性の不一致で離婚できる条件と慰謝料相場を弁護士が解説

性の不一致を理由とする離婚は、相手が同意していれば成立します。
一方、相手が離婚に応じず裁判となった場合でも、長期間のセックスレスや異常な性行為の強要などによって夫婦関係が破綻していると認められれば、離婚が認められる可能性があります。
慰謝料の目安は、おおむね10万円から100万円程度です。
本記事では、性の不一致で離婚が認められる具体的な条件や慰謝料が増額されるケースのほか、実務で役立つ証拠の集め方について弁護士がわかりやすく解説します。
目次
性の不一致は離婚理由になる
性の不一致が離婚理由として認められるのか気になる方もいるでしょう。
結論として、性の不一致が離婚理由として認められる可能性はあります。
以下では、どのような場合に性の不一致が離婚事由となり得るのかを解説します。
協議離婚や調停離婚では同意があれば離婚できる
相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、性の不一致を理由として離婚することができます。
協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。
夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。当事者が合意していれば、理由を問わず離婚できる点が特徴です。
話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができます。
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裁判離婚では、法定離婚事由にあたるかが争点に
協議離婚や調停離婚で話し合いがまとまらなかった場合は、裁判離婚に進むことになります。
裁判離婚で離婚が認められるためには、法定離婚事由(離婚が法的に認められるための理由)が必要になります。法定離婚事由は以下の5つです。
法定離婚事由
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「性の不一致によって精神的に苦痛を負っている」といったケースは、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として、離婚が認められることもあります。
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裁判離婚で離婚が認められる性の不一致の具体例
性の不一致で裁判上の離婚が認められるかどうかは、その不一致によって婚姻生活が破綻しているかが判断基準となります。
多くの人が気にする離婚の可否と慰謝料について、ケースごとにまとめると以下の通りです。
| 性の不一致理由 | 離婚成立の可能性 | 慰謝料の目安 |
|---|---|---|
| 長期のセックスレス | 高い | 10万円~100万円程度 |
| ED・性的不能 | 中 | 個別事情による |
| 性的暴力 | 非常に高い | 100万円程度 |
| 頻度や好みの不一致 | 低い | ほぼなし |
慰謝料は、暴力や一方的な拒絶、悪質性が高い場合には増額される傾向があります。実際の裁判例でも、交際期間から婚姻期間を通じて一度も性交渉がなかった事案で、婚姻破綻の主因が性交拒否にあると認定され、慰謝料請求が認められた例があります。
セックスレス
セックスレスで離婚が認められるケースとして、以下のようなものがあります。
セックスレスで離婚が認められるケース
- 相手から一方的に拒絶されている
- 子どもが欲しいのに性交渉してくれない
- 相手が不貞行為に及んでおりセックスレスになっている
一般的にセックスレスで離婚が認められる目安は、1年以上性交渉がない場合と考えていいでしょう。
ただし、夫婦の双方がセックスに消極的だったり、病気などの事情でセックスができなかったりした場合は、セックスレスを理由に裁判離婚が認められる可能性は低いです。
セックスレスと離婚についてくわしく知りたい方は、『セックスレスで離婚はおかしくない!認められる条件と手順』をご覧ください。
EDなど性的不能
性の不一致による離婚理由として、夫のEDや妻の性機能障害など、性的な理由で性交渉ができない状態が挙げられます。特定の配偶者との関係に限ってEDの症状が現れる、いわゆる「妻だけED」と呼ばれるケースもあります。
夫のEDで離婚が認められるケースとして、以下のようなものがあります。
EDで離婚が認められるケース
- EDの治療を拒否されるなどして、セックスレスになっている
- 子どもが欲しいのに、相手がEDであることを隠して結婚した
- 妻だけEDの夫が不貞行為に及んでいる
ただし、単に「EDだから」「機能障害だから」というだけで離婚が認められる可能性は低いです。EDであることや機能障害であることに起因して、婚姻の継続が難しいと認められれば、裁判離婚ができることになります。
EDと離婚についてくわしく知りたい方は、『夫のEDで離婚したい!離婚理由になる?妻だけEDの場合は?』をご覧ください。
特殊性癖や頻度などの性生活のズレ
