浮気相手への慰謝料請求をするなら知っておきたい相場や請求方法
配偶者の浮気が発覚した場合、妻の受ける精神的苦痛の大きさは計り知れません。
この記事をお読みの方の中にも、大変お辛い状況にいらっしゃる方が少なくないと思います。
そのような方にお伝えしたいのは、「ここで泣き寝入りする必要はない」ということです。
不貞行為(浮気、不倫のこと)などの不法行為によって精神的苦痛を受けた被害者は、相手方に対し、損害賠償を請求する権利を有するからです。
この記事では、特に浮気相手に対する慰謝料請求する場合に必要な情報をわかりやすく解説します。
目次
浮気相手への慰謝料請求はできる?
浮気相手への慰謝料請求ができる場合とは?
浮気相手への慰謝料請求は、配偶者と浮気相手との関係が不法行為に当たる場合に可能です。
不貞行為が不法行為となるのは、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害した場合」です(最判昭和54年3月30日)。
裁判例の中には、肉体関係を持った場合だけでなく、部屋での密会やキスなどの行為も不法行為に当たると判断したものがあります。
浮気相手への慰謝料請求が認められない場合とは?
配偶者と浮気相手が不貞行為に及んだ場合でも、慰謝料請求が認められないケースがあります。
典型的には、①婚姻関係破綻後の不貞行為だった場合と、②浮気相手が配偶者が既婚者であることを過失なく知らなかった場合です。
以下、各ケースについて詳しく解説します。
①婚姻関係破綻後の不貞行為だった場合
不貞行為をした時点で、すでに婚姻関係が破綻していた場合、不法行為は成立しません。
したがって、この場合は、浮気相手への慰謝料請求は認められません。
対処法
浮気相手から「男女関係になったとき、婚姻関係はすでに破綻していたから慰謝料請求は認められない」と主張されても、すぐに諦める必要はありません。
単に別居していたとか、夫が一方的に「婚姻関係は破綻していた」と思っていたとしても、当然に婚姻関係の破綻が認められるわけではないからです。
例えば、夫婦間で具体的な離婚の話し合いを行ったことがない、子どもの行事に夫婦で参加することがあったなどの事情があれば、婚姻関係は破綻していなかったと認められやすくなるでしょう。
②浮気相手が配偶者が既婚者であることを過失なく知らなかった場合
「相手が既婚者であるとは知らなった」という反論も、浮気相手からよく主張されるものの一つです。
不法行為に基づく損害賠償請求が認められるには、相手方の故意・過失が要件になります。
そのため、浮気相手に過失がなかった場合、慰謝料請求は認められないのです。
対処法
実務では、このような反論が簡単に認められることはありません。
男女関係が長くなればなるほど、お互いの身上について話すのが通常だからです。
たとえ夫が浮気相手に対し、「結婚していない」と嘘をついていたとしても、その嘘をそのまま信じていたという反論は中々通りません。
裁判例の中には、浮気した配偶者の婚姻関係に関する説明が判然としないにもかかわらず、浮気相手が婚姻関係について十分状況を把握しようとしなかった場合に過失ありと判断したケースがあります(東京地判平成31年4月25日)。
裁判では、浮気相手の過失を裏付ける事実を具体的に主張していくことが重要です。
浮気相手への慰謝料請求の相場は?
浮気相手に対する慰謝料の相場は、100万円〜300万円です。
実際に裁判を起こした場合は、100万円〜200万円の範囲で認容されるケースが多いでしょう。
ただし、浮気した配偶者からすでに慰謝料の支払を受けている場合は、浮気相手の慰謝料額は減額され、数十万円にとどまる場合もあります。
慰謝料額の見通しが重要
浮気を理由とする慰謝料額に影響する事情としては、婚姻期間の長さ、不貞の期間、不貞行為の悪質性、夫婦関係の破綻に対する不貞行為の影響の大きさなどがあります。
浮気相手に慰謝料請求する場合、これらの考慮要素や、類似の裁判例をよく検討し、判決で認容される慰謝料の見込み額をある程度予測することが重要です。
裁判での見通しを持っておけば、浮気相手との交渉で譲歩できる点・譲歩できない点が明確になります。結果的に、事案の早期解決につながります。
浮気相手に対する高額な慰謝料請求が認められるケース
浮気相手に慰謝料請求した裁判例の中には、例外的に300万円以上の高額な慰謝料が認められたものもあります。
ここでは、高額な慰謝料が認められた事例で考慮された事実をいくつかご紹介します。
- 不貞期間が長い
- 浮気相手が妊娠した
- 不貞関係が発覚した後も関係を継続した
- 不貞関係の関係解消を求められたにもかかわらず、関係を継続した
- 浮気された配偶者が心身の不調で通院を余儀なくされた
- 配偶者が過去にも浮気をしたことがある
- 浮気相手が配偶者に対し早く離婚するよう求めた
- 浮気が原因で離婚した
- 訴訟になっても浮気相手が浮気を完全に否定して不誠実な対応をとった
- 未成熟の子どもがいる など
以上のような増額要因が重なるほど、高額の慰謝料が認められる可能性が高くなります。
浮気相手に慰謝料請求するとき集めておきたい証拠は?
