店への悪口は名誉毀損や営業妨害になる?誹謗中傷への対処法がわかる

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店の悪口が名誉毀損

どの店に行くか決める指針のひとつとして用いられる口コミですが、その口コミに「悪口」ともとれる内容が書かれていると、客足が遠のいて売上が下がるというデメリットがあります。

しかし名誉毀損にあたるかどうかの判断がつかなかったり、脅迫めいた悪質な口コミへの対処法に悩んだりする人は多いでしょう。悪口を書かれてはじめて困惑するのは当然です。

悪口については、店側の視点から都合の悪いことであっても、法的問題としてとらえた時の判断は難しい部分があります。

この記事では店の悪口が名誉毀損や営業妨害になりうる例を紹介し、削除や投稿者の特定、刑事告訴といった対処法についても説明していきます。

店の悪口も名誉毀損になる?

店に対する悪口のなかには名誉毀損にあたるものもあります

そもそも名誉毀損とは何か、名誉毀損となる悪口の例をみていきましょう。

名誉毀損はどういうときに成り立つ?

名誉毀損とは、公然の場で、事実を摘示して人の名誉を毀損する行為をいいます。

名誉毀損が成り立つのは

名誉毀損が成立する条件

  • 公然の場であること
  • 事実が摘示されていること
  • 社会的評価を低下させるものであること

お店の悪口をインターネット上の口コミサイトや掲示板のように誰でも見られる場に書き込むことは、公然性を満たすものと考えられます。

事実の摘示とは、具体性があるということです。例えば、「店の料理に異物が混ざっていた」「あそこの店は反社会的勢力とつながりがある」なども該当するでしょう。真偽は関係ありません。

社会的評価を低下させるものとは、一般的にみた評価を指します。例えば「あの店の仕入れ時間は朝だ」などと書かれても、とくだん社会的評価を低下させるものとはいえないので、名誉毀損は成立しません。

関連記事では、名誉毀損の成立要件や、侮辱罪と名誉毀損の違いについてくわしく解説しています。口コミ内容についてより詳しく検討したい方は参考にしてください。

名誉毀損に該当しうる悪口の例

お店に対する「マイナスの感想・評価」と「名誉毀損などの権利侵害の投稿」は区別して考えてなくてはいけません。

そこで、名誉毀損に該当しうる書き込みの例を以下に示します。

NG投稿

  • 飲食店の評判に影響を及ぼす恐れがある事実関係の確認が難しいもの
    「この店で食事した後に食中毒になった」
  • 断定的な表現のなされているもの
    「客の食べ残しを使いまわしている店だ」
  • 店舗関係者の個人を特定して批判するもの
    「店員の〇〇(本名)は窃盗の前科がある」

こういった書き込みは名誉毀損などの権利侵害にあたる可能性があるでしょう。

同定可能性にも着目しよう

名誉毀損の成立要件として重要なことは「同定可能性」です。同定可能性とはその書き込みが実在する人物と結びつくことをいいます。

そのためどの店なのか、あるいはどの店員のことを指しているのかを特定できないかぎり、名誉毀損などの権利侵害を主張することはできません。

関連記事『ハンドルネーム・伏字・源氏名への誹謗中傷で名誉毀損は成立する?』では伏字を使っての誹謗中傷が名誉毀損にあたるのか、判断のヒントになる解説をしているので参考にしてください。

味に関する批評や感想は判断がわかれる

飲食店において味の評判は非常に大切です。特に気になることは「マズイ」という感想の投稿でしょう。

人の味覚や好みには差があるので、おいしい・おいしくないの感想を持つことは自由です。そのため、味に関する批評や感想については、どういった言葉・目的をもって述べられているかで権利侵害の有無を検討します。

店への営業妨害になるケースもある

店への悪口の内容によっては、業務妨害罪や信用毀損罪に問える可能性があります。

業務妨害罪は「偽計業務妨害罪」と「威力業務妨害罪」に分けることが可能です。とくにネット上では、虚偽の情報をまるで真実のように書き込んで拡散する偽計業務妨害罪が問題視されています。

