性の不一致(性的不調和)で離婚したい!離婚理由になる?離婚率は?

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「夫と性の不一致で離婚したいが、理由になるのかわからない」
「性の不一致で離婚したい。同じような人はいるのか」

セックスレスや性的不能など、相手との性の不一致(性的不調和)に悩んでおり、離婚を考えている方もいらっしゃると思います。

性の不一致はプライベートな話題になるため、周りの人に相談しにくく、1人で抱え込んでしまうこともあるでしょう。

性の不一致で精神的に苦痛を受けていたり、結婚生活が破綻していたりするという場合は、離婚が認められることもあります。

今回は、性の不一致が離婚理由になるケースや、性の不一致での離婚率、性の不一致で離婚するときの慰謝料などの離婚条件について解説します。

性の不一致は離婚理由になることも

性の不一致が離婚理由になるか気になるという方もいると思います。結論から言えば、性の不一致が離婚理由として認められる可能性はあります。

ここでは、性の不一致が離婚理由になるケースについて解説します。

協議離婚や調停離婚では同意があれば離婚できる

相手が離婚に合意している場合は、協議離婚というかたちで、性の不一致を理由として離婚することができます。

協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって、離婚をするかどうか、どんな条件で離婚をするかを決める方法です。夫婦が合意して離婚届を提出すれば、離婚は成立します。当事者が合意さえすればどんな理由でも離婚をすることができるところが特徴です。

話し合いがまとまらず離婚調停に進んだ場合でも、双方が合意できればどのような理由でも離婚することができるので覚えておきましょう。

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裁判離婚では、法定離婚事由にあたるかが争点に

協議離婚や調停離婚で話し合いがまとまらなかった場合は、裁判離婚に進むことになります。

裁判離婚で離婚が認められるためには、法定離婚事由(離婚が法的に認められるための理由)が必要になります。法廷離婚事由は以下の5つです。

法定離婚事由

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

「性の不一致によって精神的に苦痛を負っている」といったケースは、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」として、離婚が認められることもあります。

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裁判離婚で離婚が認められうる性の不一致の種類

「実際に離婚理由となるような性の不一致には、どのような種類があるのか」と考える方もいらっしゃると思います。

ここでは、離婚の理由として認められるような性の不一致のケースについて解説します。例として、以下の3つが挙げられます。

離婚原因となる性の不一致の種類

  • セックスレス
  • EDなど性的不能
  • 特殊性癖や頻度などの性生活のズレ

性の不一致で離婚が認められるかどうかは、「性の不一致が、婚姻生活を脅かすほど深刻なものであるかどうか」という点がポイントになります。

セックスレス

離婚理由に関する性の不一致として、セックスレスが挙げられます。一般的にセックスレスで離婚が認められる目安は、1年以上性交渉がない場合と考えていいでしょう。

セックスレスで離婚が認められるケースとして、以下のようなものがあります。

セックスレスで離婚が認められるケース

  • 相手から一方的に拒絶されている
  • 子どもが欲しいのに性交渉してくれない
  • 相手が不貞行為に及んでおりセックスレスになっている

ただし、夫婦の双方がセックスに消極的だったり、病気などの事情でセックスができなかったりした場合は、セックスレスを理由に裁判離婚が認められる可能性は低いです。

セックスレスと離婚についてくわしく知りたい方は、『セックスレスで離婚できる?慰謝料請求は認められる?』をご覧ください。

EDなど性的不能

離婚理由に関する性の不一致として、夫がEDだったり、妻が機能障害であったりといった性的不能の状態にあるというケースが挙げられます。

なかには、妻にだけEDの状態になってしまう「妻だけED」の場合もあるようです。

夫のEDで離婚が認められるケースとして、以下のようなものがあります。

EDで離婚が認められるケース

  • EDの治療を拒否されるなどして、セックスレスになっている
  • 子どもが欲しいのに、相手がEDであることを隠して結婚した
  • 妻だけEDの夫が不貞行為に及んでいる

ただし、単に「EDだから」「機能障害だから」というだけで離婚が認められる可能性は低いです。EDであることや機能障害であることに起因して、婚姻の継続が難しいと認められれば、裁判離婚ができることになります。

EDと離婚についてくわしく知りたい方は、『夫のEDで離婚したい!離婚理由になる?妻だけEDの場合は?』をご覧ください。

特殊性癖や頻度などの性生活のズレ

離婚理由に関する性の不一致として、相手が特殊な性癖を持っていたり、高い頻度での性交渉を要求してきたりといったことが挙げられます。

たとえば、以下のようなケースが該当します。

性的異常で離婚が認められるケース

  • 1日に何度も性行為を求められ精神的に苦痛を負っている
  • SMプレイの強要などで精神的に苦痛を負っている
  • 行為の撮影の強要や性行為中の暴力・暴言 など

異常性癖について、具体的な基準は定められていません。ただし、夫婦の状況を鑑みて、「婚姻が継続しがたい」と認められれば、裁判離婚できることになります。

離婚が認められにくい性の不一致のケース

性の不一致に悩んでいるという場合でも、婚姻生活に支障が出るほど深刻ではないと判断された場合は、裁判離婚が認められにくいです。

離婚が認められにくい性の不一致のケースには、以下のようなものがあります。

離婚が認められにくい性の不一致の種類

  • 加齢によってセックスレスになった
  • セックスレスの期間が短い
  • もともと夫婦仲が悪く、そこからセックスレスになった

性の不一致での離婚率はどれくらい?