浮気相手に慰謝料請求する場合、重要なのは何と言っても証拠です。
不貞行為を裏付ける証拠がそろっているほど、裁判で慰謝料請求が認められやすくなります。
交渉段階でも、こちらに有利な条件で合意できる可能性が高まります。
浮気相手に慰謝料請求する場合に集めておきたい証拠は、主に以下のものです。
- メールやLINE、SNSでのやり取り
- 配偶者と浮気相手が一緒に写っている写真・動画
- 2人でホテルに宿泊したことがわかる領収書
- クレジットカード・ETC・電子マネー履歴(浮気相手へのプレゼントや、2人で旅行したことを裏付けるもの)
- 不貞行為を認める内容の誓約書や念書
- 不貞行為を認める発言をした際の録音データ
配偶者に対する慰謝料請求との関係
配偶者と浮気相手との不貞行為は、法的には「共同不法行為」と呼ばれます。
共同不法行為によって他人に損害を与えた者は、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負います。
この場合、浮気した配偶者と浮気相手のどちらか一方が、慰謝料全額を浮気された配偶者に支払うと、他方に対し、自分の負担を超えた部分の精算を請求できます。
この権利を「求償権」といいます。
【具体例】
上図で、不貞行為の慰謝料額が200万円であるとします。
この場合、浮気相手が200万円を支払うと浮気した夫の慰謝料支払義務はなくなります。
一方、浮気相手は、浮気した夫に対し、求償権に基づき、自分の責任を超えて負担した分の金銭の支払を請求できます。
浮気した夫の負担がどの程度になるかは、不貞行為に対する双方の責任の有無や程度によります。
実務では、浮気相手よりも浮気した配偶者の責任の方が重いと判断される傾向があります。
交渉のポイント
浮気相手に慰謝料請求する際は、求償権のことも考慮に入れながら交渉する必要があります。
浮気相手から、求償権放棄の見返りとして慰謝料の減額を提案されることもありますが、その場合も口約束で終わらせないことが重要です。
交渉が成立した場合は、慰謝料の支払だけでなく、求償権の放棄についても必ず書面化しておくようにしてください。
浮気相手への慰謝料請求の方法は?
浮気相手への慰謝料請求方法は、大きく分けて「①当事者間で話し合う→②内容証明郵便を送る→③法的措置をとる」の3段階あります。
以下では、それぞれの請求方法について解説します。
①当事者間で話し合う
まず考えられるのは、浮気された配偶者と浮気相手が慰謝料について直接話し合う方法です。
浮気相手が不貞の事実を認める発言をした場合、それを録音しておくと、後で発言内容を否定されたときに役立ちます。
慰謝料の支払について合意できた場合は、必ず示談書を作成しましょう。
示談書には、浮気相手が不貞関係をに認める内容に加え、慰謝料金額や、支払期日、支払方法などについて明記します。
不貞相手との交渉や示談書は弁護士に任せると安心
当事者間で話し合った上で示談書が作成されるケースはよくあります。
しかし、浮気相手が結局慰謝料を支払わなかったり、訴訟になった場合に「示談書は無理やり書かされたもので無効だ」と主張されるケースが少なくありません。
このような事態を避けるために、浮気相手との交渉には当初から弁護士が関与するのがおすすめです。
弁護士が関与すれば、強制執行も視野に入れて公正証書を作成するなどの対応が可能です。
また、「無理やり示談書を書かされた」という浮気相手の主張も通らなくなります。
②内容証明郵便を送る
浮気相手との話し合いがまとまらない場合は、内容証明郵便を送付します。
話し合いが難しいと分かっている場合は、当初から内容証明郵便を利用する場合も多いです。
内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰あてに差し出したのかということを、日本郵便株式会社が証明する制度です。
内容証明郵便を送っておくと、後に裁判になった場合、浮気相手にいつどのような請求をしたのか証明できる有力な証拠になります。
浮気相手に慰謝料請求する場合の内容証明郵便の文例や送り方について、詳しくは関連記事をぜひご覧ください。
内容証明郵便は、浮気された配偶者ご本人が作成して送付することも可能です。
もっとも、弁護士に内容証明郵便を送ってもらう方がより心理的圧迫感が大きく、浮気相手が慰謝料支払に応じる可能性は高まるでしょう。
関連記事
・離婚問題で内容証明郵便はどう活躍する?|文例や送り方を紹介
③調停・裁判などの法的措置をとる
浮気相手が話し合いにも、内容証明郵便での請求にも応じない場合、最終手段として法的措置をとります。
具体的な請求方法としては、調停と裁判があります。
調停と裁判どちらがオススメ?