こうした投稿は悪口の域を超えており、後述の通りすぐに警察に相談すべきです。

偽計業務妨害罪

他人の無知や勘違いにつけこんで人を騙し、業務を妨害することです。たとえば「料理に異物が混入していた」や「購入した服が虫食いだらけだった」などの口コミは、店の信用を低下させ、客足を減少させる可能性があります。

威力業務妨害罪

何らかの威力を行使して脅し、営業を妨害することです。「営業を止めなければ爆弾を投げ入れる」や「営業を続けられないように店の前で騒いでやる」などは、威力業務妨害罪にあたる可能性があります。

店の悪口を削除してもらう方法

店の悪口を削除する方法について、口コミサイト、掲示板、SNSにわけて説明していきます。

掲示板での店の悪口を削除依頼する方法

掲示板で店の悪口を書かれた場合は、まず掲示板の利用規約にもとづく削除を求めましょう。

削除を申請する際には、申請フォームに記載すべき必要項目や削除にかかる日数・範囲についても、掲示板ごとのルールをよく確かめなくてはなりません。

関連記事『掲示板の削除依頼したい書き込みについて弁護士に相談する方法』では掲示板サイトごとの削除方法をまとめています。

SNSでの店の悪口を削除依頼する方法

SNSで店の悪口を書かれた場合には、そのSNSへ削除依頼をするか、本人に削除を依頼するかという方法があります。

SNSへ削除を依頼する際には、SNSごとの利用規約をよく読み、どの部分に違反しているのか、どういった権利侵害を受けているのかをしっかりと記載しましょう。

本人に削除を依頼する方法は手っ取り早いように思えますが、かえって炎上してしまうケースも有り得るので、個別に依頼する際には慎重に検討してください。

関連記事『SNSの削除依頼|誹謗中傷やネットに晒された個人情報を削除する方法』では、SNSごとの削除依頼方法をまとめているのであわせてお読みください。

飲食店口コミサイトに掲載された悪口の削除方法

Google口コミ削除依頼ポイント

飲食店のGoogle口コミページ(Googleマイビジネス)に書き込まれた悪い口コミ投稿を削除するには、レビュー報告ボタンを用いましょう。

削除したい口コミ投稿をタップし、右上にある[三点リーダー]から[レビューを報告]を選択します。口コミ報告理由を選ぶ画面表示となりますので適した理由をタップし送信すれば報告完了です。

この方法はGoogleビジネスプロフィールのオーナー権限を取得していなくても利用できます。Googleビジネスプロフィールのオーナー権限を持っている場合は、管理画面から違反報告を行いましょう。

報告ボタンによる通報は操作が簡単ですが、あくまで問題をGoogleに通知するにとどまります。

悪質な口コミの具体的な権利侵害を説明したり、問題のある文言を指摘するには、専用のフォームページからの削除申請にトライすることがおすすめです。

権利侵害の内容をGoogleに詳しく説明する場合には、Legalヘルプページから削除を求めましょう。Legalヘルプページでは、口コミが具体的にどんな違反をしているのか、Google側に示すことができます。

権利侵害の指摘にはなるべく法律の条文引用も求められるため、専門的知識が必要となります。

削除依頼する場合は、口コミの詳細や、投稿内容に関する背景事情などを弁護士に相談しておきましょう。

相談時には該当の口コミのURLや口コミ投稿者の名前(ハンドルネーム)等も伝えておけば、投稿内容の削除ができそうかスムーズに判断してもらえます。

悪質なGoogle口コミの削除依頼については、関連記事『Googleマップ口コミの削除依頼方法!削除できないときの対応も弁護士解説』でも詳細に解説中です。

ホットペッパーの口コミ削除依頼ポイント

ホットペッパーグルメの口コミは「おすすめレポート」と呼ばれているものです。投稿後すぐに書き込んだ店舗の記事ページに反映されないシステムとなっています。

ルールに違反している不適切な口コミならば、投稿受付後の審査によって掲載しないという判断をされることがほとんどです。

そのため一度審査を経た口コミの削除については少々難易度が高い恐れもあります。ホットペッパーグルメやホットペッパービューティーの口コミ削除については、関連記事『ホットペッパーやホットペッパービューティーの口コミの削除を依頼する方法は?』を参考にしてみてください。