「実際に性の不一致(性的不調和)で離婚する人はどれくらいいるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

以下は、令和5年度において裁判所に離婚調停を申し立てた人と、婚姻関係事件の申立ての動機として、「性的不調和」を挙げた人の数を表にしたものです。

「性的不調和」には、セックスレスや、EDなどの性交不能、あまりにも頻繁な性交渉の要求、異常性癖などが含まれています。

離婚調停を申し立てた人理由として「性的不調和」を挙げた人
15,1921,592
41,6522,642
(出典:「令和5年司法統計年報家事編 第19表 婚姻関係事件数ー申立ての動機別申立人別」)

表から、申し立て動機として「性的不調和」を挙げた人の割合が、夫では全体の約10%、妻では全体の約6%に相当することがわかります。

全体の割合で考えれば、どちらかといえば男性の方が性的不調和を理由に離婚を求めることが多いことになります。性的不調和を理由に離婚する人は、そう珍しくありません。

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性の不一致での離婚で慰謝料は請求できる?

性の不一致で離婚するとき、相手に慰謝料を請求したいと考える方もいらっしゃると思います。

離婚慰謝料とは、離婚の原因を作ったほうが、もう一方の精神的苦痛を補償するために支払うお金です。相手に不法行為があれば、離婚のときに慰謝料請求が認められることになります。

性の不一致で慰謝料が請求できる例として、以下のようなケースが挙げられます。

性の不一致で慰謝料請求が認められるケース

  • 性交渉を合理な理由なく長期間にわたって拒否している
  • 相手が性交渉を望んでいないのに強引に性交渉をした
  • EDの治療を薦めてみても拒否され、長期間セックスレスに陥っている
  • 妻だけEDの状態で、夫が不貞行為に走った
  • 性交渉中の暴力が続いている など

性の不一致による慰謝料の相場は、10万〜100万円ほどが一般的です。ただし、「セックスレスの期間の長さ」や「性交渉を求めたときの態度」などの要素によっては、慰謝料が高くなることもあります。

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性の不一致で離婚するときのポイント

性の不一致を示す証拠を集めておく

性の不一致を理由に離婚する場合は、性の不一致で精神的に苦痛を負ったり、結果として結婚生活が破綻してしまったりしたことを示すような証拠が重要です。

性の不一致を示すのに重要な証拠には、以下のようなものがあります。

性の不一致(性的不調和、性的異常など)を示す証拠

  • 夫婦の生活スケジュールがわかる表
  • EDやセックスレスで悩んでいることを記した日記やメール
  • EDやセックスレスについて夫婦で話したときの録音
  • EDや機能障害の治療履歴・通院履歴・診断書
  • 望んでいない性行為を求められたときの録音、日記
  • 相手が執拗にSMプレイのホテルやハプニングバーに誘ってきたときの録音、日記
  • 相手が使用・購入した特殊な性交グッズ
  • 性行為中に暴力や暴言を吐かれたときの録音や映像 など

性の不一致の証拠を集めるのは、具体的な証拠を見つけやすい不貞行為などのほかの離婚事由と異なり、かなり難しい作業になります。

証拠を複数組み合わせることで有効な主張ができる場合がありますので、以下のような証拠をできるだけ多く、長期間にわたって集めることが大切です。

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性の不一致とはいえ不貞行為に及ぶことは避けるべき

性の不一致のせいで不満が募っているという場合でも、配偶者以外の人と不貞行為に及ぶことは避けるべきでしょう。

配偶者以外の人と不貞行為に及んでしまうと、有責配偶者(離婚の原因となる行為をおこない、婚姻関係を破綻させたことについて、主に責任がある配偶者)と判断されてしまい、通常の離婚請求に比べ、認められるハードルが非常に高くなってしまいます。

離婚が成立するまでは、配偶者以外の人と肉体関係をもつのはリスクが大きいです。

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ほかに離婚原因がある場合も

性の不一致だけでなく、DVやモラハラ、不貞行為といった別の法定離婚事由に該当するケースもあるでしょう。

ほかに法定離婚事由がある場合は、離婚裁判で離婚が認められることになります。できるだけ証拠も集めておくようにしましょう。

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別居も検討してみる

「性の不一致ですぐに離婚したい」と思っても、精神的に苦痛を受けていたり、結婚生活が破綻していたりといった事情がない場合は、すぐに離婚することが難しいです。

すぐに離婚をしたいと思った場合は、まず別居をしてみることをおすすめします。別居をすることで、お互い距離をとって冷静に考えを整理できるかもしれません。

また、同居期間に比べて別居期間のほうが長ければ、婚姻関係が破綻していると裁判所に判断してもらえて、裁判離婚ができる可能性があります。一般的には、おおよそ3年~5年程度の別居期間があれば、裁判離婚できる可能性があるといわれています。

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カウンセリングも検討してみる

性の不一致以外は相手にとくに不満はなく、「別れたくない」「離婚したくない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

そういった方は、一度カウンセリングを受けてみるのも一つの手です。場合によっては、関係を修復できたり、次にどのような行動をとればよいかがわかったりすることもあると思います。

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性の不一致で離婚を考えている場合は弁護士に相談!

性の不一致で精神的に苦痛を受けていたり、結婚生活が破綻していたりするという場合は、離婚が認められることもあります。

性の不一致での離婚で後悔をしないようにするためにも、離婚をお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、現在の状況から離婚が認められるかどうかを判断してくれるほか、調停や裁判に移行した際もスムーズに対応してくれます。

性の不一致で夫婦生活が破綻したことを主張するのに、どのような証拠を集めればよいか、慰謝料請求はできそうかといったことを法的な観点からアドバイスしてくれるというメリットもあります。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了