相手に特殊な性癖があったり、過度に頻繁な性交渉を求められたりするなど、性生活に関する価値観の大きな違いが問題となることもあります。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
特殊な性癖で離婚が認められるケース
- 1日に何度も性行為を求められ精神的に苦痛を負っている
- SMプレイの強要などで精神的に苦痛を負っている
- 行為の撮影の強要や性行為中の暴力・暴言
異常な性癖については明確な基準があるわけではありませんが、その影響によって夫婦関係の継続が難しいと判断されれば、裁判で離婚が認められる可能性があります。
望まない性行為や性的な辱めを受ける行為は、相手が配偶者であっても性暴力にあたり、DV(ドメスティック・バイオレンス)と評価される重大な人権侵害です。
シングルマザーを対象とした調査では、元配偶者から望まない性行為を経験した人の割合は、協議離婚では33.9%、調停や裁判を経た離婚では37.7%にのぼりました。性的屈辱を受けたとする回答も、協議離婚で31.6%、調停・裁判離婚では39.5%となっています。
(出典:シングルマザーサポート団体全国協議会「離婚後等の子どもの養育に関するアンケート調査」法制審議会家族法制部会第18回会議資料)
このような状況にある場合、単なる性の不一致として扱うのではなく、DV問題として適切な対応を検討することが重要です。
離婚が認められにくい性の不一致のケース
性の不一致に悩んでいるという場合でも、婚姻生活に支障が出るほど深刻ではないと判断された場合は、裁判離婚が認められにくいです。
離婚が認められにくい性の不一致のケースには、以下のようなものがあります。
離婚が認められにくい性の不一致の種類
- 加齢によってセックスレスになった
- セックスレスの期間が短い
- もともと夫婦仲が悪く、そこからセックスレスになった
性の不一致での離婚率はどれくらい?
実際に性の不一致(性的不調和)で離婚する人はどれくらいいるのかと疑問に思う方もいるかもしれません。
以下は、令和6年度において裁判所に離婚調停を申し立てた人と、婚姻関係事件の申立ての動機として、「性的不調和」を挙げた人の数を表にしたものです。
| 離婚調停を申し立てた人 | 理由として「性的不調和」を挙げた人 | |
|---|---|---|
| 夫 | 15,396 | 1,622 |
| 妻 | 43,033 | 2,862 |
「性的不調和」には、セックスレスや、EDなどの性交不能、あまりにも頻繁な性交渉の要求、特殊な性癖などが含まれています。
表から、申し立て動機として「性的不調和」を挙げた人の割合が、夫では全体の約10%、妻では全体の約6%に相当することがわかります。
全体の割合で考えれば、どちらかといえば男性の方が性的不調和を理由に離婚を求めることが多いことになります。
性的不調和を理由に離婚する人は、そう珍しくありません。
性の不一致での離婚で慰謝料は請求できる?
性の不一致で離婚するとき、相手に慰謝料を請求したいと考える方もいらっしゃると思います。
離婚慰謝料とは、離婚の原因を作ったほうが、もう一方の精神的苦痛を補償するために支払うお金です。相手に不法行為があれば、離婚のときに慰謝料請求が認められることになります。
性の不一致で慰謝料が請求できる例として、以下のようなケースが挙げられます。
性の不一致で慰謝料請求が認められるケース
- 性交渉を正当な理由なく長期間にわたって拒否している
- 相手が性交渉を望んでいないのに強引に性交渉をした
- EDの治療を薦めてみても拒否され、長期間セックスレスに陥っている
- 妻だけEDの状態で、夫が不貞行為に走った
- 性交渉中の暴力が続いている など
性の不一致による慰謝料の相場は、10万~100万円程度が目安です。暴力や一方的な性交拒否等の有責性が高い場合には増額される傾向があります。
性の不一致で離婚するときの5つのポイント
性の不一致を示す証拠を集めておく
性の不一致を理由に離婚する場合は、性の不一致で精神的に苦痛を負ったり、結果として結婚生活が破綻してしまったりしたことを示すような証拠が重要です。
性の不一致を示すのに重要な証拠には、以下のようなものがあります。
性の不一致(性的不調和、性的異常など)を示す証拠
- 夫婦の生活スケジュールがわかる表
- EDやセックスレスで悩んでいることを記した日記やメール
- EDやセックスレスについて夫婦で話したときの録音
- EDや機能障害の治療履歴・通院履歴・診断書
- 望んでいない性行為を求められたときの録音、日記
- 相手が執拗にSMプレイのホテルやハプニングバーに誘ってきたときの録音、日記
- 相手が使用・購入した特殊な性交グッズ
- 性行為中に暴力や暴言を吐かれたときの録音や映像 など
性の不一致の証拠を集めるのは、具体的な証拠を見つけやすい不貞行為などのほかの離婚事由と異なり、かなり難しい作業になります。
証拠を複数組み合わせることで有効な主張ができる場合がありますので、長期間にわたって集めることが大切です。
離婚の際に集めておくべき証拠は関連記事『離婚に必要な証拠|証拠集めの注意点と慰謝料請求のポイント』で詳しく解説しています。