食べログの口コミ削除依頼ポイント

食べログの口コミ投稿には全て右下部分に[問題のある口コミの報告]リンクがあるので、問題のある口コミの投稿者と、その投稿内容、投稿に問題があると考える理由を記載して削除を依頼可能です。

食べログではNGとなる口コミの内容は幅広いため、対応してもらえる可能性は高いでしょう。誤った情報が口コミ投稿されていると風評被害が広まりますので見つけ次第対処することが重要です。

食べログの口コミ削除方法は、関連記事にてわかりやすく解説しています。食べログの口コミ削除方法については、関連記事『食べログの口コミ削除方法は?誹謗中傷の弁護士相談や依頼のメリット』を参考にしてみてください。

ぐるなび・トリップアドバイザーの口コミ削除依頼ポイント

ぐるなびに掲載されている口コミはトリップアドバイザーのサイトに投稿された口コミの提供を受けて反映する仕様となっています。

そのため、ぐるなびで見た口コミを削除したい場合には、掲載元となるトリップアドバイザーに依頼しなければなりません。

口コミの削除はトリップアドバイザーの利用規約に違反している内容ならば行える可能性があります。トリップアドバイザーの口コミ削除は施設のオーナーページから可能ですので、関連記事『トリップアドバイザーの口コミは削除できる?削除方法と弁護士にできること』を参考にしてください。

Rettyの口コミ削除依頼ポイント

Rettyの投稿ごとの報告機能は、アプリならば利用できますがブラウザから閲覧している場合には報告機能はありません。

アプリでログイン閲覧をしているならば、問題があると思う口コミの右上、三点リーダーボタンを押せば[報告する内容を選択]が表示されます。報告理由を選択して送信しましょう。

繰り返し誹謗中傷の口コミを行うユーザーに関しては、ユーザーアイコンをタップし、ユーザーページ右上の三点リーダーボタンからユーザー報告を行うことができます。

口コミ報告の場合も、ユーザー報告の場合も、報告後に運営会社がどんな対応を採ったのかは返信などで通知されることはありません。

ポイント

利用規約の「第11条コンテンツの削除」には個人や店舗を誹謗中傷するもの、店舗などへの個人的な激しいクレームやトラブルや支払いに関するもの等が削除される可能性があります。

削除依頼したい口コミが規約違反にあたるのか判断できず問い合わせを迷っている方は専門家に相談してみることもおすすめです。

問い合わせフォーム・メールで削除依頼を送ることも手

Rettyの口コミは運営会社のお問い合わせ窓口フォームに問い合わせましょう。

問い合わせ内容欄には、どの口コミを削除依頼したいか記載して送信します。運営会社からの返信は送信したGmailのメールアドレスで受け取れるように受信設定を確認しておくことが望ましいです。せっかく返信が来ても迷惑メールに振り分けられていて見落とさないように気をつけましょう。

お問い合わせ窓口フォーム以外にもカスタマーサポート宛のメールアドレスが公開されています。平日の3営業日以内の返信が目安となっていますので、運営会社から対応について回答が欲しい方はメールで問い合わせる方がおすすめです。

店の悪口を書いた人への損害賠償請求

店の悪口が権利侵害にあたる場合には、損害賠償請求が可能です。ただしそのためには投稿者を特定しなくてはいけません。

ここからは悪口を書いた人を特定する方法と賠償請求すべき金銭の内訳を説明します。

悪口を書いた人を特定

お店の悪口を書いた人の特定方法は、以下の流れとなります。

  1. 投稿サイトに対して投稿者のIPアドレスなどの開示を求める
  2. 投稿サイトからIPアドレス等の開示を受ける
  3. IPアドレスを元に投稿時のプロバイダを特定する
  4. プロバイダに対して発信者情報開示請求の訴訟を起こす