調停の場合、浮気の証拠が揃っていなくても浮気相手が認めれば慰謝料の支払を受けられます。調停は、ご本人のみでも対応できる点もメリットです。
しかし、調停だと何度もご本人が裁判所に出向かなければならず、どうしても負担が大きくなります。
浮気相手がのらりくらりと否定すれば調停期日が重なるだけですし、ご本人のみで請求した場合、相手が払うべきものを払わずに済ませようとしてくるケースもみられます。
そのため、不貞の証拠が十分揃っているケースであえて調停を選択するケースはそこまで多くはありません。
時間的、精神的な要素も考慮すると、費用はかかりますがしっかりと証拠をそろえた上で弁護士に依頼して裁判を起こす方が良いでしょう。
弁護士に依頼すれば、ご本人は基本的に裁判所に赴く必要もありません。
調停をするか、裁判をするかは、結局は証拠の充実さと慰謝料の見込み額に左右されます。
どちらがご自身の利益になるかを知るためにも、まずは弁護士に相談してみることが有効です。
裁判の方法は、「配偶者と浮気相手の両方に請求する場合」と「浮気相手にのみ請求する場合」の2パターンがあります。
実務では、浮気相手にのみ請求するケースの方が多いです。
【配偶者と浮気相手の両方に請求する場合】
夫に対する離婚請求の裁判を起こした場合、夫と浮気相手を被告として浮気を原因とする慰謝料請求もあわせて提起できます。
また、離婚を求めない場合であっても、地方裁判所に、夫と浮気相手を被告として、浮気を原因とする慰謝料請求訴訟を起こすことも可能です。
【浮気相手にのみ請求する場合】
夫には離婚を求めず、地方裁判所に浮気相手のみを被告として、浮気を原因とする慰謝料請求訴訟を起こすこともできます。
関連記事
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浮気相手に慰謝料請求するときの注意点
慰謝料請求権の時効に注意!
浮気相手に対する慰謝料請求権は、最後の不貞行為及び加害者を知ったときから3年経過すると、時効によって消滅します(民法724条1号)。
したがって、妻が夫の浮気と浮気相手を知ってから3年経つと、浮気相手に対する慰謝料請求はできなくなります。
旦那から慰謝料の支払を受ける場合に注意!
妻が「浮気相手に慰謝料請求する」と旦那に伝えた場合、様々な反応が考えられます。
旦那の反応の一つとして、「慰謝料は全部自分が支払うから浮気相手には請求しないでくれ」と言ってくるパターンもあり得ます。
この場合注意したいのが、旦那が慰謝料を全額支払うと、浮気相手には請求できなくなってしまうという点です。
裁判例の中にも、不貞を理由とする慰謝料が200万円と認められる事案で、離婚調停において夫が妻に200万円の慰謝料を支払ったため、妻の浮気相手に対する慰謝料請求権はすべて消滅したと判断したものがあります(東京地判平成31年1月28日)。
ダブル不倫の場合は相殺される可能性あり
浮気相手も既婚者である、いわゆるダブル不倫の場合、浮気相手の配偶者から、自分の配偶者に対し慰謝料請求される可能性があります。
離婚しない場合、例えばA夫婦のもとに相手のB夫婦から100万円の慰謝料が支払われても、B夫婦に慰謝料として100万円支払わなければならず、結局意味がありません。
したがって、ダブル不倫のケースでは、相殺してお互いの慰謝料支払を0円とするケースも多いです。
浮気相手への慰謝料請求の相談は弁護士へ!
配偶者の浮気が発覚した場合、それだけでご本人は多大な精神的苦痛を受けます。
それに加えて、浮気相手への慰謝料請求をすべてご自分で行おうとすると相当な負担です。
そのようなときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
浮気相手の住所などがわからない場合でも、弁護士であれば、弁護士会照会などの制度を利用して、携帯電話番号や車のナンバーから調査することも可能です。
また、浮気相手との交渉や裁判手続きは、基本的に弁護士が行いますので、ご相談者様の精神的な負担は大幅に軽くなります。
弁護士は、浮気相手の不合理な言い逃れを許さず、ご相談者様の利益を最大限実現できるよう全力を尽くします。
配偶者の裏切りに心を痛めておられるご相談者様を弁護士がしっかりとサポートいたしますので、いつでもぜひお気軽にお問い合わせください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了
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