夫婦間のセックスレスが不法行為となり得ることを裁判所が示した判例も併せてご覧ください。
性の不一致とはいえ不貞行為に及ぶことは避けるべき
性の不一致のせいで不満が募っているという場合でも、配偶者以外の人と不貞行為に及ぶことは避けるべきでしょう。
配偶者以外の人と不貞行為に及んでしまうと、有責配偶者(離婚の原因となる行為をおこない、婚姻関係を破綻させたことについて、主に責任がある配偶者)と判断されてしまい、通常の離婚請求に比べ、認められるハードルが非常に高くなってしまいます。
離婚が成立するまでは、配偶者以外の人と肉体関係をもつのはリスクが大きいです。
ほかに離婚原因がある場合も
性の不一致だけでなく、DVやモラハラ、不貞行為といった別の法定離婚事由に該当するケースもあるでしょう。
ほかに法定離婚事由がある場合は、離婚裁判で離婚が認められることになります。できるだけ証拠も集めておくようにしましょう。
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別居も検討してみる
「性の不一致ですぐに離婚したい」と思っても、精神的に苦痛を受けていたり、結婚生活が破綻していたりといった事情がない場合は、すぐに離婚することが難しいです。
すぐに離婚をしたいと思った場合は、まず別居をしてみることをおすすめします。別居をすることで、お互い距離をとって冷静に考えを整理できるかもしれません。
また、同居期間に比べて別居期間のほうが長ければ、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断してもらえて、裁判離婚ができる可能性があります。一般的には、おおよそ3年~5年程度の別居期間があれば、裁判離婚できる可能性があるといわれています。
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・離婚成立の別居期間は何年?1年2年で認められる条件と裁判の目安
カウンセリングも検討してみる
性の不一致以外は相手にとくに不満はなく、「別れたくない」「離婚したくない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
そういった方は、一度カウンセリングを受けてみるのも一つの手です。場合によっては、関係を修復できたり、次にどのような行動をとればよいかがわかったりすることもあると思います。
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性の不一致による離婚でよくある質問
Q. セックスレスで離婚できる期間の目安は?
一般的には、1年以上性交渉がない状態が続いている場合、裁判で離婚が認められる可能性があります。ただし、期間だけで判断されるわけではありません。
一方的な拒否に正当な理由がないか、病気などやむを得ない事情があるか、夫婦が関係改善の努力をしていたかなども総合的に考慮されます。別居期間の長さも判断材料となります。
Q. 性の不一致で慰謝料が高額になるケースは?
性行為中の暴力や暴言、長期間にわたる一方的な性交拒否、異常な性行為の強要など、精神的苦痛が大きいケースでは慰謝料が増額されやすくなります。
さらに、治療を拒み続けたことでセックスレスが長期化した場合や、「妻だけED」の状態で不貞行為に及んだ場合なども、有責性が重いと判断される可能性があります。
Q. 性の不一致の証拠がない場合でも離婚できる?
裁判では、まったく証拠がない状態で離婚を認めてもらうのは難しい傾向があります。
ただし、日記やメール、夫婦間の会話の録音、医師の診断書などの間接的な資料を組み合わせることで主張を補強することは可能です。弁護士に相談すれば、現在の状況で集められる証拠や具体的な収集方法について助言を受けられます。
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望まないセックスや性的屈辱を受けている場合、それは性の不一致ではなく性暴力であり、配偶者からの場合はDVに該当します。
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これらの窓口に相談しつつ、法的な対応については弁護士にもご相談ください。DVを理由とする離婚では、慰謝料請求や保護命令の申立てなど、より強力な法的措置を取ることが可能です。
性の不一致で離婚を考えている場合は弁護士に相談
性の不一致で精神的に苦痛を受けていたり、結婚生活が破綻していたりするという場合は、離婚が認められることもあります。
性の不一致での離婚で後悔をしないようにするためにも、離婚をお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、現在の状況から離婚が認められるかどうかを判断してくれるほか、調停や裁判に移行した際もスムーズに対応してくれます。
性の不一致で夫婦生活が破綻したことを主張するのに、どのような証拠を集めればよいか、慰謝料請求はできそうかといったことを法的な観点からアドバイスしてくれるというメリットもあります。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