なお、投稿サイトに対する情報提供を任意で求めても、ほとんど応じてもらえません。そのため裁判所に仮処分を申立て、法的手続きの下で開示を受けることになります。

プロバイダに対しても任意で開示を依頼してもほぼ開示してもらえませんので、発信者情報開示請求という訴訟が必要になるでしょう。

このように悪口を書いた人を特定するためには様々な法的手続きが必要になるうえ、費用も時間も一定程度かかります。

一度弁護士に相談して悪口を書いた人を特定できるかの見通し、弁護士に依頼した場合の費用などを確認してみると良いでしょう。

発信者情報開示請求について詳しく知りたい方は、以下の関連記事をお役立てください。

悪口を書いた人に慰謝料などの賠償請求

悪口を書いた人を特定できたなら、権利侵害に対して適切な賠償の請求をおこないましょう。具体的には慰謝料、お店の営業に与えた損害額のほか、特定のためにかかった調査費の請求も認められる可能性があります。

なお慰謝料は権利侵害の内容に応じて相場があり、名誉毀損であれば個人の場合で10万円から50万円程度、法人であれば50万円から100万円ほどといわれています。

よりくわしい慰謝料相場や慰謝料請求の流れを知りたい方は関連記事『誹謗中傷の慰謝料相場はいくら?損害賠償請求の流れと注意点をおさえよう』もあわせてお読みください。

店の悪口を書いた人を刑事告訴

店の悪口を書いた人物に対して、その被害内容によっては刑事処分を求めるべき事案もあります。

警察へ告訴状を提出

告訴は被害届の提出とは違い、加害者に刑事処罰を与えてほしいと明確に意思表示するものです。

名誉毀損罪や侮辱罪は「親告罪」とされ、告訴状の提出がなければ、起訴されない犯罪です。起訴されないということは刑事処分に問われないということになります。

悪口を書き込んだ人物が特定出来ていなくても告訴状の提出自体は可能です。しかし事実上、書き込んだ人物を特定してから告訴状を提出するケースが多いとされています。

なお告訴は「書き込んだ人物を特定した日」から6ヶ月が時効ですので、特定後は早急に取り掛かりましょう。

記事『刑事告訴の方法と告訴費用を解説!ネットトラブル・誹謗中傷を警察に訴えたい』では、告訴のくわしい手続きや費用について解説しています。刑事告訴を検討している方はあわせてお読みください。

早急に警察相談すべき口コミもある

もし店の悪口を書かれるだけでなく、脅迫めいた言葉を書かれているとき、なんらかの営業妨害を示唆されている場合には、すぐに警察に相談しましょう。

  • 今から店に行ってボコボコにしてやる
  • 店の食べ物に毒を混入させる
  • 店舗の営業を取りやめないと火をつける
  • 悪口を書かれたくなければ金をよこせ
  • 毎日繰り返し嫌がらせの電話や封書が届く

こうした行為は刑事処分の対象になること以上に、ご自身や従業員、お客様に何らかの危害を及ぼす可能性があります。

店への悪口は弁護士相談で対処法を検討しよう

お店への悪口にどう対処するべきかは、弁護士への相談でアドバイスを受けることをおすすめします。

「悪評を削除したい」「書き込んだ相手を特定してこらしめたい」「刑事処分を検討したい」などいずれの対処も、お店へのマイナスの感想と、権利侵害とを見極める必要があるからです。

弁護士相談の最大のメリット

弁護士に相談して、まずは「悪口が名誉毀損などの権利侵害とはいえるのか」という見解を聞いてください。それから各対処法のメリットとデメリットを比較してみましょう。

名誉毀損について弁護士への相談を検討しているならば、関連記事『名誉毀損の被害は弁護士に相談!訴える条件と流れは?相談先選びのポイントも解説』も参考になるのであわせてお読みください。

飲食店を選ぶ際には他人の口コミや評価を参考にする人は非常に多いです。

事実と異なる悪質な口コミが混じっていたとしても、投稿を見た人はその投稿内容を信じてしまう可能性があります。ただの悪口だろうと放置しておくことは、店の信用問題に深刻な影響を与える可能性が高いです。

また、企業にとっては風評被害や対策SNSで炎上しないような対策も重要視されています。下記の関連記事でくわしく解説しているので参考にしてください。

なお、下記バナーより弁護士選びのポイントをまとめた解説記事もお読みいただけますので、相談先を検討する際はあわせてお読みください。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了