裁判所の調停委員を挟んで話し合いを行い、双方の合意を目指す手続きです。

元配偶者への慰謝料請求は家庭裁判所にて、不倫相手への慰謝料請求は簡易裁判所または地方裁判所にて争います。

慰謝料請求調停で双方が慰謝料の支払いに合意ができた場合は、調停は成立となり、調停調書が作成されます。

調停調書があれば、強制執行(差し押さえ)によって強制的に支払いを実現させることも可能です。

参考

裁判所|慰謝料請求調停

慰謝料請求訴訟を起こす

調停が不成立となった場合は、慰謝料請求訴訟を申し立てて争うことができます。

元配偶者への慰謝料請求は、すぐ裁判を起こすことができず、必ず調停を先に申し立てる必要があります(調停前置主義)。

一方、不倫相手への慰謝料請求には、調停前置主義が適用されないため、調停を経ずに簡易裁判所か地方裁判所に裁判を申し立てることが可能です。

裁判は、申立人が取り下げたりしない限りは、和解か判決で終了します。

確定判決や和解調書があれば、強制執行(差し押さえ)によって強制的に支払いを実現させることができます。

離婚後に慰謝料請求の時効を延ばすには?

「慰謝料請求ができると気づいた時にはもう時効完成間近だった」という場合でも、慰謝料請求の時効を延ばす方法があります

  • 1.裁判上の請求
  • 2.債務の承認
  • 3.催告
  • 4.差押え、仮差押え、仮処分

時効の期間内にこれらの行為を行えば、時効の完成が猶予されたり、時効が最初から数えなおし(更新)になったりする可能性があります。

離婚後に浮気相手に慰謝料請求できる?

離婚後でも浮気相手に慰謝料請求できる!

婚姻中でも離婚後でも、時効期間が経過していなければ、浮気相手に対しても不貞慰謝料を請求することができます

ただし、離婚したこと自体に対する慰謝料は、原則として元配偶者にしか請求できません。

また、不倫によって受けた精神的苦痛に対し、すでに配偶者から相当する賠償を受けている場合は、不倫相手からも慰謝料を受け取ることは、二重取りになるので、できません。

離婚後の不貞慰謝料請求はいつまで?

不貞相手に対する慰謝料請求がいつまで可能なのかは、不貞行為が発覚してから3年間、または不貞行為から20年間のいずれか早い方となります。

不貞行為が発覚した時とは、不倫相手の名前や住所が判明し、慰謝料請求ができる状態になった時点を指します。

また、20年の時効の起算点となるのは、不貞行為の時です。

離婚慰謝料と不貞慰謝料の時効の大きな違いは、離婚から3年間という期限がない点です。

離婚後に慰謝料請求が難しいケース

時効が来ていなくても、不倫があった時やその後の状況によっては、慰謝料を請求することができない可能性があります。

証拠なしでは慰謝料請求は難しい?

離婚訴訟など裁判所での手続きにおいて、慰謝料請求を認めさせるためには、裁判官を説得できるだけの証拠が必要です。

離婚前であっても、離婚後であっても、証拠なしで慰謝料請求をするのは、厳しい傾向があるといえるでしょう。

婚姻中であれば、メールや写真などの証拠を集めるのは比較的容易ですが、離婚後でかつ不法行為から時間が経ってしまっていると、有効な証拠を集めるのは簡単ではありません。

ただし、物的証拠が無い場合でも、元配偶者やその浮気相手が、みずから不貞行為を認めているときは、慰謝料請求がとおる可能性があります。

たとえば、元夫や浮気相手の「あの時、○○と不貞行為をしていた」等の発言を録音したり、念書を書かせたりするなどの方法で、離婚後であっても、不貞行為の証拠収集は可能です。

不倫の時点で婚姻関係が破綻していた

不貞慰謝料は、不貞行為のせいで、夫婦間の平穏・円満な共同生活を送る権利を侵害し、精神的苦痛をあたえた場合に、支払う賠償金です。

したがって、不貞慰謝料請求が認められるには、その前提として、婚姻関係が破綻していないことが必要となります。

裏を返せば、不貞行為の時点で、すでに婚姻関係が破綻していた場合は、不貞慰謝料の請求は認められません。

実際の裁判などでは、「不倫の時点ですでに婚姻関係が破綻していた。だから、不倫が婚姻関係の破綻に影響を与えたとは考えづらい。慰謝料によって補うべき損害はない。」といった反論が出されることもあります(破綻の抗弁)。

岡野タケシ弁護士
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すでに婚姻関係が破綻していたかどうかの判断に画一的な基準はありませんが、夫婦が別居を始めた後に不倫した場合は、慰謝料が認められないことも多いものです。

不倫を許したことがある

以前から不倫に気づいていながら、不倫を許していた(宥恕した)場合、後から問題を蒸し返して慰謝料を請求するのは認められないとされています。

明確に「浮気相手と別れるならば慰謝料は請求しない」と、不貞行為を許す言動をしていた場合だけでなく、不倫を知っていながらある程度の期間にわたり婚姻生活を続けていた場合も、宥恕していたと認められる可能性があります。

とはいえ、「今回だけは許す」と言って、もう不倫しない旨を約束させたにも関わらず、相手が不倫を繰り返したような場合は、宥恕によって慰謝料請求が妨げられることはないでしょう。

清算条項(慰謝料請求をしない約束)を締結

離婚時に、離婚条件を記した離婚協議書や公正証書を作成することがあります。そして、そういった書面には、多くの場合、清算条項という文言を盛り込みます。

清算条項とは、「この協議書に書いてあること以外に金銭の請求はしません」といった旨の宣言です。

清算条項(文例)

  • 甲及び乙は、本件に関し、本協議書に定めるもののほか、何らの債権債務のないことを相互に確認し、今後、名義の如何を問わず、互いに金銭その他一切の請求をしない。

清算条項を締結した場合は、その後、慰謝料請求をすることは非常に難しくなります。

ただし、離婚時には気づいていなかった不倫が、離婚後に判明した場合には、清算条項が設けられていても例外的に不貞慰謝料の請求が認められる可能性もあります。

また、不倫相手への慰謝料は、離婚時の元夫との清算条項の対象ではないため、元夫との間で締結した合意書の中に清算条項があっても、二重取りなどにならない限り、不倫相手への慰謝料請求の妨げにはなりません。

既婚者だと知らなかった…浮気相手に慰謝料請求できない?

元夫が、浮気相手の女性に対して「自分は独身である」と嘘をついて、浮気をするケースも多いものです。

不貞という不法行為にもとづき慰謝料請求ができるのは、加害者側に落ち度(故意・過失)がある場合です。

既婚者であることを隠して行っていた不倫の場合は、浮気相手には落ち度がないため、原則、浮気相手に慰謝料請求はできません

ただし例外として、相手が既婚者であることを知らなかったことにつき故意・過失がある場合には、不倫相手への慰謝料請求が認められます。

知らなかったことにつき過失があるというのは、交際相手が既婚者かどうかを知ろうと思えば知ることができる状況だったのに、不注意により気づかなかったなどといった状況のことをいいます。

たとえば、結婚指輪をしている、夫婦の日用品がある自宅で不貞行為におよんだ等のケースでは、たとえ「独身である」と告げられていたとしても、浮気相手に過失が認められ、慰謝料請求ができる可能性はあるでしょう。

まとめ

離婚後の慰謝料請求は弁護士に相談!

いかがでしたでしょうか。

今回は、離婚後の慰謝料請求について整理しました。

離婚後に慰謝料請求をするには、様々な条件をクリアする必要があります。

離婚後の慰謝料請求の重要な条件の一つとして、いつまで請求できるのかという問題があります。

  • 離婚慰謝料の時効は、離婚から3年
  • 不貞慰謝料の時効は、不貞の事実・浮気相手を知ってから3年
    または、不貞行為から20年

離婚後、元配偶者のみならず、浮気相手への慰謝料請求も可能ですが、上記の時効を意識することは非常に重要です。

また、清算条項の締結や破綻の抗弁など、離婚をあつかう弁護士に確認したほうがよい専門的な法律問題もあります。

そのほか、慰謝料請求では、証拠が重要です。

証拠なしでは慰謝料請求が通らない可能性が高くなります。離婚前から証拠収集をしておくことが理想ですが、離婚後であっても、あきらめずに可能な限り、不貞などの証拠収集につとめて、効果的に主張・立証していく準備に着手しましょう。

ですが、誰しも、離婚には不慣れで、不安をかかえるものです。

そのような時は、離婚をあつかう弁護士に相談してみてください。

離婚をあつかう弁護士には、慰謝料請求に関する交渉や調停・裁判の対応を任せることも可能です。

「離婚後に慰謝料請求をしようと思ったら、時効になっていた」というような事態におちいる前に、まずは弁護士に無料相談するなどして、専門家のアドバイスを受けてみてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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